MiharaMai2016America 今シーズンの 三原舞依 選手の活躍は素晴らしかったです。成績を振り返ってみましょう。各項目最後の数字はスコアです。

  • 10月 スケートアメリカ 3位 189.28
  • 11月 中国杯 4位 190.92
  • 12月 全日本選手権 3位 198.17
  • 2月 四大陸選手権 優勝 200.85
  • 3月 世界選手権  5位 197.88
  • 4月 国別対抗戦  2位 218.27
    (国別対抗戦は総合順位を付けませんが,もし付けた場合は メドベージェワ 選手(RUS)に次ぐ2位となります)

 グランプリシリーズの2戦(スケートアメリカ,中国杯)で約190点のスコアを連発し,グランプリファイナル出場まであと一歩の好成績を残したことで,一気に認知度を上げました。その勢いのまま全日本選手権表彰台に乗り,初めて世界選手権の出場権をつかみました。このとき出した約200点のスコアを,その後の国際大会でも出し続けたことは,もっともっと評価されていい点です。全日本選手権は国内大会であり(他国ほど露骨ではありませんが)多少甘めの採点になりますので,それと同等のスコアを国際大会で出すことは,意味があることなのです。

 四大陸選手権平昌五輪と同じリンクで開催され,そこで優勝したことはリンクとの相性の良さを示しました。世界選手権は,五輪枠取りの強烈なプレッシャーの中,ショートプログラム(SP: Short Program)15位から挽回して5位に入る大健闘を見せ,お祭り色の強い国別対抗戦では,フリースケーティング(FS: Free Skating)の歴代日本最高スコアを塗り替え,SP と FS の合計スコアも 宮原知子 選手の最高点まであと0.06点に迫りました。国別対抗戦はジャッジが甘かったという意見もありますが,もしそうだとしても,三原 選手が(私が勝手に超一流ラインと定めた)210点を出せる選手であると認められたことは間違いありません。国別対抗戦のスコアは,今季の安定した働きに対する,スケートの神様のご褒美だと感じます。

 この成績を,シニア昇格1年目で,五輪プレシーズンという重要な時期に残したのですから驚きです。しかも,昨季の今頃は病気療養明けだったというのですから,今季の急成長は奇跡的です。女子選手の急成長は時折見られますが,シーズン途中で息切れすることが珍しくありません。三原 選手は,シーズン後半の大事な大会でも好調を維持し続けましたので,実力は本物とみていいと思います。シニア1年目ということもあってか,時々過小評価の記事を見かけたりしますが,そのような評価はこれだけの成績の選手に対して失礼というものです。現在,女子のトップである メドベージェワ 選手(RUS)は,昨季,シニア1年目でいきなりトップに君臨し,その勢いは2年目の今季も続いています。今季の 三原 選手の健闘ぶりを見る限り,メドベージェワ 選手と同様に,シニア2年目の来季も十分に高いレベルで戦える実力を,この1年で備えたと考えていいと思います。

 特に私が許せないのは,以前にも述べましたが,世界選手権の SP で15位と出遅れたことを,日本の平昌五輪出場枠が2枠になった一因であるかのように報道している記事があったことです。三原 選手が SP で出遅れたことで,樋口若葉 選手により大きなプレッシャーがかかったというような影響はあったかもしれません。しかし,三原 選手の SP が完璧だったとしても,FS で必要なスコアはほとんど変わらなかったのです。

  • 実際の世界選手権では 三原 選手は5位だったので,樋口 選手は8位以上に入る必要があった。(二人の順位の合計が13以下だと五輪出場枠が3枠になる)
  • もし 三原 選手の SP が完璧だった場合,三原 選手は4位になるので 樋口 選手は9位以上に入る必要があった。
  • 8位と9位の点差はわずか0.2点なので,三原 選手の SP が完璧だったとしても,樋口 選手が FS で出すべきスコアはほとんど変わらなかった。

 実際には,三原 選手が FS で完璧な演技をしたことで,樋口 選手が FS で1ミスまでなら3枠獲れるという状況を作ってくれたのです。それなのに「世界選手権で経験不足が出た」や「国別対抗戦はプレッシャーが小さいので高得点になった」といった全く見当違いの記事が,一般スポーツ新聞系から出ていたのには,本当にガッカリしました。表面的な考察で選手に対して厳しい指摘をしたつもりになり悦に入る報道は,選手を貶め,読者をミスリードしてしまうということを,報道する側が認識できていないことが悲しいですね。

 厳しい全日本選手権で結果を出し,四大陸選手権と世界選手権で200点レベルの演技を実施し,シニア1年目かつ五輪プレシーズンの疲労をもろともせず,国別対抗戦で 宮原 選手と同等レベルに到達しているのです。しかも,直前に 樋口 選手が FS 日本女子最高を記録した直後にそれを塗り替えたあたり,柔らかい雰囲気に包まれた内面はかなりの負けず嫌いであることがわかります。これだけの成績とメンタルを「たまたま」「ビギナーズラック」などと言うのはどうかしています。

 ここまでのプレッシャーを受けながら結果も伴う経験をした日本の女子選手は,過去を見てもほとんどいません。今季の経験が強い自信となり,五輪の究極のプレッシャーの中でも堅実な演技を見せてくれると確信しています。さらに,本来は感じる必要がない,2枠にしてしまった責任感を 三原 選手は感じているでしょうから,五輪に出場できた暁にはメダル争いに加わるんだという強いモチベーションを持って臨むはずです。実績,メンタル,モチベーション,全ての面において,宮原 選手以外では一歩抜け出た存在になっていると思います。順当にいけば,宮原知子,三原舞依 の両選手が平昌五輪の出場枠をつかむでしょうし,この4年間の努力や結果が報われるのはこの2人であってほしいと思います。

 今季の FS の曲目「シンデレラ」は,文字どおり 三原 選手のシンデレラストーリーを生み出した名プログラムとなりましたが,曲,振付,衣装には,やや "ジュニア上がり感" が否めないものでもありました。五輪用のプログラムは,三原 選手の技術と柔らかいスケーティングが存分に生かされた,今季よりさらに洗練された内容になることを期待します。一番恐れるのは,大人の表現を重視するあまり,本人に合わない重厚なプログラムになってしまうことで,これでは 三原 選手の良さは消えてしまいます。路線は今季のままが良いと思いますので,背伸びせずに少しだけ洗練さを加えたプログラムが手に入れば,平昌五輪では本当にメダル争いに加われると思います。五輪シーズンの 三原舞依 選手が今からとても楽しみです。