NHK杯によって確定するグランプリファイナル進出の行方ですが,NHK杯が実力どおりに決着した場合,下記のメンバーになると思います。
- 男子: 【進出決定者】 フェルナンデス(ESP),宇野,チャン(CAN)
【NHK杯で決定】 羽生,コフトゥン(RUS),ジン(CHN) 【特例出場】 村上 - 女子: 【進出決定者】 ゴールド(USA),メドベージェワ(RUS),ラジオノワ(RUS)
【NHK杯で決定】 浅田,ワグナー(USA),宮原 (敬称略)
村上大介 選手の特例出場とは,フランス大会がテロの影響で SP のみ実施・FS 中止になったことを受け「グランプリシリーズの成績7番手の選手がフランス大会出場者だった場合はファイナルに出場できる」という先日決定された今年の特例が適用されるものです。村上 選手はファイナル出場を熱望していましたので,7人目であっても出場できればこれほど喜ばしいことはないと思います。
ところで,グランプリファイナルの出場者はどのように決定されるのでしょうか? グランプリシリーズ6戦の成績上位者ということなのですが,成績上位の決め方は案外単純です。正式には,各大会の順位をポイント換算しそのポイント合計点で決めるのですが,ポイントを知らなくてもわかる方法があります。2つの大会に出場した選手について単純に順位を足し算し,その合計が小さい順に出場者が決まります。例えば,フェルナンデス 選手は,中国とロシアの2大会で優勝しましたので,1+1=2 となります。これより小さい値はあり得ませんから,フェルナンデス 選手は当然ファイナルに出場できます。
男子は,チャン 選手がカナダ1位+フランス5位=合計6。村上も合計6(カナダ,フランス共に3位)ですが,同点の場合は順位の高い成績を持っている人が上位なので,1位をとった チャン 選手の方が 村上 選手より上位です。NHK杯に出場する,羽生,コフトゥン,ジンの3選手は全員初戦の大会で2位になっているので,NHK杯で4位以内に入れば 村上 選手より上位になります。この3選手の実力を考えれば,ケガ等のアクシデントがない限り,全員が4位以内に入ると思いますので,全員がファイナルに出場できる可能性が高いです。こうなると 村上 選手はシリーズ成績7番手になり,通常ならファイナル出場ギリギリアウトなのですが,上述の特例により出場できることになります。
では,結果によってファイナル進出がどうなるか,男子のケースをシミュレートしましょう。
【羽生,コフトゥン,ジンの3選手が全員4位以内】
- 以下のケース以外は,進出者: 上記3選手,村上 選手 (冒頭の予想と同じ)
- ホッホスタイン 選手(USA)が1位
⇒ 進出者: ホッホスタイン 選手を含む3位までの選手
(OUT: 4位の選手,村上 選手) - ホッホスタイン 選手が2位
⇒ 進出者: 1位と3位の選手
さらに,4位の選手と ホッホスタイン 選手のうちスコアの良い方
(OUT: 上記スコアの悪い方,村上 選手)
【羽生,コフトゥン,ジンの3選手のうち,2人は4位以内,1人が5位以下】
- 進出者: 4位以内の2選手,村上 選手 (OUT:5位以下の選手)
- さらに,ホッホスタイン 選手が2位以内なら進出
他に,メンショフ 選手(RUS)が優勝する場合などもありますが,レアケースなので省略します。ホッホスタイン 選手が2位以内に入る可能性はかなり低いので,村上 選手が進出する可能性が濃厚です。それよりも,コフトゥン,ジンの両選手が5位以下になりファイナル進出を逃す可能性の方があると思います。コフトゥン 選手は調子の波がある選手ですし,ジン 選手は4回転ジャンプ連発なので,いくらジャンプの安定感があるとはいっても失敗が多ければ5位以下の可能性はそれなりにあります。コフトゥン,ジン,ホッホスタイン の各選手の順位が,ファイナル進出枠という点で見どころになるでしょう。
続いて女子のシミュレーションです。上位4人は,浅田,宮原,ワグナー,ポゴリラヤ(RUS)の4選手の争いになると思いますので,この場合,
- 浅田,ワグナー の両選手は進出
- 宮原 選手と ポゴリラヤ 選手は,2人の比較で上位の選手が進出
- ただし,ポゴリラヤ3位,宮原4位の場合に限り,本郷 理華 選手が進出(さらに トゥクタミシェワ 選手(RUS)が7番手となり,上述のフランス特例が適用され進出)
- ポゴリラヤ1位,宮原2位で,浅田,ワグナー 両選手のどちらかが5位以下なら,ポゴリラヤ,宮原 両選手共に進出。(5位以下の選手が OUT)
となります(これ以外にもケースがありますが,かなりレアなので省略)。要するに,上記のケースを除けば,宮原 選手とポゴリラヤ 選手は1つの椅子を争うことになります。条件としては 宮原 選手がやや有利ですが,ポゴリラヤ 選手は今シーズン序盤に自己ベストの合計210点超えを果たしており,浅田 選手や ワグナー 選手とも互角に戦える力を持っていますので,なかなか手ごわい相手です。ただし,その力を安定して発揮できないのが弱点で,安定感があり大崩れしない 宮原 選手にも十分チャンスがあります。グランプリファイナル進出争いの点では,宮原,ポゴリラヤ 両選手の得点や順位争いがドラマを生みそうな予感がしています。