マイクを持てば酔っぱらい

~カラオケをこよなく愛するITシステムエンジニアのブログ~

イントロクイズイベントに参加してみた

 QUIZ ROOM SODALITE 主催,イントロマエストロ 藤田太郎 さん出題のイントロクイズイベントに参加してきました。二十数年前,パソコン通信で集まったカラオケオフ会メンバーの仲間内で開催したイントロクイズ以来,とても久しぶりのイントロクイズです。参加者が一般募集されるクイズイベントは初参加で,参加者の実力が読めなかったので,ビギナークラスという下から2番目のレベルのクラスに参加しました。

 イントロを聞き反射的に早押しボタンを押し,目の前のランプが点灯したときの高揚感。「ピンポンピンポーン」と正解のチャイムが鳴ったときの達成感。「ブー」という不正解のチャイムに「えっ?なんで?」と心を揺さぶられた後,正解を聞いて「そっちかぁ」と腑に落ちる快感。二十数年ぶりに味わうこの感覚…もう最高でした。音楽が好きで,クイズや早押しボタンも好きな私にとって,イントロクイズはこの上ないエンターテインメントだなぁと改めて実感しました。

 クイズ自体を楽しみつつも,解答に応じたポイントにより順位を競う形で行われました。その結果(以下の写真は,ホワイトボードに手書き集計してくださったものを撮影・加工)は…

introQuizScore20200606

 僅差優勝! ビギナークラスに8名が集いましたが,皆さんの実力は明らかにビギナーという言葉が当てはまらないものでした。密かに自信があった早押しも,押し負け多発で,最後の方は完全に本気モードだったにもかかわらず歯が立ちません。ややマイナーな曲や演歌系の曲を拾って,どうにかこうにか渡り合った感じでした。だからこそ,この優勝は自信になります。自分のイントロクイズスキルが井の中の蛙というわけではないことがわかり,今後は「特技:イントロクイズ」とプロフィールに載せてもいいかもな~と思っています。

 今回は,出題される曲のジャンルが「20世紀限定」でした。私は1980~90年代の J-POP が好きなので,このジャンルなら楽しめると思って参加しました。実際に,オールド歌謡,グループサウンズ(GS),洋楽はさほど正答しませんでしたが,それ以外はほぼイントロから曲名を導き出すことができました。わかる楽しさ「こんな曲も出題されるのか」という驚きは,得意ジャンルだからこそ味わえたと思います。ただし,得意ジャンルでも早押しの実力は全然通用しないことがわかりましたので,順位上位を狙うなら,早押しは勝とうとせず楽しむことを優先して,知識量でカバーしていこうと思います。

 順位は望外の喜びでしたが,それを抜きにしても本当に楽しかったので,今後の企画を心待ちにしています。今回の参加で,自分の中で長い間くすぶっていたイントロクイズの種火が完全に点火しました。「80年代」や「アイドル」などの縛りならものすごく楽しそうですが,縛り無しのオールジャンルや,自分が楽しめそうな縛り・企画であればどんどん参加したいと思います。

 今回のイントロクイズイベントに参加できたのは,出題者である 藤田太郎 さんとのコネクションがきっかけです。太郎 さん(敬意を込めてのファーストネーム)の Web 記事から「この人,99人の壁(テレビ番組)で100万円獲ってたなぁ。どんな活動してるんだろう」と思いウォッチし始め,たまたま bayfm の番組「9の音粋」を4月から担当されることを知り,なんとなく聞き始めたら面白くて,メール投稿してみたら放送で読んでもらえて(しかも2週連続),上述した二十数年前のイントロクイズを発案したカラオケ仲間と 太郎 さんとのコネクションがわかって,その方とネットで再会することができて…と,この数ヶ月で次から次へ面白い展開がありました。

 今回のクイズイベントで 太郎 さんと初めてオフラインでお会いすることができました。1年後かなと思っていた対面がわずか2ヶ月で実現したのは,このような面白いご縁があったからかなと感じています。圧倒的な知識量,イベント企画力や発信力,マスコミ対応力を持ちながら,お高く止まるような雰囲気が微塵も無く,イベント参加者やラジオリスナーに楽しんでもらうことを最優先に考えている 太郎 さんの姿勢に感服するファンの1人として,参加者やリスナーという形で応援していこう…今日のイベントに参加して,そんな思いを新たにしました。

introQuiz20200606s
(右: 藤田太郎 さん,左:私)

音域が最も広い男声曲

 私は,ヒット曲の音域をデータベース化する「ヒット曲音域データベース」(以下「音域DB」と略記)というサイトを作っていますが,最近調べたある曲が,男声曲(約650曲登録)の中で音域が一番広かったので紹介いたします。その曲とは,King Gnu白日」です。

▼白日 - ヒット曲音域データベース
https://mak-k.herokuapp.com/VoiceRangeDB/data/6184920

 昨年(2019年)を代表する1曲であり,昨年の紅白歌合戦でのパフォーマンスが記憶に残っている方も多いと思います。冒頭は裏声から入り,Bメロ~サビは独特のグルーブ感から超高音の裏声で駆け抜けていきます。音域が広いだろうことは想像していましたが,男声曲の最高記録とは驚きました

