マイクを持てば酔っぱらい

~カラオケをこよなく愛するITシステムエンジニアのブログ~

絶対音感の話

 私は「絶対音感」を持っています。絶対音感の定義はいろいろあるようですが,ここでは「楽器で鳴らされた1つの音を聞くと,それがドレミ…のどれなのかを当てられる能力」とします。有名な音としては,NHK の時報『ピ・ピ・ピ・ポーン』は「」の音です。「君が代」の正式な調(ハ長調)だと,♪きみが~よ~は の部分は レドレミソミレ ですね。一般的な救急車のサイレン音『ピーポーピーポー』は シソシソ で,自分の前を通り過ぎるとドップラー効果で音程が下がり シ♭ソ♭シ♭ソ♭ に聞こえます。こんな感じで,音程を持つ音を聞くとどんな音程かわかるのが絶対音感です。

 敏感な人になると,ちょっとした生活音などにも音程を感じてしまうなんて人もいるようですが,私はそこまでではありません。音程をわかりたいと意識を向けると音程がわかる,という程よいレベルです。ただ,耳なじみの曲が何らかの理由で通常と違う音程だったりすると,意識を向けなくても必ずわかります。カラオケでは,歌いやすいように原曲とは違うキーに調整されていることが多いですが,それで聞いていると自分が知っているキーと違うので違和感を感じます。キーが原曲と合っていると,ピタッとハマっている感じになり心地いいのです。カラオケの歌本や端末には,原曲キーに合わせるにはいくつキーを動かせばよいか記載されていますが,私はそれを見なくても知っている曲であれば原曲キーに合わせることができます。キーを1つずつ動かしていって,原曲と同じキーになるとピタッとハマる感覚になり,これが原曲キーだとわかります。

 私は幼少期に,楽器を習ったり音楽に関する特別な教育(リトミックとか)を受けたことはありません。なので,なぜ絶対音感を獲得できたのか全くわかりませんし,他の人も皆,自分と同じように音程を当てられると思っていました。ある時,他の人は音程を当てる能力を持ってないんだということがわかり,これが世に言う絶対音感なんだと気づきました。

 私は,ピアノの白鍵の音(#や♭が付かない音)の方が素早く判別できます。特にドとソは鳴った瞬間すぐにわかります。一方,ピアノの黒鍵の音(#や♭が付く音)は判断までに少し時間がかかることがあります。例えば,ド#の音が鳴ると,私の頭の中では「すぐわからないってことは白鍵の音じゃないな。鳴っている音を少し低くするとドになるから,これはド#だ」という思考回路で音程がわかります。全部の音が瞬時に判別できるのではなく,頭の中に音程がしっかり刻まれている音とそうでない音がある感じです。ドやソを中心に,白鍵の音の判別速度が速いということは,幼稚園や小学校のオルガンやピアノの音によって絶対音感が形成されていったのかなと自分では考えています。その頃に歌う愛唱歌は,ハ長調,ヘ長調,ト長調(コード表記ではC,F,G)が多いですよね。白鍵の音程の判別が早く,黒鍵が遅い理由がそこにあるんじゃないか,と思っています。

 絶対音感があると,楽器を鳴らしたり楽譜を見たりせずに音程がわかるので,それを生かして曲の音の高さを調べたのが,ヒット曲音域データベースというサイトです。ここに掲載した全ての曲について,最低音と最高音を自分で調べています。ただし,常に音程がきっちり判別できるわけではありません。時々,音程が判別しづらい場合があって,例えば「ドにも聞こえるしド#にも聞こえる」というようなことがあるのです。

 音の高さは音波の周波数によって決まりますが,NHK の時報でおなじみの「ラ」の音の周波数は 440Hz と国際標準で定められています。市販のキーボード等の電子楽器のほとんどは,この国際標準に則った周波数の音源が各鍵盤に割り当てられているため,キーボードで鳴る音は音程の判別に迷うことがほとんどありません。ですが,この国際標準に強制力はないので,実際にはラの音が 440Hz ではないケースが珍しくありません。音楽制作者や演奏家が 440Hz ではない周波数を用いることもありますし,アナログ音源をCD収録した場合などは 440Hz ではないケースも多いと思います。このようなケースで「ドにも聞こえるしド#にも聞こえる」ようなことが起きるのです。

 音程が判別しづらいのは,音源側の理由だけではなく,私の絶対音感の感度の問題もあります。先日,ラの音(周波数 440Hz)を聞いたところ,私の脳内にあるラの音よりもわずかですが音が高いと感じたんです。ということは,私が絶対音感として記憶している音程はやや低めということになります。逆に言えば,音の周波数が少し大きくなるだけで,半音高く聞こえたり,どちらの音かわかりづらくなるわけです。

 具体例として「My Revolution」(渡辺美里)のサビの歌詞である

わかりはじめた マイレボリューション

の所は,メロディーを階名(相対的な音程の関係性)で示すと,

 どどどどどどど れーどしどーどー (※意図的にひらがなで記載)

です。「マイ」の所で「れ」に上がるわけですね。この音程を私は,

 ラ♭ラ♭ラ♭ラ♭ラ♭ラ♭ラ♭ シ♭ーラ♭ソラ♭ーラ♭ー
 (変イ長調,コード:A♭)

