マイクを持てば酔っぱらい

~カラオケをこよなく愛するITシステムエンジニアのブログ~

ドラマがあった全米選手権

 12月下旬~1月上旬は,各国の国内選手権が開催される時期ですね。日本では年末に全日本選手権が開催されましたが,アメリカでは年始すぐに全米選手権が開催されました。男女シングル共に,有力選手が平昌五輪代表入りを逃すというドラマが生まれました。また,男子のメダル争いの中心にいる ネイサン・チェン 選手の仕上がりにも注目が集まりました。全米選手権の感想と,平昌五輪の展望を書いてみます。

◆男子シングル

 ネイサン・チェン 選手が315点という高得点で優勝しました。このスコアだけを見るとかなり脅威に感じますが,観戦した私は全く脅威を感じず,羽生結弦・宇野昌磨 両選手に届かないまま平昌五輪を迎えるという印象を受けました。FS(Free Skating,フリースケーティング)は,冒頭の 4F+3T(連続ジャンプ:4回転フリップ→トリプルトウループ)は素晴らしい出来でしたが,それ以外のジャンプは詰まり気味の着氷もけっこうありました。にもかかわらず GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)が約20点も加点され,PCS(Program Component Score,演技構成点)も約95点を獲得しましたが,国際大会ではこの出来でこのスコアはまずあり得ません。国内選手権で国際大会より点数を多めに出す,というのはよくある話で,米国のジャッジが露骨にゲタを履かせた(今風に言えば「盛った」)と考えて差し支えない状況です。

 言い方を変えると,これだけゲタを履かせてもらっても315点しか出なかったということなのです。今回と同じ演技構成で平昌五輪に臨んだ場合,演技が完璧ならどうにかこのスコアが出ると思いますが,今回と同程度の出来なら310点前後と予想します。宇野 選手の最高スコアは319点,羽生 選手はさらにその上の330点であり,最高スコアを出した時点より現在の演技構成の方が基礎点が高いので,彼らが完璧に演技すれば チェン 選手が今回と同じ演技構成でベストな演技をしても彼らには及びません。

 今回の演技構成で五輪に臨み,羽生・宇野 両選手のミスを待つ戦略もないわけではありませんが,スコアの差が大きく負け戦も同然なので,チェン 陣営は,平昌五輪では今回より基礎点の高い演技構成で臨まざるを得ないと思います。今回は 4Lz(4回転ルッツジャンプ)を飛ばず,FSでは 4F,4S,4T(フリップ,サルコウ,トウループの各4回転ジャンプ)を計5本飛びましたが,平昌五輪では 4Lz を加えて4回転ジャンプ4種類を5本か6本飛ぶ構成になるでしょう。ジャンプの種類や本数のルールにより,4回転5本なら 3A(トリプルアクセルジャンプ)が2本,4回転6本なら 3A が1本になりますが,チェン 選手は 3A に不安がありますし,スコア戦略の点からも4回転6本構成を選択せざるを得ないと思います。しかし,6本は今まで一度も成功したことがなく,チェン 選手と言えどもギャンブルになります。

 今シーズンの チェン 選手は,試合のたびに4回転ジャンプの種類や本数を変えるという猫の目作戦をとっており,全米選手権でも手の内を見せなかったのならば,アルトゥニアン コーチらしい強かな作戦だとは思いますが,全米選手権で平昌五輪用の演技構成を披露して高得点を出す方が,ライバルへのプレッシャーを高められたはずなので,作戦ではなく単純にジャンプ構成を探っているのかなと私は思っています。とはいえ,基礎点が上積みできる余地を残しながら315点を出したことは,今シーズンの安定感と相まって,平昌五輪への期待を高めることはできたと思います。ぜひ平昌五輪では「これはすごい」と心から言えるような演技を観たいと願っています。

 代表争いでは,アダム・リッポン 選手はFSで精彩を欠いてヒヤッとしましたが,下馬評通りの代表入りとなりました。そして,もう一人の枠に割って入ったのは ヴィンセント・ジョウ 選手でした。4Lz を2本を含む4回転ジャンプ5本の演技構成で突き進んでいたので,シニアデビューとなる今シーズン当初から応援していましたが,全米選手権で表彰台に乗り,平昌五輪代表の座を掴みました。平昌五輪でメダル争いに加わるのは難しいですが,この五輪の経験は ジョウ 選手自身と米国にとって大きな財産になると思います。

 今回 ジョウ 選手は,FSで4回転ジャンプ3本が回転不足,同1本がダウングレードの判定を受けながらも,基礎点は チェン 選手を上回りました。回転不足やダウングレードがなければあと18点程度上乗せされる計算であり,基礎点だけで115点を超える超絶の演技構成です。4回転ジャンプに関しては チェン 選手が目立ちますが,ジョウ 選手にもぜひ注目してほしいと思います。

 代表入り有力と言われながら,目前で逃してしまったのが ジェイソン・ブラウン 選手でした。NHK杯で,羽生 選手の欠場によって優勝の最右翼と言われながら表彰台を逃したのを見て,プレッシャーに弱いのかなと感じていたのですが,肝心の全米選手権でそれが出てしまったようです。芸術性の高さとプログラム全体の高い完成度を,世界中に披露してほしかったのですが,それが叶わず残念でなりません。

◆女子シングル

 宮原知子 選手が優勝し,坂本花織 選手がブレイクした11月のスケートアメリカという大会で,もう一人ブレイクしたのが ブレイディ・テネル 選手でした。彼女の演技を観た私は,全米選手権で優勝するのではないかと予感しましたが,本当に優勝するとは驚きました。FSのプログラムは昨シーズン 三原舞依 選手が起用した「シンデレラ」ですが,テネル 選手はまるで,ディズニーランドのパレードで見るシンデレラがそのまま氷上に舞い降りてきたかのようで,長身の テネル 選手が醸し出す本物感は圧巻でした。正に,ザ・シンデレラ・ストーリーであり,平昌五輪でも入賞には十分手が届くと思いますし,絶好調なら 坂本 選手と共に5位を争う感じになると思います。

 24歳にして 3A にトライする姿に感銘を受け,シーズン当初から応援していた 長洲未来 選手が,会心の演技で8年ぶりに五輪代表になりました。長洲 選手は五輪シーズンの全米選手権にめっぽう強く,ソチ五輪のときは3位に入りながら代表入りを逃していました。その前のバンクーバー五輪では2位に入って五輪代表となり,五輪で4位入賞。今シーズンは4年前の悔しさを晴らすべく,グランプリシリーズからずっと 3A を入れ続け,NHK杯で194点を出したことで,アシュリー・ワグナー 選手の今シーズンのグランプリシリーズ最高点(183点)を上回ったことが功を奏したと思います。3A に目を奪われますが,今シーズンの 長洲 選手は 3A 以外のジャンプがとても安定していたのが好調の要因でしょう。平昌五輪では女子唯一の 3A ジャンパーとして,8年ぶりの五輪を楽しんでほしいと思います。

 カレン・チェン 選手は,今シーズン苦しんでいましたが,昨シーズンのプログラムに戻す決断が効きました。昨シーズンは全米優勝,世界選手権4位ですから,戻す価値があったということでしょう。ただし,全米選手権では昨シーズンのクオリティーには及びませんでした。平昌五輪までに昨シーズンの自信を取り戻す作業をしていくことになります。