 この曲は2人のボーカリストがオクターブ上下を歌うので,どちらを主旋律と考えるか,言い換えると「1人で歌うならどのパートを歌うか」の解釈によって音域が変わってきます。曲の大半は,高音のパートが主旋律だと判断できるのですが,微妙なのはBメロ(♪今の僕には何ができるの~)です。ここは,音源を聞くと低音パートのボーカルがやや強めに感じられることと,実際に歌ってみると低音パートの方がしっくりくることから,Bメロは低音パートを主旋律と判断しました。

 この,Bメロの主旋律を低音パートにしたことが,音域が広くなった本当の要因です。もちろん,サビの裏声がかなりの高音(ファ#)であることも要因の1つではありますが,このレベルの高音を出す男声曲は全く無いわけではありません(音域DBへのリンク)。Bメロの低音パートにはそこそこの低音(シ♭)があり,これが音域を広げているのです。高音の曲は,曲全体の音程が高く低音がさほど低くならないことが多いのですが,「白日」は低音もなかなか低いので,音域が広くなりました。

 音域DBのサイトでは「白日」の音域幅が 2:40 と表示されています。これは,最高音と最低音の差が2オクターブ+8半音であることを表します(半音を :05 とする時間表記方式)。これがどのくらい広いのかは,他の曲と比較することにより見えてきます(音域DBへのリンク)。サザンの大名曲「TSUNAMI」や,超高音裏声が炸裂する 宇多田ヒカル 「Wait & See」より音域が広いことから,「白日」のすごさがわかると思います。

 これだけ音域が広いと,正確な音程で歌いきるのはかなり難しいです。声が低めな人はサビの裏声が出ず,声が高めな人はBメロの低音が出ません。声が高めな人は,Bメロを高音パート(オクターブ上)で歌うのも一策だと思います。ただ「白日」は,音程のみならず,Aメロの裏声,サビのグルーブ感,歌詞の譜割りなど,高度なテクニックが満載の超難曲です。1人で歌おうとせずに,King Gnu 本人たちと同様に2人でオクターブ上下を歌う方が,音域も緩和され,歌の迫力も出るのでお勧めです。

新型ウイルス感染を題材に状態遷移図を書いてみた

 新型ウイルスに関して皆さんが戸惑っていることの1つに「感染しても発症しないケースがある」点が挙げられると思います。これは「元気なのにウイルス保有者になり,いつの間にか他人を感染させてしまう」ということであり「自分が加害者になる」という怖さを感じていることと思います。加害者はウイルスであり,人間は単なる媒介であるということを思い起こすべきですが,媒介になりたくないという気持ちもよくわかります。

 いたずらに不安がっていても仕方ないので,未感染 ⇒ 感染中(ウイルス保有) ⇒ 感染済(抗体形成) という状況の変化を冷静に捉えてみようと思い,ITシステム/ソフトウェア開発の設計図の1つである「状態遷移図」で表現してみました。軽い気持ちで書き始めましたが,書いてみるといろんなことが見えてきたので,紹介したいと思います。視点によって設計図の内容が変わるところや,設計図を書き進める際の思考過程も垣間見える内容になっていると思います。

 本件の前提として「ウイルス感染後は抗体が形成され,再感染することはない」ものとします。新型ウイルスが途中で変容し,再感染する可能性も考えられますが,ここではその可能性は考慮しません。

 まず,最初に書いた状態遷移図を見てください。

ncvsmd1

 この状態遷移図は,UML (Unified Modeling Language) のステートマシン図(状態機械図)の記法に則っています。記法の詳細は説明せずとも,だいたいご理解いただけると思います。●のシンボルが開始点となり,矢印をたどって状態(角丸長方形のシンボル,ブログ文中では【 】で記述)が変わっていき,●を○で囲んだ "的" のようなシンボルで終了します。図(1)は,

  • 人は皆,始めは【未感染】
  • 感染すると【感染中】になり,その中では,症状が出ない人,出る人,重症化したり死に至ってしまう人もいる
  • 感染期間が経過すると【感染済】になる

という,感染の経過を表しています。【感染中】という状態の中に,症状の状態を表す【無症状】【軽症】【重症】が含まれていて,これは状態の中にさらに細分化された状態があるという,状態の入れ子(階層化)を意味します。つまり,図(1)は「感染」の状態「症状」の状態の両方を含んでいて,誰もが真っ先に浮かぶ構図が表現されていると思います。

 【感染中】赤枠で記述しています。これは【感染中】の人がウイルスの媒介になるので行動に特に注意を要する,ということを強調するためです。この強調記述は図(1)~(4)に共通しています。

 図(1)に,未検査/陰性/陽性といった検査状況の観点を加えたのが,次の図です。

ncvsmd2

 検査の種類として,新型ウイルスで主流となっている PCR 検査を取り上げます。PCR 検査はウイルス検査の一種なので,検査時点でウイルスを保有している人が陽性保有していない人が陰性と判定されます。ここでは,ひとまず「PCR 検査は100%正しい」という前提を置きます。すると,【未感染】の状態で検査すれば必ず陰性なので,検査結果を得た状態を【検査陰性】とします。一方,【感染中】の状態で検査すれば必ず陽性なので,【感染中】の人の検査の状態は「未検査」(図中では「感染不明」)か「陽性」(同「感染判明」)のどちらかになります。そこで,図(1)の3つの症状を検査の状態でさらに分割して,図(2)では6つの状態で表現しました。

