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2017年10月

宇野昌磨 余裕,本田真凛 取りこぼし【カナダ大会感想】

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です


 宇野昌磨 選手の余裕がとても印象に残りました。6分間練習でなんでもないところでバタッと転倒したのを笑って受け流し,ジャンプの難度を落としたFS(Free Skating,フリースケーティング)の 3Lo(トリプルループジャンプ)でもたついても笑顔。4回転4本がきっちりとは入りませんでしたが,肝心の 4Lo(4回転ループジャンプ)や 3A+1Lo+3F(トリプルアクセル→シングルループ→トリプルサルコウの3連続ジャンプ)を綺麗に決め,PCS(Program Component Score,演技構成点)も90点超え。終わってみればトータル300点に届き余裕の優勝でした。本大会は,難度を落として全体の完成度を高めることに主眼を置き,確実に優勝するという作戦を無事に遂行しました。これで,次のフランス大会はもう少し,宇野 選手がよく言う「攻める」演技にトライできるでしょう。とにかく五輪シーズンとは思えないほど余裕を感じますし,順調な調整ができていると思います。

 パトリック・チャン 選手(カナダ)は珍しく大崩れしました。いつもカナダ大会はシーズン序盤相応に仕上げてきていたので,少し心配な状況です。FSの曲「ハレルヤ」は,チャン 選手でなくても他の選手でも良い曲という印象。もっと チャン 選手ならでは,というプログラムを観たいと感じましたね。

 代わりに ジェイソン・ブラウン 選手(米)が2位に入りました。6強の一角を崩し,グランプリファイナル出場にグッと近づきました。FS冒頭の 4T(4回転トウループジャンプ)を見る限り,もう4回転は捨てて全体の完成度を徹底的に高める戦略でいくべきなんじゃないかと思います。4回転なしのFSで190点を狙えるのは ブラウン 選手だけですからね。

 本田真凛 選手は,結果から見ればもったいなかったです。SP(Short Program,ショートプログラム)の失敗がなければ2位に入れましたからね。でも,最初から順調で肝心なときに落とし穴に遭うよりは良かったと考えるべきでしょう。SP失敗から切り替えてFSをまとめるという経験はできましたが,なぜSPは失敗してFSは乗り切れたのか,きちんと検証できるのか少し心配です。それはSP直後に発した言葉から感じました。

「今回はすごく練習したつもりだったけど、まだまだ甘かったのかなと思う」

 結果が出てから「甘かった」と言っています。これは,甘さの残る練習をやっていたことの表れですし,もし今回が良い結果だったらその甘い練習のまま今後を過ごすことになったでしょう。結果を練習の質に結びつけてしまう考え方は危険で,練習の臨み方や結果の検証の仕方をきちんと身に付けておかないと,結果オーライの考え方がしみついてしまいます。本田 選手がこの罠にハマらないようにコーチ陣が導かなければなりませんが,注目度の高い選手なのでコーチ陣も大変でしょうね。

 本郷理華 選手は,全盛期には及ばないものの,かなり調子が戻ってきたのが嬉しいですね。プログラムはとても良いものに巡り合えたと思うので,あとは回転不足を解消して,全体の完成度を上げていき,全日本選手権で勝負をかけてほしいです。

 ケイトリン・オズモンド 選手(カナダ)がきっちり自国大会の優勝を果たしました。昨季の世界選手権銀メダルで得た自信は本物ではないかと思います。PCS もほぼ9割(SP 36点,FS 72点)を取り安定しています。FSの曲「ブラックスワン」は,オズモンド 選手ならではとまでは言えずもっと合う曲があるとは思いますが,華やかなブラックスワンというのは独特な感じで,どう仕上がっていくか興味深いです。

 ロシア勢は明暗が分かれました。マリア・ソツコワ 選手は,昨季のジュニア上がりっぽい表現の拙さがなくなり,表現力が格段に上がりましたね。それは PCS がFSで8割(64点)を超えてきたことに現れています。ソツコワ 選手はジャンプ技術も高く,3Lz(3回転ルッツジャンプ)と 3F(3回転フリップジャンプ)をFSで2本ずつ入れているのは彼女くらいだと思います。今大会のFSは回転不足でスコアが伸びませんでしたが,とにかくプログラムが ソツコワ 選手にとてもよくマッチしたものになっていますので,ジャンプがきちんと入れば,トータル210点超えができると思います。

 一方,アンナ・ポゴリラヤ 選手は,年に1~2回あるFSの大崩れがまた出てしまいました。「ブラックスワン」の演目が オズモンド 選手と丸かぶりで,オズモンド 選手よりは合っていると思うものの,ポゴリラヤ 選手にはもっと壮大なスケールの演目が似合うと思います。それにしても,スコアに安定感がないと,大激戦のロシア代表入りはなかなか難しいでしょうね。稀有な雰囲気を持つスケーターなので,今後巻き返してほしいです。

 実力者が力を出し切れない状況の中,ベストとは言えないまでもきっちりまとめてきた アシュリー・ワグナー 選手(米)が3位に入りました。SP,FS共に過去に演じた代表作の再演で,SPはダンサブル,FSはきらびやかで,本当に素晴らしい演目です。ワグナー 選手もスコア度外視でよい選手の一人ですが,他の選手にミスが出ると表彰台にきっちり上がるのはさすがです。

 今大会の女子は,好不調で言えば不調の方にやや倒れた形になり,スコアのレベルは オズモンド 選手以外は平凡でした。ロシア大会で5位だった 坂本花織 選手のスコアはカナダ大会では2位ですからね。グランプリファイナルは各大会の順位によって決定されるので,こういう対戦のアヤに左右されます。五輪シーズンなので,シーズン序盤でももう少しレベルの高い戦いを観たかったところではありますが,五輪シーズンの緊張感や調整の難しさを改めて感じさせてくれたカナダ大会でした。