だと理解していますが,時々,

 ラララララララ シーラソ♭ラーラー
 (イ長調,コード:A)

なのでは?と感じることがあるのです。公表されている譜面などを見ると,ラ♭~の音程で合っているようですが,「My Revolution」の音程がやや高め(アナログ音源からCD化されているからだと推察)なことと,私の絶対音感がやや低めなために,サビの最初の音がラ♭とラの中間くらいに聞こえて,もしかしてラかな?と思う感じなのです。こんなふうに,絶対音感と言ってもけして「絶対」なものではなく,個人差はかなりあるのではないかと思います。

 絶対音感とは,「定規無しで長さがわかる」とか「秤無しに重さがわかる」という感じに似ています。便利ではありますが,それが芸術性とは無関係であることが,この喩えからわかると思います。定規無しで長さがわかっても,それでデザインが良くなるわけではありませんよね。同様に,絶対音感を持つからといって音楽性が高いわけではありません。絶対音感を身に付けようと躍起になるのは全く意味がないので,止めた方がいいと思います。ただ,絶対音感は不要ですが「相対音感」は音楽をやるなら必須の能力でしょう。相対音感も定義があいまいな言葉ですが,任意の音を「ど」に決めたとき,どれみふぁそらしど…の音を正しく捉えられる能力のことです。絶対音感の訓練の結果として相対音感が身に付くなら,むしろその方が良いと思います。

 相対音感を体得する早道は,メロディーを習得する(音をとる)際に「階名」を使うことでしょうね。階名は上述の「My Revolution」でも書きましたが,別の曲の例として「デカメロン伝説」(少年隊)を見てみましょう。この曲の冒頭に,

 どれみらーみれど らしどみーどらそ

という歌詞がありますが,これは,どれみ…を適当に並べたのではなく,この部分の階名になっているのです。階名とは,調(コード)に関係なく相対的な音程の関係性を表したもので,逆説的な言い方をすれば,その曲をハ長調(またはイ短調)に移調した場合の音程です。この部分の実際の音程は,

 ソラシミーシラソ ミファ#ソシーソミレ
 (ト長調,コード:G)

ですが「どれみらーみれど」の方がメロディーとしてスーッと頭に入ってくると思います。あらゆる音楽を階名で捉えると,相対音感の良い訓練になると思います。

 最後に階名クイズを書いておきましょう。下記は各々,何の曲の階名でしょうか?

① みみふぁそそふぁみれ どどれみみーれれ

② そーどーしどれーどれみみふぁみら れれどーどどしーらしどー

③ らーどーれーどーれ れれそふぁみれみ みーそーらーれーど そそみそそーらー

**********

<答え> (このすぐ下の行をマウスで選択するとはっきり表示されると思います)
①第九の合唱パート ②大きな古時計 ③残酷な天使のテーゼ

有線放送ランキングの定説を塗り替えたアイドル

 ヒット曲をランキング形式で発表し,1970~80年代に一世を風靡したテレビ番組「ザ・ベストテン」をはじめ,当時多かったテレビやラジオの音楽ヒットチャートランキングの多くは,何種類かのランキングを基に独自の総合ランキングを作成する,いわゆる総合ヒットチャート方式が採用されていました。「ザ・ベストテン」では,レコード売り上げ,ラジオ総合ランキング(TBS系列ラジオ局各局のランキングを集計),有線放送ランキング,はがきリクエストランキングの4種類を用いて,各ランキングの順位に応じた得点を合計することにより,総合ランキングが決定されました。この4種類の中で「有線放送ランキング」って何だろう?と思った方もいるかもしれません。1970~80年代の有線放送ランキングは,他のランキングと明らかに趣が異なっていて,それが総合ランキングを面白くしていたのです。

 そもそも有線放送とは何かという話は WikiPedia さんにお任せするとして,お店で延々曲が流れているケースの多くは有線放送だと思います。私の個人的な思い出としては,大学生のとき,バイト先の某バーガーチェーン店に有線放送が備えられており,そのお店では最新の J-POP のチャンネルで曲を流していました。有線放送で流れる曲は1週間単位とかでプログラムされているので,毎日同じ時間帯にバイトに入っていた私は,同じ曲を何度も聞いていました。その中で耳から離れなかったのは,曲のノリが J-POP 離れしていた「WON'T BE LONG」(バブルガム・ブラザーズ)と,歌詞と歌声が涙を誘う「会いたい」(沢田知可子)の2曲でした。ヒットする前から毎日耳にしていて,バイト仲間とも「この曲気になる」と話題にするくらい印象的だった2曲は,後々大ヒットしました。有線放送からヒット曲が出ると話には聞いていましたが,それを実感する経験でした。

 有線放送は,流してほしい曲をリクエストすることができるんです。当時は電話でリクエストできたのですが,バイト先のお店で実際にやってみたことがあります。電話した後,いつもと同じ曲が何曲か流れてから,少し大きめの音量でリクエスト曲が流れ,どういう原理かはわかりませんでしたが,へぇ~と思ったものです。有線放送のランキングとは,このリクエストの回数を1週間ごとに集計したものなのです。