 ソチ五輪からの4年間の米国フィギュアスケート界を支えてきた アシュリー・ワグナー 選手の代表不選出は,とても残念でした。ただ,今シーズンは精彩を欠き,ケガもありましたので,バイオリズムが下降線の時に五輪が来てしまったのでしょう。興味深かったのは,カレン・チェン 選手が過去のプログラムに戻す決断をした一方で,ワグナー 選手はFSに新たなプログラムで挑んだことです。新プログラム「ラ・ラ・ランド」は,元々今シーズン用に用意していたものの,しっくりこなくて一旦過去のプログラムに戻していましたが,やっぱり全米選手権には「ラ・ラ・ランド」で勝負したいと考え,そのような決断になったようです。

 「ラ・ラ・ランド」はプログラム自体は素敵なものでしたが,無難な印象で ワグナー 選手らしさがあまり感じられない,というのが観終わった瞬間の私の感想でした。私は「ラ・ラ・ランド」の映画を観ていないので,選曲が良かったのかどうかを判断できませんが,主題歌の有名なフレーズがいつ流れてくるか待っていた私は,それが流れてこなかったので今一つ盛り上がれなかったなぁと感じました。有名なフレーズを使えばいいというものではありませんが,「ラ・ラ・ランド」といえばこの曲…というものをうまく入れれば,観客の盛り上がり方がもっと違ったのではないかとは思いました。

 結果論としては,戻していた過去のプログラムである「ムーラン・ルージュ」の方が ワグナー 選手の良さが存分に引き出された作品だったと言えます。「ラ・ラ・ランド」をここで持ってきたということはかなり良いプログラムなのだろう,と採点するジャッジは期待感を持っていたと思いますが,良い内容だけどそこまでじゃないなと思えば,初見のプログラムに対して高いスコアは出しづらかったのだろうと推察します。PCS が低かったのは,そういったジャッジの心理が働いた面があったでしょう。ただ,そうは言っても PCS 68点(満点の85%)は低すぎるとは思いますけどね…。これが72点なら,ワグナー 選手が3位になり,五輪代表になった可能性が高かったでしょう。

 過去プログラムに戻した選手が代表になり,新プログラムに果敢に挑んだ選手が代表落ちするというのは,やや複雑な気分になってしまうところですが,これも勝負のあや。4年前の全米選手権では,4位だった ワグナー 選手がソチ五輪代表に入りましたが,そのとき3位ながら代表入りを逃した 長洲 選手が今回は代表入りを掴むというところにも,ドラマがありました。長年,米国のフィギュアスケートを引っ張ってきた2人だけに,2人とも平昌に行ってほしかったです。代表の枠が3枠あっても代表をめぐるドラマがある…これぞ五輪シーズンだな,と改めて感じさせてくれた全米選手権でした。

スポナビブログ終了のご挨拶:平昌五輪の成功を信じて

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログに出稿した記事と同じ内容です。本記事はスポナビブログへの出稿を終了する挨拶として作成した記事であり,本ブログ(ライブドアブログ)は今後も継続いたします。


 本記事をもちまして,スポナビブログへの出稿を終了いたしますので,それにあたりご挨拶を申し上げます。

 あけましておめでとうございます。2018年,いよいよ平昌五輪の開催年になりました。2014年のソチ五輪で 羽生結弦 選手が金メダルを獲得した瞬間から,平昌五輪での連覇という偉業の達成を信じ,連覇の軌跡をこの目に焼き付けるべく,この4年間,フィギュアスケートを観戦してきました。

 ソチ五輪の感想を個人ブログに書いてみたところ,観戦の感動が大きくなる経験をし,それ以来,思いつくままにブログを書き連ねてきました。羽生 選手の中国衝突事故からの見事な復活,羽生 選手の300点超えの衝撃,女子シングル五輪代表2枠の落胆,宇野昌磨 選手の急成長,…。平昌五輪ではもっと多くのファンの方と交流したり共感したりしたいと思い,スポナビブログに参入しました。それまでは,多くて1日に20件程度のアクセスしかありませんでしたが,スポナビブログでは1万件レベルのアクセスがあり,さすがだなと思いつつ,ものすごく気が引き締まりました。

 参入2本目に書いた記事「宇野昌磨:昨季の驚異的な活躍と,今季の華麗なる賭け」でアクセスが数倍増えたのが,とても嬉しく印象に残っています。昨シーズンの世界選手権で,羽生 & 宇野 両選手の1-2フィニッシュとなったわけですが,メディアではどうしても 羽生 選手が多く取り上げられるので,宇野 選手のことをきちんと書いておかないと,と思い個人ブログに書きました。書くにあたりいろいろ調べてみると,宇野 選手の昨シーズンがいかにすごかったかに気づき,文章を書き進めるほどに感動が何倍にもなりました。さらに「もしかしたら 宇野 選手が平昌五輪の金メダルをさらっていくのでは?」という気持ちにさえなりました。平昌五輪ですごいことが起きるかもしれない,そういうワクワク感が大きくなり,この気持ちを共感したくて,個人ブログに書いたものに少し加筆をしてスポナビブログに出稿しました。この記事は「この記事を支持する」の件数が他の記事より圧倒的に多かったので,自分と同じ気持ちだった,あるいは記事を読んで同じ気持ちになって下さった方がたくさんいらっしゃったことが,とても嬉しかったですし,ブログっていいものだなと改めて実感いたしました。

 この記事に手応えを感じ,これから楽しくなるなぁと思った矢先に,スポナビブログ終了…って,おいっ!(笑) しかも,平昌五輪の直前に閉鎖って,せめて平昌五輪が終わってからにしてよ~と思ったのは,私だけではないでしょう。参入直後の閉鎖告知にガッカリしたものの,こうなったら逆に,全日本選手権までガンガン書いてやろうという気持ちが湧き,タイトルを「フィギュアスケートと,体操と,サッカーと」から「情熱的氷滑芸術」に変え,ブログの内容をフィギュアスケートに絞りました。

 グランプリシリーズは,どの選手がどの大会に出場するかを細かくチェックし,展開を予想しながら,6戦全てきっちりテレビ観戦しました。例年,グランプリシリーズはわりと流して観る感じだったので,6戦全てをきちんと観たのは初めてで,しかも,6戦全てのプレビュー記事と感想記事を書いたので,1週間に記事2本というなかなか大変な状況でしたが,各選手の動向がよくわかり,しかもそれをブログによって整理することができたので,とても充実した観戦ができました。

 全日本選手権も,誰もが予想したとおり,女子シングルで代表選考のドラマが生まれました。密かに応援していた 坂本花織 選手と,私がブログで最も話題にした選手だった 樋口新葉 選手との代表争いになり,熱くなった私は,FS(Free Skating,フリースケーティング)が終わった日の夜,ほぼ夜通し,坂本 選手なのか 樋口 選手なのか,個人的に予想しつつそのときの思考過程をブログ記事に書き残しました。このときは,代表選考する側の複雑な思いを,わずかながら感じ取れた気がしました。

 個人的には 坂本 選手推しだったので,代表に選出されて「良かった」という気持ちになりましたが,一方で,樋口 選手のことを思うと,今でも胸が締め付けられる思いがいたします。体が小さく,正直なところ見た目のハンデがあると言わざるを得ない 樋口 選手が,技術とスピードで世界と戦っている姿を見ると,こういう選手こそ脚光を浴びてほしいと思い,心から応援していました。昨シーズンの挫折を思うと今シーズンの躍動には胸を打たれ,昨シーズンの世界選手権や今シーズンのグランプリファイナルでは,ジャンプのミスに私はテレビの前で本気で悔しがっていました。そして,頑張りが報われるとは限らないという厳しい現実を,樋口 選手からも学ぶことになってしまいました。これだけ大きな経験をした 樋口 選手は,もっともっと強くなっていくと期待していますし,私も今まで以上に応援したいと思っています。