カナダ大会(スケートカナダ,グランプリシリーズ第2戦)プレビュー【スポーツ雑誌風】

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 例年だと,カナダを練習拠点にしている 羽生結弦 選手の初戦として盛り上がるが,今年 羽生 選手は本大会不参加。では平穏な大会なのか…といえばさにあらず。日本の主力選手参戦や,参加選手の豪華さで,盛り上がること間違いなしの大会になりそうだ。

◆男子シングル

 宇野昌磨 選手が初戦を迎える。前哨戦で自己ベスト更新というロケットスタートを見せており,今大会は結果よりも内容重視で臨むだろう。前哨戦では 4S(4回転サルコウジャンプ)を新たに加え,4回転は F,Lo,S,T(フリップ,ループ,サルコウ,トウループ)の4種類となった。この構成を固めるのか,それとも練習中という 4Lz(4回転ルッツジャンプ)を試すのか,今大会はトライする余裕がある状況なので,どうするのか気になるところだ。

 FS(Free Skating,フリースケーティング)は得意のフリップジャンプを前面に押し出した構成になっている。4F(4回転フリップジャンプ)を演技後半に飛ぶのは 宇野 選手の自信の表れだ。また,3連続ジャンプでよく使われるのは +1Lo+3S という,第3ジャンプがサルコウジャンプになるものだが,宇野 選手は第3ジャンプにフリップジャンプを持ってきて +1Lo+3F という構成にしている。これも有力選手では 宇野 選手しか入れていない稀有な連続ジャンプで,しかも演技後半に入れているのだ。さらに 4T(4回転トウループジャンプ)2本も後半に入るので,後半4回転3本に3連続ジャンプもあるハイレベルな構成だ。本大会では,ジャンプが全部入るか,演技全体の完成度がどこまで高まるかに注目したい。

 無良崇人 選手は,普通に実力を出せれば間違いなく日本男子代表の3枠目に入れるはずだが,ここぞという場面での勝負弱さと,田中刑事 選手の成長によって,全く安泰とは言えない状況にある。アイスダンスのソチ五輪金メダリスト ホワイト 選手(米)の指導を受け,スケーティングや表現力が格段に上がった今,ジャンプの精度が上がれば代表入りはもちろん,五輪での入賞(8位以内)も可能な力がある。五輪シーズンのグランプリシリーズ2戦は,全日本選手権前の試合勘を作るという意味で重要であり,今大会でぜひ完成度の高い演技を魅せてほしい。高さのあるダイナミックな 3A(トリプルアクセルジャンプ)は必見だ。

 宇野 選手と優勝を争うのは,自国参加の パトリック・チャン 選手(カナダ)。例年このカナダ大会は強いので,今回も強さと美しさを兼ね備えた見事なスケーティングを魅せてくれるだろう。ただし チャン 選手のミスが多かった場合,ジェイソン・ブラウン 選手(米)が割って入ってくる可能性がある。ブラウン 選手は4回転ジャンプの習得が遅れたが,完成度の高さで十分に勝負できるので,シーズン序盤にどこまで仕上がっているか楽しみにしたい。

◆女子シングル

 本田真凛 選手がいよいよシニアのグランプリシリーズデビューを迎える。マスコミが盛り上げてくれるので私は静かに見守りたいが,実力的には表彰台に上れたら上出来といったところであり,結果が伴わなくてもガッカリしてはいけない。本田 選手は連闘(2週連続出場)だが,次の中国大会は大激戦必至なので,グランプリファイナル出場を狙うには,今大会で優勝か2位を獲っておきたい。本田 選手が自己ベストで210点超えの演技ができれば,不可能なミッションではない。本当に優勝するようなことになれば,一気に国内は盛り上がるだろう。

 注目点は,急遽変更したSP(Short Program,ショートプログラム)だろう。先日のジャパンオープンのエキシビションで披露されたが,競技会では初めての演技となるからだ。本人が音楽を絶賛し,曲目をしばらく明かさないなど,話題作りにはなったが,プログラムを観た個人的な感想は,ハードルを上げられた分だけ期待値相応という印象になってしまった。しかし,選手本人が惚れ込んでいるのは演技には確実にプラスになるので,高い完成度ならばSPでトップに立てるスコアが出ることも期待できる。

 日本からもう一人,本郷理華 選手が出場する。本郷 選手はソチ五輪後の4年間を支えた選手の一人で,五輪に出場してほしいと思うのだが,昨季の不調と周囲の成長で一転して厳しい立場に置かれている。だが,本来はジャンプが安定していて好不調の波が小さい選手なので,今季再び覚醒すれば十分にチャンスが出てくる。日本選手には少ない,スケール感のある演技ができる選手なので,今大会でベストな演技を魅せてくれることを期待したい。

 他国の優勝候補筆頭は,ケイトリン・オズモンド 選手(カナダ)。昨季,華麗なる復活を遂げ,世界選手権で銀メダルを獲り,いい流れで今季を迎える。品の良さとスピード感を併せ持つ演技が持ち味で,自国大会は負けられないと意気込んでくるだろう。ロシア勢の マリア・ソツコワアンナ・ポゴリラヤ の両選手も優勝争いに加わる可能性が高い。ソツコワ 選手は可憐なのにダイナミック,ポゴリラヤ 選手はモデルばりのスタイルと雰囲気をたたえドラマティックな演技が特徴。2人とも自分に合ったプログラムを手に入れたかが鍵。米国2強の カレン・チェンアシュリー・ワグナー の両選手も参戦する。チェン 選手は昨季覚醒したが,今季は米国トップを守る立場でどうなるか。ワグナー 選手は例年グランプリシリーズに強く,有力選手が隙を見せると上位を奪うだろう。

