SMAP の解散は2016年の大きなニュースでしたが,解散がきっかけとなって「世界に一つだけの花」が歴代最高のヒット曲になりました。歴代最高とは,ここでは総合ヒットチャート方式の総得点(=毎週の得点の合計)が,1978年以降で最も大きくなったことを意味します。

 総合ヒットチャート方式とは,伝説のテレビ番組「ザ・ベストテン」に代表される方式で,何種類かのランキングに基づいて独自の総合ランキングを作成する方式です。「ザ・ベストテン」では,レコード売り上げ,ラジオ総合ランキング(TBS系列ラジオ局各局のランキングを集計),有線放送ランキング,ハガキリクエストランキングの4種類を用いて,各ランキングの順位に応じた得点を合計することにより,総合ランキングが決定されました。

 「ザ・ベストテン」では各週の最高得点が 9999 点に設定されており,1週間で獲得できる点数はこれが上限になります。一方,レコードやCDの売り上げは,1週間で一気に100万枚を売ることも可能であり,上限がありません。また「ザ・ベストテン」では,10位でも 6000 点程度になるので,1位に1週間ランクインするより,10位に2週間ランクインする方が総得点が高くなります。よって,瞬間的にヒットするよりも,長い期間ヒットする曲の方が総得点が高くなり,年間ランキングや歴代ランキングで上位に来るのが総合ヒットチャート方式の特徴です。

 例えば,2016年AKB48 のケースを見ると,CD売り上げは年間上位ベスト4を独占していますが,総合ヒットチャートでは年間ベスト10に1曲しかランクインしていません(しかもその曲はCD売り上げ年間ベスト4とは別の曲です)。特に最近は,発売最初の週に爆発的に売り上げた後,2週目以降売り上げが激減する曲が多く,このような曲は総合ヒットチャートにおいても最初の週は上位に来ますが,すぐ下位にランクダウンしてしまいます。これでは,総得点が伸びないので,年間ランキングで上位に来ることができません。近年,CD売り上げと総合ヒットチャートで年間ランキングが全然違っているのは,このような状況があるからです。「世界に一つだけの花」がすごいのは,このような昨今の状況下にもかかわらず,CD売り上げと総合ヒットチャートの両方で数字上の記録を残したことです。

 では,下記の主な超大ヒット曲のデータ(出典:チャート梁山泊)と見比べながら「世界に一つだけの花」がいかにすごいヒット曲になったかを説明していきます。

曲名総得点1位Best10Best20
ルビーの指環196,62712週18週22週
長良川艶歌234,16719週39週
おどるポンポコリン314,7329週30週40週
世界に一つだけの花(2003~04年)251,5216週17週30週
   〃   (2016年)215,9841週26週30週
   〃   (合計)467,5057週43週60週

 ザ・ベストテン時代(1978~89年)のビッグヒットとして多くの方が思い浮かべるのは,1981年に12週連続1位を記録した「ルビーの指環」(寺尾聰)でしょう。ベスト10には18週(約4ヶ月)ランクインし,総得点は約20万点です。総得点=ベスト10ランクイン週数×1万 くらいが目安です。ベスト10に8~10週ランクインし,総得点が10万点に届けば大ヒットと言えるので,「ルビーの指環」はやはりものすごいヒットだったことが数字に表れています。

 しかし,ザ・ベストテンの総得点歴代最高は「ルビーの指環」ではなく,1984年に大ヒットした「長良川艶歌」(五木ひろし)です。この曲は,ベスト10に19週,ベスト20にはなんと39週もランクインしたため,毎週の得点がコツコツと積み上がって23万点もの総得点になりました。この曲は,レコード売り上げはミリオンセラーには遠く及びませんが,総合ヒットチャート方式では上述のようにロングヒットの方が総得点が高くなるので,「長良川艶歌」はその傾向が最も顕著に表れた例です。

 ザ・ベストテン終了直後に,総合ヒットチャート史上最強のヒット曲が登場しました。1990年年間1位の「おどるポンポコリン」(B.B.クイーンズ)です。この年始まったテレビアニメ「ちびまる子ちゃん」の主題歌として大ブームを巻き起こし,ベスト10に半年以上ランクインする超ロングヒットを記録。総得点が初めて30万点を超えました。1990年以降はチャート梁山泊オリジナルランキング(ザ・ベストテンを模したランキングを現在でも独自に作り続けています)なので,厳密に言えばザ・ベストテンの得点と並べて比較することはできないのですが,もしザ・ベストテンが続いていたら同じような点数になっていただろうと思います。ベスト10に30週もランクインするのは驚異的で,もうこのようなモンスターヒット曲は現れないだろうと私は思っていました。

 「世界に一つだけの花」は,2003~04年,ベスト10に17週ランクインし「おどるポンポコリン」に次ぐ総得点を記録していました。ここまででも異例の大ヒットと言えるのですが,解散の風評が流れた2016年当初から再びランクインしてきました。これは,解散を惜しむファンのCD購買運動がきっかけでしたが,売り上げ枚数が伸びて300万枚に近づいたことで,CD売り上げ300万枚を達成しようという流れも加わりました。これにより,2016年だけでベスト10に26週もランクインし,21万点を上積みしました。この得点は,年間1位になった2003年の18万点より高い得点であり,いかに解散を惜しむ声が大きかったかを示しているように思います。年間1位を2回獲るだけでも偉業ですが,それを13年も経ってから達成することは驚きですし,総得点46万点歴代3位と4位(「はじまりはいつも雨」「長良川艶歌」)の合計に匹敵する点数であり,ヒットチャート史上に燦然と輝く記録を残しました。

 2016年暮れにCD売り上げが300万枚に達したことが大々的に話題になりましたが,ヒットチャートウォッチャーにとっては,総合ヒットチャート歴代ランキングで「おどるポンポコリン」の総得点を超えたというのはとても感慨深いニュースでした。CD売り上げだけでなく総合ヒットチャートでも歴代最高を記録したという点で「世界に一つだけの花」は真の歴代最高ヒット曲になったと言えるでしょう。SMAP 解散はとても残念ではありますが,「世界に一つだけの花」という素晴らしい楽曲は,皆さんの心の中とヒットチャートの記録の中で生き続けていくことでしょう。