マイクを持てば酔っぱらい

~カラオケをこよなく愛するITシステムエンジニアのブログ~

2014年03月

世界フィギュア選手権2014:男子シングルやりました!

点差わずか0.33。羽生選手と町田選手が生み出した,日本フィギュア史上最高のドラマティックな大激闘!

ショートプログラム(Short Program)。町田選手の「エデンの東」。初めて観た瞬間にここまで心を掴まれたプログラムは今までありませんでした。個々の演技要素の流れと音楽が見事にマッチしているのです。以来,今季ずっと町田選手を応援し続け,観るたびにどんどん完成度が上がっていき,世界フィギュアでついに驚異の自己ベストを記録。羽生選手とチャン選手(CAN)しか到達していない98点台を叩き出しました。最後のスピンのときから観ている私は鳥肌が立ち続け,演技が終わったときテレビの前でまるで観客かのようにしばらくの間拍手を止められませんでした。演技が終わりガッツポーズをせずに余韻を味わう町田選手の姿は美しかった。技術的にも芸術的にも完璧。町田選手が演技のことを「作品」と称する意味を私は初めて心から理解できたような気がしました。

羽生選手は,明らかに普段と違う雰囲気をたたえていました。五輪金メダリストで迎える大会。しかもチャン選手は不在。勝って当たり前という試合ほど難しいことはありません。滑り出してからもふーっと息を吐きリラックスしようとしている姿に嫌な予感を感じた瞬間,4回転トーループジャンプを転倒。まさかの追う展開となりますが,彼の凄さは,失敗を引きずらないこと。その後のジャンプをきっちりまとめて,町田選手と7点差に留めたことが大激闘の伏線になりました。

フリースケーティング(Free Skating)。町田選手の「火の鳥」はこれまた名プログラム。今大会は2年間演じ続けた集大成です。今季は私が福岡で生観戦したグランプリファイナル,さらに続く全日本と,ミスのない演技ができていたのですが,どちらも成功させることに必死という状態でした。ソチ五輪では4回転ジャンプにミスが出てメダルを逃すことになります。何としても最後は完成度の高い演技を…町田選手はそう強く望んでいたはずです。そして実際に,前半の3つのジャンプとステップシークエンスまでは,緊張感と冷静さが高い次元で融合している,そう感じさせてくれる内容でした。後半は着氷がぐらつくなどヒヤッとするところはありましたが,今までのような「こなすだけで精一杯」という雰囲気ではなく,気持ちの余裕そして強さが感じられるような演技でした。世界フィギュアでは演技がミスなくできれば満足と言っていいと思うのですが,今大会の「火の鳥」は表現をも追求した演技になっていたと思います。審判もそれに呼応するかのように高い得点を出し,184点台という自己ベストを達成しました。

その町田選手を競馬で喩えると「ハナ差で差し切った」のが,2001-02年シーズンのヤグディン選手以来2人目となる同一シーズン3冠を達成した羽生選手でした。けして楽にとれた3冠めではありませんでしたが,それでもきちんと結果を手にするのが,彼の強さであり凄みでもあります。しかし,この僅差は少し予想外でした。羽生選手が4回転サルコウジャンプを含む全ての技術要素を成功させたのを見て,私は195点を予想しましたが,実際には191点台に留まり,4回転サルコウを失敗したグランプリファイナルでの自己ベスト193点台を超えられませんでした。今大会では個々の演技要素の出来ばえがさほど良くなく,出来ばえを評価するGOE(Grade Of Execution)の点数を積めなかったようです。追う立場で勝ちにこだわったことで,演技の細かい部分の完成度を上げられなかったということでしょう。とはいえ,この状況で自己ベストに近い点数を出せるのですから,やはり羽生選手は強靭なメンタルの持ち主であると改めて思います。