 以上で挙げた7選手は皆,表彰台に上がれる実力があるが,今後の中国大会やフランス大会ほどハイレベルな大会とは言えない。なぜなら,この7選手は好不調の波が大きかったり,シーズンにより好不調の差があったりするからだ。だからこそ,今大会は誰もが優勝を狙える大会であり,その点で考えればシリーズ一番の激戦になる予感がする。

羽生結弦 順調,樋口新葉 詰め甘し 【ロシア大会感想】

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 羽生結弦 選手は,またしてもグランプリシリーズ初戦2位という結果でしたが,2位以内に入ればグランプリファイナル出場に支障はないので,全く問題ないでしょうね。4Lz(4回転ルッツジャンプ)の成功で盛り上がっていますが,個人的には 4T+1Lo+3S という4回転からの3連続ジャンプが入らなかったのが残念でした。次の日本大会(NHK杯)は間違いなくもっと良い仕上がりになるでしょう。2年前に歴代最高得点を記録した舞台ですし,日本の観客に良いものを見せたいという気持ちが強いと思いますので。

 ネイサン・チェン 選手(米)は,今回のFS(Free Skating,フリースケーティング)では5種類の4回転を入れてきませんでしたね。次の米国大会でお披露目となるのでしょう。それでも4回転4本をさらっと飛んでいてそれはそれですごいですが,チェン 選手の注目点は技術点ではなく PCS(Program Component Score,演技構成点)の方です。昨季は80~85点あたりでしたが,今大会では88点台を出し,羽生 選手との差を詰めてきています。実はこっちのスコアの差が詰まってくることで,勝負の局面で 羽生 選手がミスできる回数が少なくなり,プレッシャーを強めることができます。チェン 選手は今回の PCS に手ごたえを感じていると思います。

 ミハイル・コリヤダ 選手(ロシア)は,FSで3度の転倒にもかかわらず185点台で,PCS は90点が見えてきました。完璧な演技ができれば,6強に続くFSの200点を達成できそうです。プレスリーという王道のメドレーが上滑りしないのは,コリヤダ 選手の表現力の賜物でしょうね。

 驚きだったのは,モリス・クヴィテラシビリ 選手(ジョージア)。長身なのにジャンプがスマートで,スケーティングも滑らかで醸し出す雰囲気も良い。FSで4回転ジャンプを3本入れて250点に乗せ5位に入りましたが,実は 田中刑事 選手の欠場で代わりに出場した選手だったと聞いてビックリ。ワンチャンスをモノにしましたね。そして,エテリ・トゥトベリーゼ コーチと聞いて納得。ロシアの メドベージェワ,ザギトワ 両選手を指導している名コーチですね。今大会がきっかけになって,一気にブレイクしそうな予感満載です。クヴィテラシビリ…覚えづらいけど覚えておきましょう。

 樋口新葉 選手,3位ですか…。やっぱりミスがあると2位にはなれないですね。SP(Short Program,ショートプログラム)での回転不足と,FSのサルコウジャンプのミス(トリプルがダブルに)がなければ,カロリーナ・コストナー 選手(イタリア)と入れ替わっていたかもしれません。コストナー 選手がFSはそれほど仕上がっていないと予想していたのですが,ここまでの仕上がりとは驚きでした。相手に恵まれなかったという見方もできますが,やはりミスしているようではダメとスケートの神様に諭されている感じがします。

 昨季,樋口 選手は,ジャンプとの両立に苦しみながら PCS の引き上げに取り組んでいましたが,その成果が今大会FSの PCS 68 点(満点の85%)という形で現れました。プログラムも 樋口 選手に合っていて,特にFSの「007 スカイフォール」は 樋口 選手にとてもマッチしていると思いますので,完璧な演技ができればトータル220点に届くと思います。だからこそ,得意なはずのジャンプでミスしている場合ではないのです。ピークは全日本選手権に持っていくとして,グランプリシリーズで8割の力でもジャンプを決める技術とメンタルが求められます。3位に終わりファイナル進出はかなり難しく,しかも次の中国大会はシリーズで最も厳しい対戦カードですが,優勝すれば一転してファイナル進出が確実になるので,強い意気込みで臨んでほしいです。

 それにしても コストナー 選手の仕上がりの早さに驚きました。次の日本大会を見なければ本当の評価はできませんが,今季は4年ぶりのグランプリシリーズ出場ということで,グランプリシリーズも含め出場する大会全てで最高の演技をするつもりで臨んでいるのかもしれません。1年以上の出場停止処分を経験したことから,スケートができる喜びが演技に表れている気がします。FSは,ジャンプの難易度が低く,3回転+3回転の連続ジャンプもなく 3Lz(3回転ルッツジャンプ)も入れていないのに,140点出せるのは驚異的です。スコア度外視で…などと失礼なコメントをプレビューで書きましたが,ファイナルでも コストナー 選手の円熟味が最高潮に達した演技を観ることができそうです。

 メドベージェワ 選手(ロシア)は,FSでは衣装を黒に変え,ジャパンオープンのときより良い演技だったように思います。五輪の重圧が襲うのかどうか,周囲が固唾を飲んで見守っていますが,おそらくあっさり乗り越えてしまうでしょう。トータル250点にどこまで迫れるかがこれからの注目点になると思います。

