マイクを持てば酔っぱらい

~カラオケをこよなく愛するITシステムエンジニアのブログ~

2018年をランキングで振り返る

ヒット曲年間チャート>

オリコン:CD売り上げ
https://www.oricon.co.jp/confidence/special/52268/2/

  1. Teacher Teacher / AKB48
  2. センチメンタルトレイン / AKB48
  3. シンクロニシティ / 乃木坂46
  4. ジコチューで行こう! / 乃木坂46
  5. NO WAY MAN / AKB48
  6. ジャーバージャ / AKB48
  7. 帰り道は遠回りしたくなる / 乃木坂46
  8. ガラスを割れ! / 欅坂46
  9. アンビバレント / 欅坂46
  10. シンデレラガール / King & Prince

レコチョク配信
http://recochoku.jp/special/100705/

  1. Lemon / 米津玄師
  2. U.S.A. / DA PUMP
  3. アイノカタチ feat. HIDE(GReeeeN) / MISIA
  4. 瞬き / back number
  5. Hero / 安室奈美恵
  6. LOSER / 米津玄師
  7. あなた / 宇多田ヒカル
  8. さよならエレジー / 菅田将暉
  9. 打上花火 / DAOKO × 米津玄師
  10. アイデア / 星野源

チャート梁山泊
http://www.os.rim.or.jp/~katokiti/anual18.htm
(ザ・ベストテン終了後も独自に同様のチャートを作り続けているすごいサイト)

  1. Lemon / 米津玄師
  2. U.S.A. / DA PUMP
  3. ジコチューで行こう! / 乃木坂46
  4. シンデレラガール / King & Prince
  5. ガラスを割れ! / 欅坂46
  6. アンビバレント / 欅坂46
  7. シンクロニシティ / 乃木坂46
  8. ドラえもん / 星野源
  9. いきなりパンチライン / SKE48
  10. この道を / 小田和正

billboard JAPAN 総合チャート
http://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=hot100_year&year=2018

  1. Lemon / 米津玄師
  2. U.S.A. / DA PUMP
  3. ガラスを割れ! / 欅坂46
  4. 打上花火 / DAOKO × 米津玄師
  5. ドラえもん / 星野源
  6. シンクロニシティ / 乃木坂46
  7. ジコチューで行こう! / 乃木坂46
  8. Candy Pop / TWICE
  9. さよならエレジー / 菅田将暉
  10. Teacher Teacher / AKB48

【寸評】 配信,ザ・ベストテン形式,Billboard JAPAN の1・2位が一致するという珍しい現象が起きました。それだけ「Lemon」「U.S.A.」の2曲が文句なしに今年の代表曲ということですね。ただし,この2曲が年末までヒットし続けた半面,これ以外にはめぼしいヒット曲がないという年でもありました。

 坂道グループ2組(乃木坂46欅坂46)は安定軌道に乗りました。彼らのおかげで,CD売り上げ年間ベスト10の常連だった 嵐 がついにはじき出されました。

カラオケ年間チャート>

DAM
https://www.dkkaraoke.co.jp/news/181115_2.html

  1. Lemon / 米津玄師
  2. 糸 / 中島みゆき
  3. 奏 / スキマスイッチ
  4. さよならエレジー / 菅田将暉
  5. 残酷な天使のテーゼ / 高橋洋子
  6. 小さな恋のうた / MONGOL800
  7. ひまわりの約束 / 秦基博
  8. ハナミズキ / 一青窈
  9. ダンシング・ヒーロー / 荻野目洋子
  10. I LOVE YOU / クリス・ハート

JOYSOUND
https://www.joysound.com/web/s/karaoke/contents/annual_ranking/2018

  1. Lemon / 米津玄師
  2. 糸 / 中島みゆき
  3. 小さな恋のうた / MONGOL800
  4. 残酷な天使のテーゼ / 高橋洋子
  5. さよならエレジー / 菅田将暉
  6. ひまわりの約束 / 秦基博
  7. シャルル / バルーン
  8. ハナミズキ / 一青窈
  9. ダンシング・ヒーロー / 荻野目洋子
  10. アイネクライネ / 米津玄師

【寸評】 カラオケチャートでも「Lemon」がトップを取りました。一方,歌われていそうな「U.S.A.」がトップ10に入っていないのは意外な感じがしますね。他に特筆すべきは,バブリーダンスでリバイバルヒットとなった「ダンシング・ヒーロー」がカラオケでもリバイバルしたことですね。1986年のヒットから32年の時を超えて歌い継がれるなんて,本当に素晴らしいことです。

