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フランス大会(フランス国際,グランプリシリーズ第5戦)プレビュー

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 ほとんどの選手がシリーズ2戦目になり,1戦目からどう伸びてくるか,グランプリファイナル進出がどうなるか,というところが注目点になります。

◆男子シングル

 宇野昌磨 選手は,よほどの大崩れがなければファイナル進出は間違いないので,今大会も調整の色合いが強くなるでしょう。ジャンプも 4S(4回転サルコウジャンプ)は入れず,4F,4Lo,4T(フリップ,ループ,トウループの各4回転ジャンプ)の3種類になりそうです。地元の名古屋で開催されるファイナルで,羽生結弦 選手が欠場するとなれば,堂々と優勝を狙える状況ですので,そこにピークを持ってくるため,今大会はとにかくミスなく全体を整えることを意識すると思います。トータル300点に乗せて,安定感をアピールしたいところでしょう。

 ハビエル・フェルナンデス 選手(スペイン)は,中国大会まさかの6位でファイナルは絶望的ですが,優勝すればわずかに可能性が出てきます。とはいえ,ファイナル云々ではなく,自身の調子を上げることに尽きると思いますので,自国に近いフランスでどこまで戻せるかに注目したいです。1ミス程度で全体がうまくまとまれば復調したとみていいと思いますが,3ミス以上あるようだと五輪のメダルはかなり厳しくなるでしょう。

 今大会の男子は無風のはずが一変,ファイナル進出の鍵を握る大会になりました。アーロン(米),ビチェンコ(イスラエル),サマリン(ロシア),ヴィンセント・ジョウ(米)の各選手は,2位以内に入ればファイナル進出の可能性が出てくるので,かなり気持ちを入れて臨んでくるでしょう。中でも私は,ジョウ 選手が 4Lz(4回転ルッツジャンプ)を武器に若さと勢いで上がってくると期待しています。もし ジョウ 選手がファイナルに出場することになれば,世代交代を印象付けるものになるでしょう。

◆女子シングル

 メンバー発表の時点から,このフランス大会が鍵を握ると予想していましたが,そのとおりの展開になっています。三原舞依,ザギトワ(ロシア),オズモンド(カナダ),ソツコワ(ロシア)の4選手の対戦は,今年のシリーズで最もハイレベルな戦いになると思います。三原 選手は優勝すればファイナル進出をほぼ手中にできるので,今大会に賭けていると思います。SP(Short Program,ショートプログラム)の「リベルタンゴ」がどこまで仕上がるかが注目点ですが,昨季経験したここ一番の集中力が今大会で出れば,優勝の可能性はかなりあると私は思っています。ものすごい完成度の演技が観られるのではないかとワクワクしています。

 ソツコワ 選手は2位以内ならファイナル進出確定ですが,3位だとほぼ無理なので,2位以内を狙うことになりますが,三原 選手の優勝よりも難しいミッションだと思います。ただ,カナダ大会がトータル200点に届かなかったこともあり評価があまり高くありませんが,今季のプログラムは ソツコワ 選手にピッタリはまっているので,ジャンプの回転不足が解消して完璧に演技できれば,トータル215点くらい届く力はあり,ドラマが起きるかもしれません。

 ザギトワオズモンド の両選手は3位以内でファイナル決定,4位でもほぼ大丈夫なので,大崩れさえなければファイナル進出はできます。しかし,2人とも前の大会でミスが出たので,今大会は全体をノーミスでまとめたいと考えているでしょう。2人がノーミスで演技すると,三原,ソツコワ の両選手が2人を超えるのはかなり困難でしょう。

 私は,三原,ザギトワ,オズモンド の3選手が220点近いスコアで僅差の勝負になると予想します。ソツコワ 選手も210点に届くのではないかと思います。210点で表彰台に乗れないという,とんでもなくレベルの高い大会になるのではと楽しみにしています。