 坂本花織 選手は,FS冒頭の得意な 3F(3回転フリップジャンプ)で転倒という珍しい姿に,シニアならではの空気に気圧されているんだと感じました。五輪シーズンというだけでもすごい雰囲気で,さらに日本女子2枠という圧が加わり息苦しいかもしれません。五輪出場をめざす渦に巻き込まれるのではなく,彼女らしい明るさを忘れず,無心でこの2ヶ月を戦い抜いてほしいです。

 私のロシア勢一推しの ラジオノワ 選手は,樋口 選手に押し出され表彰台を逃しました。うーむ,やはりプログラムが本人に合っていないと感じてしまいますね。昨季までなら多彩なジャンルへの挑戦という意味でそういうプログラムでもいいと思うのですが,今季はもっと現代的なポップナンバーで勝負してほしかったなぁと思います。ソチ五輪は年齢制限ギリギリアウトだったので,平昌五輪への想いは強いと思いますが,今のままではロシア代表入りも簡単ではないでしょう。

 大いに期待していた 長洲未来 選手(米)ですが,ベストの仕上がりには至りませんでした。回転不足が多くのジャンプで見られましたが,3A(トリプルアクセル)は着氷できているので,回転不足が解消すればノッてくると思います。両親の母国である日本大会に来てくれるので,そこでの巻き返しに期待したいです。

 シングルの全体的な結果としては,表彰台はほぼ実力どおりで,大きな波乱はなかったと言えるでしょう。ロシア大会をこんなにちゃんと観たのは私は初めてでしたが,羽生 選手の傍らに立つ謎の少年,エキシビションのシンクロスケーティングの見事さ,などスケート大国ならではの光景もあり,五輪シーズンが本当に始まったんだなぁと感じられる大会だったと思います。

ロシア大会(ロステレコム杯,グランプリシリーズ第1戦)プレビュー

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 例年のロシア大会は,シリーズ中盤のややホッとする時期の開催でしたが,今シーズンはシリーズ開幕戦となりました。五輪シーズンの初戦というだけでも注目度が高いですが,いきなり絶対王者&女王をはじめ素晴らしいメンバーが集結しました。

◆男子シングル

 初戦から 羽生結弦 選手と ネイサン・チェン 選手(米)の直接対決が実現するとあって,あおりたく気持ちはよくわかりますが,おそらくハイレベルな点数は出ないでしょう。2人ともシリーズ2戦目が自国の大会なので,そこでは自国の観客に良い演技を魅せようと気合いを入れてくるでしょうから,ロシア大会がそこに向けた調整の場になるのはやむを得ません。私は,羽生 選手に関しては,FS(Free Skating,フリースケーティング)で4回転ジャンプ5本が(転倒しても出来栄えが悪くても)入るかどうか,チェン 選手に関しては,FSで4回転ジャンプの GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)が全てプラス評価にできるかどうかに注目したいと思います。

 チェン 選手は,シニア初年度の昨季,シーズン序盤からスタートダッシュをかけ,世界選手権で息切れしましたが,シーズン当初からアピールしなければならない立場だったので,これはやむを得ないこと。今季はその反省から,ロシア大会で全力を出すことはまずないでしょう。でも逆の見方をすれば,そのような状況で高得点を出せれば,本当に 羽生 選手を脅かす存在になってきます。スコアでの注目点は,チェン 選手の PCS(Program Component Score,演技構成点)。FSで87点以上,あるいは 羽生 選手と5点差以内になれば,いよいよ 羽生 選手の真の対抗馬と考えていいと思います。でも,前哨戦の滑りを見る限り,ここまでは到達しないと私は予想します。

 そんな2人の間に割って入ろうと狙っているのが コリヤダ 選手(ロシア)。自国の大会で気分が乗っているでしょうし,4Lz(4回転ルッツジャンプ)の出来栄えが素晴らしければ,2人の演技の出来次第では割って入る可能性があります。私は コリヤダ 選手のクールでいてコミカルな雰囲気が大好きなので,初戦で波乱を起こしてくれないかなと密かに期待しています。

 あと,若手では ヴァシリエフス 選手(ラトビア)に期待。コーチがかつての名選手 ランビエール 氏で,その滑りは正に ランビエール 流という雰囲気に満ちています。

 田中刑事 選手,ケガ欠場は残念…。次が2週間後の中国大会というのも運がないですね。焦らずに…と言われても,五輪シーズンのケガで焦らないなんて無理。事実上,全日本選手権一発勝負になりますので,それまでのメンタルコントロールが問われることになりそうです。

◆女子シングル

 自国大会に出場する絶対女王 メドベージェワ 選手(ロシア)。FSのプログラムを変更するというニュースが出ていますが,いったいどうなるでしょうか。おそらく,昨季か一昨季のプログラムを再演するのではないかと私は予想しています。個人的には一昨季のプログラムの方が好きで,それを現在の彼女がどう滑るのかを観てみたいところです。このFSの出来が,一番の注目点になるでしょうね。した影響がどう出るかと思われましたが,ジャパン・オープンを観る限り仕上がりは良さそうです。ただ,新プログラム「アンナ・カレーニナ」は,個人的には過去2シーズンと比べ物足りなさを感じています。グランプリシリーズに入りどこまで完成度を上げられるのかが見どころです。

《注記》 変更後が「アンナ・カレーニナ」だったとは知りませんでした。「アンナ・カレーニナ」から別のプログラムに変更すると勘違いしていました。ご指摘をいただき,修正いたしました。

