直近の記事では,音域DataBase 1,000件登録を記念して音域のデータ分析をしてきましたが,今回は男声・女声を問わず音域の広さに着目して,流行歌の音域の広さはどのくらいなのかを見てみたいと思います。

 音域DataBaseでは,音域の広さを「音域幅」と呼び,1オクターブ= 1:00 刻み,1音= 0:05 刻みの時間表記で表しています。では,典型的な音域幅とはどのくらいの広さなのでしょうか?

< 曲数が多い音域幅ベスト5 > (調査対象1,000件)

順位音域幅裏声込地声のみ 代表曲例
1位1:25164件157件 とんぼ,ありがとう
2位1:10136件145件 君が代
3位1:15117件136件 いとしのエリー,いい日旅立ち
4位1:35107件105件 昴,負けないで
5位1:0080件94件 ヤングマン,ヘビーローテーション

 件数のリンクをクリックすると,音域DataBaseで各音域幅の楽曲一覧が表示されます。件数が多いので表示に時間を要するかもしれませんが,気長にお待ちください。

 一番多い音域幅 1:25 は「1オクターブ25分」と読み,1オクターブと5音分の音域の広さを持つことを意味します。1オクターブは12音なので,5音 = 5/12(12分の5)オクターブですが,「1 + 5/12 オクターブ」より 1:25 の方が直感的に理解できると思います。1:25 は,大半の人にとって歌うのに気持ちいい音域だと思いますので,この音域幅の楽曲が多いことは納得できます。全体の15%くらいがこの音域幅になっているという計算になりますね。

 次に多いのが 1:101:15 というのは意外な感じがします。1オクターブちょっとという楽曲がこんなにたくさんあるのか,という印象ですね。ブログで何度もコメントしているように「商業曲だからといって音域が広いわけではない」と改めて思います。1:10 は国歌「君が代」の音域幅なのですが,これが2位であるということは偶然なのでしょうか? 1:10 が日本人のDNAに根付き,無意識に採用する音域幅なのかもしれません。洋楽も調べればこのあたりもう少しわかりそうですね。

 1:00,つまり1オクターブちょうどの楽曲もかなり多いんですね。1:20 や 1:40 よりも多いとは。今回の調査で個人的にこれが一番の驚きでした。1オクターブであれば,ほとんどの人が難なく歌える音域幅だと思いますので,歌が苦手な方や,大勢で盛り上がれそうな曲を探している方は,1:00 の音域幅から探してみるといいと思います。

 楽曲を制作する際に,音の高さを気遣うアーティストは多いと思うのですが「音域を広く(狭く)しよう」と意識しながら制作する人は少ないと思うんですね。ですから,音域幅は制作の結果として表れるものだと思いますし,だからこそ楽曲やアーティストの特徴が出るのでしょう。「よくある音域幅が実はそんなに広いものではない」という事実は,音域DataBaseを検索するたびに感じる,音楽の面白さだなぁと思っています。