友野 男子3枠目に急浮上【日本大会感想】

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 羽生結弦 選手の直前欠場は,これが五輪でなくて良かったと前向きに捉えようとする方が多いと思いますが,私は最悪のタイミングのケガだと感じます。NHK杯の観客をガッカリさせ,欠員補充で他の選手にチャンスを授けることもできず,ファイナル5連覇の偉業を達成できず,五輪への調整にも当然影響が出ます。私は 羽生 選手の五輪2連覇は確実と当ブログに書きましたが,それはケガなしが前提であり,ケガをしてしまった今となっては五輪連覇は黄信号と言わざるを得ません。こういう逆境に強い 羽生 選手なので,やってくれるだろうという思いはありつつも,過大な期待をせずに辛抱強く見守りたいと思います。

 羽生 選手の欠場で優勝確実だったにもかかわらず,それがかえって演技を難しくしたのか,表彰台さえも逃してしまった ジェイソン・ブラウン 選手(米)。最近 3A(トリプルアクセルジャンプ)は安定していたのですが,今大会のFS(Free Skating,フリースケーティング)では2本とも乱れました。4回転が1本入るかどうかの ブラウン 選手にとって,3A は生命線ですので,もっと精度を高めてほしいです。羽生 選手へのメッセージを得意の日本語で書いてくれた心優しき ブラウン 選手には,ぜひグランプリファイナルに出場して再度来日してほしいですが,他の選手次第でありどうなるでしょうか。

 優勝したのは,なんと出場者最年長の セルゲイ・ボロノフ 選手(ロシア)。ジャンプが絶好調で,無駄な力を使わずに高く跳躍し,余裕をもって着氷する美しいジャンプを連発していました。このジャンプの好調を維持できれば,ロシア五輪代表の2枠目に入ると思います。30歳でこのように活躍できることが本当に素晴らしいですね。

 2位:リッポン 選手(米),3位:ビチェンコ 選手(イスラエル)と,表彰台に乗ったのが出場者の年長者3人(30,29,28歳)というベテラン健在な結果となりました。4Lz(4回転ルッツジャンプ)にいち早く挑戦していた リッポン 選手の 4Lz は,3回転と間違えそうになるほど回転がゆっくりで優雅な雰囲気があり,他の選手の 4Lz と一味違いますね。リッポン 選手は,ファイナル進出も米国代表入りも当落線上にいるので緊張感が続きますが,それが 4Lz の完成度を上げることになるでしょう。

 村上大介 選手の肺炎で代理出場となった 友野一希 選手は,国内大会からの連闘とは思えないほど躍動していましたね。表現しようという気持ちが前面に出ていましたし,3A が得点源になりスコアも出ました。正直なところ,田中刑事,無良崇人 両選手がパッとせず,しかも若さ溢れる楽しいプログラムに仕上がっているので,私は代表3人目に 友野 選手を推そうと決めました(笑)。

 宮原知子 選手は,復帰戦ということを考えれば申し分ない出来で,特に表現面では以前よりもさらに柔らかく自然な上半身の動きが増え,作り込んだ表現というよりは,あふれ出る表現になっていたと思います。しかし,いきなりのトップギアとはならず,5位に終わったのでファイナル進出はないでしょう。実戦が減るのは痛いですが,ファイナル出場なら全日本選手権まで3戦連続で中1週というハードスケジュールだったので,全日本選手権の前に中3週空くのは調整にはプラスと考えたいです。

 本郷理華 選手は,前回のカナダ大会より洗練されてきましたが,ジャンプの回転不足がまだ残っていますね。演目は本当に素晴らしいですし,ステップはとても躍動感が出てきましたので,全日本選手権ではクリーンなジャンプで勝負してほしいです。

 白岩優奈 選手は,テレビ画面でもはっきりとわかるほど緊張していましたね。他のシニアデビュー組である 坂本花織,本田真凛 の両選手もそうでしたが,演技そのものは十分にシニアでやれる力を持っていても,メンタル面では「怖いもの知らずで突き進む」という舞台度胸が発揮できなかったようです。それでも,白岩 選手は地元である大阪のNHK杯でシニアデビューを飾れたので,良い経験になったと思います。

 メドベージェワ 選手(ロシア)が,FSでは珍しく,しかも冒頭のジャンプで転倒しました。2回目のジャンプも乱れ,大崩れするのか…と少し心配しましたが,後半は立て直しました。ロシア大会でもFSでジャンプ転倒があり,今季のFSは完全な演技ができていません。五輪シーズンの重圧は確実に彼女にものしかかっています。現時点では,1ミスでは誰も追いつけませんが,他の選手がレベルを上げて「1ミスだと負けるかもしれない」という状況を作れば,そのプレッシャーから メドベージェワ 選手と言えどもミスの確率が高まるかもしれません。