 メドベージェワ 選手のFSプログラム変更というわずかな綻びを突いて,樋口新葉 選手はどこまで迫れるでしょうか。昨季の 樋口 選手は,四大陸選手権と世界選手権という重要な大会で良い成績を残せず,国別対抗戦でやっと理想的な演技を披露しました。国別対抗戦は日本開催で,全日本選手権でも表彰台に上がり続けていることから,樋口 選手は国内で強く海外で力を発揮できない,いわゆる内弁慶タイプかもしれません。今季,イタリアのロンバルディア杯では210点超えを見せてくれましたが,あくまでも前哨戦であり,グランプリシリーズの海外の大会で同等の点数を出せるかどうかが,今シーズンを占う重要なポイントになると私は見ています。でも,この大会に入れ込み過ぎてしまうと,全日本選手権や平昌五輪まで持ちませんので,8割の力でハイレベルのスコアを出すという難しいミッションになります。

 実は対戦カードが一番不運なのが 樋口 選手です。次に出場する中国大会は大激戦で,ベストな演技でも3位に終わる可能性があるので,グランプリファイナルに進むためには,ロシア大会で2位以内を獲ることが絶対条件と言えます。普通に演技すれば2位になりますが,少し失敗すればたちまち他の選手の割り込みを許してしまうことになるでしょう。2位を獲れば,振れ幅が大きかった昨季から進化し,安定感を得る大きなきっかけになると思います。

 今季からシニア参戦の 坂本花織 選手は,応援したくなる雰囲気をたたえる選手の1人。ジャンプをはじめ演技のトータルバランスが素晴らしいです。同門の 三原舞依 選手の昨季の急成長に大いに刺激を受け,今季は自分がその立場になりたいと思っているでしょうし,本田真凛,白岩優奈 らシニアデビュー組に負けなくない気持ちもあるでしょう。モチベーションがとても高いと思いますので,最高の演技をして表彰台に乗ってほしいですね。坂本 選手が表彰台に乗れば,日本女子シングルはさらにヒートアップしてくると思います。

 個人的にロシア勢の中で一推しの ラジオノワ 選手(ロシア)ですが,昨季は失速し,世界選手権のロシア代表にさえ入れませんでした。昨季のプログラムは,日本でもおなじみの モロゾフ 氏振付の王道路線でしたが,彼女の良さが引き出せていなかったと私は感じました。私は4年前,福岡のグランプリファイナルを生観戦したのですが,そのとき観た ラジオノワ 選手の躍動感が素晴らしくて,必ずこの選手は世界を制すると今でも思っています。五輪シーズンの今季,良きプログラムに巡り合えたのかをチェックしたいと思います。

 今季のダークホースになりそうなのが,長洲未来 選手(米)。今になって 3A(トリプルアクセルジャンプ)を組み込む挑戦も素晴らしいですが,今季の彼女は上半身の筋肉が素人目にもとても美しく感じられ,またスケーティングも今までより格段に良くなっているように見えます。なので,近年になく好調なのではないかと私は予想しています。3A が綺麗に決まれば,坂本 選手や ラジオノワ 選手を抑えて表彰台に乗る可能性がかなりあると思います。

 コストナー 選手(イタリア)は,もう出場してくれるだけで眼福。スコアは二の次で,とにかくスケーティングを堪能しましょう。あと,個人的に応援しているのが トゥルシンバエワ 選手(カザフスタン)。羽生 選手や フェルナンデス 選手(スペイン)と同じ オーサー コーチの門下生で,小さい身体ながら強い意志を感じる演技は,宮原知子 選手とはまた違うタイプの修道女系のスケーターなので,いつも姿勢を正して観ています。キス&クライでめったに笑顔を見せないので,良い演技をして笑顔を見せてほしいです。

グランプリシリーズ展望【スポーツ雑誌風】

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 いよいよ今週末,グランプリシリーズが開幕を迎え,本格的なフィギュアスケートの五輪シーズンに突入する。6週連続のグランプリシリーズ,そこから2週間後のグランプリファイナル,さらに2週間後の全日本選手権,同時期のロシア国内選手権…目が離せない大会が続き,あっという間に年末を迎え日本代表が決まる。羽生結弦 選手の五輪2連覇への挑戦,日本女子シングルの2枠をめぐる熾烈な代表争いなど,かつてないほど見どころ満載の今シーズン。まずは,グランプリシリーズ全体としての見どころを探っていこう。

 今季は,例年と開催順序が大きく異なっている。

《昨季》 米 → カナダ → ロシア → フランス → 中国 → 日本
 (ちなみに2季前と3季前は,米→カナダ→中国→ロシア→フランス→日本)
【今季】 ロシア → カナダ → 中国 → 日本 → フランス → 米

 例年,北米から始まり,日本(NHK杯)でグランプリファイナル出場者が決定する,という流れだったが,今季はロシアから始まり米国で終わるという流れになり,北米2大会とヨーロッパ2大会が各々中3週空くことになった。なぜ開催順序が変わったのか,私はその事情を全く知らないが,この開催順序がどのような影響を与えるのか,興味深いところだ。

 まず明らかに言えることは,日本選手とロシア選手が自国の大会に出場するケースで,調整が楽になるという点だ。昨季の場合,日本大会に出場する日本選手は,日本大会 → グランプリファイナル → 全日本選手権 が各々中1週であり,4週間で3大会(しかもいずれも気が抜けない大会)に出場した。昨季の日本大会に出場した 羽生結弦 選手や 宮原知子 選手は,実に過酷な1ヶ月を送っていた。また,ロシア大会に出場するロシア選手は,日本大会以外の出場だとグランプリシリーズが中1週または2週連続となり,日本大会に出場すれば,ロシア国内選手権が全日本選手権と同時期なので,4週間で3試合という日本選手同様の状況になっていた。