 そういうことなら,人気がある曲がリクエストされるのだから,ランキングはレコード売り上げやはがきリクエストと大きくは変わらないのでは?と思う方もいるでしょう。1990年代以降はそうなっていくのですが,1970~80年代の有線方法ランキングは他のランキングと全然違う顔ぶれになることが珍しくありませんでした。全体的には演歌や大人向けの歌謡曲が上位に来る傾向が強く,例えば「つぐない」「時の流れに身をまかせ」でおなじみの テレサ・テン は,レコード売り上げでは最高位がベスト10に届くかどうかなんですが,有線放送では必ず1位を取り,ベスト10には次の曲が出るまで1年間ランクインし続けたりしていました。

 私は中学生になった1982年頃から,音楽ヒットチャートでおなじみのオリコンの週刊誌「オリコン・ウィークリー」を毎週立ち読みし,レコード売り上げだけでなく,有線放送など他のランキングにも目を通していました。また,当時TBSラジオで夜7時台に「毎日がベストテン」という番組が放送されていて,火曜日に有線放送ランキングが紹介されていたので,そこで普段は耳にしない,有線放送でのヒット曲を知ることができました。

 個人的にとても記憶に残っている曲の1つが「居酒屋」(五木ひろし・木の実ナナ)です。レコード売り上げでは全く上位に来ていないのに,有線放送の上位に長くランクされていたことを不思議に思いつつ,「有線放送は飲み屋に多く導入されているから,こういう大人な感じの曲が上位に来るんだな」と中学生なりに理解していました。この曲はカラオケのデュエット曲として大定番曲になり,平成の世になっても歌われ続けていますが,私の中ではデュエット曲としてよりも,有線放送の大ヒット曲として強く印象に残っています。 

 もう1曲,有線放送の大ヒット曲で思い出すのは「喝采」でレコード大賞を受賞した ちあきなおみ の「矢切の渡し」です。あれっ,細川たかし じゃないの?と思った方もいると思いますが,この曲は「氷雨」(佳山明生,日野美歌)のように複数の歌手が歌う,いわゆる競作作品であり ちあきなおみ の方が先に発売されました。ちあきなおみ 版は1983年の春先から有線放送1位に君臨しましたが,細川たかし 版は大ヒットするものの有線放送では1位を取ることができませんでした。

 ちあきなおみ の歌声は「矢切の渡し」の世界観にピッタリで,中学生の私でも強烈に引き付けられる魅力がありました。その一方で,細川たかし の朗々と歌い上げる雰囲気は,私には最後までしっくりきませんでした。さらに,細川たかし 版のレコードが年間2位の売り上げを記録し,2年連続でレコード大賞を受賞するのですが,ちあきなおみ 版のレコード売り上げが全然伸びない状況に対して,これは作為的な何かがあったんだなと,私は子どもながらに大人の事情というものを感じていました。ちあきなおみ 版は本当に素晴らしい作品だったのに,それがさほど世に出なかったことは1980年代ヒット曲シーンにおける汚点の1つだと私は今でも思っていますが,これは有線放送ランキングをチェックしていたからこそ感じられたことだったのです。

 さて本題の,有線放送ランキングの定説を塗り替えたアイドルの話。1980年代はアイドル全盛期でしたが,アイドルは有線放送ランキングでは苦戦していました。レコード売り上げでベスト10にランクするアイドルも,有線放送ではベスト20にもなかなか届きませんでしたし,松田聖子,近藤真彦,田原俊彦といったレコード売り上げ1位を取れる実力者でも,有線放送ではベスト10にどうにか入れるくらいで,ベスト5に届けば有線放送ランキングとしては大ヒットと言っていいような状況でした。

 しかも,有線放送ランキングの動きはレコード売り上げとタイムラグがあります。例えば 松田聖子 の曲が有線放送ランキングのトップ10に入るのは,レコード発売後3~4週間経ってからという感じでした。この頃のレコード売り上げは,初週に1位を取って翌週からは下がるだけというパターンが多かったので,有線放送ランキングが上がってくる頃レコード売り上げは下がってしまいます。「ザ・ベストテン」のような総合ヒットチャート方式で,トップアイドルでもなかなか1位を取れなかったのは,有線放送ランキングが弱く,レコード売り上げと同時期に上位を取れなかったことが原因の1つです。前述したように,1980年代の有線放送の主戦場は飲み屋であり,リクエスト曲にはやはり演歌や大人向けの歌謡曲が多かったことが,アイドル苦戦の理由と考えて間違いないでしょう。そう考えると「ザ・ベストテン」で唯一満点(9999点)を獲得した「YOUNG MAN」(西城秀樹)は,アイドルでありながら有線放送ランキングでも1位を取り,しかもそれがレコード売り上げの全盛期と同時期だという点で,本当に偉大なヒット曲だったということがわかります。