五輪直後の世界フィギュアは,例年どうしてもレベルが低くなりがちです。しかし今回は,五輪での演技ミスや日本開催といった状況があり,羽生選手にも町田選手にも高いモチベーションが維持されました。その結果は,両選手ともソチ五輪の優勝得点を上回る合計282点台を出しました。しかも,2004年以降現行の採点制度になってから,1位と2位の点差0.33は史上最小,6.97点差からの逆転は最大点差だそうです。ホームアドバンテージをしっかり生かして,日本男子史上初の1-2フィニッシュを達成し,このドラマティックな激闘を生み出した2人のスキルとモチベーションは,本当に素晴らしいと思います。2人揃ってのインタビューで見せてくれた言葉のかけ合いは,ライバル同士が持つ刺激と尊敬に満ちあふれ,爽やかで清々しく,じんわり心が温かくなる光景でした。羽生一強時代到来かと思われましたが,あと1年は町田選手が共に戦ってくれる存在になりそうで,羽生選手にとっても大いにプラスに働きそうです。

その意味でも,町田選手の今年の成長と世界フィギュアの結果は,特筆すべきものと思います。初出場,しかも五輪直後の世界フィギュアで,SPとFSが共に自己ベスト,しかも今までを合計17点上回る…本当にとてつもなく凄いことを町田選手はやってのけました。どうしても羽生選手に注目が集まってしまいますが,今年の町田選手の軌跡と2つの名プログラムを,私は強く心に刻みたいと思います。

羽生結弦への大いなる期待

 伝説の序章を,私たちは目撃しているのか。

 羽生選手が,ソチ五輪唯一の金メダルを獲得しました。金メダリストということで,帰国後いろいろな場所に連れ回されないか心配でしたが,案外早く練習拠点のカナダに戻りました。これで,世界フィギュアにもあまり悪影響が出ずに済みそうです。羽生選手には,2002年のヤグディン選手(RUS)以来となる同一シーズン三大大会制覇(グランプリファイナル,五輪,世界選手権)がかかっていますので,早くリンクに戻ってくれてホッとしています。

 羽生選手が世界ジュニアを制した頃から,友人に勧められチェックし始めました。ジャンプのスキルの高さ,女子のような柔らかい表現,中世的な風貌が,今までの日本人にいないタイプでしたし,ジュニアからシニアに上がり成長の過程にあったので観るたびに演技が良くなっていく楽しみがありました。シニア1年目からトップ選手に十分対抗できる力を見せ,五輪3枠の一角に食い込めるだろうという期待が高まっていきました。

 そんな矢先,東日本大震災が発生します。羽生選手が被災しとても苦労したことは,いろいろなところで語られているとおりですが,私が驚いたのは,震災を経て彼の発言が劇的に変化したことでした。震災前は,高校生らしい若くて邪気のない発言が多かったのですが,震災後は別人のように大人びた雰囲気をたたえ,周囲への感謝と自身の情熱をよどみなく語るようになっていました。環境はここまで人を変えることができるんだ,と感心しつつも,大震災はそれだけ人の心に刻みつけられるものなのだ,と考えさせられることでもありました。

 その後,羽生選手はブライアン・オーサーコーチに師事するという驚くべき選択をします。あのキム・ヨナを育てたオーサーコーチを選択したことに対して,世間ではかなり嫌悪感や反感が出ました。日本人にとってその選択だけはないんじゃないか,と思う気持ちは致し方ないところです。ただ,五輪の結果だけ見ればこの選択は大正解だったことになります。オーサーコーチは,キム選手同様,羽生選手にも見事な戦略を立ててくれました。よくよく考えると,これだけきちんとした戦略を立て,技術的指導もしっかりしているコーチが他にいるでしょうか。国内のコーチは戦略面で物足りないですし,ロシアのコーチは戦略や考え方が古い(浅田選手に対するタラソワコーチの戦略がその最たる例)。オーサーコーチは,選手時代に五輪の金メダルを獲得することができませんでした。おそらく,人生経験の中で金メダルの重要性を痛感していたのでしょう。教え子を2大会連続で金メダルに導いたことは,大変な偉業です。羽生選手がオーサーコーチに師事する幸運があったことを,私たちも素直に喜びたいと思います。

 ソチ五輪で羽生選手は金メダルを手にするだろうと予想はしていましたが,正直なところ銀メダルでも十分だと思っていました。まだ羽生選手は若いですし,この4年間の功績からすると金メダルを取るべきなのはチャン選手(CAN)だったからです。現に,羽生選手はフリーではミスが多く,チャン選手が普通にできれば金メダルを獲れる状況ができましたが,チャン選手もフリーでミスを頻発しチャンスを自ら逃してしまいました。今季グランプリファイナルから始まった,羽生選手の急速な追い上げにチャン選手が屈した格好になり,一気に羽生選手の天下になったということができます。