 今季はこの不利から解放される。ロシア大会と日本大会に出場する 羽生 選手と メドベージェワ 選手(ロシア)は,グランプリシリーズ2戦~ファイナル~国内選手権の間隔中2週→中3週→中1週 になる。絶対王者&女王の2人が無理のないローテーションで臨めるメリットは大きい。練習拠点のカナダではなくロシアを選択した 羽生 選手には五輪シーズンへの意気込みを感じるし,大好きな日本に来られる メドベージェワ 選手も気分よく年内を戦えるだろう。一方,日本大会に出る 宮原 選手はもう1つが米国大会であり,日本→米国→ファイナル→全日本 の4戦が全て中1週なので,負傷明けでこのスケジュールを乗り切れるのかが注目点だ。ただし,今季のグランプリファイナルの開催地は名古屋なので,移動の負荷が米国のときだけなのは救いだ。

 もう1つ言えることは,北米2大会(米,カナダ)と欧州2大会(ロシア,フランス)の各々の間隔が空くことで,欧米選手の調整が楽になる点だ。昨季まで,北米とヨーロッパは各々2週連続だったので,米&カナダ,ロシア&フランスという選択はしづらかったが,今季はその選択がしやすい状況になり,近場で調整したい欧米選手には朗報のはずだ。ところが,北米の選手が米&カナダの2大会に出場,または欧州の選手がロシア&フランスの2大会に出場,というケースが有力選手では極めて少ない。チェン,ワグナー の米国女子2選手が北米2大会に出場する程度で,ロシア&フランスの出場に至っては(欧州以外の選手を含めても)有力選手が全くいないという,やや不思議な状況が生じている。つまり,北米や欧州の開催時期分散を活かす欧米選手がほとんど現れなかったのである。

 開催順序という点では,例年の,米国で華やかに幕を開け日本が最後にビシっと締める,という流れと異なり,今季は(個人的には例年ひと息ついていた)ロシア大会から始まるのが新鮮で,日本大会が中盤での盛り上がりを生み,米国で華やかに締めるという流れが,観ている側にやや不思議な感覚を与えそうだ。そして,それが五輪シーズンの特別感を高めてくれそうな気がする。

 出場選手の面で考えると,初戦のロシア,3戦目の中国,5戦目のフランスの各大会が鍵になりそうだ。ロシア大会は,何と言っても初戦から絶対王者&女王が登場してくることと,初戦がハイレベルならばシリーズ全体がヒートアップすることは間違いないので,各選手がどこまで仕上げてくるかに注目したい。中国大会は,男子6強である 羽生結弦,宇野昌磨,ハビエル・フェルナンデス(スペイン),ネイサン・チェン(米),ボーヤン・ジン(金博洋,中国),パトリック・チャン(カナダ)が初戦を終え各選手の状態がわかることと,日本女子3選手(三原舞依,樋口新葉,本田真凛)の直接対決が注目点だ。フランス大会は,大会の結果でグランプリファイナル出場の行方がかなり見えてくることから注目度が高くなり,特に女子の 三原舞依オズモンド(カナダ),ザギトワソツコワ(いずれもロシア)の4選手対決は,6大会の中でも屈指の好カードになるだろう。もちろん,4戦目の日本大会(NHK杯)も,宮原 選手の復帰初戦や,男子の チャン,ブラウン(米),女子の メドベージェワ,コストナー(イタリア)ら超一流選手の来日,等の話題で大いに盛り上がることは間違いない。

 最後に総合的な注目点を挙げる。男子は,上述した6強がどういう仕上がりを見せてくるのか,はたまたそこに割って入る選手が現れるのか。女子は,史上最高の激戦を経て メドベージェワ 選手1強に迫り,崩す選手が誰なのか,そして日本選手の熾烈な争いも目が離せない。そして,今季急成長を遂げる選手が現れるかも楽しみだ。振り返れば,一昨季の メドベージェワ 選手や昨季の 三原 選手の大活躍をシーズン前に予想できた人は少なかったはずで,同様の現象が今季も起きる可能性は十分にある。また,一昨季の 宇野 選手や昨季の チェン 選手が魅せてくれた,ジュニア時代の実績を引っ提げてのシニア初年度の躍動を,本田真凛,坂本花織,白岩優奈,ザギトワ ら今季シニアデビューの各選手にも期待したい。

グランプリシリーズ主要選手出場大会一覧(シングル)

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 グランプリシリーズのどの大会に誰が出場するのか,男女シングルについて表にまとめてみました。選手の人選は,ファイナルに進出する可能性が高い選手と,個人的に応援している選手を挙げてみました。応援している選手が載っていないという方,たいへん申し訳ございません。m(_ _)m

◆男子シングル

選手
田中刑事


ミハイル・コリヤダ (ロシア)



羽生結弦



ネイサン・チェン (カナダ)



パトリック・チャン (カナダ)



ジェイソン・ブラウン (米)



宇野昌磨



無良崇人



ハビエル・フェルナンデス (スペイン) 



ヴィンセント・ジョウ (米)



ボーヤン・ジン (金博洋,中国)



 表の横軸は,開催地を開催順(シア→ナダ→国→本→ランス→国)に並べました。

 羽生結弦,宇野昌磨,ハビエル・フェルナンデス,ネイサン・チェン,ボーヤン・ジン,パトリック・チャンの6強が,きれいに各大会2人ずつエントリーされています。この6選手が各大会で1位と2位を分け合えば,6強がそのままファイナルに進出します。ここに割って入れそうなのは,チャン 選手と2大会重複出場の ブラウン 選手。両方で2位に入ればファイナル進出確実,どちらかで2位に入ればスコア勝負になるでしょう。他には,4Lz を持つ コリヤダ 選手,シニア参戦で4回転ジャンプの成長著しい ジョウ 選手が,6強に割って入れるかどうかも注目です。