 ロシア大会で2位だったものの,その完成度が維持できるのか私が確信できなかった カロリーナ・コストナー 選手(イタリア)ですが,今季の完成度は本物ですね。3位以下なら 樋口新葉 選手のファイナル出場がグッと近づいたのですが,2位をキープし コストナー 選手が先にファイナル出場を決めました。スケーティングや全体の完成度が今季は特に研ぎ澄まされ,トップ選手の多くが10代の中,成熟した存在感でこれぞフィギュアスケートという演技を魅せてくれると思います。

 ようやく本格シニアデビューを果たした ポリーナ・ツルスカヤ 選手(ロシア)は,いきなりのトータル210点で表彰台に乗りました。本田真凛 選手が世界ジュニアチャンピオンになった大会で,FS直前でケガをする不運に見舞われ棄権しましたが,ケガがなければチャンピオンの大本命だった,その実力どおりの演技でした。私も久しぶりに観ましたが,ジャンプの幅と高さが非常に大きく,身体の大きさを生かしたスケールの大きい演技が圧巻でした。メドベージェワ,ザギトワ 両選手と同じ,エテリ・トゥトベリーゼ コーチなので技術もしっかりしており,今大会の印象からすると,ロシア女子の3枠を同コーチ門下の3選手で占めてしまうことも十分にあり得ると感じました。

 比較的穏やかな大会となるはずが,羽生 選手負傷,ブラウン 選手や 宮原 選手が表彰台に乗らないなど,ドラマの多い大会となりました。日本勢にとって厳しい大会になってしまいましたが,友野 選手の今後がとても楽しみになったことが収穫でした。

日本大会(NHK杯,グランプリシリーズ第4戦)プレビュー

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 ここ数年はシリーズ最終戦だったNHK杯が,今年は4戦目に設定されました。メンバーの面では先週の中国大会や来週のフランス大会より穏やかな感じで,息詰まる争いというよりは各選手のスケートを堪能できる,そんな大会になるだろうと思います。NHK が放送するということもあり,全ての競技とエキシビションを生放送してくれるのもありがたいですね。

◆男子シングル

 羽生結弦 選手がシリーズ2戦目を迎えます。強敵がいない状況だと張り合いがなくなって平凡な結果に終わるということも珍しくない 羽生 選手ですが,日本での大会なのでそういうことにはならないと思います。ここである程度の形を作って,グランプリファイナルでいったん完成形を作る,という感じで調整してくると思います。

 私が好きなのはSP(Short Program,ショートプログラム)です。ピアノの美しい旋律に乗せた端正な演技は,羽生 選手にしか表現できない世界。普通に滑る局面でも,スケートで氷を蹴る1歩1歩を観てください。その1歩1歩が逐一ピアノの旋律と合っていて,これほどまでに緻密なプログラムを私は観たことがありません。こういうプログラムなので,全てが決まると高い PCS(Program Component Score,演技構成点)が出るのだと思います。SPが完璧に決まって110点が出るところを観たいですね。

・・・でも,前日練習で負傷との情報。どうなりますか…。

 パトリック・チャン 選手(カナダ)は調整,村上大介 選手は肺炎でキャンセルとのことで残念ですが,その代わりに 友野一希 選手に出番が回ってきました。シニアデビューですがこのところ急成長しているとのことなので,初めてのグランプリシリーズでどんな演技を披露してくれるのか,とても楽しみです。

 チャン 選手の欠場によって,ジェイソン・ブラウン 選手(米)はファイナル出場を確定させるチャンスが巡ってきました。2位で確定しますが,普通の出来なら確実に獲れるでしょう。ブラウン 選手は大の日本好きで,きっと今大会を楽しみにしてくれているはずです。インタビューでは流暢な日本語も話してくれると思うので,それも楽しみです。