 全日本選手権の感想を出稿した日には,ブログアクセスランキングでスポナビブログ全体の1位をいただくことができました(でもこのランキングって正確さが怪しいですよね…)。多くの皆さんと思いを共有できたことは,とても嬉しい出来事でしたし,スポーツナビというサイトの大きさをまざまざと感じた出来事でもありました。ブログ参入から4ヶ月,スポナビブログの品位を下げないようにと,どうにか自分なりに考えて書いてきたことに対して,読者の皆さんからご褒美をいただいたと感じています。

 私が,このようなブログを書きたくなるほどにフィギュアスケートを本格的に観戦するきっかけになった出来事の1つは,ソチ五輪の直前に福岡で開催されたグランプリファイナルを会場で観戦したことでした。羽生 選手が初めて パトリック・チャン 選手(カナダ)を下して優勝しました。その後ソチ五輪で金メダルを獲得したことで,その金メダルの序章となる大会の目撃者になることができました。私が大好きなアイスダンサーの テッサ・ヴァーチュー & スコット・モイヤー 組(カナダ)と,宿敵の メリル・デービス & チャーリー・ホワイト 組(米)の戦いは,ものすごくハイレベルでとても感動し,アイスダンスの魅力にすっかりハマりました。3A(トリプルアクセルジャンプ)を観られた 浅田真央 さん,見事な演技だった リプニツカヤ さん(ロシア),繰り上げ出場ながら銅メダルを獲得した 織田信成 さんの演技が,今ではもう観られないことは残念でなりませんが,このときジュニアファイナルに出場した,田中刑事,ボーヤン・ジン(金博洋,中国),ネイサン・チェン(米),ソツコワ(ロシア),メドベージェワ(ロシア)の各選手が,現在シニアのトップレベルで活躍していることは,感慨深いものを感じています。会場で観戦することで,テレビでは感じることができない素晴らしい雰囲気を味わうことができ,フィギュアスケートをより興味深く観るきっかけになりました。

 福岡で生観戦した選手たちの躍動が楽しみな平昌五輪。絶対王者・絶対女王と称される 羽生,メドベージェワ 両選手がケガを抱え,2人が順当に金メダルを獲るという確信が持てない展開になりつつあります。男子シングルは,1-2フィニッシュの可能性がかなりあるという思いは変わっていませんが,羽生 選手が五輪前にどれだけ充実した練習ができるのかにかかっていると思います。女子シングルは,宮原 選手のケガ明け4戦の充実ぶりが素晴らしいので,メダルを獲れる可能性がかなり高まってきたと感じています。この2ヶ月は,平昌五輪を楽しみに過ごしたいと思いますが,運営上の問題,ロシア問題,北朝鮮の動向など,不安定な要素がある状況ですので,とにかく無事に開催されることを祈りたいと思います。

 五輪というイベントは,普段その競技をあまり観ない人にも広く観てもらえる,という意味で意義深いイベントだと思いますし,五輪のメダリストが称賛されることは当然だと思います。しかし,4年に1度のイベントなので,このタイミングで好調な状態を迎える選手もいれば,不調の波に入ってしまったり,ケガに見舞われる選手もいます。私は,五輪を過度に重視するのではなく,五輪と共に毎年の世界選手権の成績こそが選手の価値を示すものだと思っています。羽生 選手は確かにすごい選手ですが,世界選手権を3連覇した チャン 選手や,2連覇した ハビエル・フェルナンデス 選手も同じくらい高く評価されるべきだと思います。私が今シーズンこれだけ盛り上がっているのは,五輪だからというより,羽生 選手の五輪2連覇の可能性や,日本女子シングル2枠の激闘に注目したからです。五輪での好成績を過度に求めるようなことは差し控え,五輪はお祭りとして盛り上がりたいと思っていますので,今後もそういうスタンスを堅持して,応援したりブログで発信したりしていきたいと思います。

 本記事をもちまして,スポナビブログへの出稿を終了いたします。約4ヶ月という短い期間でしたが,アクセスしていただいた皆様に厚く御礼申し上げます。ブロガープロフィール欄に既に記載いたしましたが,今後はスポナビブログ参入前から書いていた個人ブログ「マイクを持てば酔っぱらい」にて,引き続きブログ記事を発信していきます。また,スポナビブログの記事は,この個人ブログに二重投稿してありますので,スポナビブログが完全に閉鎖されても記事をご参照いただけます。当面,平昌五輪までは頻度よく発信していきたいと考えておりますので,今後は個人ブログの方をよろしくお願い申し上げます。

2017年をランキングで振り返る

ヒット曲年間チャート>

オリコン
https://www.oricon.co.jp/special/50550/2/

  1. 願いごとの持ち腐れ / AKB48
  2. #好きなんだ / AKB48
  3. 11月のアンクレット / AKB48
  4. シュートサイン / AKB48
  5. 逃げ水 / 乃木坂46
  6. インフルエンサー / 乃木坂46
  7. いつかできるから今日できる / 乃木坂46
  8. 不協和音 / 欅坂46
  9. 風に吹かれても / 欅坂46
  10. Doors ~勇気の軌跡~ / 嵐

レコチョク配信
http://recochoku.jp/special/100607/

  1. 恋 / 星野源
  2. HANABI / Mr.Children
  3. ハッピーエンド / back number
  4. 前前前世 / RADWIMPS
  5. 渡月橋 ~君 想ふ~ / 倉木麻衣
  6. やってみよう / WANIMA
  7. 打上花火 / DAOKO×米津玄師
  8. Destiny / シェネル
  9. おとなの掟 / Doughnuts Hole
  10. I need your love / Beverly

チャート梁山泊
http://www.os.rim.or.jp/~katokiti/anual17.htm
(ザ・ベストテン終了後も独自に同様のチャートを作り続けているすごいサイト)

  1. 恋 / 星野源
  2. 不協和音 / 欅坂46
  3. インフルエンサー / 乃木坂46
  4. いつかできるから今日できる / 乃木坂46
  5. 逃げ水 / 乃木坂46
  6. 世界に一つだけの花 / SMAP
  7. 二人セゾン / 欅坂46
  8. Family Song / 星野源
  9. 風に吹かれても / 欅坂46
  10. シュートサイン / AKB48

billboard JAPAN 総合チャート
http://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=hot100_year&year=2017

  1. 恋 / 星野源
  2. シェイプ・オブ・ユー / エド・シーラン
  3. 打上花火 / DAOKO×米津玄師
  4. 不協和音 / 欅坂46
  5. 二人セゾン / 欅坂46
  6. TT / TWICE
  7. インフルエンサー / 乃木坂46
  8. PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン) / ピコ太郎
  9. 前前前世 / RADWIMPS
  10. サイレントマジョリティー / 欅坂46

【寸評】 今年は「billboard JAPAN 総合チャート」を新たに加えました。CD 売り上げも配信も世間のヒットを映し出していないような気がして,日本でチャート発表してまだ10年の billboard もチェックしてみようと思いました。オリコン以外は「」がトップでした。昨年秋~冬からの余波が春まで続きましたよね。

