ロシアワールドカップ初戦に勝利し,まさかの好発進となったサッカー日本代表。世間のムードが戦前から一転して明るくなる中,日本 が置かれている状況はまだまだ楽観できません。

 コロンビア 戦は,開始3分で相手がレッドカード一発退場という,願ってもない展開になりましたが,こういう展開を 日本 は一番苦手にしていますよね。勝たないといけないゲームだ,となったとたんにぎこちなくなるという…。先制されしかも一人少なくなった コロンビア は明らかに動揺していましたから,1点先行したから無理せずに…なんていうセオリーよりも,その場の空気を感じて強気で2点目を取りに行くべきだと個人的には思いました(有識者にはあれでよいという意見が多いようですが…)。経験値の高い選手が多いがゆえに,そういう勢いに乗っかるような試合展開を作れなかったことで,最終的に 2-1 という僅差のスコアに落ち着いてしまいました。前半15分までに猛攻でもう1点取れば,3-0 や 4-1 というスコアにもなりえた試合で,そうなれば コロンビア は打ちのめされ,立ち直ることなくグループリーグ敗退となったことでしょう。

 試合の流れの面では,グラウンダーのフリーキックを止められずに失点し,一人少ないのみならず明らかに調子が悪い相手に対して,流れの中で得点が取れず,コーナーキックによる得点も普通なら確実にクリアされてしまうキーパー真正面へのキックでした。ワールドカップは結果が全てなので,コロンビア に勝利したことはものすごく価値あることですが,内容は特に攻撃面に関しては課題だらけです。開始早々のPK & 一発退場と,コロンビア のパフォーマンスの悪さに助けられて勝てたようなものです。

 次戦の相手となる セネガル は ポーランド を破り,日本 のいるグループHは初戦が2戦ともジャイアントキリングになりました。2-1 というスコアや,2得点の取り方(オウンゴール,相手バックパスのミス)を表面的に捉えてはいけません。内容を見ると,素晴らしい組織的守備と,個の高い能力による攻撃を見せ,ポーランド よりもはるかに良いパフォーマンスでした。ポーランド のエースである レヴァンドフスキ 選手を完全に封じ込んだところを見ると,セネガル のスカウティングや戦略もかなり高度だと感じます。

 セネガル vs ポーランド 戦は,日本 vs コロンビア 戦より明らかに試合の質が高かったですから,現時点では セネガル が間違いなくグループH最強です。日本 が コロンビア 戦レベルのパフォーマンスだと,セネガル には確実にやられてしまうでしょう。初戦に勝ってメンタル面の自信を持つのは良いですが,戦術やパフォーマンスにまで自信を持ったとたんに,足をすくわれてしまうと思います。初戦が大事だと思い過ぎて,セネガル 対策がどうしても不十分になる恐れがあり,セネガル 戦は不安材料が尽きません。

 どうすれば セネガル を攻略できるでしょうか。詳しいことは有識者にお任せするとして,コロンビア 戦と同様に試合の序盤に攻勢を強め,早く先制することが勝利への絶対条件になるでしょう。前半15分のうちに点が取れなければ,苦しくなると思います。セネガル は基本的には相手に攻めさせてカウンター攻撃というチームなので,日本 が攻めあぐねていると,すぐに 日本 の動きに慣れ,カウンターで得点し,その後は守備を強める,という戦い方をされます。そうなると 日本 が点を取るのは難しくなると思います。ただ,セネガル は,ポーランド 戦ではそれほど強度の高い攻撃を受けておらず,日本 がベストパフォーマンスの攻撃を出せれば何度かチャンスを作れると思いますので,そこで決められるかどうかでしょう。1点の失点は覚悟せざるを得ませんので,勝つとすれば 2-1 という コロンビア 戦と同じスコアが目標になります。2点取るためには,先制してリードしたままゲームを進め,セネガル を前がかりにさせて守備組織を崩し,追加点を取ることが必要になるでしょう。

 コロンビア 戦で 日本 はあまり疲労せずに済みました。これは セネガル 戦には大きなプラス材料です。私は,コロンビア 戦の疲労を考慮してターンオーバーという奇策を提案(⇒過去ブログ参照)しましたが,そこまでの疲労がないですし,勝った時はメンバーを動かさないのが常道なので,ターンオーバーどころか別選手の起用もほぼないでしょう。ただし,ゴールキーパーの 川島 選手だけは,あまりに頼りないので変えるべきです。セネガル からの強烈なシュートを防ぐには,中村 選手を私は推します。

