spnvLogo本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です。


 フィギュアスケートの平昌五輪の代表がどのように決まるかについて,スポナビブログ読者なら熟知されている方も多いとは思いますが,今シーズンの観戦における大事なポイントだと思いますので,私なりに整理してみたいと思います。

figureSkate2017Schedule 9月は各選手の演技を観る機会がありましたが,それはあくまで前哨戦でした。10月のグランプリシリーズからいよいよ本格的な戦いがスタートします。平昌五輪までの主要大会のスケジュールを右図に示します。

 四大陸選手権は,時間軸を考えると五輪代表選手は回避すると思いますので,カッコ書きとしました。もうあと4ヶ月半で平昌五輪を迎えるなんて,あっという間ですね。

 グランプリシリーズは,6週連続で毎週末,世界各地で開催される計6回の大会の総称です。有名選手はこのうち2回に出場し,シングル男女各々成績上位者6名のみがグランプリファイナルに出場できます。成績上位とは出場大会の順位の合計が小さい順であり,例年は合計6(1位&5位,2位&4位,3位を2回)以下ならほぼ出場できます。グランプリファイナルは,男子は 羽生結弦 選手がソチ五輪のシーズンから4連覇中,女子は メドベージェワ 選手(ロシア)がシニア1年目から2連覇中であり,絶対王者・絶対女王と呼ばれる2人が無類の強さを誇っています。

 グランプリファイナルは,過去に日本の主力選手が数多く出場したので,出場はさほど難しくないかのように感じてしまいますが,けしてそうではありません。シングル女子では,宮原知子 選手が2年連続出場中ですが,昨季活躍した 三原舞依 選手や 樋口新葉 選手でさえ,グランプリファイナルには出場できませんでした。グランプリファイナルに出場することは,シーズン前半に世界のトップ6に入ることを意味しており,一流スケーターの証と言えるでしょう。後述でも触れますが,日本の代表選考においてもグランプリファイナルは重視されています。

 言わば,グランプリシリーズはグランプリファイナルの予選のようなものです。予選2戦で好成績を上げ,本選に相当するグランプリファイナルに進むのは誰か。これが10~12月の観戦のポイントになると思います。

 そのグランプリファイナルからわずか2週間後に全日本選手権があります。グランプリファイナルに出場する選手は特に,コンディション調整が過酷だろうなぁと毎年思います。全日本選手権は全選手にとって重要な大会であり,五輪の最終選考会でもありますので,緊張感はものすごいものがあると思います。特にシングル女子は,出場枠が2枠ということもあり,壮絶な戦いになることが予想されます。

 さて,平昌五輪代表の選考基準を改めて確認してみましょう。

  ① 全日本選手権の優勝者
  ② 全日本選手権2位・3位
  ③ グランプリファイナル出場者上位2名
  ④ ワールドスタンディング上位3名
  ⑤ シーズンワールドランキング上位3名
  ⑥ シーズンベストスコア上位3名

【シングル男子】 ①の1名,②③の中から1名,②~⑥の中から1名,計3名
【シングル女子】 ①の1名,②~⑥の中から1名,計2名

 「ワールドスタンディング」とは,いわゆる世界ランキングのことで,過去3年間の主要大会の成績をポイント化したものです。ですから,女子で言えば 宮原 選手が有利になり,昨季までジュニアだった選手(例.本田真凛 選手,坂本花織 選手)はポイントが低いです。そこで,今シーズン好調な選手も候補者にするという上記⑤⑥の基準を入れることで,シニア1年目にもチャンスが生まれます。

 グランプリファイナルに出場できれば代表選考にかなり有利ですが,たとえそこで優勝しても代表確定ではありません。したがって,選手は全日本選手権に全精力を注ぐことになります。この選考基準は,グランプリシリーズ(とグランプリファイナル)をどう戦うかの戦略を悩ましくしてしまうと思います。グランプリシリーズ&ファイナルを全力で臨むと,全日本選手権にピークを持ってくることが難しくなるからです。かと言って全日本選手権のピーキングを意識し過ぎると,グランプリシリーズが中途半端な成績で終わってしまう恐れがあります。

 個人的な考えとしては,グランプリシリーズに全力で臨み,そこで成績が残せなかった場合は全日本選手権に最後の望みをかける,という戦略が良いと思います。グランプリファイナルに出場すれば最高レベルの国際大会を経験でき,この経験を選考する側は軽視できないと思います。上記の選考基準②③で考えると,グランプリシリーズ&ファイナルで2~3戦頑張った選手と,グランプリシリーズが今一つながら全日本選手権だけ表彰台に乗った選手なら,前者を選出したくなるのではないかと思います。またグランプリシリーズで好成績を上げれば,選考基準にあるワールドスタンディングやシーズンワールドランキングが上がっていくので,仮にファイナルに残れなくても選考上有利になります。

 実際の選考では,シングル女子の2人めは上記②③によって決定されると思います。なぜなら,②③ではなく④~⑥によって選出される状況が生じるとは考えにくいからです。そんな状況が生じる可能性があるのは,グランプリファイナルに誰も出場できず,有力選手が全日本選手権で総崩れになり,2位と3位を意外な選手が占めるというケースですが,現在のシングル女子の層の厚さを考えれば,このようなことが起こる可能性は極めて低く,②③の選考基準に有力選手が入ることは間違いないでしょう。むしろ,選考が難航しそうなのは,②③の複数の該当者の中から誰を選出するかです。すんなり決められない状況になれば,今シーズンのあらゆる大会の成績から総合的に判断されることになります。ですから,代表選考の予想をしながら観戦したい方には,全ての大会をくまなく観戦することをお勧めいたします。

 グランプリシリーズ,グランプリファイナル,全日本選手権を経て平昌五輪の代表が決まるまであと3ヶ月弱。いったい年末には誰が代表の座を射止めるのか,特にシングル女子は,一戦一戦目が離せないすごいシーズンになりますね。