 アイドルが苦戦する有線放送ランキングの壁を乗り越えたアイドルが 中森明菜 でした。1982年に「少女A」でブレイクしますが,レコード売り上げは5位が最高位だったのに対し,有線放送ランキングが最高2位まで到達し,有線放送がレコード売り上げより上位に来るという,当時のアイドルではあり得ないチャートアクションを起こしました。次の「セカンド・ラブ」では,「3年目の浮気」「さざんかの宿」「氷雨」「冬のリヴィエラ」といった現在でも鮮烈な印象が残る演歌の大ヒット曲が有線放送ランキングの上位に並ぶ中で,年を跨いでベスト3を8週間もキープし,当時ヒットチャートを熱心にチェックしていた私は,アイドルがなんでこんなに有線放送に強いのか,すごく不思議だった記憶が鮮明に残っています。

 続く「1/2の神話」は,前述した ちあきなおみ と 細川たかし の二人の「矢切の渡し」の間に割って入り2位を3週間記録し,有線放送で演歌勢と対等に渡り合うアイドルという評価が完全に定着します。この2曲後の「禁区」でついに有線放送1位を記録。続く1984年の「北ウィング」では4週連続1位を記録し,以降,中森明菜 は有線放送でも当然のように1位を取る存在になりました。チャートアクションが早いことも特筆もので,同年の「飾りじゃないのよ涙は」では,レコード発売初週に早くも有線放送9位に登場すると,9位⇒3位⇒1位とレコード発売からわずか3週で1位に上り詰めました。

 圧巻は1986年の「DESIRE」。レコード発売3週目に1位を取ると,そこから11週連続1位というものすごい記録を打ち立てました(ランキング記録はこちらのサイトを参照)。当時は強力な演歌のヒット曲がなかったり,有線放送が飲み屋以外の様々な業態に広がりを見せたりした時期ではあったと思いますが,他のアイドルは相変わらず苦戦していましたので,中森明菜 の有線放送での強さは際立っていたと言えます。当時夜の仕事をしていた若い女性たちの多くが彼女を支持していたことも影響していたと思いますし,楽曲のクオリティーの高さがアイドルの域を超えていたことも,有線放送で強かった理由かなと思います。

 中森明菜 はアイドルとして最も成功した歌手の1人ですが,レコード売り上げでミリオンセラーがなかったり,オリコンで1位を阻まれる曲があったりと,記録面では恵まれない一面もあります。しかし,有線放送ランキングにおいては,中森明菜 は「アイドルは有線放送に弱い」という定説を覆し,有線放送に強いアイドルの先駆けであったという功績を残したのです。

 現在も有線放送という仕組みは健在ですが,飲み屋以外の業態のお店にも広く浸透し,音楽を聴く手段が多様化した今日では,有線放送にリクエストする層も変化したでしょうし,有線放送の独自性は薄れてきていると思います。私はもう20年以上,有線放送ランキングを定常的にチェックしていないので,どんな傾向にあるのか把握していませんが,たまにランキングを見るとCD売り上げとさほど変わらなかったり,アイドルの曲もきちんとランクインしていたりするので,1980年代の有線放送ランキングとはかなり様変わりしているのではないかと想像します。

 中学生の頃,大人の世界を垣間見る気分を味わうことができた1980年代の有線放送ランキング。情報の流通スピードが劇的に速くなり,様々な情報が似たり寄ったりになっていく現代を過ごしていると,異質なものの面白さが際立って感じられることがあります。昔の有線放送ランキングについ思いをはせてしまうのは,そんな面白さを存分に味わえたから…なのかもしれません。

「要求」と「要件」の違い

 ソフトウェア/ITシステムの世界では,どんなものを作るかを決める工程である「要求分析」や「要件定義」が重要だと言われています。ソフトウェア/ITシステムは目に見えないもの(不可視性)なので,何を作りたいのか,どういう機能や品質を欲しているのかを具体的に表現することが難しいのです。ソフトウェア/ITシステムの開発が失敗する理由を尋ねるアンケートを取ると,「要件定義の不備・不調」という回答が常に上位に来ます。

 ですから,この世界では要求分析や要件定義に関する研究や実践が盛んに行われており,その考え方やノウハウが多くの人たちから発信されています。その際に「要求」と「要件」という似て非なる言葉が登場します。この「要求」と「要件」の使い分け方をご存じでしょうか? 世間で紹介されているものを一部ご紹介します。

要求要件
ニーズや要望も含まれる開発すると約束・合意したもの
整理されていない重複や範囲外を除去し整理されたもの
ユーザー(利用者)が起案ベンダー(開発者)が承認
文書化されていないものも含む文書化されたもの
システム/ソフトウェア以外も含まれるシステム/ソフトウェアに関するもののみ

 どれも一理ある考え方です。これらについて,あたかもソフトウェア/IT業界内の慣例であるかのような発信をされている記事もあるのですが,それは違います。これらはあくまでも,個々の組織,プロジェクト,資料等の中で定義される位置づけのものであり,業界内の統一規則/見解ではありません。

 実は「要求」と「要件」は使い分けるものではありません。「JIS X 0020:情報処理用語(システム開発)」では,英語の requirement の訳として「要求」「要件」どちらを用いてもよいと規定されているのです。JIS(日本産業規格,2019年6月までは日本工業規格)の規定ですから,これこそが業界規則です。訳知り顔で「要求は△△△,要件は▲▲▲ということだよ」などと悦に入っていた方(ちょっと前までの私です…)は,知識をアップデートしておきましょう。