10大ニュース

◆読売新聞・国内
https://www.yomiuri.co.jp/feature/top10news/20181221-OYT8T50059.html

  1. 平昌五輪で日本は冬季最多13メダル。フィギュア・羽生結弦は連覇
  2. 西日本豪雨、死者220人超
  3. 日大アメフト部選手が危険タックル。スポーツ界で不祥事相次ぐ
  4. テニス・大坂なおみが全米オープン優勝、四大大会で日本人初
  5. 日産・ゴーン会長を逮捕
  6. 北海道で震度7、道内全域で停電
  7. ノーベル生理学・医学賞に本庶氏
  8. オウム松本死刑囚ら元幹部の死刑執行
  9. 大谷翔平、メジャー新人王に
  10. 大型台風襲来、関空が冠水し孤立

◆読売新聞・海外
https://www.yomiuri.co.jp/feature/top10news/20181221-OYT8T50060.html

  1. タイの洞窟で少年ら13人全員救出
  2. 史上初の米朝首脳会談、緊張緩和進む
  3. インドネシア地震・津波、死者2000人以上
  4. 南北首脳会談、朝鮮半島非核化で合意
  5. トルコのサウジ総領事館で記者殺害
  6. 英ヘンリー王子、米女優と挙式
  7. 平昌五輪開幕、韓国と北朝鮮が史上初の合同チーム結成
  8. 米が輸入制限発動、米中摩擦が激化
  9. 米中間選挙。上院共和、下院民主勝利
  10. EU、英離脱協定を正式決定

【寸評】 国内ではスポーツと災害のニュースが多かったですね。6月に(関東で)梅雨が明けるという異常気象には,何か不気味なものを感じます。海外の米中対立,英国EU離脱,仏デモ激化といった政治の先鋭的な動きも,異常気象が人間を狂わせているのではないかと思わずにはいられません。

流行語

◆「現代用語の基礎知識」選ユーキャン新語・流行語大賞 (黄色フォント:大賞)
https://www.jiyu.co.jp/singo/index.php?eid=00035

  • そだねー
  • eスポーツ
  • (大迫)半端ないって
  • おっさんずラブ
  • ご飯論法
  • 災害級の暑さ
  • スーパーボランティア
  • 奈良判定
  • ボーっと生きてんじゃねーよ!
  • #MeToo

坂本花織,全日本女王の座に就く

SakamotoKaori2018JapanChamp フィギュアスケート全日本選手権2018。女子シングルは 坂本花織 選手が初優勝を修めました。新進気鋭の 紀平梨花 選手や,5連覇をめざした 宮原知子 選手を抑え,見事な優勝でした。坂本 選手推しである私も,この2選手を抑えて優勝できるとは正直なところ思っていませんでした。こういう状況でこそ,応援する選手を事前にきちんと話題に上げるべきであり,それができなかった自分をとても恥じております。

 SP(Short Program,ショートプログラム)が 75 点台,FS(Free Skating,フリースケーティング)が 150 点超えは,国内外の試合を通じて初。トータルも初の 220 点超えで一気に 228 点台にまで到達しました。国内大会なのでスコアが甘めに出ることを考慮しても,今回のレベルの演技ならば国際試合でも 220 点を超えるでしょう。これは世界選手権で優勝争いができるレベルです。

 全日本選手権の2週間前に開催されたグランプリファイナルの演技からは,ここまでの飛躍を予想できませんでした。グランプリファイナルでは少しミスがありながら,SP 70 点,FS 141 点と悪くないスコアが出ていたので,全て揃えば 217~8 点はあるかなと思っていました。それが 228 点まで伸びたのですから,得点発表の瞬間,坂本 選手が驚いたのも無理からぬことです。これは,単に全部の要素が成功しただけではなく,演技全体の完成度が一気に上がったからだと考えてよいでしょう。

 今回の全日本選手権の PCS (Program Component Score,演技構成点)は,近年では珍しくやや盛られた印象がありますが,それでも 坂本 選手のFSの PCS 73.25 (5項目平均 9.15)は,演技の印象に対して妥当なスコアだと感じました。グランプリファイナルのFSでは 68.00 (5項目平均 8.50)でしたから,この上積みは見事です。この2週間の間に,振付師 ブノワ・リショー 氏の指導も受け,今シーズン蓄積してきた技術が全日本選手権の場で花開いたのかなと思います。思えば昨シーズン,坂本 選手はグランプリシリーズ最終戦のアメリカ大会で,それまで出せなかったトータル 200 点超えをクリアして一気に 210 点に乗せました。坂本 選手がレベルアップするときは,何試合か実践した後で,ここぞというときに全てがかみ合ってスコアが急伸するのかもしれません。