 しかし,よく考えると【検査陰性】は意味がない状態だとわかりました。検査が陰性ならばちょっとホッとしますが,それは "検査の時点で" 陰性だっただけで,その後もずっと陰性が保証されるものではありません。数日後に感染している可能性もあるわけですから,「感染していないが,いつ感染しても不思議ではない」と考えれば【未感染】と同じ状態だという解釈が成り立ちます。「検査で陰性の判定が出ても,未感染と立場は何も変わらない」ことが,状態遷移図を書いてみてわかったことの1つです。【検査陰性】は状態遷移図から削除するのが正しいですが,悪例として図に残しました。このことは,図(2)にコメント(右上の角が欠けた長方形のシンボル,UML ではノートと呼ぶ)として付記しました。

 一方,【感染中】の内部を見ると,感染者には「感染が判明した」人と「感染したかわからない」人がいることがよくわかります。「実際の感染者は,公表されている数値よりも多いはずだ」という現実が,言葉や文章よりもこのような図によって,はっきりと理解できます。図(2)は「感染」「症状」「検査状況」という3つの状態を含んでおり,ウイルス感染の状況の変化をうまく表現しているように思えます。

  • 感染 … 未感染/感染中/感染済
  • 症状 … 無症状/軽症/重症
  • 検査状況 … 未検査/陰性/陽性
    (後述の図では,状態の名前を変えています)

 ただ,図(2)を見ても「なるほど…それで?」という感想を持った方もいると思います。この図を見ても,自分が採るべきアクションや注意点といったものが,どうも見えてこないのです。そう思う理由の1つは,図(2)では感染の状態(【未感染】⇒【感染中】⇒【感染済】)に主眼が置かれていますが,感染の状態は人が制御できるものではないので,図(2)を見てもどう対処してよいか困ってしまう,ということなのかもしれません。状態遷移図をなんとなく書いてしまうと,このように「書いてはみたものの,図からその意図が読み取れない」という状況に陥ってしまいます。これは,ITシステム/ソフトウェア開発においても,時々発生することだったりします。

 今回の新型ウイルスでは,感染に気づかない可能性がある「感染」の状態よりも「検査状況」の方が人は明確に認識できます。そこで「検査状況」の状態を主眼にした状態遷移図を書いてみました。

ncvsmd3

 未感染 ⇒ 感染中 ⇒ 感染済 という流れを横方向に書く流儀を図(1)(2)から踏襲したことで,上位の状態である【検査陽性歴なし】【検査陽性歴あり】が横長になりやや見づらいですが,ご容赦願います。図(2)で考察したように,検査状況の「未検査」と「陰性」は状態として区別する必要がないので「陽性になったか,なっていないか」という2つの状態を【検査陽性歴なし】【検査陽性歴あり】と表現しました。

 図(1)(2)に記述していた「症状」の状態を,図(3)では除去しています。実は「症状」の状態が「検査状況」や「感染」の状態に影響しない(独立である)ことに,図(2)を書いていて気づいたのです。図(2)の【感染中】の内部には【無症状】⇔【軽症】⇔【重症】という同じ状態遷移が2系統出てきます。これは【感染不明】(未検査)でも【感染判明】(検査陽性)でも症状に関する状態遷移が同じであることの表れです。また,【未感染】や【感染済】には症状の状態遷移が記述されていませんが,これは未感染者や感染終了者の症状の変化に(図(2)を記述する上では)関心が無かっただけで,実際には未感染者にも感染終了者にも発症者や重症者は存在します。未感染者の発症者は,新型ウイルス以外に起因する発症ではありますが,症状の状態としてあり得ることは確かです。つまり,【無症状】⇔【軽症】⇔【重症】という「症状」の状態遷移は,「検査状況」や「感染」の状態に関係なく発生しており,これが「検査状況」や「感染」の状態に影響しないことを示しているのです。

 「症状」の状態が「検査状況」や「感染」の状態に影響しない,というのは一見納得しにくいと思います。人は「症状が出て,検査をし,感染したかどうかを認識する」ので,関連性があるように思えるからです。無症状の人は検査を受けない(受けさせてもらえない)可能性が高い一方,発症した人は検査を受ける可能性が高まります。しかし,これはあくまで可能性や動機の軽重の問題であって,無症状だろうと発症していようと,検査を受ける人と受けない人がいるし,感染している人としていない人がいます。典型的なウイルスは,未感染≒無症状,感染≒発症 なので症状の状態が独立であるとは考えにくいでしょう。ということは,今回の新型ウイルスが持つ「発症しない感染者がいる」という特質が影響していると言えそうです。

 図(3)は「症状」の状態遷移を除去したことにより,遷移図がスッキリした一方で,【感染済】の状態が2つに分かれました(【無自覚感染済】という状態が追加)。検査で陽性が出ない限り,人は感染していることや感染期間が終わったことを認識できないので,これを【無自覚感染中】【無自覚感染済】と名付けました。発症していて「これは新型ウイルスに違いない」と思っていても,検査で陽性が出ない限り感染判明者ではありませんので,そういう人もこの状態遷移図においては【無自覚感染中/感染済】に含まれます。