 昨年よりさらにヒットに乏しい感じが否めませんが,坂道グループが確固たる地位を築きつつあります。乃木坂46は「インフルエンサー」,欅坂46は「不協和音」が今年の代表曲と言えそうです。アーティストでは,米津玄師 の活躍が目立ちましたね。本格的なブレイクの年と言っていいでしょう。

カラオケ年間チャート>

DAM
http://www.dkkaraoke.co.jp/news/171201.html

  1. 恋 / 星野源 ①
  2. 糸 / 中島みゆき ②
  3. 前前前世 / RADWIMPS ③
  4. 奏 / スキマスイッチ ⑧
  5. ひまわりの約束 / 秦基博 ④
  6. 海の声 / 浦島太郎(桐谷健太) ⑥
  7. ハナミズキ / 一青窈 ⑦
  8. 小さな恋のうた / MONGOL800 ⑤
  9. 残酷な天使のテーゼ / 高橋洋子 ⑨
  10. キセキ / GReeeeN ⑩

JOYSOUND
https://www.joysound.com/web/s/karaoke/contents/annual_ranking/2017

 上記 DAM ランキングの曲名の右側に記載した①~⑩が,JOYSOUND での順位です。

【寸評】 昨年のビッグヒット「」「前前前世」がベスト3に入ってきました。この2曲は少なくともあと数年は歌い継がれそうな名曲ですね。

10大ニュース

◆読売新聞・国内
http://www.yomiuri.co.jp/feature/top10news/20171222-OYT8T50045.html

  1. 14歳棋士、藤井四段が29連勝の新記録
  2. 天皇退位特例法が成立。19年4月末退位、5月改元へ
  3. 横綱日馬富士が暴行問題で引退
  4. 眞子さま婚約内定
  5. 衆院選で自民圧勝。立憲民主が野党第1党に
  6. 陸上100メートル 桐生、日本人初の9秒台
  7. 神奈川・座間のアパートで切断9遺体
  8. 上野動物園でパンダ誕生
  9. 「森友」「加計」問題などで内閣支持率急落
  10. 稀勢の里が第72代横綱に

◆読売新聞・海外
http://www.yomiuri.co.jp/feature/top10news/20171222-OYT8T50043.html

  1. トランプ米大統領が就任
  2. 北朝鮮が6回目の核実験。弾道ミサイル発射も相次ぎ強行
  3. 金正男氏、マレーシアの空港で殺害
  4. ノーベル文学賞にカズオ・イシグロ氏
  5. 韓国・朴大統領の罷免決定
  6. 仏大統領にマクロン氏。最年少39歳
  7. 英政府がEU離脱を正式通知
  8. 米ラスベガスで銃乱射、58人死亡
  9. トランプ氏が「パリ協定」離脱表明
  10. メキシコ地震、死者369人

【寸評】 国内のトップ3が,将棋天皇相撲という,日本伝統の話題になりました。海外はトランプ大統領北朝鮮問題が常に話題に上っていました。

流行語

◆「現代用語の基礎知識」選ユーキャン新語・流行語大賞
http://singo.jiyu.co.jp/award/award2017.html

  • インスタ映え
  • 忖度
  • 35億
  • Jアラート
  • 睡眠負債
  • ひふみん
  • フェイクニュース
  • プレミアムフライデー
  • 魔の2回生
  • ○○ファースト

女子シングル2枠代表選考を振り返る 【スポーツ雑誌風】

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログに出稿した記事と同じ内容です。


 フィギュアスケートの女子シングル平昌五輪代表は,宮原知子,坂本花織 の2選手に決定した。宮原 選手は日本女王の貫録でつかみ取り,坂本 選手は,競馬に例えるなら4コーナーから一気の末脚で馬群から抜け出した。4年間を支えてきた大エースと,シニアデビュー組の2人という,2枠としてはなかなか良い陣容となった。五輪の代表選考は,今シーズンの内容が大きく関わってくるが,4年間の集大成という位置付けでもあるので,この4年間を追いながら代表決定までのドラマを振り返りたい。

◆ソチ五輪後

 ソチ五輪の女子シングル代表だった3選手は,鈴木明子 が引退,浅田真央 が休養,村上佳菜子 が現役続行も成績停滞と,一気に世代交代の機運が高まった。そこに名乗りを上げたのは,宮原知子本郷理華 だった。宮原 は,ソチ五輪の翌シーズン(2014年)から全日本選手権を4連覇。本郷もソチ五輪の翌シーズン(2015年)から世界選手権に3年連続で出場。4年間の実績で代表を選ぶなら,この2人が選ばれていただろう。そのくらい2人は,この4年間の日本フィギュアスケート界を支えた。

 浅田 が1年間の休養を経て2015/16シーズンに復帰を果たし,復帰シーズンにもかかわらずGP(グランプリ)ファイナルにも世界選手権にも出場した,見事な復帰だった。さすが 浅田,これなら平昌五輪でも勝負できるのでは,そう思ったのも束の間,翌2016/17シーズンはケガもあって精彩を欠き,五輪シーズンを前に潔く身を引いた。

 その2016/17シーズン(昨シーズン)に台頭したのが,シニアデビューの 三原舞依樋口新葉 だ。2人は全日本選手権の表彰台に乗り,宮原 と共に四大陸選手権と世界選手権の代表になった。しかし,シーズン後半,2人の明暗は分かれた。三原 は,平昌五輪のリンクで開催された四大陸選手権で優勝,世界選手権はSP(Short Program,ショートプログラム)で出遅れながらFS(Free Skating,フリースケーティング)で巻き返し5位に入賞した。一方,樋口 は四大陸選手権,世界選手権ともに8位入賞さえも逃し,平昌五輪の代表枠をまさかの2枠に落としてしまった。これは,宮原 のケガの快復が間に合わず世界選手権を欠場したことが響いたが,樋口 はあと1つミスが少なければ3枠を確保できる順位に上がれただけに,日本にとってはあまりに厳しい世界選手権の結果だった

◆樋口新葉

 樋口 にとっては,自分の演技によって五輪代表枠を2枠に落としたことが,代表決定の局面で自分の首を絞めてしまった。しかし逆の見方をすれば,その責任を感じながらも,代表選考の最後の選択肢までよく残ったと見ることもでき,この健闘は大いに称えられるべきである。世界選手権の失意の後,国別対抗戦にも駆り出されたのを見て,国別対抗戦の結果によっては 樋口 が潰れてしまうのではないかと,私はかなり本気で心配したが,国別対抗戦で 樋口 は日本史上最高スコアのFSを披露し,それまでのもやもやを吹き飛ばしてシーズンを終えた。悔しさと成長を手にした 樋口 の五輪シーズンには期待と不安が入り混じっていた

 今シーズンに入ると,樋口 は前哨戦のロンバルディア杯でスコア217点の好スタートを切った。GPシリーズに入っても210点台を連発し,ロシア大会3位,中国大会2位と2戦続けて表彰台に乗った。シリーズ2戦とも表彰台に乗った日本女子選手は 樋口 だけだ。しかし,これだけの好成績にもかかわらず,GPファイナル進出を(中国大会の4週間後の)シリーズ最終戦(アメリカ大会)まで待たされたことが,ファイナルや全日本選手権までの調整を難しくしたのかもしれない。ロシア大会でミスを1つ減らして2位になるか,中国大会で GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)や PCS(Program Component Score,演技構成点)を1点強プラスして優勝するか,どちらかができていれば中国大会の時点でファイナル進出が確定していた。こういう1ミス・1点の重みを,今シーズンの 樋口 は痛感したに違いない。