 今季の 坂本 選手のFSのプログラムである「ピアノレッスン」が,私にはピンときていませんでした。表現したいことが見えてこなかった感じがあったのです。しかし,全日本選手権のFSは,前半の静から後半の動への流れや,音楽との調和が素晴らしく,やや難解にも思える リショー 氏の振付が,ダイナミックさと繊細さを併せ持つ 坂本 選手ならではの表現になっていたのです。坂本 選手は,昨季FSの「アメリ」もそうですが,少し抽象的なテーマでもしっかりと世界観を表現できるところに,稀有な魅力があると思います。

 芸術性を高めたことが PCS 急伸の一因ではあると思うのですが,全日本選手権の 坂本 選手に関しては,ジャンプ・スピン・ステップといった各要素がどれも高いレベルで実施されたことによって,各要素が演技に溶け込み演技全体の完成度が上がったことが芸術性にもつながったのではないか,と私は感じました。元々安定しているジャンプに加え,スピンやステップが,グランプリファイナルのときから格段に質が上がりました。全日本に向けてこれらの細部の仕上がりにこだわった結果だったと思います。

 坂本 選手のジャンプは,今までの日本女子選手には少ない,幅も高さもあるダイナミックさが特徴で,回転不足の不安が全くないことも強みです。Lz (ルッツジャンプ)のエッジ問題(=うまくエッジを体の外側に倒せない)を抱えていますが,グランプリファイナルや全日本選手権ではエッジ違反はありませんでした。ただ Lz は苦手でも,F (フリップジャンプ)はとても安定していて,SPとFSで飛ぶ計3本の 3F (トリプルフリップ)は全て連続ジャンプにして,Lz の苦手分を十分に補っています。SPでは 3Lz を入れずに 3Lo (トリプルループ)を入れていますが,この 3Lo がすごいのです。小刻みの連続ターンの後すぐに飛び,着氷がスーッと伸びた後すぐに次の振付に入るのです。FSでは 3Lo を一番最後のジャンプとして飛ぶのですが,コレオグラフィックシークエンスの一部であるかのように流れの中でパッと飛ぶので,一連の動作がとても美しいのです。3Lo は全日本のSP・FS共に,全審判から GOE (Grade Of Execution,出来ばえ評価)3~5の評価をもらい,他の選手にはない得点源となっています。

 A (アクセルジャンプ)が得意なことも 坂本 選手の大きな武器です。FSでは 2A+3T+2T という3連続ジャンプを,点数が 1.1 倍になる演技時間後半に入れています。また 2A の単独ジャンプは,難しい入り,回転途中で体を開く余裕,着氷後の軌跡の伸びと GOE を上げる要因が詰め込まれています。おそらく(勝手な私の予想ですが)来季には 3A を入れてくるのではないかと思います。3A が成功すればSPでは 80 点超え,FSでは 155 点超えが狙えますので,世界トップレベルのジャンプ構成が実現します。3A を加えると他のジャンプが崩れてしまう選手もいるのですが,坂本 選手は今の 2A の延長で 3A が飛べると思いますので,その心配は要らないと思います。3A を入れた 坂本 選手の演技が本当に楽しみです。

 今回の全日本選手権の 坂本 選手は,スピンの質がとても高くなり驚きました。軸がぶれず高速で安定した回転になっていて,宮原 選手のスピンと比べても遜色ないと思うような出来でした。それは採点にもはっきり現れていて,グランプリファイナルで得たスピンの GOE 加点はSP+FS合計で 5.14 点だったのに対し,全日本では 6.89 点もの加点を獲得しました。さらに言えば,GOE 加点よりも PCS への効果の方が大きかったでしょう。ジャンプが良くてもスピンが今一つだと,演技全体の印象が高まらず,PCS が上がらない場合がありますが,全日本の 坂本 選手はスピンも素晴らしかったことで全体のまとまりが感じられ,それが PCS の上昇を生み出したと考えられます。

 坂本 選手の全日本優勝の要因は,上述してきたジャンプの安定感スピンの質の向上演技全体の完成度と芸術性の向上に加え,他の有力選手にミスが出た中で高いレベルのノーミスを達成し,最終滑走だったこともあって審判が高いスコアを出したものと考えます。ミスのない選手が優勝することは,今シーズンから改定された採点の趣旨にも合致するもので,もし 紀平 選手や 宮原 選手がノーミスなら彼らの方が上位に到達していましたので,その点を考えても実に絶妙なスコアになったと言える結果でした。