 ですが,例えば「取りあえずも含めた要求」と「合意した要求」という表現を使うのって,まどろっこしいと思いませんか? 上表のような「要求」と「要件」の定義が使われるのは,それなりに合理的な理由があるからだと思います。「要求工学」という言葉がありますが,これを「要件工学」とは言わないことから考えると,どちらか一方を使うなら「要求」という言葉の方がよいのかなとは思います。しかし「要求」という言葉は意味が広く,また日本語の「要求」は,例えば「待遇の改善を要求する」といったように強いニュアンスを伴うことが多いので,弱い要求も取り扱う状況では「要求」という言葉はちょっとしっくりこないと感じるのです。個人的には,原則として「要件」という言葉を使い,整理や合意がなされていないものを表す場合に「要求」という言葉を使うようにしています。上表に照らすと①と②の意味で使っていることになります。

 では「要求」と「要件」という言葉の使い方についてまとめます。

「要求」と「要件」の使い分け方について,ソフトウェア/IT業界としての統一規則/見解はない

「要求」と「要件」はどちらを用いてもよいことが,JIS で規定されている。

★同じ意味で「要求」と「要件」という2つの言葉を使うと混乱を招くので,個々の組織,プロジェクト,資料の中では,どちらか一方に統一する。

★意図的に「要求」と「要件」という2つの言葉を使う場合は,それらの定義を明確にする。

メールアプリ Thunderbird の文字化け対策

 私は,会社を退職して独立したことにより,仕事で使う道具を自分で選択できるようになったわけですが,執務環境,マシン(PC,モバイル),アプリ等様々な道具の中で選択に腐心したものの1つが,PCのメールアプリです。会社では Outlook を使っていたのですが,微妙な操作性の点でずっと不満があったので,別のサービスやアプリをいろいろ試しました。アプリのインストールをできれば避けたかったので,Web メールの Gmail や Outlook.com なども試しましたが,ほんのちょっとだけ操作性が満足できませんでした。それで最終的に行き着いたのは,オープンソースの草分け的存在である Thunderbird でした。インストールは必要ですが,長い開発の歴史によってかなり洗練されており,満足なメール環境が手に入ったことで,日々快適に仕事ができています。

 ところが,ここ1ヶ月ほど,数日に一度「文字化け」に襲われる現象が発生していました。作成したメールを下書き保存し,下書きを開くと文字化けするのです。再現性がない(何十回かに一回しか起こらない)ので原因がわからずストレスがたまっていましたが,試行錯誤していくうちに,文面の中に「1行の文字数が長い行」があると文字化けするらしいことがわかってきました。私は普段,半角60~70文字程度で改行を入れているので,ほとんどのメールではこの現象が起こらず,うっかりその改行を入れ忘れたり,引用されたメールの中に文字数の長い行が残っていたりした場合だけ,文字化けが起きていたようです。

 ご存じの方も多いと思いますが,文字化けは文字コード種別(JISコード,シフトJISコード,EUC,Unicode 等)の判別誤りによって発生します。しかし,昨今のアプリは文字コードの自動判別機能がしっかりしているので,文字化けに遭遇することはめったにありません。ですから「Thunderbird 文字化け」とかで検索しても,今回の現象の解決策は見つかりませんでした。しかし,どうやら1行の文字数が怪しいということから「メール 文字化け 文字数」とかで検索したところ,原因がほぼ特定できました。

 Thunderbird は,文字数の長い行に対して,一定の文字数ごとに改行を強制的に挿入する機能が標準設定されているのです(この機能は,画面表示上,長い行が折り返されているだけだと私は思っていました)。文字コード種別を誤認識している状況だと,改行の文字コードが予期せぬ場所に挿入されてしまい,元の文章と文字コードの解釈が変わってしまうことで文字化けが発生するのではないかと推察します。

 原因がわかったので,対策としては文字数の長い行を作らないように,こまめに改行を入れればいいのですが,引用の部分などで文字数の長い行が残っているかもしれませんので,Thunderbird の強制改行機能を無効にすることが根本的な対策になります。自分への備忘録として,この機能を設定する方法を記しておきます。

< 操作手順: Thunderbird強制改行機能無効化

  • メニュー「オプション」 > 「オプション」でオプション設定画面を開く
  • アイコン「詳細」 > ボタン「設定エディター」
  • 下記の設定を下記のように変更する
    mail.wrap_long_lines = false
    mailnews.wraplength = 0
     (mail.wrap_long_lines は無関係という説もあり)

 ただ,意図的に改行を入れた場合,スマートフォンのように表示幅が狭い画面でメールを見ると見づらくなるという弊害もあります。例えば,


(表示例)
スマートフォンのように表示幅が狭い画面 (←画面上の折り返し)
でメールを見ると, (←改行)
画面上の折り返しが改行よりも早く来てし


という感じで,中途半端な場所で改行が入るので,見づらくなります。これを回避するためにも,「読みやすさのための改行」という本質的でない編集は,本来ならしない方がいいわけです。箇条書きのように見やすさを重視するときは別として,普通の文章は「読みやすさのための改行」を入れずに,段落を変えるまで改行を入れないという本来の書き方でもよいかもしれません。この点についても,今後試行錯誤していこうと思います。