 状態遷移の「終了」(図中の的に似たシンボル)が上位の状態の内部にあるのは,記法としては正確さを欠いていますが,「人が行き着く最後の状態は【感染済】【無自覚感染済】か,【未感染】で運良く感染せずにウイルス流行が収束する」という終了の意味はわかると思うので,この記述のままにしておきます。

 同じ【感染中】【感染済】でも,検査で陽性が出た人とそうでない人の状態を分けて記述したことで,いくつかわかることがあります。【感染中】に遷移するには,【無自覚感染中】に検査で陽性と判定されるというルートしかないことは,図(3)から一目瞭然です。このことから「検査で陽性になるのは,感染中に検査を受けた場合に限られる」という,文章にすると当たり前すぎる事実がくっきりと浮かび上がります。感染期間は平均5日,最大14日と言われていますので,この期間に検査を受けずに【無自覚感染済】になってしまうと,もう検査で陽性になることはありません。感染判明者が日本では少ないと言われていますが,検査体制が充実していたとしても,自覚症状がないまま(たった5日間の)感染期間が過ぎれば陽性になる機会を得られないので,陽性になる(感染が判明する)人は思いのほか少ないのでは?ということが図(3)から読み取れます。

 続いては,【検査陽性歴なし】の内部に記述した感染状態の遷移が人の意思では制御できないことから,「検査で陽性が出なければ,感染していないのか,感染中なのか,感染済なのかわからない」という,これまた当たり前の事実が図(3)を見るとよくわかります。自分が感染しているかもしれないと考えて積極的な行動自粛(いわゆる「セルフロックダウン」)をされている方がいらっしゃいますが,無症状だったり軽症だったりすると,いつ感染したかわからないので,いつまで自粛を継続すべきか判断できません。【無自覚感染済】だとわかれば自粛を解除できますが,(ウイルス保有者を検出する)PCR 検査で陰性の判定だと【未感染】と【無自覚感染済】のどちらなのかがわからないからです。積極的な行動自粛という模範的な行動をされている方が,いつそれを終わらせてよいかわからずに苦悩する,というやりきれない状況が今後懸念されます。

 かといって,それらしい症状にかかったことで,ウイルスに感染したと自己判断するのは危ういです。もしその症状がウイルス起因でない場合,感染済と思い込んでいて実は【未感染】なわけですから,行動制限を弱め,感染や媒介のリスクを高めてしまいます。自己流の判断は避けなければなりません。

 図(3)は以上の考察をもたらしてくれたという意味で,良い状態遷移図だと思います。ただ「PCR 検査は100%正しい」という前提にそもそも無理があります。新型ウイルスの PCR 検査の精度について正確な情報が手元にありませんが,感覚的には7割程度という専門家の意見もあるくらいです。そこで,PCR 検査に誤りがあるケースを加味した状態遷移図を書いてみました。

ncvsmd4

 図(3)よりもずっと複雑な図になりました。何が読み取れるかはもちろんのこと,状態遷移図の記述内容そのものも実に興味深いです。検査の誤りには,未感染者なのに陽性と判定してしまう「偽陽性」と,感染者なのに陰性と判定してしまう「偽陰性」があります。【未感染】の人は検査で陰性になるはずですが,誤って陽性(偽陽性)と判定されると,その人は感染していないのに感染したと思い込むことになりますので,それを【感染思い込み】【感染済思い込み】と表現しました。感染の状況としては【未感染】と同じですが,陽性と(誤って)判定されたことにより「自分はもう感染したから大丈夫」と考えて行動制限を弱めてしまう可能性が高い,という点で【未感染】とは別の状態として記述することに意味があります。

 その後【感染済思い込み】の人が本当に感染すると「感染済だと思い込んでいるのに,実際は感染中である」という面倒な状況になります。これを【無自覚感染中(感染済思い込み)】と表現しています。新型ウイルスっぽい症状が出た場合は「既に感染したはずなのに,症状が出るってどういうことだ?」とかなり混乱するでしょう。ただ,感染期間が終われば認識と感染状況の矛盾が解消するので【感染済】になります。この状態なら行動制限を弱めても何ら問題ないでしょう。

 【無自覚感染中】に検査を受け,誤って陰性(偽陰性)と判定されると,本人や周囲はホッとするでしょうが,実際には感染しているのにそれに気づく機会を逃すことになるので,結局【無自覚感染中】が継続され,やがて【無自覚感染済】に移ります。検査したにもかかわらず感染したことに気づけず,もしかしたら感染するかも,とビクビクし続けることになるという状況は,やや気の毒な感じがします。

 【無自覚感染済】の人が検査を受けると陰性になるはずですが,誤って陽性(偽陽性)と判定されると,その人は既に感染済なのに,検査した時点で初めて感染したと思い込むという状況になります。これを【感染思い込み(感染済)】と表現しました。ただ,この状況は,感染済の人が感染中だと思い込んでいるだけなので,本人が一定期間,無意味に隔離されるだけで済みます。なので,【未感染】の人が偽陽性になるよりはずっとマシな状況です。