 坂本 選手は五輪シーズンの昨季,シニアデビューで五輪代表の座をつかみ五輪で6位入賞を果たしましたが,それがまぐれだとは思われたくなかったでしょう。今季は,グランプリシリーズ2戦表彰台グランプリファイナル出場(4位)ときっちり実績を積み上げ,ついに全日本女王となり初めての世界選手権代表になりました。昨季は五輪代表なのに世界選手権の代表にはなれませんでした。選手の負担軽減と選手出場枠(2枠)の関係で,樋口新葉 選手が世界選手権に出場し銀メダルを獲得しました。五輪6位もすごいことですが,坂本 選手は世界選手権でのメダル獲得を熱望していることでしょう。そのチャンスを,紀平・宮原 両選手という強敵を破り,自力でものにしたことは大いなる自信になったと思います。

 全日本選手権で自信を得た 坂本花織 選手,グランプリファイナル優勝で自信を得た 紀平梨花 選手,実力・実績十分の 宮原知子 選手の3選手は,歴代で見ても女子シングル最強の布陣と言っていいでしょう。3月の世界選手権は日本開催であり地の利もあります。ロシア勢が盤石とは言えない今季ですから,2007年の 安藤美姫・浅田真央 以来の日本選手1-2フィニッシュ,さらには表彰台独占という偉業の可能性すら出てきました。今シーズン後半の大会も非常に楽しみです。

紀平梨花,グランプリファイナル制覇,次は全日本選手権 【スポーツ雑誌風】

KihiraRika2018GPF フィギュアスケート・グランプリファイナル(以下 GPF)開催から1週間。やっと感想が書ける時間が取れました。いや~,やってくれました,紀平梨花 選手! シニアデビューシーズンのファイナル優勝は 浅田真央 さん以来ですが,シリーズ3連勝(日本大会:NHK杯,フランス大会,GPF)は男女を通じて日本選手史上初の快挙となりました。書いてみたらかなりくどくなってしまった(笑)ので,雑誌記事アレンジにしてみます。


 FS(Free Skating,フリースケーティング)は,SP(Short Program,ショートプログラム)終了時に私が予想したとおり,3A(トリプルアクセルジャンプ)を1本綺麗に決めた 紀平梨花 が,FSだけ見ても ザギトワ (ロシア)に勝利し,SP・FS共に1位の完全優勝となった。正直なところ,3A が1本しか決まらなければ,FSでは負けてもSPの貯金で勝つ,と思っていたので,3A が1本なのにFSも勝てたのは驚きだった。

 3A を1本ミスしても勝ったということで,ザギトワ が本調子ではなかったからだと思っている方もいるかもしれないが,そうではない。ジャンプ・スピン等個々の要素の完成度を示す GOE(Grade Of Execution,出来ばえ)による加点の合計は,ザギトワ が 14.76 点。これは 紀平 の 14.56 点より高く,ザギトワ の今季のグランプリシリーズ2戦よりも高い加点だ。また,PCS(Program Component Score,演技構成点)も5項目平均9点台に乗せており,個々の要素および演技全体の完成度はけして悪くなかった。

 ザギトワ のFSでは,3Lz+3T(連続ジャンプ:トリプルルッツ→トリプルトウループ)の予定が 3Lz+1T になってしまったので,基礎点が 3.8 点減り,GOE 加点も 0.34 点しか得られなかった。グランプリシリーズ2戦では共に,3Lz+3T で 1.77 点の加点(GOE 平均= +3 )を得ているので,3Lz+3T が成功すれば 3.8+(1.77-0.34)= 5.23 点上乗せされる計算になる。しかし,GPF の ザギトワ はSP+FSトータルで 紀平 に 6.59 点の差をつけられており,その上乗せだけでは逆転できなかったのである(PCS が伸びれば逆転したかもしれないが 1.4 点の伸びが必要)。全要素成功の ザギトワ が,3A で1ミスの 紀平 に負ける計算であり,これは ザギトワ の調子云々ではなく,完全に力負けであることを示している。

 今後,ザギトワ が絶好調ならば,紀平 といい勝負になるだろう。しかし,それは 紀平 がほどほどの出来ならばの話で,紀平 も絶好調だと勝ち目がない,ということが今回の GPF ではっきりした。現在のジャンプ構成のままでは,ザギトワ は 紀平 のミス待ちにならざるを得ない。ザギトワ 陣営はなかなか策が打てない状況に陥ってしまったと言っていいだろう。