 五輪金メダリストともなれば,世間の注目度も急上昇してきます。フィギュアフリークにとどまらないライトなファンも増えるでしょう。そして,ファンが増えればどうしても熱狂的なファンが出てくるでしょう。熱狂的なファンは,応援してくれるありがたい存在ですが,時に度を越してしまうこともあります。髙橋選手や浅田選手の熱狂的なファンの中には,他の選手への態度に問題がある(声援を送らない,過度に非難する)人がいることも事実です。羽生選手にはそのような変に熱狂的なファンが増えないことを祈るばかりです。そして,ファンが増えても自信過剰にならず,華麗さと謙虚さを高い次元で融合させ,発言にも気を配り,ファンを魅了していってほしいと思います。

 ライバルの状況を見ると,これから実力が伸びそうな選手は限られており,4年後の平昌五輪まで男子フィギュア界が羽生選手を中心に進んでいくことは間違いありません。おそらく羽生本人は,五輪2連覇~3連覇を夢に描いているでしょうし,それに向けて毎シーズン常にトップ争いをすることを考えていると思います。この先,世界フィギュアを何回勝てるか,点数が合計300点を超えてどこまで伸びていくのか,それを目の当たりにできる私たちはとても幸運です。とてつもない強さを見せ続け,世界のトップに君臨する日本人スケーターの出現を,私は期待して見守りたいと思います。

町田選手,髙橋選手,五輪お疲れ様

 町田選手,5位入賞おめでとうございます。今年の好調ぶりや,プログラムの素晴らしさを思えば,銅メダルを取ってほしかったです。しかし,世界フィギュア未経験でメダルが取れるほど,五輪は甘い場所ではなかったということなのでしょう。ただ,フリーでは冒頭4回転の転倒を引きずらない粘り強い演技により,ショート11位からの追い上げは見事でした。この悔しさはぜひ世界フィギュアで晴らしてほしいと思います。

 それでも,2年前は世界と戦えるレベルになかったところから,お世辞抜きでメダルが狙えると評されるところまで成長した姿には,とても感動しました。町田語録で存在感を発揮し,団体戦のフリー出場者では最高の成績を残し,前回五輪に続く日本男子全員入賞に貢献しました。町田って誰?って思ってた皆さんも,やっぱり日本男子陣はすごいんだなって思ってくれたことでしょう。

 髙橋選手,申し訳ないのですが私はおめでとうという言葉をかける気持ちが起こりません。今回の成績や今季の戦いについて猛省してほしいと思っています。私が生観戦した今季グランプリファイナルの出場を楽しみにしていたのですが,欠場してしまったことで髙橋選手への応援熱が弱くなってしまいました。日本開催の大会や全日本を控えた肝心な時期に怪我をすることがそもそも問題です。ただ,怪我はやむを得ないこと,その後の立ち居振る舞いに髙橋選手らしさが感じられなかったことの方が私には残念でした。怪我が治りきらない状況での全日本で,不安オーラ全開,演技後の憔悴,代表決定時の申し訳なさそうな笑顔,それらは日本を引っ張ってきた第一人者として振る舞ってきた今までの彼の姿ではありませんでした。私はこの姿を見て髙橋選手が代表に選出されるべきではないと感じていました。そして,ソチでは精神的支柱でもなく,怪我も完治せず,結果も6位。この結果はある程度予感されたものだったと言えるでしょう。

 しかし,それで髙橋選手の功績が色褪せるものではありません。世界ジュニア優勝,五輪メダル,世界フィギュア優勝,グランプリファイナル優勝,これらの日本男子初はすべて髙橋選手によるものです。日本男子を世界レベルに引き上げたのは紛れもなく彼の開拓の賜物であり,羽生選手の金メダルも当然その歴史に導かれたものです。髙橋選手が強くなるにつれ,いつしかスケーティングの芸術性を高め,日本の第一人者としてメディアに発信していく姿には,たびたび感動させてもらいました。髙橋選手はまだ進退迷っているようですが,今年の世界フィギュアは日本開催。大勢のファンに見守られ,花道に相応しいのではないかと私は思います。
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