さいたまスーパーアリーナで開催中のフィギュアスケート世界選手権は,SP(Short Program,ショートプログラム)が終わりました。FS(Free Skating,フリースケーティング)はどうなるでしょうか?

◆女子シングル

 坂本花織 選手が素晴らしい演技を披露しました。スケーティングがとても柔らかく,ジャンプがプログラムに溶け込んでいました。FSも全日本選手権を超える演技になると私は確信しています。紀平梨花 選手がミスしたら 坂本 選手が優勝をさらう,という展開になってきました。世間では「ザギトワ 選手(ロシア)が逃げ切るか 紀平 選手が逆転か」という報じ方になっていますが,優勝候補の筆頭に 坂本 選手が躍り出たと私は思います。滑走順が ザギトワ 選手より前になったことも幸運ですね。坂本 選手が完璧なら,ザギトワ 選手がわずかな綻びを見せただけで逆転できると思います。

 紀平 選手は,3A の予定が 1A になり0点になった(←SPでは 2A 以外の2回転以下の単独ジャンプは0点)にもかかわらず,スコアが70点に乗ったのがせめてもの救いで,まだ逆転の目があります。FSで 3A を2本成功させることは優勝の絶対条件になりますが,FSのプログラム「A Beautiful Storm」は 紀平 選手にとてもフィットしていますし,開き直るしかない状況なので,完璧な演技になる可能性がかなり高いです。

 今大会は PCS (Program Component Score,演技構成点)が厳しめな印象があるので,スコア 160 点は難しいですが,158 点までは到達可能でしょう。その場合,ザギトワ 選手は 147 点,坂本 選手は 152 点で 紀平 選手より上位になりますが,この点数は2選手にとってかなり高く,これが 紀平 選手に逆転の目があると考える根拠です。ただ,今大会絶好調の 坂本 選手なら,全日本選手権で出した 152 点を国際大会である世界フィギュアでも出せると思いますので,坂本 選手の優勝の可能性が最も高いと上述したのです。

 宮原 選手は,ジャンプの回転不足が出てしまったのが厳しいですね。気をつけていたにもかかわらず回転不足を取られたことで,FSではジャンプをきちんと飛ばなければ,という重圧がかかってきます。修正能力の高い 宮原 選手ではありますが,FSでも回転不足やジャンプミスが出てしまいそうです。表彰台は限りなく厳しくなってきました。

 ザギトワ 選手は,全てが完璧なら上述した 147 点は超えられると思いますが,どこかでミスが出るか,ミスはなくても完璧とは言えない出来の場合,今シーズンの実績から考えると 147 点に及ばない可能性がかなりあります。SPが完璧だったことでやっと優勝争いに絡める状況になっただけであり,今シーズンの鬼門であるFSを完璧に演じられるかどうかは,まだまだ予断を許しません。表彰台はほぼ手中にしたと言えますが,優勝を手にするには,坂本,紀平 両選手のミスが出た状況で,ザギトワ 選手が完璧に演じることが条件になりそうです。

 優勝は僅差で 坂本 選手,2位と3位を 紀平 選手と ザギトワ 選手が争うと予想します。3選手の誰かがかなり崩れた場合,四大陸選手権から好調を維持する トゥルシンバエワ 選手(カザフスタン)が表彰台に乗る可能性が出てきました。SPの調子を見る限り,FSの 4S は成功の可能性が高いと思いますので,どこまで迫れるか楽しみです。

◆男子シングル

 羽生結弦 選手は,SPはミスなく演じられると予想していたのですが,やはりケガのブランクによる試合勘の弱さが出てしまいました。どんなに練習が順調でも,試合は別物だとよく言われますからね。追い込まれたときの 羽生 選手は強い,という過去の実績から逆転を期待したくなりますが,FSはSPよりもさらに正直に選手のコンディションが表れますので,厳しい戦いになると思います。FS演技時間後半の3つの連続ジャンプ,特に 羽生 選手にしかできない 4T+3A を成功させてほしいですね。

 宇野昌磨 選手は,リードを奪う絶好のチャンスだったにもかかわらず,羽生 選手に付き合ってしまいました。今シーズンのSPは 4T+3T に苦労していたのですが,今大会ではその前の 4F を失敗するという予期せぬ展開でした。ただ,そこですぐに切り替えてあえて 4T+2T を選択し踏みとどまりました。4T+3T を成功させた場合より4点ほど下げた形ですが,失敗すれば優勝は絶望的だったことを思えば,首の皮1枚つながったと言えます。今シーズンのFSは比較的良いですし,無心で集中し完璧な演技をしてスコア 200 点を出せれば奇跡の逆転の目も出てきます。ただ,その可能性は,女子の 紀平 選手の逆転優勝よりも難しいでしょう。

 ネイサン・チェン 選手(米)が今シーズンの好調さそのままに,SPで貯金を作りました。大舞台で力を出し切れないかも,とは言ってもSPを見る限りその可能性は低そうですし,羽生 選手と 13 点差,宇野 選手と 16 点差は,よほど大崩れしない限り追いつかれない点差です。ただ,4回転ジャンプは失敗すると一気に点数が減ってしまうので,2回大きなミスが出ると勝負はもつれます。しかし,その可能性はかなり低いでしょう。チェン 選手が優勝をほぼ手中にし,宇野,羽生 の両選手がわずかな可能性に賭ける,という展開です。

 素晴らしかったのは ジェイソン・ブラウン 選手(米)。大好きな日本で,やっと会心の演技ができました。ほとんど準備動作なく,流れの中で飛ぶジャンプの質が凄い。順位は二の次で,FSも完璧な演技を魅せてほしいと願っています。