 図(4)が図(3)と決定的に違う所は,【未感染】の人が検査で偽陽性になり【感染思い込み】⇒【感染済思い込み】⇒【無自覚感染中(感染済思い込み)】という状態遷移が発生する箇所です。未感染なのに感染済と勘違いしてしまうわけですから,この状態が存在することはかなり厄介です。ここから得られる知見は「陽性と判定されたからといって,自分はもう大丈夫と考えて行動制限を弱めてよいわけではない」ということです。明らかな新型ウイルスの症状が出たならまだよいでしょうが,無症状や風邪と同等程度であれば,陽性の判定が出たとしても偽陽性の可能性を考えて,慎重に行動することが求められるということなのです。このことは図(4)を書いてみて初めて気づきました。

 この箇所だけを切り取れば「偽陽性の判定によって,感染済と思い込んで出歩く未感染者が出てくるのか」と怖さを感じる方もいると思います。これは状態遷移図を見るときの落とし穴の1つだと思うのですが,状態遷移図は可能性や頻度を表現しません。状態として定義(設計)が必要なものは,可能性がわずかであっても記述します。この箇所は「偽陽性の判定によって,感染済と思い込む未感染者が発生する "可能性がある"」と解釈すればよいでしょう。その可能性の度合いを考えてみると,【感染思い込み】に至るためには,①未感染者が何らかの理由(感染者の濃厚接触者である等)で検査を受け,②偽陽性の判定を受けるという状況が必要ですが,①の人数も②の確率もあまり大きくないでしょう。あくまで可能性の話として受け止めておけばよいと思います。

 PCR 検査は,発症者の検査としては有効と思いますが,無症状者や軽症者に対する検査としては限界があると感じます。検査が陰性でも,それはある時点の【未感染】を示すだけなので,陰性だからといって安心できるのはほんの一瞬に過ぎず,機会あるごとに何度も検査する必要があります。また,もし知らない間に【無自覚感染済】になっていても,それに気づくことができないため,陰性しか出ない検査をそうとは知らずにずっと続ける羽目になります。

 これを解決するには,ウイルス検査ではなく「抗体検査」を行う必要があります。抗体検査は,抗体を持っているかどうかを検査するので,【未感染】だと陰性【無自覚感染済】だと陽性になり,これらを区別することができるのです。自分が抗体を持っている(感染済である)ことがわかれば,感染や媒介を心配する必要がなくなり,行動自粛を解除することができます。抗体検査は,無症状でも感染や媒介が生じる今回のようなウイルスへの対策として,とても有効だと思います。抗体検査の必要性は,図(3)(4)を書いてみて気がついたことでした。おそらく今後,PCR 検査と抗体検査をセットで実施するような施策が進むのではないかと予想します。

 以上,状態遷移図という設計図を用いて,ウイルス感染に関する考察を行いました。同じ事象を表現するにしても見方によって結果が異なることや,状態遷移図が(ITシステム/ソフトウェアの設計以外にも)一般的な事象を記述できることなどをご理解いただけたかと思います。また,記述内容の面では,無症状での感染や媒介が状況を難しくしていることがうかがえたかと思います。これをお読みいただいた皆さんにとって,何らかの気づきになれば幸いです。

 時事ネタにITネタを絡めたいという不純な動機だけで書き始め,状態遷移図をきちんと書くのも久々だったのですが,ウイルス感染という事象と状態遷移図,それら両方の奥深さに触れることができ,私自身たいへん勉強になりました。

2019年をランキングで振り返る

ヒット曲年間チャート>

オリコン:CD売り上げ
https://www.oricon.co.jp/confidence/special/54091/2/

  1. サステナブル / AKB48
  2. ジワるDAYS / AKB48
  3. Sing Out! / 乃木坂46
  4. 夜明けまで強がらなくてもいい / 乃木坂46
  5. 黒い羊 / 欅坂46
  6. Lights/Boy With Luv / BTS
  7. BRAVE / 嵐
  8. キュン / 日向坂46
  9. こんなに好きになっちゃっていいの? / 日向坂46
  10. ドレミソラシド / 日向坂46

レコチョク配信
https://recochoku.jp/special/100835/

  1. Lemon / 米津玄師
  2. 馬と鹿 / 米津玄師
  3. マリーゴールド / あいみょん
  4. まちがいさがし / 菅田将暉
  5. HAPPY BIRTHDAY / back number
  6. パプリカ / Foorin
  7. Pretender / Official髭男dism
  8. Flamingo / 米津玄師
  9. 白日 / King Gnu
  10. アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN) / MISIA

オリコン:デジタルシングル
https://www.oricon.co.jp/confidence/special/54091/8/
※ダウンロード販売の集計チャート。「レコチョク配信」も集計対象の1つ。

  1. Lemon / 米津玄師
  2. 馬と鹿 / 米津玄師
  3. マリーゴールド / あいみょん
  4. HAPPY BIRTHDAY / back number
  5. まちがいさがし / 菅田将暉
  6. Pretender / Official髭男dism
  7. パプリカ / Foorin
  8. 白日 / King Gnu
  9. 紅蓮華 / LiSA
  10. 愛にできることはまだあるかい / RADWINPS