 また,ファイナル進出が決定したのは,アメリカ大会で 宮原 が優勝,坂本 が2位に入り,他のファイナル進出候補選手の順位を下げてくれたおかげだった。もし彼らが上位に入らなければ,樋口 はファイナルに進出できなかっただろう。日本選手にサポートしてもらう形でファイナルに進出した 樋口 は,ここで表彰台に乗るか,乗れなくても良いスコアが出せれば,代表選考の際の印象はかなり違っていたはずだが,もらったチャンスを生かすことができなかった。昨シーズンの四大陸選手権,世界選手権に続き国際一線級大会3連続不発となり,この時点で,大舞台に弱い 樋口 を五輪代表にするのは酷だと私は感じた。結局,樋口 が平昌五輪代表を逃し,樋口 のファイナル進出をアシストした 宮原 と 坂本 が代表になったところに,勝負のあやを感じずにはいられない。

 樋口 はシニアデビューの昨シーズン,しきりに「大人の演技をしたい」「表現力を強化したい」と言い続け,ジャンプ等の技術向上と表現力強化の両立を図ろうとしていたが,私はシーズン開始時からその戦略に不安を抱いていた。四大陸選手権と世界選手権で崩れたときには,嫌な予感が当たってしまったと思ったのだが,今シーズンの PCS が伸びたのは昨シーズンの表現力の強化が実を結んだとも言えるので,その戦略の善し悪しは安易には評価できない。しかし,五輪代表落選の現実は,戦略を見直す良い機会になる。樋口 はもっと技術点重視で臨むべきであると私は今でも考えており,ぜひ今シーズンには間に合わなかった 3A(トリプルアクセルジャンプ)をすぐにでも習熟させて,プログラムに華やかさを加えてほしいと願っている。3A 導入の効果は,飛べることのすごさだけではなく,他のジャンプが楽に飛べるようになったり,プログラムに組み込むジャンプの選択肢が広がることにある。このことは,浅田真央 や 紀平梨花 が証明している。3A は必ず 樋口 を強くすると私は信じている。

◆三原舞依

 昨シーズンの四大陸選手権は平昌五輪のリンクの予行,世界選手権は平昌五輪の枠取りという点で,例年より重要度が高かった。そんな2大会で好成績を上げ,さらに国別対抗戦で218点という日本史上最高レベルのスコアを出したこともあり,三原 は平昌五輪代表に相応しいと私は強く感じていた。なので,三原 が代表を逃したことは残念でならない。だが,今シーズン当初から嫌な予感はあった。GPシリーズの対戦カードが厳しかったのだ。三原 は中国大会とフランス大会に出場したが,この2大会は出場者のレベルが他の大会より高かった。とはいえ,両大会とも ザギトワ(ロシア)が出場したので優勝は難しいとしても,両大会で2位ならファイナルに進出でき,これは 三原 の実力ならさほど難しくないミッションのように思われた。

 だが現実は,2大会とも200点を超えながら4位に終わった。2大会とも200点以上を記録した選手で表彰台に立てなかったのは 三原 だけであり,対戦カードの不運に見舞われた。安定した成績を残しながら,代表選考の選択肢にも上がらなかったのは意外としか言いようがないが,今シーズンで1戦でも,SPとFSが両方ノーミスで210点を超えるスコアを出していれば,違った展開になったかもしれない。そこまで突き抜けられなかった原因は,SPでずっとミスが出続けたことだった。SPはタンゴという 三原 には不向きなジャンルにチャレンジし,FSと全く違う世界を魅せることで表現の幅をアピールする作戦だったのかもしれないが,結果論で言えば五輪シーズンに採る戦略としてはリスクが大きかった。三原 はプログラムを体にしみこませ,完全に自分のものになると完成度が上がっていく。昨シーズンの後半はそれがハマったが,今シーズンはタンゴがなかなか体に入り込まなかったのではないか。三原 がタンゴを消化しきれていない,という意見は観る側のブロガーなどからも上がっていたし,ひょっとすると全日本選手権でSPを昨シーズンのプログラムに戻すかもしれないと私は思っていたが,そこまでの荒療治は行われなかった。

 練習ではノーミスで通せていたそうだが,それが大会で発揮できない。そのもどかしさが,全日本選手権ではまさかの 2A(ダブルアクセルジャンプ)転倒という形で出てしまった。練習でできることが本番でなぜかできないという状況は,原因がどこにあるのかわからず,昨シーズンの成功体験とのギャップもあり,モヤモヤしたままシーズンが進んでいったと思う。これがシニアデビュー2年目のジンクスだったのだろう。樋口 も 三原 も,直近2シーズン,日本女子をリードしたにもかかわらず,五輪代表落選という形で課題が突き付けられるのは酷だが,若くしてこのような大きな経験ができたことは必ず今後に生きてくるだろう。2シーズンの活躍が評価され,三原 は四大陸選手権,樋口 は世界選手権の代表に選出された。彼らなら気持ちを切り替えて再スタートを切ってくれることだろう。

◆宮原知子

 宮原 が無事に平昌五輪の代表になり,関係者はホッと胸をなでおろしたことだろう。ソチ五輪後の4年間,全日本選手権を勝ち続け,世界ランキング1位に君臨したこともある 宮原 が,五輪に出場できなければあまりに気の毒だからだ。宮原 は,

  • 2015年 世界選手権:2位
  • 2015年 GPファイナル:2位
  • 2016年 世界選手権:5位
  • 2016年 GPファイナル:2位

と,非常に安定した成績を残していたが,2017年1月に股関節骨折が発覚し,昨シーズン後半は休養を余儀なくされた。昨シーズンは五輪プレシーズンというだけで重圧がかかる上に日程も過密で,四大陸選手権が平昌五輪のリンクでの開催なので出場必須な上に,その翌週に札幌でアジア大会に出場するという,厳しすぎる日程だった。これらを乗り切るために練習過多になったとしても不思議ではない。結局 宮原 は「五輪会場の経験」「アジア大会の盛り上げ」「世界選手権の2年ぶりのメダル獲得」「五輪3枠の維持」これらを何一つ果たすことができず,宮原 陣営は責任を感じていたと思う。ただ,もしアジア大会後に骨折していたら,平昌五輪の出場は絶望的だっただろう。今思えばギリギリのタイミングでのケガだったと言える。

 ケガからの復帰が11月のNHK杯までずれこんだとき,不安はかなり大きかったことだろう。宮原 は豊富な練習量で演技の完成度を上げていく選手なので,ケガが長引き追い込んだ練習ができないことを不安視する声はあった。しかし,復帰後の演技は今までの 宮原 選手とは一味違っていた。今までは,求められる振付を100%実施するという感じだったが,復帰後は,身体の使い方に躍動感が増し,表現が力強くなった印象を受けた。スケートができる喜びにあふれ,休養中にスケート以外で吸収したことが表現に生かされているように感じた。復帰2戦目のアメリカ大会は,ノーミスというレベルではなく完璧な出来で,その演技は神々しさに満ちていた。ここで完璧な演技ができたことで,練習量や試合勘の不安は完全に払拭され,自信を得たに違いない。これで五輪代表入りは間違いないと私は確信した。GPファイナルは,メドベージェワ(ロシア)欠場による繰り上げ出場だったため本気を出さず,全日本選手権にきっちりとピークを持っていった。

