マイクを持てば酔っぱらい

~カラオケをこよなく愛するITシステムエンジニアのブログ~

2017/12

2017年をランキングで振り返る

ヒット曲年間チャート>

オリコン
https://www.oricon.co.jp/special/50550/2/

  1. 願いごとの持ち腐れ / AKB48
  2. #好きなんだ / AKB48
  3. 11月のアンクレット / AKB48
  4. シュートサイン / AKB48
  5. 逃げ水 / 乃木坂46
  6. インフルエンサー / 乃木坂46
  7. いつかできるから今日できる / 乃木坂46
  8. 不協和音 / 欅坂46
  9. 風に吹かれても / 欅坂46
  10. Doors ~勇気の軌跡~ / 嵐

レコチョク配信
http://recochoku.jp/special/100607/

  1. 恋 / 星野源
  2. HANABI / Mr.Children
  3. ハッピーエンド / back number
  4. 前前前世 / RADWIMPS
  5. 渡月橋 ~君 想ふ~ / 倉木麻衣
  6. やってみよう / WANIMA
  7. 打上花火 / DAOKO×米津玄師
  8. Destiny / シェネル
  9. おとなの掟 / Doughnuts Hole
  10. I need your love / Beverly

チャート梁山泊
http://www.os.rim.or.jp/~katokiti/anual17.htm
(ザ・ベストテン終了後も独自に同様のチャートを作り続けているすごいサイト)

  1. 恋 / 星野源
  2. 不協和音 / 欅坂46
  3. インフルエンサー / 乃木坂46
  4. いつかできるから今日できる / 乃木坂46
  5. 逃げ水 / 乃木坂46
  6. 世界に一つだけの花 / SMAP
  7. 二人セゾン / 欅坂46
  8. Family Song / 星野源
  9. 風に吹かれても / 欅坂46
  10. シュートサイン / AKB48

billboard JAPAN 総合チャート
http://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=hot100_year&year=2017

  1. 恋 / 星野源
  2. シェイプ・オブ・ユー / エド・シーラン
  3. 打上花火 / DAOKO×米津玄師
  4. 不協和音 / 欅坂46
  5. 二人セゾン / 欅坂46
  6. TT / TWICE
  7. インフルエンサー / 乃木坂46
  8. PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン) / ピコ太郎
  9. 前前前世 / RADWIMPS
  10. サイレントマジョリティー / 欅坂46

【寸評】 今年は「billboard JAPAN 総合チャート」を新たに加えました。CD 売り上げも配信も世間のヒットを映し出していないような気がして,日本でチャート発表してまだ10年の billboard もチェックしてみようと思いました。オリコン以外は「」がトップでした。昨年秋~冬からの余波が春まで続きましたよね。

 昨年よりさらにヒットに乏しい感じが否めませんが,坂道グループが確固たる地位を築きつつあります。乃木坂46は「インフルエンサー」,欅坂46は「不協和音」が今年の代表曲と言えそうです。アーティストでは,米津玄師 の活躍が目立ちましたね。本格的なブレイクの年と言っていいでしょう。

カラオケ年間チャート>

DAM
http://www.dkkaraoke.co.jp/news/171201.html

  1. 恋 / 星野源 ①
  2. 糸 / 中島みゆき ②
  3. 前前前世 / RADWIMPS ③
  4. 奏 / スキマスイッチ ⑧
  5. ひまわりの約束 / 秦基博 ④
  6. 海の声 / 浦島太郎(桐谷健太) ⑥
  7. ハナミズキ / 一青窈 ⑦
  8. 小さな恋のうた / MONGOL800 ⑤
  9. 残酷な天使のテーゼ / 高橋洋子 ⑨
  10. キセキ / GReeeeN ⑩

JOYSOUND
https://www.joysound.com/web/s/karaoke/contents/annual_ranking/2017

 上記 DAM ランキングの曲名の右側に記載した①~⑩が,JOYSOUND での順位です。

【寸評】 昨年のビッグヒット「」「前前前世」がベスト3に入ってきました。この2曲は少なくともあと数年は歌い継がれそうな名曲ですね。

10大ニュース

◆読売新聞・国内
http://www.yomiuri.co.jp/feature/top10news/20171222-OYT8T50045.html

  1. 14歳棋士、藤井四段が29連勝の新記録
  2. 天皇退位特例法が成立。19年4月末退位、5月改元へ
  3. 横綱日馬富士が暴行問題で引退
  4. 眞子さま婚約内定
  5. 衆院選で自民圧勝。立憲民主が野党第1党に
  6. 陸上100メートル 桐生、日本人初の9秒台
  7. 神奈川・座間のアパートで切断9遺体
  8. 上野動物園でパンダ誕生
  9. 「森友」「加計」問題などで内閣支持率急落
  10. 稀勢の里が第72代横綱に