◆女子シングル

選手
樋口新葉



エレーナ・ラジオノワ (ロシア)



エフゲーニャ・メドベージェワ (ロシア) 



長洲未来 (米)



カロリーナ・コストナー (イタリア)



坂本花織



本田真凛



本郷理華



ケイトリン・オズモンド (カナダ)



マリア・ソツコワ (ロシア)



アンナ・ポゴリラヤ (ロシア)



カレン・チェン (米)



アシュリー・ワグナー (米)



三原舞依



アリーナ・ザギトワ (ロシア)



ガブリエル・デールマン (カナダ)



白岩優奈



宮原知子



ポリーナ・ツルスカヤ (ロシア)



 有力選手が多すぎて表がすごいことになっています。これでも,トゥクタミシェワ(ロシア),ゴールド(米)の両選手などをやむなく除外しています。この19人のうち,200点記録者がなんと14人! この表を見ながら,ファイナル進出争いがどうなるかを予想するだけで,ドキドキ・ワクワクが止まらない興味深い対戦の連続です。注目点がたくさんあり過ぎですが,1つ挙げておきたいのは 三原 選手と ザギトワ 選手という強力な2人が2大会重複出場する点。この2人が両大会で1位と2位を分け合えば2人ともファイナル進出ですが,誰かが割って入れば乱戦になる可能性が出てきます。

 対戦カードと今までの実力から考えると,現時点でのファイナル進出予想は,メドベージェワ,三原,ザギトワ,宮原,オズモンド,ポゴリラヤ の6選手ですが,メドベージェワ 選手以外は確実とは言えません。この一覧の中から誰がファイナルに進んでも不思議ではなく,勝ち残る6選手ってすごいとしか言いようがありません。これだけのハイレベルな争いですから,どの選手が進出しても,今季の女子シングルのグランプリファイナルは,五輪シーズンに相応しい,とんでもない大会になるでしょうね。

白井健三 の舞台度胸に驚嘆

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です。


ShiraiKenzoWorld2017 内村航平 選手を10年間追い続けている私にとって,棄権のニュースは大きなショックでした。団体と個人総合の2冠に輝いたリオデジャネイロ五輪後の燃え尽き症候群を乗り越え,王者を守り抜けるかに注目が集まった大会を,戦わずして棄権というのは 内村 選手本人も日本チーム関係者も本当に落胆したことでしょう。

 ただ,内村 選手なき体操世界選手権男子個人総合で,いったい誰が新王者になるのかという点では,実に興味深く観ることができる大会になりました。白井健三 選手は決勝1組に入った時点でもう大健闘と言える状況でしたし,リオデジャネイロ五輪で 内村 選手と超僅差の銀メダルを獲った,本命であるべき ベルニャエフ 選手(ウクライナ)が予選で振るわなかったことから,誰が新王者になるか全く読めない決勝になりました。

 その ベルニャエフ 選手や,最後の鉄棒を残してトップだったにもかかわらずメダルを逃してしまった ベルヤフスキー 選手(ロシア)などは,内村 選手の離脱によって,チャレンジャーの立場から一転,優勝できるかも…という邪念が出てしまったのかな,と感じてしまうような演技でした。この2人や ラルデュエト 選手(キューバ)が優勝なら良かったのになぁ,と個人的には思いましたね。

 そんな中,白井健三 という人は,どれだけの強心臓を持っているのでしょう。内村 選手と一緒に初めての世界選手権の個人総合を戦って経験値を上げる,という思いだったはずですが,内村 選手の棄権によって突然,独りでの戦いを余儀なくされました。にもかかわらず「航平 さんの想いも背負って」と,内村 選手の無念をも自らのエネルギーに取り込み,それが演技の中で見事に表現されていました。最初の床の演技は,もう神がかっている雰囲気がありましたね。初めての世界選手権の個人総合の試合ですから,会場の雰囲気や 内村 選手の分までという気負いに押しつぶされてもおかしくない状況なのに,白井 選手はとても躍動しているように見えました。特に,得意とは言えない最後の鉄棒で,メダル争い佳境の中ほぼ14点を出せたのは,内村 選手の想いを真正面から受け止めたことで,内村 選手がちょっと乗り移ったのかもしれない,そんなふうに思える素晴らしい演技でした。

 優勝から5位までが1点差の中にいましたので,欲を言えば,例えば平行棒でぐらつきがなければ,あるいは鉄棒で着地が決まっていれば,優勝にも手が届きました。獲れるときに獲っておくべき,という意見はあるでしょうが,優勝はできなくとも表彰台に乗れたのですから,戦前の予想から考えれば素晴らしい結果だったと思います。内村 選手が出場し,他の選手も普通の状態なら,表彰台には届かなかったわけで,白井 選手もその点を誰よりも痛感し,今後の課題を見据えていることでしょう。

 とはいえ,個人総合初出場& 内村 選手不在という状況下で 白井 選手が魅せてくれた演技は,底知れぬポテンシャルを秘めていると強く感じさせてくれるものだったと思います。銅メダルという結果はもちろん,全ての演技をほぼ13.5点以上というレベルで揃えたことが素晴らしかったですね。この 白井 選手の健闘を目の当たりにした 内村 選手が,今後,白井 選手に負けじと頑張るのか,それとも個人総合の跡継ぎができたことで気持ちを楽にするのか,そのあたりの動向にも注目していきたいと思います。

平昌五輪シングル日本代表決定までの道のり

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 フィギュアスケートの平昌五輪の代表がどのように決まるかについて,スポナビブログ読者なら熟知されている方も多いとは思いますが,今シーズンの観戦における大事なポイントだと思いますので,私なりに整理してみたいと思います。

figureSkate2017Schedule 9月は各選手の演技を観る機会がありましたが,それはあくまで前哨戦でした。10月のグランプリシリーズからいよいよ本格的な戦いがスタートします。平昌五輪までの主要大会のスケジュールを右図に示します。