 この状況で思い出すのは,ケガから復帰した メドベージェワ (ロシア)が,シニアデビューの ザギトワ に力負けした,昨シーズンのヨーロッパ選手権だ。このとき,ザギトワ の PCS が急伸して メドベージェワ 先輩を追い抜いたが,今回の GPF でシニアデビューの 紀平 も PCS が急伸しており,「シニアデビュー選手が PCS を急伸して追い抜く」という点で類似しているのだ。1年前は追い抜く立場だった ザギトワ が,今度は追い抜かれる立場に立たされたわけだ。1年前の ザギトワ は,ヨーロッパ選手権の勢いそのままに,平昌五輪の金メダルを手にした。追い抜く者のエネルギーの強さを自ら体感した彼女が,追い抜かれた立場で今シーズンのこれからをどう巻き返していくのか,注目していきたい。

 ここまで ザギトワ 目線だったので,紀平 の目線で見ていこう。GPF という注目度の高い大会で,SP 82 点,FS 150 点で優勝を手にするという,最高の結果だったと思う。私はつい前回の記事で「FS 160 点もあるかも」などと煽ってしまったが,内心ではまず不可能だなと思っていた。ところが,GPF の 紀平 のFSのスコアは,失敗した 3A がもし成功していたら本当に 160 点に到達していたという内容だったので,本当に驚いた。160 点の可能性が十分に感じられる 150 点であり 紀平 陣営はかなり満足していると思う。

 ジャンプを1つミスしても 150 点とは,恐ろしいスコアである。しかもそのミスは,小ミスではなく大ミスだった。冒頭の 3A は不完全で,半回転以上回転が足りなかった。基礎点が減点される「回転不足」は,回転が90度(1/4回転)以上180度(半回転)未満の範囲で不足することを指すが,半回転以上回転が足りないと「ダウングレード」という判定になり,基礎点が 2A の点数しか得られない。しかも着氷の仕方も悪かったため GOE が最低評価になってしまい,ダウングレード & GOE 最低という,回転不足で転倒するよりも大きな減点になってしまった。これだけで,単独の 3A と比べ8点以上点数を落とすことになった。もっと正確に言えば,最初のジャンプは 3A+3T の予定だったので,12点ほど点数を落としたことになるのである。

 ミスの仕方が悪かったことから,普通ならかなり精神的なダメージを受けるところだが,ニュースでも報じられたように,ここから 紀平 が驚異的な修正対応力を発揮していく。次の 3A は,直前に失敗したのだからただ飛ぶだけでも尋常でない緊張感に襲われるはず。しかもこの 3A は「連続ジャンプにしたい」ではなく「連続ジャンプにしなければならない」ジャンプだった。もし単独ジャンプにしてしまうと「同じ種類の単独ジャンプは1回まで」というルールにより基礎点が 0.7 倍に減点され,それに伴って GOE 加点も小さくなってしまうからである。

 紀平 は 3A を飛び着氷したが,完璧な着氷ではなかったため,セカンドジャンプが予定の +3T ではなく +2T になった。テレビ中継を観た印象では,+3T を付けようと考えていたものの,身体が反射的に +2T を選んだように見えた。+3T を付けてリカバーしたいという気持ちが強すぎると,思考と動作がかみ合わずに失敗したり回転が抜けたりするものだが,ここで冷静に +2T を付けられるのが 紀平 の身体能力のすごさなのだ。このジャンプを失敗すれば優勝を逃していたので,このジャンプによって彼女自身,これでまだ勝負ができると思ったことだろう。

 次のハイライトが,ステップの後に飛ぶ演技時間後半最初の 3Lz からの連続ジャンプだった。セカンドジャンプの予定は +2T だったが,3A に +2T を付けたことから,ここは +3T にしなければならなかった。もしここも +2T にしてしまうと「同じ種類のジャンプは2本まで」というルールがあるので,後で飛ぶ3連続ジャンプのセカンドジャンプを3回転(3→3→2回転の3連続ジャンプ)にするリカバーが必要になるが,演技終盤の3連続ジャンプのセカンド3回転は,紀平 と言えどもリスクが高すぎる。この場面,3Lz+3T を絶対に成功させる必要があったのである。