オリコン:ストリーミング
https://www.oricon.co.jp/confidence/special/54091/12/

  1. Pretender / Official髭男dism
  2. マリーゴールド / あいみょん
  3. 白日 / King Gnu
  4. 今夜このまま / あいみょん
  5. 宿命 / Official髭男dism
  6. ノーダウト / Official髭男dism
  7. 君はロックを聴かない / あいみょん
  8. まちがいさがし / 菅田将暉
  9. パプリカ / Foorin
  10. 愛を伝えたいだとか / あいみょん

チャート梁山泊
http://www.os.rim.or.jp/~katokiti/anual19.htm
(ザ・ベストテン終了後も独自に同様のチャートを作り続けているすごいサイト)

  1. Lemon / 米津玄師
  2. 馬と鹿 / 米津玄師
  3. パプリカ / Foorin
  4. Sing Out! / 乃木坂46
  5. 夜明けまで強がらなくてもいい / 乃木坂46
  6. キュン / 日向坂46
  7. 帰り道は遠回りしたくなる / 乃木坂46
  8. 床の間正座娘 / NMB48
  9. 黒い羊 / 欅坂46
  10. Pretender / Official髭男dism

billboard JAPAN 総合チャート
http://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=hot100_year&year=2019

  1. Lemon / 米津玄師
  2. マリーゴールド / あいみょん
  3. Pretender / Official髭男dism
  4. 白日 / King Gnu
  5. 馬と鹿 / 米津玄師
  6. まちがいさがし / 菅田将暉
  7. パプリカ / Foorin
  8. 今夜このまま / あいみょん
  9. U.S.A. / DA PUMP
  10. 宿命 / Official髭男dism

【寸評】 CD売り上げは坂道グループが相変わらず強いですが,AKB48 と 乃木坂46 が2曲ずつ,欅坂46 が1曲と,3曲以上送り込んできた昨年までと比べ明らかにパワーダウン。代わりに,欅坂46 の所属メンバーで構成される 日向坂46 がデビューし3曲チャートインし,年間トップ10に入った楽曲数では最も多くなりました。

 ダウンロード配信は,例年掲載している「レコチョク」に加え,オリコンの集計チャートを新たに掲載。この2つを比較すると大きな差がないことから,配信サービス間の差は少ないことが予想できます。配信は 米津玄師 の圧勝。昨年から継続の「Lemon」にラグビーのドラマで話題になった「馬と鹿」,そして彼の作品である「まちがいさがし」「パプリカ」も大ヒット。米津玄師 がブランドを完全に確立した1年と言っていいでしょう。

 今年からストリーミングのチャートも掲載してみました。ダウンロードとストリーミングは順位が似ているかと思いきや,けっこう違っていたのが驚きでした。あいみょん の4曲は昨年と一昨年のリリースなのかすごい。そして Official髭男dism が3曲チャートインで大躍進。昨年のデビュー曲「ノーダウト」が売れ続け,そこに今年の発表曲が加わってパワーアップし,スターバンドの仲間入りを果たしました。

 CD売り上げ上位曲の印象が薄いことを考慮すると,今年のヒット曲は「Lemon」「マリーゴールド」「今夜このまま」「パプリカ」(ここまでリリースは昨年),「Pretender」「宿命」「まちがいさがし」「馬と鹿」「白日」あたりと言えるでしょう。

カラオケ年間チャート>

DAM
https://www.dkkaraoke.co.jp/news/191121_2.html
JOYSOUND
https://www.joysound.com/web/s/karaoke/contents/annual_ranking/2019

  • DAM1 JOY1 Lemon / 米津玄師
  • DAM2 JOY2 マリーゴールド / あいみょん
  • DAM3 JOY4 さよならエレジー / 菅田将暉
  • DAM4 JOY6 糸 / 中島みゆき
  • DAM5 JOY3 シャルル / バルーン
  • DAM6 JOY5 パプリカ / Foorin
  • DAM7 JOY9 Pretender / Official髭男dism
  • DAM8 JOY7 残酷な天使のテーゼ / 高橋洋子
  • DAM9 JOY8 小さな恋のうた / MONGOL800
  • DAM10 奏(かなで) / スキマスイッチ
  • JOY10 ハナミズキ / 一青窈

【寸評】 男性は 米津玄師 を,女性は あいみょん を歌うのが今年の定番だったと言えるでしょう。「Lemon」「マリーゴールド」は昨年の紅白歌合戦で歌われたことで年輩世代にも知れ渡り,選曲しやすかったのではないでしょうか。ダウンロードやストリーミングを席巻した Official髭男dism は,キーが高いので男女どちらからも歌われたと思います。

10大ニュース

◆読売新聞・国内
https://www.yomiuri.co.jp/feature/top10news/20191220-OYT8T50125/

  1. 天皇陛下が即位。「令和」に改元
  2. ラグビーW杯日本大会開幕、日本8強
  3. 京都アニメーション放火、36人死亡
  4. 消費税率10%スタート
  5. 東日本で台風大雨被害、死者相次ぐ
  6. ノーベル化学賞に吉野彰氏
  7. 沖縄・首里城が焼失
  8. ゴルフ・渋野日向子が全英女子優勝
  9. マリナーズ・イチローが引退表明
  10. 徴用工問題で日韓関係悪化