◆女子シングル

 なんといっても最大の注目点は,宮原知子 選手の復帰初戦ですね。公式戦は昨季の全日本選手権以来ですから,本当に久しぶりです。復帰というだけでも十分プレッシャーがかかるのに,五輪シーズンで周囲の注目度が高い中での復帰ということで,さらに難しい状況にあるわけですが,ここで見事な復帰ができれば「さすが 宮原 選手だ」という評価になるでしょう。ただ,ここで多少ミスが出ても,大崩れがなければ良しというところでしょう。

 宮原 選手は対戦カードに恵まれており,今大会が4位でも次の米国大会で優勝すればほぼ確実にファイナルに進出できます。そういう点では焦らずに着実な演技をしてもらえればよいと思います。ただ,樋口新葉・三原舞依 両選手のファイナル進出を考えると,今大会で2位以内に入ってほしいので,完全復活の演技が観られることを期待したいと思います。

 本郷理華 選手は昨季より確実にコンディションが上向きです。日本の観客の応援の力を借りて完璧な演技ができれば,表彰台に乗れる可能性も出てきます。表彰台に乗れれば自信になり,全日本選手権にいい形で臨めると思いますので,ぜひそうなってほしいですね。

 シニアデビュー組の1人,白岩優奈 選手がやっとシリーズデビューを迎えます。可憐さと芯の強さを兼ね備える,私が好きなスケーターの1人で,他の選手の出来次第ではありますが,ベストな演技ができれば表彰台に乗れる可能性を秘めています。どんなプログラムなのか,私はまだ観ていないのでとても楽しみです。

 エフゲーニャ・メドベージェワ 選手(ロシア)は,大好きな日本の大会なので,ご機嫌で演技するでしょう。230点代後半が出てももう驚きませんね。カロリーナ・コストナー 選手(イタリア)は,ロシア大会で素晴らしい演技をしましたが,日本でも素晴らしい演技を魅せてくれるのか,それとも息切れしてしまうのか,今大会の大きな注目点になります。2位以内ならファイナル進出が決定しますが,3位だと当落線上になり,これが日本選手のファイナル進出に大きく影響してきます。

 他には,ロシア大会では振るわなかった 長洲未来 選手(米)が巻き返してくるか,ジュニア時代には最強との呼び声があった ポリーナ・ツルスカヤ 選手(ロシア)がシニアのグランプリシリーズ初戦でどんな演技を魅せてくるか,といったところも注目しています。

◆アイスダンス

 いつもは男女シングルしか紹介しませんが,NHK杯はアイスダンスも生中継されるので,ぜひ観てほしいと思い一組だけ紹介いたします。バンクーバー五輪金メダル,ソチ五輪銀メダルに続き,平昌五輪でも金メダルの筆頭候補の テッサ・ヴァーチュー & スコット・モイヤー 組(カナダ)は,私がアイスダンスを観るきっかけになったカップル。モイヤー 選手の完璧な裏方ぶりを観てファンになり,4年前の福岡で開催されたグランプリファイナルで生観戦し,アイスダンスの魅力にハマりました。ここ最近は モイヤー 選手も表現を強く表に出すようになり,完璧なスケーティングに表現力がさらにプラスされた新たなスタイルが,本当に素晴らしいのです。カナダ大会では史上最高スコアを更新しました。

 その翌週,パパダキス & シゼロン 組(フランス)が,史上最高スコアを塗り替えトータル200点に到達しました。この2組は驚異的なレベルの戦いを既に始めており,今大会で ヴァーチュー & モイヤー 組が再び史上最高スコアを記録するかどうかも見どころです。

 アイスダンスは派手なジャンプやリフトはありませんが,だからこそスケーティング技術を堪能できる競技であり,ヴァーチュー & モイヤー 組を観ると,2人でここまで同調したスケーティングができるのかと驚くと思います。また,日本の 村元哉中 & クリス・リード 組も結成当初に比べると驚くほど洗練されてきましたので,今季どれだけ仕上がっているのか楽しみです。アイスダンスは地上波ではなくBS放送ですが,この機会にぜひ観ていただきたいと思います。