シングルCD売り上げランキングで平成を振り返る

 平成を振り返るランキングの中で欠かせないのは,シングル曲売り上げランキングでしょう。音楽ランキング最大手のオリコンは,1988年からレコード売り上げにCDを合算するようになり,翌年の1989年(平成元年)にはCDが売り上げの大半を占めるようになります。平成においては 楽曲売り上げ = CD売り上げ であり,CDの利便性の高さもあってレコード盤よりも多くの売り上げを記録し,多くの名曲が生まれました。では,そのオリコンが発表した,平成シングル曲売り上げトップ20をご覧ください。

順位曲名売上枚数
アーティスト最大ヒット時期
1世界に一つだけの花312.7 万枚
SMAP2003年(平成15年)4月
2TSUNAMI293.6 万枚
サザンオールスターズ2000年(平成12年)3月
3だんご3兄弟291.8 万枚
速水けんたろう,茂森あゆみ,ひまわりキッズ,だんご合唱団1999年(平成11年)3月
4君がいるだけで289.5 万枚
米米CLUB1992年(平成4年)6月
5SAY YES282.2 万枚
CHAGE & ASKA1991年(平成3年)9月
6Tomorrow never knows276.6 万枚
Mr.Children1994年(平成6年)12月
7ラブ・ストーリーは突然に258.8 万枚
小田和正1991年(平成3年)3月
8LOVE LOVE LOVE248.9 万枚
DREAMS COME TRUE1995年(平成7年)8月
9YAH YAH YAH241.9 万枚
CHAGE & ASKA1993年(平成5年)3月
10名もなき詩230.9 万枚
Mr.Children1996年(平成8年)3月
11桜坂229.9 万枚
福山雅治2000年(平成12年)5月
12CAN YOU CELEBRATE?229.6 万枚
安室奈美恵1997年(平成9年)3月
13DEPARTURES228.8 万枚
globe1996年(平成8年)2月
14WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント213.5 万枚
H Jungle with t1995年(平成7年)4月
15Automatic206.3 万枚
宇多田ヒカル1999年(平成11年)2月
16TRUE LOVE202.3 万枚
藤井フミヤ1993年(平成5年)12月
17愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない202.1 万枚
B'z1993年(平成5年)4月
18恋しさと せつなさと 心強さと202.1 万枚
篠原涼子 with t.komuro1994年(平成6年)9月
19愛は勝つ201.2 万枚
KAN1991年(平成3年)1月
20ロード199.7 万枚
THE 虎舞竜1993年(平成5年)3月

 ヒットしたかどうかはCD売り上げ以外にもいろいろな指標がありますが,このランキングに登場する楽曲は間違いなく平成の大ヒット曲と言えますね。では,これらの曲を時系列に見ていきます。1990年(平成2年),フジテレビ系バラエティー番組「邦ちゃんのやまだかつてないテレビ」の挿入歌となった「愛は勝つ」(KAN,19位)は,年末から火がつき年を越しても爆発的に売れ続けました。「おどるポンポコリン」に続き100万枚を大きく超えるヒットになったことで,レコード盤を明らかに上回るCDのセールスパワーが世間に認知されていきます。

 1991年(平成3年)1~3月クールのフジテレビ系月曜9時のドラマ,いわゆる「月9」で「東京ラブストーリー」が大ヒット。この主題歌である「ラブ・ストーリーは突然に」(小田和正,7位)が2月に発売されると,発売初週にあの「およげ!たいやきくん」が持っていた週間売り上げ枚数記録(72万枚)を塗り替える74万枚の売り上げを叩き出し,翌月3月には200万枚,いわゆるダブルミリオンに到達しました。その後の平成ダブルミリオン連発の先陣を切ったのです。

 その後「月9」は,同年7~9月クール「101回目のプロポーズ」から「SAY YES」(CHAGE&ASKA,5位),1992年(平成4年)4~6月クール「素顔のままで」から「君がいるだけで」(米米CLUB,4位)という「ラブ・ストーリーは突然に」超えのメガヒットを輩出。さらに,1993年(平成5年)10~12月クール「あすなろ白書」から「TRUE LOVE」(藤井フミヤ,16位),1996年(平成8年)1~3月クール「ピュア」から「名もなき詩」(Mr.Children,10位),1997年(平成9年)1~3月クール「バージンロード」から「CAN YOU CELEBRATE?」(安室奈美恵,12位)と,合計6曲が平成トップ20にランクインしました。改めて「月9」のドラマと主題歌のすごさがわかりますし,ドラマの名前や曲名から当時を思い出す方も多いのではないでしょうか。

 時系列を1993年(平成5年)に戻すと,三谷幸喜 脚本のフジテレビ系ドラマ「振り返れば奴がいる」の主題歌「YAH YAH YAH」(CHAGE&ASKA,9位),有線放送から大ヒットとなった「ロード」(THE 虎舞竜,20位),アーティストパワーが最高潮に達した「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」(B'z,17位)と,立て続けにメガヒットが生まれます。1994年(平成6年)に入ると,小室哲哉 プロデュースの「恋しさと せつなさと 心強さと」(篠原涼子 with t.komuro,18位)と,フジテレビ系ドラマ「若者のすべて」の主題歌「Tomorrow never knows」(Mr.Children,6位)が続きました。