 日本 は セネガル に勝てれば申し分ありませんが,負けてもガッカリすることはありません。3戦目の ポーランド も難敵ですが,彼らは コロンビア 戦が死闘必至なので,かなりの疲労を抱えて 日本 と戦わなければなりません。セネガル よりも ポーランド の方が勝てる可能性が高い,というのがフタを開けてみての現実であり,セネガル に負けて ポーランド に勝つ,というのは不可能ではないシナリオです。ただ,ポーランド から見れば 日本 に負けるわけにはいきませんので,タフな戦いになることは間違いなく,日本 が連敗して結局グループリーグ敗退となる可能性もかなり残っています。

 今後の勝敗の展開を考えてみます。セネガル に勝てば,3チームが勝ち点6で並ぶケース(ポーランド 連勝,セネガル が コロンビア に勝つ)で得失点差等の勝負になる以外は,グループリーグを突破できます。問題は引き分けや負けの場合ですね。

《セネガル と引き分け

・日本 と セネガル が共に 1勝1分け:勝ち点4 になります。この場合,コロンビア vs ポーランド で勝った方が生き残り,負けた方は敗退決定となります。2強の一角が3戦目を待たずに敗退決定という衝撃の展開になるので,引き分けもそう悪くないシナリオです。ただ,ポーランド が生き残ると,3戦目で対戦する 日本 が厳しい戦いを強いられるので,日本 としては コロンビア が勝ってくれる方がいいでしょう。

コロンビア vs ポーランド が引き分けると,日本 は3戦目で引き分け以上なら突破,負けても得失点差等の勝負に持ち込めます。もし3戦目に コロンビア と ポーランド が共に勝つと,4チームが 1勝1敗1分け:勝ち点4 で並ぶという珍事が発生する可能性もあります。

《セネガル に敗戦

コロンビア vs ポーランド で ポーランド が勝つと,日本 vs ポーランド 戦がリーグ突破決定戦になります。

コロンビア vs ポーランド で コロンビア が勝つと,日本 と コロンビア が 1勝1敗:勝ち点3 で並ぶので,3戦目が コロンビア より良い結果であればリーグ突破になります。もし 日本 と コロンビア が共に負けると,ポーランド を含む3チームが 1勝2敗:勝ち点3 で並び,得失点差等の状況次第では勝ち点3でもリーグ突破の可能性が出てきます。また,日本 と コロンビア が共に勝つと,セネガル を含む3チームが 2勝1敗:勝ち点6 で並び,2勝してもリーグを突破できないという,あのアトランタ五輪「マイアミの奇跡」の時と同じ状況になる可能性もあります。

コロンビア vs ポーランド が引き分けだと,日本 は3戦目引き分けでも可能性が出てきますが,コロンビア が セネガル に勝てば 1勝1敗1分け:勝ち点4 で並ばれ,得失点差等の勝負で抜かれる可能性があります。

・つまり,セネガル に負けてしまうと,ポーランド と引き分けで突破できるケースはかなり限定的ですから,やはり ポーランド に勝つしかないということになります。

 以上を総合すると,日本 は セネガル 戦が引き分けか負けならば,ポーランド 戦は勝利が必要になると言ってよく,まだまだ厳しい状況なのです。ポーランド がリーグ突破の可能性を残した場合,ポーランド 戦はハードなゲームになるでしょうから,セネガル 戦を勝つに越したことはありません。戦前の「勝つべき相手」から現在は「勝っておきたい相手」という状況に変わり,戦前とは違った位置付けで セネガル 戦が重要なゲームになりました。パフォーマンスをもう一段高いレベルに上げて,良いゲームにしてほしいと願っています。

 そして,今後の展開を見据えると,コロンビア が ポーランド を叩いてくれれば 日本 にはありがたい展開になります。コロンビア が息を吹き返せるのか見守りたいところですが,レッドカードをもらった C.サンチェス 選手はボランチのキープレイヤーであり,次戦も出場停止なのは痛手でしょう。ハメス・ロドリゲス 選手も正直なところ起用できるレベルではなく,残りの選手たちの奮起に期待するしかありません。コロンビア vs ポーランド 戦は,負ければグループリーグ敗退決定という,正に「本当に負けられない戦い」であり,非常に見応えのあるゲームになることは間違いないでしょう。