樋口・三原 明暗,フェルナンデス 不調【中国大会感想】

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 男子シングルは,6強の2人,ハビエル・フェルナンデス 選手(スペイン)と ボーヤン・ジン 選手(金博洋,中国)を追い越して,ミハイル・コリヤダ 選手(ロシア)が優勝をさらいました。SP(Short Program,ショートプログラム)にも入れた 4Lz(4回転ルッツジャンプ)が完璧に決まったのに加え他の要素も珠玉の出来で,スコアが100点を超えました。この貯金のおかげで,FS(Free Skating,フリースケーティング)でミスがあってもトータルでリードを守りました。

 コリヤダ 選手の 4Lz も,ジン 選手と同じように助走が少ないのに大きなジャンプで,とても見ごたえがあります。また,ジャンプのみならずスピンもステップも綺麗でありながら,振り付けに独特なものがあり,不思議な魅力がある選手です。名古屋のグランプリファイナルで生で観られる皆さんが羨ましいです。

 ジン 選手は,持ち味の4回転ジャンプが安定していませんね。2位だったのはラッキーでしたが,3A(トリプルアクセルジャンプ)が安定していたのが救いでした。男子でも意外と 3A に苦労する選手は多いので,3A が安定しているのは大崩れしにくいという点で大切です。FSで「スターウォーズ」を使うということで楽しみに観たのですが,正直なところやや期待外れという感想を持ちました。スターウォーズだとはっきりわかる音楽が最後のステップのところでやっと流れ,それまではスターウォーズらしさがあまり感じられない音楽でした。また,振り付けも音楽との一体感がさほど感じられず,このプログラムで PCS(Program Component Score,演技構成点)が伸ばせるのか,少し心配な気がします。ですが,ジャンプが全てきっちり入るとまた印象が変わるかもしれませんので,ジャンプの完成度が上がるのを待ちたいと思います。

 フェルナンデス 選手はかなり心配な状況ですね。ここ数年のグランプリシリーズでは,本調子ではなくても大ミスは少なく,表彰台どころか優勝を逃すこともまれだったので,明らかに例年より調整が遅れているようです。五輪本番はまだ先だから心配ない,と楽観することができないような状態であり,平昌五輪のメダル獲得にも黄信号が灯ったと考えざるを得ません。ファイナルで観られなくなりそうなのは残念な限りですが,その間に調子を戻すことを願っています。

 田中刑事 選手は,ケガ明けの影響はなさそうでした。SPのブルースナンバーはとてもいいですね。憂いを帯びた曲の方が,田中 選手の雰囲気に合っていると思います。FSもけっこうジャンプの抜けや転倒があった割には160点近い点数が出ているので,ベストな演技なら180点も狙えますね。代表3枠目の一番近い位置にいると言っていいと思います。

 シニアデビューで注目した ヴィンセント・ジョウ 選手(米)は,表彰台には乗れませんでしたが,攻めたジャンプ構成で魅せてくれました。FSでは 4Lz 2本(そのうち1本は後半)を含む3種類5本の4回転ジャンプを組み込み,さらに3連続ジャンプでは 宇野昌磨 選手と同じ,第3ジャンプに 3F(トリプルフリップジャンプ)を使うという,非常に意欲的なジャンプ構成です。4Lz は ジン 選手や コリヤダ 選手に負けない美しいジャンプで,特に着氷が綺麗ですね。ジャンプが全部揃うとかなり良いスコアが出るので,今後急成長する可能性が大いにあると思います。

 シリーズ最高の激戦となった女子シングルを制したのは アリーナ・ザギトワ 選手(ロシア)でした。SPで転倒しても優勝できるのですから,実力は本物でしょう。ジャンプを全て演技後半に入れ,3Lz+3Lo(3回転ルッツ→3回転ループの連続ジャンプ)といった超高難度ジャンプも組み込んでおり,基礎点は現役最強と思われます。私は技術力のあるスケーターが好きなんですが,ザギトワ 選手にはなぜかさほど魅かれません。FSで後半にジャンプが立て込んでいる感じに違和感を感じてしまいますね。とはいえ,シニアデビュー戦で優勝したのは見事ですし,今後の強敵になっていきそうです。