 1995年(平成7年)はCDが最も売れた年と言われ,数多くの名曲が誕生したのですが,この年も 小室哲哉 プロデュースの「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント」(H Jungle with t,14位)と,TBSテレビ系ドラマ「愛していると言ってくれ」の主題歌「LOVE LOVE LOVE」(DREAMS COME TRUE,8位)という2曲のダブルミリオンが生まれました。翌1996年(平成8年)には 小室哲哉 自身が参加した「DEPARTURES」(globe,13位)が「JR SKI SKI」のCMタイアップ効果で大ヒットしました。

 1998年(平成10年)末,弱冠15歳にして J-POP R&Bに新風を吹き込んだ「Automatic」(宇多田ヒカル,15位)が現れると,昭和を代表する演歌歌手 藤圭子 の2世というプロフィールも追い風になり,翌1999年(平成11年)に入ってビッグヒットに。ちなみにこの頃,シングルCDは 8cm 版(縦長のパッケージ)から 12cm 版(アルバムと同じサイズで「マキシシングル」と呼ばれていた)に移行する過渡期で,この曲は両方のサイズが発売され,別々のCDとして売り上げ枚数や順位が集計されていました。ですから,掲載記事によっては200万枚も売れていないように記載されている記事もあると思いますが,今回紹介したランキングでは,8cm 版(売り上げ 77.2 万枚)と 12cm 版(売り上げ 129.1 万枚)の売り上げが合算されています。宇多田ヒカル は3月にアルバム『First Love』を発売し,アルバム売り上げ歴代1位となる 765 万枚という驚愕の売り上げを記録。音楽の枠を越えた社会現象になっていきました。

 1999年(平成11年)のもう1つの社会現象が,NHKテレビ「おかあさんといっしょ」で発表された「だんご3兄弟」(アーティスト名略,3位)。CDが入荷するとすぐに売り切れる状況がしばらく続き,子ども向けの歌としては「およげ!たいやきくん」以来の大ブームが巻き起こりました。上述した J-POP 歴代ビッグヒット曲でも到達しなかった 290 万枚の売り上げを記録したのです。

 2000年(平成12年)を迎えると,「TSUNAMI」(サザンオールスターズ,2位)と「桜坂」(福山雅治,11位)という2曲のダブルミリオンが誕生しますが,これらはTBSテレビ系バラエティ番組「ウンナンのホントコ!」の中の人気コーナー「未来日記」のテーマ曲でした。番組ではなくコーナーソングが大ヒットすることは異例であり,コーナーの人気と楽曲の完成度が非常に高かった証と言えるでしょう。特に「TSUNAMI」はサザン史上最高傑作を狙って作られたと言われる楽曲で,サザンの古参ファンも絶賛,若者にはサザンの実力が伝わり,サザン史上はもちろん,平成史上でも当時最高の売り上げを記録しました。CDの売り上げが下降傾向にあったこともあり,「TSUNAMI」を抜く曲は現れないだろうと思った方も多かったはずです。

 2003年(平成15年),槇原敬之 作詞・作曲のアルバム収録曲「世界に一つだけの花」(SMAP,1位)が評判を呼びシングルカットされると,「No.1 にならなくていい 元々特別な Only One」という歌詞のメッセージ性を,小室哲哉 プロデュースのグループ dos のメンバーを経て振付師となっていた KABA.ちゃんが手掛けた親しみやすいサビの振付に乗せて,既に国民的アイドルとなっていた SMAP が歌ったことで,現代の国民愛唱歌になりました。発売1年後の売り上げ枚数は250万枚強でしたが,2016年の SMAP 解散問題に端を発した購買運動によって,ついに「TSUNAMI」を上回る売り上げ 300 万枚の大台に到達したのでした。

 ここまでで平成CD売り上げトップ20が出尽くしました。平成の後半となる2004年(平成16年)以降,音楽を聴くスタイルがCDから配信に移ったことや,テレビの影響力低下などにより,CDの売り上げは減少傾向となりました。AKB48 が大ブレイクし売り上げを牽引しましたが,総選挙商法をもってしてもダブルミリオンには至りませんでした。このことからも,平成トップ20の売り上げがいかにすごいかがわかりますね。

 今度は,アーティストの観点からトップ20を見てみましょう。まず目立つのは,トップ10に2曲ずつ送り込んでいる CHAGE&ASKAMr.Children。ダブルミリオンを1曲輩出するだけでも驚異ですが,彼らは2曲ずつ生み出しており,平成CDバブルの恩恵を享受した2組と言えるでしょう。彼らをはじめトップ20のうちの14曲バンド,グループ,ユニット等ソロではない楽曲で占められています。H Jungle with t や 篠原涼子 with t.komuro は実質的にはソロですが,横に 小室哲哉 が居たことの効果は大きかったと思います。純粋なソロは6曲だけで,しかもそのうち 小田和正,安室奈美恵,藤井フミヤ はかつてグループのボーカルだったことを考えれば,ソロでメガヒットを出すことがいかに難しいかがわかります。その意味で 福山雅治,宇多田ヒカル,KAN は本当にすごいです。この3人は皆シンガーソングライターであり,自分で作った曲だからこそ多くの人に支持されたのでしょう。