 女子では苦手な選手も多い 3Lz を,比較的短い助走から重心を外側にかける正しい飛び方で踏み切り,幅のあるジャンプで綺麗に着氷。そのまま続けて高さのある +3T を飛び,着氷後もスーッと軌跡が伸びていった。これぞ 3A の次に難しい 3Lz も得意とする 紀平 の真骨頂。後半最初の 3Lz+3T が鮮やかに決まり,観客の拍手がひときわ大きくなったように感じた。この連続ジャンプの成功で,紀平 は優勝の目が出てきたと思っただろう。その後,点数が 1.1 倍になる3回のジャンプをきっちり決めたのも,紀平 のスタミナと,チャンスをつかむメンタルの強さの表れだった。ジュニアの頃は大崩れも珍しくなかったことを思うと,メンタルの急成長が今回の快挙を生んだ大きな要因だろう。

 演技が終わっても,紀平 には優勝の確信はなかったはずだ。SPの貯金を使ってギリギリで勝てるかどうか…そんな気持ちだったことだろう。ところが,発表された点数は 150 点台。FSでも ザギトワ を上回ったことは,望外の喜びだったと思う。FSでも決め手になったのは PCS。70 点(5項目平均 8.75)に届けば…という私の予想を超え,いきなり 72 点台に乗せた。72 点は PCS の評価項目5項目平均9点であり,スケーティングや表現力などの総合力が超一流であることを示すものだ。この点数は ザギトワ とほぼ同じ点数であり,SPとFSの両方で 紀平 の PCS が ザギトワ に肩を並べたことになった。

 PCS は客観的評価が難しく,実は審判も探り探り採点しているのではないだろうか。過去に記録した PCS が審判の頭にあり,進歩が感じられると PCS が上がっていくのだと思う。だから,同じ選手の PCS が試合によってコロコロ変わることはなく,一度高い PCS が出ると,短期間で急激に低下することはないと思われる。GPF で PCS を引き上げた 紀平 は,今後は悪くても5項目平均 8.75(SP 35 点,FS 70 点),良い演技なら9点(SP 36 点,FS 72 点)以上をコンスタントに記録していくと思う。

 この PCS の急伸こそ,一流選手が一堂に会する GPF に出場した 紀平 にとっての最大の収穫だ。今季,SPは5項目平均8点そこそこ,FSでも 8.5 点には届いていなかったレベルから,GPF で 8.8~9点に引き上がったのは,他の選手と同時に観た審判が 紀平 をトップレベルと認めざるを得なかったからだと思う。シニアデビューシーズンの GPF で(5項目平均)9点に乗せたのは,2015年の メドベージェワ 以来であり,紀平 が同等の評価を得たことはものすごいことだと感じる。ご存じのとおり,メドベージェワ はそこから一気に世界女王へと上り詰め,世界選手権2連覇,3年間全試合2位以内という驚異的な戦績を修めた。ということは,紀平 に世界女王や五輪でのメダル争いを今から期待することは,早すぎることではなくむしろ当然のことだと思うのだ。

 基礎点が最強でありながら GOE も高く PCS もトップクラスに到達。SP出遅れから逆転する爆発力(日本大会),3A を封印しても勝ち切れる総合力(フランス大会),極限での対応力と勝負度胸(GPF)。これだけの様々なドラマを生み出し,なおかつ勝ち運も持っているシニアデビュー選手。世界のフィギュアスケート関係者が驚嘆・絶賛し,ロシアのスケート界やメディアに脅威を与える選手。これが 紀平梨花 なのである。

 彼女は今,女子シングルに立ちはだかっていた重い扉を開け放った。五輪金メダリストで見ると,バンクーバー五輪 キム・ヨナ(韓国) 228 点から平昌五輪 ザギトワ 239 点まで,8年間でスコアは11点しか伸びていない。3A を飛ぶ選手は少なく,3→3回転の連続ジャンプが得点源という時代が長く続き,その間,スコアの飛躍的な上昇はなく,GOE や PCS を高めることが主な戦略だった。3A と 3→3回転連続ジャンプの両方を高い完成度で使いこなす 紀平 がその重い扉を開け,男子で起こったような技術開発やスコアの上昇が本格化しそうだ。紀平 の活躍が刺激となり,多くの女子選手が 3A や4回転ジャンプへの挑戦に踏み出している。紀平 自身も4回転の挑戦を明言し,他の選手が追いつく前にさらなる高みをめざそうとしている。北京五輪に向けて,女子シングルが競技の面で活性化することは間違いなく,紀平 はその象徴的な存在になるだろう。

