私は,ヒット曲の音域をデータベース化する「ヒット曲音域データベース」(以下「音域DB」と略記)というサイトを作っていますが,最近調べたある曲が,男声曲(約650曲登録)の中で音域が一番広かったので紹介いたします。その曲とは,King Gnu白日」です。

▼白日 - ヒット曲音域データベース
https://mak-k.herokuapp.com/VoiceRangeDB/data/6184920

 昨年(2019年)を代表する1曲であり,昨年の紅白歌合戦でのパフォーマンスが記憶に残っている方も多いと思います。冒頭は裏声から入り,Bメロ~サビは独特のグルーブ感から超高音の裏声で駆け抜けていきます。音域が広いだろうことは想像していましたが,男声曲の最高記録とは驚きました

 この曲は2人のボーカリストがオクターブ上下を歌うので,どちらを主旋律と考えるか,言い換えると「1人で歌うならどのパートを歌うか」の解釈によって音域が変わってきます。曲の大半は,高音のパートが主旋律だと判断できるのですが,微妙なのはBメロ(♪今の僕には何ができるの~)です。ここは,音源を聞くと低音パートのボーカルがやや強めに感じられることと,実際に歌ってみると低音パートの方がしっくりくることから,Bメロは低音パートを主旋律と判断しました。

 この,Bメロの主旋律を低音パートにしたことが,音域が広くなった本当の要因です。もちろん,サビの裏声がかなりの高音(ファ#)であることも要因の1つではありますが,このレベルの高音を出す男声曲は全く無いわけではありません(音域DBへのリンク)。Bメロの低音パートにはそこそこの低音(シ♭)があり,これが音域を広げているのです。高音の曲は,曲全体の音程が高く低音がさほど低くならないことが多いのですが,「白日」は低音もなかなか低いので,音域が広くなりました。

 音域DBのサイトでは「白日」の音域幅が 2:40 と表示されています。これは,最高音と最低音の差が2オクターブ+8半音であることを表します(半音を :05 とする時間表記方式)。これがどのくらい広いのかは,他の曲と比較することにより見えてきます(音域DBへのリンク)。サザンの大名曲「TSUNAMI」や,超高音裏声が炸裂する 宇多田ヒカル 「Wait & See」より音域が広いことから,「白日」のすごさがわかると思います。

 これだけ音域が広いと,正確な音程で歌いきるのはかなり難しいです。声が低めな人はサビの裏声が出ず,声が高めな人はBメロの低音が出ません。声が高めな人は,Bメロを高音パート(オクターブ上)で歌うのも一策だと思います。ただ「白日」は,音程のみならず,Aメロの裏声,サビのグルーブ感,歌詞の譜割りなど,高度なテクニックが満載の超難曲です。1人で歌おうとせずに,King Gnu 本人たちと同様に2人でオクターブ上下を歌う方が,音域も緩和され,歌の迫力も出るのでお勧めです。