 ザギトワ 選手が転倒したことを思えば,樋口新葉 選手は今大会で彼女を破っておくべきでした。そうすればファイナル進出が確定しましたからね。でも,ほぼ完璧な演技での2位,しかもロシア大会から中1週しかなかったことを思えば,ミッションはクリアできたのではないでしょうか。今大会の演技は,すごく気持ちが乗っていたように見えました。シリーズ2試合目でプログラムが体になじんできたのでしょうね。とにかくプログラムはSP・FS共に 樋口 選手にとてもマッチしていますので,ファイナル(おそらく出場できるでしょう)や全日本選手権がすごく楽しみです。

 三原舞依 選手は不運でした。3位の ラジオノワ 選手とは1点未満の点差でしたからね。初戦の固さ(緊張よりも慎重さですね)があって,それがSPの連続ジャンプでの回転不足に出てしまった気がします。回転不足がなければ3位だったので,そこが悔やまれます。しかし,SP7位,総合4位という順位だけで 三原 選手を過小評価するようなことがあってはいけません。トータル200点超えて表彰台に乗れなかったのは 三原 選手が初めてですからね。本当なら 三原 選手が激戦を生み出すはずが,逆に激戦の犠牲者になってしまいました。SPのタンゴはまだまだ伸びしろがありますし,FSは本当に 三原 選手に合ったプログラムだということが今大会でもわかったので,次戦はかなりハイレベルなスコアになると思います。

 本田真凛 選手は,実力から考えれば2大会5位というのは上々の成績だと思います。今大会も,ファイナル進出はほぼ不可能という現実を見据えて,無理をせず演技全体を体に染み込ませていくことを意識していたように見えました。ピークを全日本選手権に持ってくればいいわけですからね。グランプリシリーズで爪痕を残したかったと思いますが,そんなに甘い世界ではないことを痛感したでしょう。こういう成績だとメディアがどう自分を扱うのかも見えてきます。チャレンジと継続性のバランス,周囲と自分のバランス,そういったものをこれからたくさん学んでいくと,本当の意味で強い選手になっていくと思います。

 中国大会は,戦前の予想どおり大激戦となりましたが,男子までこのような激戦・波乱になるとは思いませんでした。例年,ちょっとホッと一息つく大会だったのが一変,今季はグランプリシリーズの中でも大きな意味を持つ大会になるような気がします。

中国大会(中国杯,グランプリシリーズ第3戦)プレビュー

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◆男子シングル

 男子6強でシリーズに登場していない残り2人,ハビエル・フェルナンデス 選手(スペイン)と ボーヤン・ジン 選手(金博洋,中国)が出場します。悔いの残る4位に終わったソチ五輪から4年間,フェルナンデス 選手は同門生の 羽生結弦 選手と共に男子シングルのトップスケーターに君臨し続けました。ミュージシャン・映画・演劇といったエンターテインメント系のプログラムを演じれば,圧倒的な表現力でその世界観を存分に魅せてくれます。フェルナンデス 選手は国内無敵なので国内選考に神経を使う必要がなく,例年徐々にスコアを上げていきますので,今季もグランプリシリーズは調整試合でしょう。とはいえ五輪シーズンなので,今大会の仕上がり具合で五輪への本気度がわかると思います。

 ジン 選手は,宇野昌磨 選手や ネイサン・チェン 選手(米),さらには 羽生結弦 選手をも4回転戦争に引きずり込んだ,4回転ジャンプの開拓者です。私が福岡で生観戦した4年前のグランプリファイナルのとき,ジュニアで出場した チェン 選手が4回転ジャンプに苦戦したのに対し,FS(Free Skating,フリースケーティング)で4回転ジャンプを3本成功させたのが ジン 選手でした。彼の 4Lz(4回転ルッツジャンプ)は少ない助走で高さも幅もある,とても美しいジャンプで,これだけで ジン 選手を観る価値があります。しかし実際には表現力も豊かで,優しく時にコミカルな演技は,観る者に癒しを与えてくれるような気がします。どうも評価が不当に低いような気がしますが,世界選手権2年連続銅メダルが示すように大舞台に強く,ほぼ隣国で開催される五輪にうまくピーキングしてくると思います。ジン 選手も国内選考はさほど苦労しないので,今大会は調整試合ですが,自国なので気合いは入っていることでしょう。どんなプログラムでどんなジャンプ構成なのか,特にFSの「スターウォーズ」がとても楽しみです。