 怪我の功名という言葉は,正に 宮原 に当てはまる。練習をハードに追い込まなくても良い演技ができるという経験が得られ,休養を経て表現力が上がったこれらの武器を手に入れた 宮原 は今まで以上に強い。ケガの不安がある メドベージェワ,まだ若く経験値が少ない ザギトワ らが脅威を感じる存在になるだろう。

◆坂本花織

 シンデレラガール,ダークホース,ライジングスター,様々な表現で驚きをもって迎えられた 坂本 の五輪代表選出。だが,GPシリーズをじっくり観戦していた方は,坂本 がポッと出ではないことをご存知だろう。GPシリーズのベストスコアランキング7位,今シーズンの世界ランキング7位と,十分に世界で戦える力を身に付けてきた。全日本選手権の4週間前のアメリカ大会で一気に覚醒したのは,それまでの豊富な実戦経験が花開いたものだった。GPシリーズ前の前哨戦に(多くの選手が1戦のところ)2戦出場。全日本選手権のシード権を持っていなかったため,出場権を得るために国内大会にも出場した。ノーシードでの2位とはお見事であり,マラソンの 川内優輝 ばりに大会に出続けて実戦経験を積んだことが奏功した。

 アメリカ大会の前まで 坂本 のスコアは200点未満が続いていたが,アメリカ大会で一気に世界の一線級である210点に到達した。物事の成長は直線的ではなく階段状である,とよく言われるが,坂本 のスコアの成長はその好例である。なかなか200点の壁を越えられずもがいたと思うが,めげずに実戦をこなしたことで,ちょうどアメリカ大会でジャンプアップできたのだろう。この時の演技は完璧で,特にFSの「アメリ」が素晴らしかった。この演技が全日本選手権でもできれば優勝も夢ではない,本当にそう思うほどだった。それにしても,アメリカ大会でのジャンプアップは,絶妙なタイミングだった。もっと早くスコアが出ていれば,慢心や重圧が生じたかもしれないし,アメリカ大会でスコアが伸びなければ,全日本選手権の好成績がまぐれだと受け取られたかもしれない。全日本選手権でスコア213点を出したことで,2大会連続で210点超えとなりアメリカ大会を上回ったことは,安定と成長を印象付け,五輪代表入りの大きな決め手となったに違いない。

 たまたま直近2大会でスコアが出ただけという見方もできるのだが,樋口 とどちらが代表に相応しいか個人的に検討したブログ記事を書いたとき,様々な観点を書けば書くほど 坂本 が相応しいという気持ちに私は傾いていった。重要な大会(昨季の四大陸選手権・世界選手権,今季のGPファイナル・全日本選手権)の成績が(ノーミス演技を勝ちと考えたとき)樋口:0勝4敗,坂本:1勝0敗であり,この観点では比較しづらいのだが,これだけ大舞台に弱く,2枠に落とした主たる要因だった 樋口 を五輪代表には推しづらかった。一方で,坂本 の経験値が 樋口 より少ないのは事実であり,全日本選手権において,SPトップ&FS最終滑走という状況がなければ,あるいは,もう少しジャンプがふらつくなどしてスコアが210点に届かなければ,坂本 の代表入りはなかったかもしれない。さらには,2人の直接対決は今シーズン1勝1敗(ロシア大会,全日本選手権)。正に「総合的な判断」によって 坂本 が選ばれたのだろう。

◆五輪代表選考のドラマ

 2シーズンに渡って活躍していた 樋口 ではなく,シニアデビューの 坂本 が選出されたことで,それなら始めから全日本選手権一発勝負でよかったのでは?という意見も見られる。わかりやすさという点では一理ある意見だとは思うが,優勝者以外は総合的判断という現在の方式を私は基本的に支持する。まぐれで上位に来た選手の代表入りを防げるのが一番大きな理由だが,他に,国際大会と国内大会の違い,好不調の出やすさ,といったことへの考慮が必要という理由もある。これらの詳細な説明はここでは割愛するが,現在の方式だったからこそ 樋口 が最後まで代表選考の選択肢に残ったのであり,これは妥当な選考過程だったと思う。

 ただ,1つ課題に思うことは,全日本選手権の前に全く代表内定が出ない点だ。現行の方式では,たとえGPファイナルで優勝しても代表が確約されないので,全日本選手権に全力を注がざるを得ない。これはピーキングを非常に難しくするし,GPシリーズからずっと頑張ってきた選手が代表入りすると,それまでの疲労により五輪にベストな状態で臨めないリスクがあると思う。私はGPファイナルのメダリスト(1~3位)は五輪代表内定にすべきだと考えている。もしそのような選考基準であれば,樋口 はGPファイナルの集中度がもっと高くなり,違った結果になったかもしれないと思うのだ。全日本選手権の権威を高めたい気持ちはわからなくもないが,国際大会の経験や成績は五輪で上位に入るために不可欠であり,GPファイナルに出場するにはGPシリーズで良い成績を継続する必要があることから,GPファイナルで内定を出すことは理にかなっていると思う。

 樋口 はGPファイナル6位ではあったが「GPファイナル出場者上位2名」という今回の選考基準を満たした。この基準はソチ五輪の時にはなかったもので,ソチ五輪では「GPファイナルメダリストのうち上位1名」という今回より厳しい基準があった。なぜ今回の基準になったのかについては,ソチ五輪の時の反省があると私は推察する。ソチ五輪の代表選考において,男子シングルの 織田信成 は,GPファイナルで3位に入ったにもかかわらず,羽生結弦 が優勝したため「GPファイナルメダリストのうち上位1名」という選考基準を満たさなかった。そして,織田 は全日本選手権で4位となり「全日本選手権2位・3位」という選考基準も満たさず,結局,代表選考の選択肢に残らなかったのだ。このシーズン,織田 は総じて好調だったので,「GPファイナル出場者上位2名」という選考基準があったら,当時ケガを抱えていた 高橋大輔 ではなく 織田 が選ばれた可能性が高く,結果論で言えば 織田 は五輪の銅メダルを獲れた可能性が十分にあった。今回,樋口 がこの選考基準を満たしたことが選考を悩ませる一因だったわけだが,そこにはこのような過去の反省が生かされていたのである。

 今回の五輪代表選考のドラマは,頑張り続けた 樋口 と急浮上した 坂本 という対照的な2人によって生み出された。樋口 は昨シーズンの世界選手権で2枠陥落の主因となったものの,その悔しさをバネに今シーズンはGPファイナルに出場し,終始,五輪代表争いをリードした。坂本 は国内大会などの地道な実戦がラスト2大会で結実し,全日本選手権で初めて大きな注目を浴びながら見事な演技を魅せた。恵まれているとはいい難い体格ながら高い実力を持ち,しかし肝心な大会でそれを出し切れない 樋口 に,私はもどかしく思いつつ自分を見ているような親近感を覚えた。高い素質がありながら今まで本格的な注目を浴びてこなかった 坂本 が平昌五輪の代表争いに急浮上する姿は,陰ながら応援してきた私としても望外の喜びだった。どちらが選出されても五輪代表に相応しい資質を備えている2人だからこそ,今までで最も難航したとされる五輪代表選考のドラマが生まれたのだと思う。