 四大陸選手権は,時間軸を考えると五輪代表選手は回避すると思いますので,カッコ書きとしました。もうあと4ヶ月半で平昌五輪を迎えるなんて,あっという間ですね。

 グランプリシリーズは,6週連続で毎週末,世界各地で開催される計6回の大会の総称です。有名選手はこのうち2回に出場し,シングル男女各々成績上位者6名のみがグランプリファイナルに出場できます。成績上位とは出場大会の順位の合計が小さい順であり,例年は合計6(1位&5位,2位&4位,3位を2回)以下ならほぼ出場できます。グランプリファイナルは,男子は 羽生結弦 選手がソチ五輪のシーズンから4連覇中,女子は メドベージェワ 選手(ロシア)がシニア1年目から2連覇中であり,絶対王者・絶対女王と呼ばれる2人が無類の強さを誇っています。

 グランプリファイナルは,過去に日本の主力選手が数多く出場したので,出場はさほど難しくないかのように感じてしまいますが,けしてそうではありません。シングル女子では,宮原知子 選手が2年連続出場中ですが,昨季活躍した 三原舞依 選手や 樋口新葉 選手でさえ,グランプリファイナルには出場できませんでした。グランプリファイナルに出場することは,シーズン前半に世界のトップ6に入ることを意味しており,一流スケーターの証と言えるでしょう。後述でも触れますが,日本の代表選考においてもグランプリファイナルは重視されています。

 言わば,グランプリシリーズはグランプリファイナルの予選のようなものです。予選2戦で好成績を上げ,本選に相当するグランプリファイナルに進むのは誰か。これが10~12月の観戦のポイントになると思います。

 そのグランプリファイナルからわずか2週間後に全日本選手権があります。グランプリファイナルに出場する選手は特に,コンディション調整が過酷だろうなぁと毎年思います。全日本選手権は全選手にとって重要な大会であり,五輪の最終選考会でもありますので,緊張感はものすごいものがあると思います。特にシングル女子は,出場枠が2枠ということもあり,壮絶な戦いになることが予想されます。

 さて,平昌五輪代表の選考基準を改めて確認してみましょう。

  ① 全日本選手権の優勝者
  ② 全日本選手権2位・3位
  ③ グランプリファイナル出場者上位2名
  ④ ワールドスタンディング上位3名
  ⑤ シーズンワールドランキング上位3名
  ⑥ シーズンベストスコア上位3名

【シングル男子】 ①の1名,②③の中から1名,②~⑥の中から1名,計3名
【シングル女子】 ①の1名,②~⑥の中から1名,計2名

 「ワールドスタンディング」とは,いわゆる世界ランキングのことで,過去3年間の主要大会の成績をポイント化したものです。ですから,女子で言えば 宮原 選手が有利になり,昨季までジュニアだった選手(例.本田真凛 選手,坂本花織 選手)はポイントが低いです。そこで,今シーズン好調な選手も候補者にするという上記⑤⑥の基準を入れることで,シニア1年目にもチャンスが生まれます。

 グランプリファイナルに出場できれば代表選考にかなり有利ですが,たとえそこで優勝しても代表確定ではありません。したがって,選手は全日本選手権に全精力を注ぐことになります。この選考基準は,グランプリシリーズ(とグランプリファイナル)をどう戦うかの戦略を悩ましくしてしまうと思います。グランプリシリーズ&ファイナルを全力で臨むと,全日本選手権にピークを持ってくることが難しくなるからです。かと言って全日本選手権のピーキングを意識し過ぎると,グランプリシリーズが中途半端な成績で終わってしまう恐れがあります。

 個人的な考えとしては,グランプリシリーズに全力で臨み,そこで成績が残せなかった場合は全日本選手権に最後の望みをかける,という戦略が良いと思います。グランプリファイナルに出場すれば最高レベルの国際大会を経験でき,この経験を選考する側は軽視できないと思います。上記の選考基準②③で考えると,グランプリシリーズ&ファイナルで2~3戦頑張った選手と,グランプリシリーズが今一つながら全日本選手権だけ表彰台に乗った選手なら,前者を選出したくなるのではないかと思います。またグランプリシリーズで好成績を上げれば,選考基準にあるワールドスタンディングやシーズンワールドランキングが上がっていくので,仮にファイナルに残れなくても選考上有利になります。

 実際の選考では,シングル女子の2人めは上記②③によって決定されると思います。なぜなら,②③ではなく④~⑥によって選出される状況が生じるとは考えにくいからです。そんな状況が生じる可能性があるのは,グランプリファイナルに誰も出場できず,有力選手が全日本選手権で総崩れになり,2位と3位を意外な選手が占めるというケースですが,現在のシングル女子の層の厚さを考えれば,このようなことが起こる可能性は極めて低く,②③の選考基準に有力選手が入ることは間違いないでしょう。むしろ,選考が難航しそうなのは,②③の複数の該当者の中から誰を選出するかです。すんなり決められない状況になれば,今シーズンのあらゆる大会の成績から総合的に判断されることになります。ですから,代表選考の予想をしながら観戦したい方には,全ての大会をくまなく観戦することをお勧めいたします。

 グランプリシリーズ,グランプリファイナル,全日本選手権を経て平昌五輪の代表が決まるまであと3ヶ月弱。いったい年末には誰が代表の座を射止めるのか,特にシングル女子は,一戦一戦目が離せないすごいシーズンになりますね。

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