カラオケでうまくハモれたときは,ハモラー自身が気持ちいいですし,ハモった相手から「気分よく歌えた」と褒めてもらえると気持ちよさが倍増します。満足感が高まり,存在感を示すこともできます。ところが,こういう経験が積み重なると,さらにどんどんハモりたくなり,それがいつしか度を越えてしまうことがあります。その状態を私は「ハモリ中毒」と呼んでいて,こうなると周囲とのトラブルになる可能性が格段に上がってしまいます。
ハモリ中毒にはいろいろな症状があるので,勝手に症状名を付けて挙げてみます。
技術面
ハモリ技術 過信症 | ハモリの音量や声質などの面で,メインの歌い手や聞き手への配慮が足りない (音量の問題は前回のブログで取り上げました) |
オリジナル ハモリ依存症 | 原曲にないハモリ(オリジナルハモリ)を(少しだけなら株が上がるのだが)やたらと入れる。オリジナルハモリができてこそハモラーだという妙な矜持を持っている |
セカンド ハモリ依存症 | 誰かがハモっているところに,違うハモリメロディーを入れることができる自分に酔ったり,「ハモリは一人より二人の方がすごいし気持ちいいはず」と思い込んでいる |
行動面
ハモラー 周知過剰症 | カラオケをやる前から "ハモれるアピール" がすごい |
ハモリ 依存症 | 常にハモっていないと気が済まない。例①:曲の最初から最後までハモりっぱなし 例②:自分がハモれる曲にひたすらハモる。そのために,マイクを常に自分の席の前に常備しておく |
ハモリ 乱入症 | 歌い手の許しを得ずに勝手にハモる |
ハモリ解説 過剰症 | ハモリで気を付けるポイント,入れたハモリがオリジナルハモリであること,その場で即興(アドリブ)でハモったこと,などハモリのスキルや努力について語ってしまう |
ハモリ評価 依存症 | ハモったことについて,他人から「ありがとう」「気持ちよかった」「ハモれてすごい」などの感謝・称賛・評価を求めてしまう |
アドバイス 過剰症 | ハモリの音程のずれや音量などについて,自分はよくわかってるとばかりにいろいろとアドバイスしてしまう。これはハモリに限らず,カラオケ全般に当てはまる症状ですね。 |
ハモラーあるあるってことで笑えるうちはいいんですが,どれも度が過ぎると顰蹙を買ってしまうものばかり。以下,いくつかの症状について掘り下げてみます。
ハモリが得意だったり成功体験が増えてきたりすると,難易度が高いハモリを追求したくなってくる気持ちは理解できます。ですが,だからといってオリジナルハモリやセカンドハモリの方がすごいんだ,高尚なんだ,などと考えるのは間違っています。そういうことは自分の胸の内に留めておき,あくまでも歌い手や聞き手が楽しんでいるかどうかを判断の観点にしてほしいと思います。実は個人的には,これらについてむしろ否定派です。私は原曲忠実派(原曲に近い雰囲気で歌うこと)なので,原曲のハモリを楽しめばよいと考えているからです。セカンドハモリが入るとハモリが厚くなって良いと思い込んでいる人が時々いますが,メインの歌声が相対的に聞こえづらくなったりして,あまり良い効果が出ないケースもけっこうありますので,2人でハモるときはより注意深くハモる必要があると思います。
ハモリ依存症はハモリ中毒の代表的なものと思われ,私も一時期陥っていました。ハモりっぱなしの害は,美味しいものもそればかり食べていると飽きてくる,というのに似ていると思います。例えば「恋人はワイン色」(CHAGE&ASKA)や「DAYBREAK」(男闘呼組)のように,ずっとハモリが入っている曲なら問題ないと思うのですが,そうではない曲に対して,原曲にハモリが入っていない箇所にまでハモリを入れまくり,最初から最後までハモリが続くと,どんなに上手いハモリであってもちょっと食傷気味になりますよね。ハモリがある個所とない箇所があるからこそ,ハモリの気持ちよさが際立つということをわきまえていないと,ハモラーの自己満足に陥ってしまいます。
ハモラー周知過剰症って,アピールがどうして中毒なの?と思われるかもしれません。私の経験上では,アピールが強い人ほどハモリのスキルに問題があり,なんだか鬱陶しく感じられてしまうことが多いのです。昔,ネットでカラオケのメンバーを募った際に,ハモリができることを自己紹介ですごくアピールする方がいらっしゃいました。カラオケの参加者に自分の持ち味を伝えたかったんだと思いますが,ハモリのスキルは実際に歌えばわかるわけですから,アピールが強いのは虚勢を張っている場合が多いなぁと感じます。いったん実力がわかると「ハモリがイマイチなのに,ハモラーアピールが強いっておかしくない?」と思われてしまい印象が悪くなります。
これらの症状からわかるように,ハモリ中毒は,周囲に迷惑をかけたり不快な思いをさせたりします。にもかかわらず,本人は中毒だと自覚していない場合があるので,問題が根深くなってしまうこともあります。私も,自分のホームページでカラオケのオフ会をやっていたときに,後から振り返るとハモリ中毒だったと思われる時期がありました。私の場合は,カラオケの録音がマイブームだったので,録音を聞いて自分のダメさに気付いたことと,オフ会の参加者がダメ出しをしてくれたことが,ハモリ中毒を抜け出すきっかけになりました。言いづらいことをきちんと伝えてくれた参加者の皆さんには,とても感謝しています。
自分の経験や私が接した問題ハモラーを思い出すと,ハモリがトラブルになるのは,ハモラーが自分のハモリを過信したり,歌い手や聞き手への配慮が欠けているときです。ハモラーは,自分が中毒症状に陥っていないかを常に自己確認し,歌い手や聞き手にとって良いハモリになっているかを,自分で勝手に判断せず周囲の反応から感じ取っていくことを,常に心掛けなければならないと感じています。