 さて,今週末は全日本選手権である。日本大会(NHK杯)から始まった1ヶ月半にわたる 紀平 の快進撃の第一幕が,いよいよクライマックスを迎える。日本大会 → フランス大会 → GPF → 全日本 が同じ隔週の間隔で続き,良いリズムができているのではないかと思う。GPF を制覇した自信はとてつもなく大きく,周囲の注目度といったマイナス面などあっさり跳ね除けるだろう。昨年,紀平 は五輪代表選考の張り詰めた空気の中,全日本3位となり表彰台に上がっており,全日本独特の緊張感も経験済みだ。むしろ,シニアデビューの選手には負けられないと,他の選手たちの方がプレッシャーを感じているのではないか。トップスケーターへの階段を駆け上ってきた 紀平 が,デビュー4連勝でトップスケーターの頂に上り詰める可能性が極めて高い

 国内大会なので公式記録にはならないが,GPF でお預けとなったトータル 240 点という新歴代最高得点への期待もかかる。しかし,そこまで高望みするのではなく,そのスコアは世界選手権まで取っておくことにして,まずは練習チームの先輩である 宮原知子 が完璧な演技を披露し,2人で優勝争いを演じて「日本女子Wエースの誕生」…これが最高のシナリオだと私は思う。 (選手敬称略)

グランプリファイナル: 紀平梨花 の優勝は確実,トータル240点届く可能性大

 フィギュアスケート・グランプリファイナル(以下 GPF)の女子シングル。SP(Short Program,ショートプログラム)でついに完璧な演技を披露した 紀平梨花 選手が,ザギトワ 選手(ロシア)に 4.5 点の差をつけトップに立ちました。紀平 選手に失敗がなければ ザギトワ 選手を上回ることは十分予想できましたが,ザギトワ 選手がノーミスにもかかわらず 4.5 点も差をつけたのには驚きました。

 この点差の理由は,紀平 選手の GOE(Grade Of Execution,出来ばえ)加点の高さだけではありません。演技全体の評価である PCS(Program Component Score,演技構成点)が大きく影響しています。私は過去のブログで,

GPF は,結果もさることながら,錚々たる一流選手と同じ試合に出場することに意味があると私は考えています。他の選手と同時に見れば,審判は「他の選手と比べても遜色ないスケートだ」と感じると思うので,そうなると PCS が一気に伸びる可能性があると思っています。

と書きましたが,SPは正にそのとおりの展開になりました。グランプリシリーズ2戦のSPの PCS ベストスコアを比べると,

  •  紀平:32.19 (日本大会) vs ザギトワ:37.25 (ロシア大会) 《点差:5.06

ですが,今回の GPF の PCS は,

  •  紀平:35.15 vs ザギトワ:35.83 《点差:0.68

になりましたから,PCS の差を詰めた分がほぼSPの得点差になった計算になります。逆に言えば,紀平 選手の PCS の伸びがなければ,ここまで点差は開かなかったはずです。

 「2人の演技を同時に見たら,審判は 紀平 選手の PCS を引き上げる」という読みはSPで現実になりました。PCS の差を技術点で埋める戦略を採る 紀平 選手が,PCS をこれだけ詰められれば鬼に金棒です。これはFS(Free Skating,フリースケーティング)でも起きるでしょう。紀平 選手のFSの PCS は,良い演技ならば 70 点に届くと思います。これは,NHK杯から 2.5 点の上積みになる計算です。

 ザギトワ 選手が持つ新歴代最高点を超えるトータル 240 点に届くには,FSで 157.5 点が必要ですが,NHK杯の 紀平 選手のFSが 154.72 点なので,あと 2.8 点上積みすればよく,上述した PCS の上積み 2.5 点でほぼ埋めることができます。しかもFSは 紀平 選手が最終滑走。最終滑走で良い演技をすると PCS がさらに上がり,まさかのFS 160 点で圧勝という可能性すら出てきました。ものすごいシーンを観ることができるかもしれません。

 そこまで完璧でなくても,いくつかの状況を考え合わせると,既に ザギトワ 選手との勝負はついたも同然です。3A(トリプルアクセルジャンプ)を2本とも失敗すると苦しいですが,1本綺麗なジャンプが決まれば優勝すると思います。とにかく「4.5 点差」と「PCS の点差の拮抗」は驚異的で,ザギトワ 選手は,自身がノーミスで乗り切り,紀平 選手の大崩れを待つしかない状況に追い込まれたと言っていいでしょう。