◆読売新聞・海外
https://www.yomiuri.co.jp/feature/top10news/20191220-OYT8T50062/

  1. 香港で学生らが大規模デモ
  2. ノートルダム大聖堂で大火災
  3. 16歳グレタさん、国連で演説
  4. 北朝鮮、新型SLBM発射
  5. 米、「パリ協定」離脱を国連に通告
  6. ハノイで2回目の米朝首脳会談、物別れに
  7. 米中、制裁・報復「第4弾」発動
  8. アマゾンで森林火災が多発
  9. 英下院が解散・総選挙、EU離脱が最大の争点
  10. 英ヘンリー王子に第1子の男児誕生

【寸評】 令和への改元,消費税10%という大きな節目となった年。台風被害は昨年に引き続き甚大で,京都アニメーションや首里城という火災の大惨事が相次いだ。海外は,香港や北朝鮮の動向は気になるものの,英国のEU離脱は先延ばしになるなど,比較的動きの少ない年だった。

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◆「現代用語の基礎知識」選ユーキャン新語・流行語大賞 (黄色フォント:大賞)
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グランプリファイナル2019感想:羽生・紀平 打ちひしがれる完敗

 フィギュアスケートの今年のグランプリファイナルは,羽生結弦 選手が2位,紀平梨花 選手が4位に入りました。これはほぼ実力どおりの順位であり,さらに上位を狙ったものの健闘したと言える順位ではあります。しかし内容は点数差以上に完敗でした。来年3月の世界選手権に向け,両選手とも大きな課題を抱えてしまいました。

 羽生 選手も 紀平 選手も,自分たちがめざしていたレベルの演技構成をライバルに完璧に遂行され,歴代最高得点(2018/19シーズン以降の新採点規則)を塗り替えられてしまいました。自分では不可能なほど高度な演技構成だったり,奇策がハマったりしたのであれば,今回は仕方ないと諦めがつきますが,優勝選手は男女共に,彼らと同等レベルの演技構成を,極めて高い完成度で実施しており,自分たちがやりたかったことをやられてしまったのです。こういう負け方はかなりダメージがあると思います。

 まずは,ネイサン・チェン 選手(米)と 羽生結弦 選手の男子シングルから見ていきましょう。FS(Free Skating,フリースケーティング)の演技構成が,大会前に本ブログで紹介した構成よりもグレードアップしていましたので,当日の演技構成と,スコアの結果にどう表れたのかを表にまとめました。他の男子選手には申し訳ありませんが,チェン・羽生 両選手に絞りました。

表: 演技構成表 - グランプリファイナル2019 男子シングル
(各表はクリックしてご覧ください)
FigureSkateScoreList2019GPFmen2

表: 得点結果分析表 - グランプリファイナル2019 男子シングル
FigureSkateScoreResult2019GPFmen

 羽生 選手はFSで2年ぶりに 4Lz を実戦投入して4回転ジャンプを4種類5本にしてきましたが,これは今シーズン初で,過去にもほとんど実施したことがない構成であり,SP(Short Program,ショートプログラム)で点数を離されたことでギャンブルをせざるを得なくなりました。表の中で,3A の所に 1.6 という数字が出てきますが,これは 3A+3A というシークエンスジャンプの点数を表現しています。本来は 2 であるところを,シークエンスジャンプは点数が 0.8 倍になるので,2×0.8=1.6 となります。

 一方,羽生 選手の構成アップを予想した チェン 選手も,4Lz と 4F を同時投入し同じく4回転4種類5本にしてきましたが,チェン 選手は過去に4回転5本の構成を何度も実施しています(平昌五輪は4回転6本)ので,今シーズン初とはいっても経験値が全然違いました。苦手な 3A を1本にして,2連続ジャンプを2回とも +3T にするという盤石なスコア戦略も見事でした。

 観戦された方の中には,羽生 選手が チェン 選手にトータル 40 点以上も離されたことについて,点数が開きすぎでは?と感じた方もいたと思います。しかし,得点結果分析表を見ると,技術点に関して,基礎点だけでなく GOE(Grade Of Execution,出来栄え)加点でも大きく差がついたことが分かります。2018/19シーズン以降の新採点規則では,GOE 加点は基礎点に対する比率として点数化されるので,基礎点が下がると GOE 加点も下がります。羽生 選手は,演技後半のボーナスタイムでミスが相次ぎ,基礎点が下がってしまったことで GOE 加点も伸び悩みました。GOE 加点が武器である 羽生 選手が,チェン 選手に GOE 加点だけでトータル 20 点も差をつけられたのは屈辱的だったと思います。