 五輪代表は 坂本 になったが,世界選手権代表は 坂本 ではなく 樋口 に割り当てられた。フィギュアスケートは,五輪のシーズンにも世界選手権を開催する珍しい形態が採られているが,五輪代表と世界選手権代表でメンバーが変わる例が今まであっただろうか。それだけ 樋口 の功績や実力が高く評価されたことの表れである。昨シーズン2枠に落とした借りを今シーズン返してこい,というメッセージにも読み取れ,見方によっては粋な計らいとも残酷とも解釈できるが,今の 樋口 ならやってくれる気がしている。樋口 本人が発した「倍返し」の物語の始まりに注目したい。

 年が明ければすぐに平昌五輪を迎える宮原メダル争いが目標だが,坂本 にそこまで求めることは無理があり,トップ5に入れば大健闘だ。順位よりも,2人にはミスなく GOE で大きな加点がつくような演技を期待したい。実は,過去のデータを調べてみると,新採点方式になった2006年以降,五輪でSPとFSの両方をノーミスで演技したシングルの日本選手は,男女共に1人もいないのだ。2006年トリノ五輪金メダルの 荒川静香 でさえ,FSで1つジャンプの抜けがあった。2010年バンクーバー五輪5位の 安藤美姫 も良い内容だったが,SPでジャンプの回転不足があった。間違いなく史上最高レベルの大会になるであろう平昌五輪で,宮原 と 坂本 には,ぜひ日本シングル史上初のノーミスを達成し,キスアンドクライで最高の笑顔を見せてほしい

涙の全日本選手権

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログに出稿した記事と同じ内容です。


 五輪シーズンのフィギュアスケート全日本選手権。4年に一度の五輪が絡むので,どうしても張り詰めた空気に覆われてしまいますが,今年は特にいろいろな涙に彩られた大会だった気がします。

◆女子シングル

 FS(Free Skating,フリースケーティング)を終えた後の 宮原知子 選手の涙。この4年間の日本フィギュアスケート界を支え続けたプライド,ケガ明けの不安や恐怖,それに打ち勝った安堵感,それらが凝縮された瞬間でした。無事に平昌五輪代表になった今となっては,正に怪我の功名だったと思います。様々なエピソードが報じられていますが,スケートだけでなく,リハビリでも空いた時間の活動でも,黙々としかし着実に実行していたという話を聞くと,それらの努力が全て今大会のスケートに結実したのだなと思います。

 以前から定評のあった,動作に一切の無駄がなく研ぎ澄まされた表現は,今季のスケートアメリカで神々しさをまとい始め,もう今季はこのまま平昌五輪まで突き進む,そう私は確信しました。その確信どおり,今大会ではスコアを220点に乗せ,高らかに平昌五輪のメダル争いに名乗りを上げました。このスコアでもまだ,SP(Short Program,ショートプログラム)とFSの両方でジャンプの回転不足が1ヶ所ずつあり,他のジャンプでも GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)を伸ばせる余地がありますので,技術点の上乗せだけで225点,演技全体が完璧なら PCS(Program Component Score,演技構成点)もさらに伸びるので,トータル230点も見えてきました。このスコアを出せば確実にメダルに手が届きます。一度は諦めかけた平昌五輪を手繰り寄せた 宮原 選手には,きっと4年間の努力に対するご褒美がある,そう信じたくなる今大会の演技,そして涙でした。

 SPで 宮原 選手をわずかに上回りトップに立った 坂本花織 選手。プログラム「月光」は今までで一番の出来でした。思いのほか高い点数が出て,キスアンドクライで「わ~」と驚きながら存分に喜ぶ姿には,観ているこちらも嬉しくなりました。しかし,急に降って湧いたSPトップで,しかもFSは最終滑走。こうなる可能性を大会前にどれほど想定していたかわかりませんが,五輪シーズンでとてつもないプレッシャーがかかったと思います。

 FSは,冒頭の連続ジャンプで,セカンドジャンプが回転不足になり詰まってしまうあたり緊張が出ていましたが,その次のジャンプが膝を柔らかく使いながらふわっと着氷したのを観て,最後までミスなくできそうな予感がしました。実際にジャンプはミスなく入れることができましたが,「アメリ」というプログラムは最初から最後までパントマイムなどの細かいつなぎが満載で,前の大会に比べつなぎの表現に余裕がないように見えました。それでも 坂本 選手はそれなりに手応えを感じ,宮原 選手に勝てないまでもある程度迫る点数を期待していたようで,キスアンドクライでスコアが出たとき,坂本 選手は「あれっ」という表情を見せていました。スコアが140点にわずかに届かなかったのは,PCS の伸び悩み,冒頭ジャンプの回転不足,3Lz(トリプルルッツジャンプ)のエッジの問題で GOE 加点なし,の3つが原因でした。それでも,伸びしろを残しながらトータル213点を出したということは,GOE で加点された要素も多くあったということであり,ものすごい重圧を思えば見事な演技だったと思います。

 今大会の演技を観た関係者は,坂本 選手の舞台度胸と五輪までの伸びしろを高く評価したのでしょう。坂本 選手に平昌五輪代表の座がめぐってきました。代表争いに関する感想は別途記事を書きたいと思いますが,今大会の演技は 坂本 選手を選びたくなるような内容だったと言えるでしょう。

 年齢制限で平昌五輪の代表争いに巻き込まれなかった 紀平梨花 選手が,3A(トリプルアクセルジャンプ)旋風を巻き起こしなんと表彰台に乗りました。FSだけなら 宮原 選手に次ぐ2位という堂々たる成績で,SPの 3Lz が抜けなければトータルでも2位に入っていた計算です。ジュニアグランプリファイナルに続き 3A は絶好調で,3A+3T(連続ジャンプ:トリプルアクセル→トリプルトウループ)という大技を含め,SPとFS合わせて3本の 3A に成功。しかも単なる成功ではなく3本とも極めて質の高い美しい 3A でした。

 ですが,紀平 選手は 3A だけの選手ではありません。以前のブログ記事でも書きましたが,他のジャンプ,スピン,ステップ,PCS 全てがジュニア離れしています。今回のFSでは3回転ジャンプを8本入れる「8トリプル」に挑み,ジャンプの回転は全て認定されました(1つだけ着氷が乱れたジャンプがあり,その GOE が減点評価だったので「8トリプル成功」ではありません)。代表争いをしていた有力7選手が全員FSで1ヶ所以上回転不足があったことを考えると,回転不足がなかったというのは実はすごいことです。紀平 選手の8トリプルは 3A と 3Lz(トリプルルッツジャンプ)が2本ずつ入り,今大会のFSの技術点は 79.53 点。ちなみに技術点2位は 73.90 点(三原舞依 選手,5.63 点差),グランプリファイナルのFSの技術点トップでも 76.61 点(ザギトワ 選手(ロシア),2.92 点差)なので,この技術点がいかにすごいかがわかります。また PCS も,FSではジュニアの他の選手より3点以上高い 61.76 点を獲得し,スケーティング技術や芸術性でも評価が高いです。まだ15歳で既にこの完成度なので,今後の成長で PCS がもっと上がれば,世界チャンピオンを狙える逸材です。平昌五輪後は,紀平 選手の成長を楽しみたいと思います。