 田中刑事 選手ですが,ケガは問題ないと本人がコメントしていました。本当のところはともかく,どんな状況でもベストな演技を観たいですね。無良崇人 選手がもたついていますので,そういう敵の隙をきっちり突いていく図太さも求められます。

 他の選手で楽しみなのは,4Lz を習得し今季シニアデビューする ヴィンセント・ジョウ 選手(米)。今季は 羽生 選手をはじめ,4Lz を導入する選手が続出していますが,ジョウ 選手はとても質の高い 4Lz を飛ぶそうで,私はまだ観たことがないので早く観てみたいです。シニアデビューでハネる選手が出るとすれば,ジョウ 選手が筆頭候補と言えるでしょう。デビューですからエンジン全開で挑んでくると思いますので,フェルナンデス 選手と ジン 選手にどこまで迫れるか要注目です。

◆女子シングル

 シリーズ最強の対戦カードになりました。三原舞依ザギトワ(ロシア),トゥクタミシェワ(ロシア),デールマン(カナダ)の4選手が初戦を迎え,ここに早くもシリーズ2戦目となる 樋口新葉本田真凛ラジオノワ(ロシア)の3選手も登場。この7選手全員,トータル200点超え経験者(本田 選手はジュニアでの記録)というとんでもなく豪華な大会です。中国大会にこれだけ有力選手が集結したことが今までにあったでしょうか。こんなに見ごたえのある大会を,しかも時差がないのにテレビ朝日はなぜ生放送しないんだ!と思いますけどね。

 おそらく,この中から 三原,樋口,ザギトワ の3選手が表彰台に上がるでしょうが,順位がどうなるかはとても重要です。最も順位に敏感になるべきなのは 樋口 選手で,優勝ならグランプリファイナル出場がほぼ叶うと思いますが,2位だと微妙,3位だとほぼ絶望になります。ロシア大会から中1週というハードスケジュールですが,ファイナルまで中4週空きますし,移動時差も小さいので,優勝を狙って全力で臨むべきです。1度演じて注意すべきポイントもわかっているはずなので,全要素 GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)プラスの演技ができれば優勝も十分狙えます。

 三原 選手は,メドベージェワ 選手追撃の一番手になるのではないかと感じています。ジャパンオープンで観たFS(Free Skating,フリースケーティング)のプログラムは,伸びやかで清らかで,三原 選手の良い所を存分に引き出しています。プログラムが本人にとてもマッチしていて,表現力も完全にシニアレベルになっていますので,PCS(Program Component Score,演技構成点)が一気に上がっていきそうな予感がしています。今大会では着実な演技をしてトータル215点に到達できれば好スタートと言えると思いますが,シーズン序盤なので回転不足が出ないかが少し気がかりです。

 シニアデビューにして大きな注目を集めるのが,昨季ジュニアチャンピオンの ザギトワ 選手。同門生の メドベージェワ 選手と同様にジャンプの精度が高いので,安定して高得点を出せると思います。ただ,現時点では PCS がさほど高くないので,ミスが出ると意外にスコアが伸びないでしょう。ですから,三原・樋口 両選手が質の良い演技をすれば ザギトワ 選手の上に来る可能性は十分にあります。

 仲の良い トゥクタミシェワラジオノワ の2人のロシア勢がどこまで取り戻してくるのかも興味深いところですが,世界最高峰のレベルは2人の手の届かないところに行きつつある気がします。ただ,完璧な演技ができればスコアは付いてくると思いますので,2人の本気の演技を観られることを願っています。

 本田 選手はカナダ大会でシニアの厳しさを味わいました。連闘だからこそ,その悔しさを力に変えて,開き直って今までの自分を超えていくような演技ができれば,すごいことが起きるかもしれません。順位はともかく(私が勝手に設定した)超一流ラインであるトータル210点を出しておきたいところです。

 トータルスコア200点超えが,ロシア大会では3人,カナダ大会では1人でしたが,この中国大会では5~6人出る可能性があります。グランプリシリーズ序盤の緊張感も徐々に解けてくる頃なので,ハイレベルな争いを期待してよいと思います。

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