フィギュアスケート世界選手権シングル女子は,戦前の予想どおり,日本にとって重要かつ難しい試合になってきました。


【女子】

 宮原知子,世界選手権欠場 - 日本にとって痛恨のニュースだった。宮原 は,四大陸選手権とアジア大会に2週連続で出場させられるという日本スケート連盟の無謀な日程を全うしようとしたがために,練習過多になりケガにつながったと考えるべきだろう。ケガによって四大陸選手権とアジア大会を回避したことで,世界選手権に間に合うのではないかという周囲の期待は落胆に変わった。五輪の枠取りに非常に大きな影響が出ることは疑いようがなく,結果がどうなろうと,日本スケート連盟には猛省を求めたい

 ニュースなどでよく言われている「五輪の枠取り」について説明しておきたい。世界選手権の各国選手の成績によって,翌年の五輪に各国から何名が出場できるかが決まる,これが五輪の枠取りである。上位2名の順位の合計が13以下なら,その国からは3名が五輪に出場できる。例年は,世界選手権の成績が翌年の世界選手権の枠取りになるのだが,五輪前年だけは,世界選手権が五輪の枠取りも兼ねるのだ。だから,今年の世界選手権は重要度が違うのだ。

 五輪というスポーツ選手の晴れ舞台は,一人でも多くの選手が経験すべきである。正に「参加することに意義がある」のであり,五輪に何名が出場できるかという問題は,五輪での成績よりもはるかに重要な問題だ。もし3名ではなく2名しか出場できなくなるとしたら,日本フィギュアスケート界にとって非常に大きな損失ではないか,と私は強く思う。

 感覚的に言うと,宮原 が出場していれば3名枠取り確率60%だったものが,世界選手権開始前は30%程度という印象だった。SP(Short Program)が終わった今,その確率は15%ほどに私には感じられるし,もっと低いと考える人もいるだろう。でも,本当にそうだろうか? 勝手に悲観的な観測をしていても始まらない。冷静に分析してみよう。

<SP の順位とスコア(あえて整数で四捨五入)>

  1. メドベージェワ (RUS) 79
  2. オズモンド (CAN) 76
  3. デールマン (CAN) 72
  4. ポゴリラヤ (RUS) 72
  5. チェン (USA) 70
  6. ソツコワ (RUS) 70
  7. ワグナー (USA) 69
  8. コストナー (ITA) 66
  9. 樋口新葉 66

 12. 本郷理華 63
 15. 三原舞依 60

 スコアを整数で書くと,それほど点数の差がないことがわかるだろう。樋口 は表彰台はさすがに厳しいが,5位くらいならまだまだ手が届くし,本郷 や 三原 も8位入賞圏内なら可能性はかなりあるのだ。

 樋口 は FS(Free Skating)でベストの演技をすれば,SP との合計で200点に届く。三原 は転倒にもかかわらずほぼ60点なのが不幸中の幸いで,FS がベストなら合計195点までありうる。メドベージェワ と ポゴリラヤ の安定感は別格でこの2人を抜くのは不可能と思うので,それ以外の6人(オズモンド,デールマン,チェン,ソツコワ,ワグナー,コストナー)が事実上のライバルと考えてよい。この6名の今季の出来から考えて,このうち3人が200点を超え,3人が195点を下回る,というのは十分にありうるシナリオだ。つまり,樋口 と 三原 が6位と7位に入る可能性は案外高いということが言える。もし6人のうち200点超えが1人だけならば,樋口 が4位に食い込み,この場合 三原 は9位でよくなる。これは6人のうち1人だけを抜けばよい計算なので,十分に現実味がある。

 このように,女子の SP はさほど点数の差がつかないので,順位だけを見て絶望的と考えるのは早すぎる。もちろん,樋口 と 三原 の2人がベストパフォーマンスで,他の選手の一部がベストでないという条件が必要だが,マスコミが喜びそうな「奇跡の3枠確保」という結果になる可能性はまあまああるとみてよい。上で確率15%と書いたが,これを書いた後では30%キープでいい気がしている。厳しいことに変わりはないが,全く悲観する状況ではなく,人事を尽くして天命を待ちたい。

 本郷 については上で触れなかった。今季の出来から考えればベストでも合計190点程度であり,SP の上位9人から190点を割る人が出るとは思えないので,枠取りへの貢献は難しいだろう。ただ,開き直ってものすごい演技になり,合計195点まで届くようなことがあれば,樋口 と 三原 のどちらかに不運があった場合にカバーできるかもしれない。本郷 は波がある分,時折素晴らしい演技を見せてくれることがあるので,とにかく良い演技をしてほしいと願わずにはいられない。

 実は枠取りがかかっているのは日本だけではない。ロシアは3枠間違いないだろうが,アメリカ,カナダは日本と同じような状況にある。SP が良かったカナダは,FS で大崩れがなければ3枠を獲れるだろう。アメリカは日本よりは良い状況にあるが油断はできない。日本が3枠を獲るようなことがあれば,そのあおりでアメリカが2枠に沈むことも考えられる。日米で3枠目を争うのはなかなか辛い構図だが,これが現実だ。このプレッシャーがどの国にもかかっている以上,何が起こるかは最後までわからない。