 平成前半はなんといっても 小室哲哉 プロデュース全盛期でしたが,小室作品で最も売り上げが多いのは12位の「CAN YOU CELEBRATE?」。さらに13位,14位,18位と計4曲をトップ20に送り込んだのはさすがですが,平成トップ10には届きませんでした。様々なアーティストに楽曲提供を行った 小室 でしたが,初のダブルミリオンが,アーティストが本業ではない ダウンタウン・浜田雅功 に提供した「WOW WAR TONIGHT」なのは,ちょっと考えさせられる結果です。ただ,この曲は,歌詞が会社員に刺さる部分が多々あったり,音楽面ではジャングルというジャンルが浜ちゃんのボーカルに見事にマッチした,小室 史上の最高傑作だと私は思います。

 平成を代表する2大ユニットと言える,DREAMS COME TRUEB'z。DREAMS COME TRUE が順当にトップ10入りしているのに対し,B'z の17位は思ったほど上位ではないと感じる方も多いと思います。実は'90年代の B'z は,話題性の高いドラマや大型CMのタイアップがほとんどなかったのです。「愛のままにわがままに…」は日本テレビ系ドラマ「西遊記」の主題歌でしたが,これは'70年代に 堺正章 が孫悟空を演じたあの有名なドラマのリメイク版で,(連続ドラマではなく)単発ドラマでした。B'z が話題性の高いドラマに起用されたのは2000年になってからです(TBSテレビ系ドラマ「Beautiful Life」の主題歌「今夜月の見える丘に」)。'90年代に大型タイアップが付けば,トップ10に入る売り上げを残せたのではないかと思います。逆に言えば,大型タイアップなしでもダブルミリオンが出せるのは B'z のアーティストパワーの賜物と言えます。B'z は固定ファンの数が圧倒的で,大型タイアップがなくてもシングル曲が常にミリオンセラーになるのが B'z のすごいところで,売り上げ100万枚のシングル曲が15曲もあります。平成トップ20では17位に留まりましたが,B'z のすごさはこのランキングでは語れないものがあります。

 タイアップという視点で平成トップ20のランキングを見ると,ほとんどが話題のドラマやテレビ番組のタイアップ曲で占められています。タイアップは昭和の時代からヒットの方程式の1つではありますが,平成のタイアップの特徴は,力のあるアーティストに話題のタイアップが付き,アーティストパワーとタイアップパワーの相乗効果でメガヒットが生まれた,ということです。平成トップ20の中で,アーティストパワーが弱くタイアップパワーの恩恵が大きかったのは「だんご3兄弟」と「愛は勝つ」くらいで,タイアップパワーなしで楽曲の完成度でヒットした「Automatic」「ロード」を除く他の曲はどれも,既に十分な実力を備えるアーティストが,タイアップによってビッグヒットを生み出したのです。

 昭和の時代には,タイアップはアーティストが世に出るための手段として機能しており,タイアップはさほど有名でないアーティストに付くのが一般的でした。平成に入っても「おどるポンポコリン」や「愛は勝つ」あたりまではその流れが残っていましたが,1991年,小田和正 の「ラブ・ストーリーは突然に」がターニングポイントになったと言っていいでしょう。十分な実績あるアーティストが提供するクオリティの高いタイアップ曲が,ドラマの人気を決定的にする,さらには人気を押し上げるという現象が生まれました。その後の「SAY YES」「君がいるだけで」の大ヒットにより,この流れが加速したように思います。中には「どんなときも」の 槇原敬之 や「TOMORROW」の 岡本真夜 のように,タイアップがきっかけとなってアーティストとしての地位を確立した人たちもいましたが,昭和の頃よりもそういう人たちは少なくなり,平成では「アーティストとして力を付け大型タイアップを獲る」という図式が確立していったように思います。

 このようなビッグアーティストによるタイアップが,昭和の頃にはほとんどなかったダブルミリオンの連発を生み出した,と考えることもできます。レコード盤からCDに移行しディスクの扱いが簡単になったことが,売り上げ増加の主因と考える意見もありますが,プラットフォームが進化してもコンテンツが良くなければそこまで売れませんから,ビッグアーティストのタイアップというのは平成のCDマーケットのおける大きな特徴と考えてよいと思います。

 取り留めなく書き連ねてきましたが,総括すると,レコード盤からCDへの移行ビッグアーティストによるタイアップの増加,さらに電子楽器の進化に伴う楽曲のクオリティの向上,こういった要因が重なり,ビッグアーティストがダブルミリオン級のヒットを連発した結果が,このような平成シングルCD売り上げランキングとなって表れたと言えそうです。

 CD売り上げは平成の後半から,ジャニーズ,AKBグループ,坂道グループなど一部のアーティストが寡占し,さらに楽曲やPVの配信などCD以外に音楽が世間に認知される手段とその影響力が増大したことにより,CD売り上げランキングがヒットをうまく表せなくなってきています。令和の時代は,CD売り上げはランキングの主役ではなくなり,ヒットの指標として様々なランキングが参照される時代になることでしょう。

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