 紀平 選手が優勝すれば十分すごいことなんですが,これだけのSPを観た後では,単なる優勝ではもったいないとつい贅沢な気持ちになりますね。完璧なFSと新歴代最高点で,紀平 時代の到来を告げてほしいと期待しています。日曜日の午前中には結果がわかりますので,すごい結果が出たら日曜夜のテレビ観戦を楽しみたいと思います。

フランス大会で決まるグランプリファイナル進出者

《追記》 サモドゥロア 選手(ロシア)のファイナル進出の可能性に全く言及しておりませんでした。後付けですが,修正いたしました。実は テネル 選手(米)にも可能性がありこちらも書き損ねておりましたが,条件が複雑になり過ぎるので省略したままといたします。 (2018/11/27)

 今週末のフィギュアスケートグランプリシリーズ(以下,GP)フランス大会は,出場選手に関して見どころが多いのですが,フランス大会の結果によってグランプリファイナル進出者が決まるので,特に進出者の候補が多い女子に関して,結果が進出者をどう変えるのか見てみます。

 女子で既にファイナル進出が決定しているのは,宮原知子 選手,ザギトワトゥクタミシェワ の両ロシア選手の3名です。残り3枠を争うのは,既に2戦を終えている 坂本花織 選手,サモドゥロア 選手(ロシア)と,フランス大会に出場する 紀平梨花三原舞依 の両日本人選手,さらに メドベージェワコンスタンティノワ の両ロシア選手の6名に絞られたと見てよいでしょう。

 ファイナル進出の可能性があるフランス大会出場各選手について,自力で進出するための条件は以下のとおりです。

【紀平 選手】 4位以上
【三原 選手】 優勝
【メドベージェワ 選手】 1位 or 2位でスコアが 213.42 以上
【コンスタンティノワ 選手】 1位 or 2位

 他力本願で進出する条件はかなり複雑です。上記4選手がトップ4に入る前提で表にまとめてみました。緑色の網掛けファイナル進出者赤の網掛け順位同点でスコア次第となるケースです。表の並び順は,まず メドベージェワ 選手の順位の順に並べ,さらに コンスタンティノワ 選手の順位の順に並べています。

1位2位3位4位スコア条件
メドコン紀平三原


メドコン三原紀平


メド紀平コン三原コン≧213.76,未満⇒坂本
メド三原コン紀平コン≧213.76,未満⇒坂本
メド紀平三原コン
坂本
メド三原紀平コン
坂本
コンメド紀平三原メド≧213.42,未満⇒坂本
コンメド三原紀平メド≧213.42,未満⇒坂本
紀平メドコン三原コン≧213.76,未満⇒坂本
三原メドコン紀平メド≧213.42,未満⇒坂本
紀平メド三原コン
坂本
三原メド紀平コンメド≧213.42,未満⇒坂本
コン紀平メド三原
坂本
コン三原メド紀平
坂本
紀平コンメド三原
坂本
三原コンメド紀平


紀平三原メドコン
坂本サモ
三原紀平メドコン
坂本
コン紀平三原メド
坂本
コン三原紀平メド
坂本
紀平コン三原メド
坂本
三原コン紀平メド


紀平三原コンメド(省略)
坂本サモ
三原紀平コンメドコン≧213.76,未満⇒坂本

 最も可能性が高い順位は,1.紀平 2.メド 3.三原1.メド 2.紀平 3.三原 でしょう。これなら 坂本 選手はファイナルに進出できます。また,表を見ると,かなりの組み合わせで 坂本 選手は進出できることがわかると思います。詳しく見ると,坂本 選手が進出できない条件が発生する確率は低いと考えられるので,坂本 選手のファイナル進出はかなり濃厚と見ていいと思います。ただ,紀平・三原 両選手が3位以下となり,ロシア勢の1-2フィニッシュを許してしまうと,坂本 選手の進出は難しくなります。紀平 選手は,自身のファイナル進出はほぼ確実ですが,上位に入ることで 坂本 選手をアシストしてほしいです。

 日本選手にとって最も良い結果は,1.紀平 2.三原 3.メド1.三原 2.紀平 3.メド,つまり日本勢の1-2フィニッシュです。これ後者が実際に起これば,日本は 宮原,紀平,三原,坂本 の4選手進出となります。メドベージェワ 選手は今季,本調子ではありませんので,この順位は狙える順位です。紀平 選手が2戦目も覚醒し続けるのか,三原 選手が完璧な演技で逆転のファイナル進出を手繰り寄せるのか,フランス大会が本当に楽しみです。

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