 紀平 選手のFS大躍進によって,4年連続の表彰台を逃してしまったのが 樋口新葉 選手でした。昨年まで3年連続で全日本選手権の表彰台に上り,今年もうまく乗り切るかと思ったのですが,五輪代表がかかる今年は,大舞台の弱さが今大会でも出てしまいました。SPとFSでジャンプが抜けるミスが1本ずつありましたが,これら以外のジャンプはきちんと入れましたし,表現などは気持ちが入っていて PCS は割と高い点数が出ていました。ミスを引きずることなく演技全体をまとめたという点では今シーズンの成長が表れていましたし,今までならこのくらいのスコアでも表彰台に上れたと思いますが,現在の日本のレベルでは2つミスをすればこういう結果になるということでしょう。代表発表時,舞台裏では悔し涙にくれたことと思いますが,これをバネにして今後,より強くなっていくことを期待しています。

 坂本 選手の代表入りを,悔しさと喜びと入り交じりながら受け止めているのが 三原舞依 選手でしょう。私は 三原 選手の逆転代表入りを願っていましたが,SPでまさかの 2A(ダブルアクセルジャンプ)転倒があり,SPの段階で同門後輩の 坂本 選手とかなりの差がついたことで代表入りはほぼ絶望的になってしまいました。それでもFSのプログラム「ガブリエルのオーボエ」は,三原 選手の穏やかで柔らかいスケーティングが素晴らしく,140点に乗せて意地を見せてくれました。演技終了直後の涙には,FSがうまくいったからこそのSPの悔しさ,壁を越えられなかったもどかしさも含まれているように感じました。今季は安定して200点台のスコアを出しながら210点を一度も超えられず,FSも10月のジャパンオープンで出した PCS 70 点,計 142 点に届きませんでした。やはりSPの出遅れのせいか,やや慎重な部分があったようにも感じました。

 SPのプログラム「リベルタンゴ」は今大会でもミスが出て,完成に至りませんでした。三原 選手にとってはチャレンジといえるジャンルで,大丈夫か?という声はシーズン当初からありましたが,結果から判断すればこの賭けは裏目に出たと言えるでしょう。SPの演技が体に入り込む前に今大会を迎え,失敗できないという重圧から,最後のジャンプである 2A のところで綻びになってしまったという感じでしょう。三原 選手はプログラムが体に入り込んでからどんどん完成度が上がっていくタイプで,だからこそ昨季はシーズン後半に好成績を残すことができました。タンゴは 三原 選手の体に入り込むのに時間がかかってしまったのではないでしょうか。今大会はトータルスコア210点超えが2人だけと,スコアの点ではけしてハイレベルではありませんでしたから,三原 選手にも十分チャンスがあっただけに,平昌五輪代表入りを逃したのは残念でなりません。

 本郷理華 選手のSP「カルミナ・ブラーナ」は本当に素晴らしかったですね。今季やや上向いてきたとはいえ,グランプリシリーズもパッとせず,今大会に賭けてきた気持ちが伝わってきました。今までの 本郷 選手の演技は,スケールの大きな演技ができる体格や技術を持ち合わせながら,表現面ではやや凡庸な印象が拭えないところがあったのですが,今大会のSPでは表現しようという意志が観ているこちらにも強く伝わってきました。そこには,4年間日本女子を支えてきたプライド,平昌五輪への強い想い,長久保 コーチの退任など周囲の状況の変化に打ち勝つ気持ち,そういった様々なものが体現されていましたし,観ている私たちもそれを共有したからこそ,強い感動があったのだと思います。FSはベストな演技にはなりませんでしたが,転倒しても全く気持ちを切らすことなく最後まで演じ切った姿には,本郷 選手の強さの一端を観た思いがしました。今大会のような表現の強さがあれば,本郷 選手は再び全盛期を迎えることができると思います。

 本田真凛,白岩優奈 両選手は,シニアデビューの洗礼を受けてしまった,いや,自らそこにハマってしまった印象を受けました。同じシニアデビュー組の 坂本 選手が代表にまで上り詰めた姿を見て,彼らが抱える思いを考えると複雑な気分になります。スケートアメリカで花開いた 坂本 選手を観て「よし自分たちも続くぞ」と彼らは思ったはずですが,今大会の2人からはそういう気持ちの強さが感じられず,ただただ緊張感に包まれていたように見えました。結果として,グランプリシリーズを上回る内容を示すことができませんでした。

 特に 本田 選手の心と体のコントロールが大丈夫なのか,ちょっと心配です。本田 選手のFSの演技を観ていて,逆転のためには開き直るしかない状況なのに,表現が前に出てこない感じがして,ちょっとおかしいと私は感じました。スポーツナビのコラムで 安藤美姫 さんは 本田 選手の演技について「心が離れているように感じた」と表現されていて,私の抱いた感覚はそういうことだったのかと腑に落ちました。逆転といってもほぼ不可能な状況でしたから,気持ちは全力を尽くそうと思っていても,身体が悟ってしまっていたのかもしれません。しかも,同じシニアデビュー組の 坂本 選手が代表の座をつかんだことで「自分にもできたはずなのに」という失意が大きくなっているかもしれません。本田 選手がメンタルダメージを負わないように,心のケアと今後に向けた動機付けに周囲が万全を期してほしいです。

◆男子シングル

 宇野昌磨 選手は,羽生結弦 選手不在でなかなかモチベーションを保つのが難しかったかもしれません。今大会でも 2A+4T(連続ジャンプ:ダブルアクセル→4回転トウループ)を試みるなど,自分に刺激を与えようとしていた気がします。ただ,五輪直前なのに,この場に及んでも何かを試している,というのはやや不安を感じます。この時期は,プログラムを固めてそれを成熟される段階だと思うからです。今大会も300点に届かず,平昌五輪が大丈夫なのか不安に感じている方もいると思いますが,ここは 宇野 選手を信じてみましょう。昨季の世界選手権の見事なピーキングを,平昌五輪でも実行してくれるはずです。

 田中刑事 選手は,実力どおりの代表入りとなりました。驚いたのは,PCS が88点も取れたことで,これは大きな自信になるでしょう。そして,田中 選手の代表入りは,羽生 選手の五輪連覇にとってかなりプラス材料になると思います。羽生 選手にとって,同期であり気心が知れた 田中 選手が近くにいてくれることで,ケガ明けの不安や連覇への重圧がかなり緩和されると思います。

 男子で最も涙を誘ったのは,山本草太 選手ですね。大けがからの復帰で,まだ難しいジャンプを入れられない状況の中,今できるベストの構成をほぼきちんとやり切りました。そして,表現面では以前よりもはるかに力強さが増していました。山本 選手は 本郷 選手と同門生ですから,彼も 長久保 コーチの退任に驚いたのではないかと思います。そういった環境変化,そしてケガ,それらを乗り越えて復帰した自分に今できる最高の演技を観ている皆さんに届けたい,そんな気持ちが強く強く表れる演技でした。多くの観客やテレビ観戦された皆さんが感涙されたと思いますが,それは単に復帰を祝しただけではなく,その強い気持ちがスケートの演技に乗って観る者の心に響いたのです。困難を乗り越え,強い気持ちと表現力を手に入れた 山本 選手の今後から目が離せません。


 全日本選手権の激闘が幕を閉じ,平昌五輪代表が決まり,年が明けるといよいよ五輪モードに突入します。選手の皆さんは,いったん緊張を解き,休息を取り,それぞれの次なる目標に備えてほしいです。今シーズンここまで,実に多くの感動がありました。選手の皆さんの素晴らしいパフォーマンスに,心から拍手を送ります。

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