 羽生 選手のFSは,演技前半は 4Lo も 4Lz も素晴らしい出来で,大逆転が期待できる内容でした。しかし,4Lo と 4Lz を同時投入したツケが演技後半に噴出。やはり急なジャンプ構成の変更は,羽生 選手を持ってしても極めて困難なミッションでした。それを見届けてからリンクに立った チェン 選手は,精神的な余裕もあってか,ジャンプに全く淀みがない完璧な内容で,4回転5本の先駆者としての凄みさえ感じられました。最高でトータル 333 点と見ていた私の予想を超え,基礎点が上がったこともあって 335 点という歴代最高得点に到達しました。

 チェン 選手の演技構成と完成度は,羽生 選手でも遂行可能なレベルのものでした。それなら,羽生 選手が絶好調ならば次の機会には競った戦いができる … 羽生 本人がそのようにコメントしましたし,報道もそのようなトーンが多いですが,あまりにも楽観的だと私は思います。今回の内容を,今までの蓄積として披露し完璧だった チェン 選手と,蓄積不十分なままギャンブルを仕掛け跳ね返された 羽生 選手。この差は非常に大きいです。しかも,羽生 選手はコンディションも万全でありながら敗れてしまった。昨季の世界選手権の負けは,羽生 選手がケガ明けだったという言い訳ができますが,今回の負けは完全なる力負けです。羽生 選手の「点差ほどの差は無い」というコメントは,本心ではないはずです。聡明な 羽生 選手は,自分がやるべき内容を チェン 選手に完璧に遂行されたという,今回の負けの意味を強く理解した上で,自分を発奮させるためにそう言うしかなかったのだと思います。そのくらい,羽生 選手は強い危機感を抱いていると思います。

 しかし,この差を埋めるのは簡単ではありません。PCS(Program Component Score,演技構成点)でも チェン 選手は 羽生 選手と肩を並べており,今回のファイナルで GOE も同等レベルに達しました。こうなると基礎点の勝負になってくるのですが,4回転5本の安定感が高い チェン 選手を上回るには,単に 4A を入れればよいという話では収まりません。4A を入れても4回転5本ではさほど基礎点を引き上げることはできず,4A の失敗リスクが付いて回ります。かといって 4A 入り4回転6本は体力的に無理な構成でしょう。4A はとても魅力的ですが,4A が チェン 選手に勝つ武器になると考えているようでは,この先 チェン 選手に勝てないままだと思います。4Lz が復活した今なら4回転4本と 3A 2本でも十分勝負できますので,足下をしっかり固めて世界選手権を迎えてほしいです。

 続いて,ロシアのシニアデビュー3人娘と 紀平梨花 選手の女子シングルを振り返ります。こちらも男子シングル同様,2つの表を載せます。

表: 演技構成表 - グランプリファイナル2019 女子シングル
FigureSkateScoreList2019GPFladies2

表: 得点結果分析表 - グランプリファイナル2019 女子シングル
FigureSkateScoreResult2019GPFladies

 演技構成をシーズン中よりも引き上げた選手が続出しました。トゥルソワ 選手はSPで 3A に,FSで4回転5本の構成にトライしました。シェルバコワ 選手はFSで 4F を入れ4回転3本にチャレンジしました。そして,紀平 選手はFSで 4S を実戦で初めて投入しました。転倒してしまいましたが,回転は認められたので,女子史上初めて 4S と 3A の基礎点を同時に獲得しました。

 しかし,優勝したのはシーズン中と同じ構成で完璧な演技を実施した コストルナヤ 選手でした。4回転が無くても,3A 3本で歴代最高得点を記録しました。この勝ち方に対して最も悔しい思いをしているのは,演技構成が同等の 紀平 選手でしょう。昨季のグランプリファイナルは,3A を武器に初出場で初優勝をさらいましたが,今回はその武器を持っているだけではダメで,演技の完成度を伴っていた コストルナヤ 選手が優勝を手にしました。得点結果分析表を見ると分かるように,コストルナヤ 選手の勝因,そして 紀平 選手の敗因は GOE です。ジャンプの失敗があった 紀平 選手の GOE 加点率はわずか 8% しかなく,これでは 29% という高い GOE 加点率の コストルナヤ 選手に太刀打ちすることはできません。

 今回のファイナルで実は評価を上げたのが シェルバコワ 選手です。FSでは新たに 4F を入れてきましたが,大きな失敗はこの 4F の転倒だけで,他の演技要素はとても良い出来でした。PCS も素点平均が8点台後半に乗り,トータル 240 点を記録しました。高難度ジャンプと表現力のバランスが良く,今後 4F が安定し PCS も伸びてくれば,トータル 250 点を最初に記録する選手になると思います。

 紀平 選手は本来の力を出し切れなかったとは言え,これだけの差がついてしまうと,今までと同じ演技構成では勝ち目が乏しくなります。今回初めて実戦投入した 4S は,スコアとモチベーションを共にアップさせる意味で大切なジャンプになってくるでしょう。先日の記事でも指摘したように,4S が安定し 3Lz が飛べるようになって初めて,ロシア3人娘と戦う土俵に乗ることができると思います。ザギトワ 選手(ロシア)が競技会を欠場するというニュースが飛び込んできた今となっては,紀平 選手が3人娘に対抗できる唯一の存在になるでしょう。今回の悔しさをバネに,全日本選手権や世界選手権でどんな演技を魅せてくれるのか,紀平 選手の巻き返しに期待したいと思います。

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