◆読売新聞・海外
http://www.yomiuri.co.jp/feature/top10news/20171222-OYT8T50043.html

  1. トランプ米大統領が就任
  2. 北朝鮮が6回目の核実験。弾道ミサイル発射も相次ぎ強行
  3. 金正男氏、マレーシアの空港で殺害
  4. ノーベル文学賞にカズオ・イシグロ氏
  5. 韓国・朴大統領の罷免決定
  6. 仏大統領にマクロン氏。最年少39歳
  7. 英政府がEU離脱を正式通知
  8. 米ラスベガスで銃乱射、58人死亡
  9. トランプ氏が「パリ協定」離脱表明
  10. メキシコ地震、死者369人

【寸評】 国内のトップ3が,将棋天皇相撲という,日本伝統の話題になりました。海外はトランプ大統領北朝鮮問題が常に話題に上っていました。

流行語

◆「現代用語の基礎知識」選ユーキャン新語・流行語大賞
http://singo.jiyu.co.jp/award/award2017.html

  • インスタ映え
  • 忖度
  • 35億
  • Jアラート
  • 睡眠負債
  • ひふみん
  • フェイクニュース
  • プレミアムフライデー
  • 魔の2回生
  • ○○ファースト

女子シングル2枠代表選考を振り返る 【スポーツ雑誌風】

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です。


 フィギュアスケートの女子シングル平昌五輪代表は,宮原知子,坂本花織 の2選手に決定した。宮原 選手は日本女王の貫録でつかみ取り,坂本 選手は,競馬に例えるなら4コーナーから一気の末脚で馬群から抜け出した。4年間を支えてきた大エースと,シニアデビュー組の2人という,2枠としてはなかなか良い陣容となった。五輪の代表選考は,今シーズンの内容が大きく関わってくるが,4年間の集大成という位置付けでもあるので,この4年間を追いながら代表決定までのドラマを振り返りたい。

◆ソチ五輪後

 ソチ五輪の女子シングル代表だった3選手は,鈴木明子 が引退,浅田真央 が休養,村上佳菜子 が現役続行も成績停滞と,一気に世代交代の機運が高まった。そこに名乗りを上げたのは,宮原知子本郷理華 だった。宮原 は,ソチ五輪の翌シーズン(2014年)から全日本選手権を4連覇。本郷もソチ五輪の翌シーズン(2015年)から世界選手権に3年連続で出場。4年間の実績で代表を選ぶなら,この2人が選ばれていただろう。そのくらい2人は,この4年間の日本フィギュアスケート界を支えた。

 浅田 が1年間の休養を経て2015/16シーズンに復帰を果たし,復帰シーズンにもかかわらずGP(グランプリ)ファイナルにも世界選手権にも出場した,見事な復帰だった。さすが 浅田,これなら平昌五輪でも勝負できるのでは,そう思ったのも束の間,翌2016/17シーズンはケガもあって精彩を欠き,五輪シーズンを前に潔く身を引いた。

 その2016/17シーズン(昨シーズン)に台頭したのが,シニアデビューの 三原舞依樋口新葉 だ。2人は全日本選手権の表彰台に乗り,宮原 と共に四大陸選手権と世界選手権の代表になった。しかし,シーズン後半,2人の明暗は分かれた。三原 は,平昌五輪のリンクで開催された四大陸選手権で優勝,世界選手権はSP(Short Program,ショートプログラム)で出遅れながらFS(Free Skating,フリースケーティング)で巻き返し5位に入賞した。一方,樋口 は四大陸選手権,世界選手権ともに8位入賞さえも逃し,平昌五輪の代表枠をまさかの2枠に落としてしまった。これは,宮原 のケガの快復が間に合わず世界選手権を欠場したことが響いたが,樋口 はあと1つミスが少なければ3枠を確保できる順位に上がれただけに,日本にとってはあまりに厳しい世界選手権の結果だった

◆樋口新葉

 樋口 にとっては,自分の演技によって五輪代表枠を2枠に落としたことが,代表決定の局面で自分の首を絞めてしまった。しかし逆の見方をすれば,その責任を感じながらも,代表選考の最後の選択肢までよく残ったと見ることもでき,この健闘は大いに称えられるべきである。世界選手権の失意の後,国別対抗戦にも駆り出されたのを見て,国別対抗戦の結果によっては 樋口 が潰れてしまうのではないかと,私はかなり本気で心配したが,国別対抗戦で 樋口 は日本史上最高スコアのFSを披露し,それまでのもやもやを吹き飛ばしてシーズンを終えた。悔しさと成長を手にした 樋口 の五輪シーズンには期待と不安が入り混じっていた

 今シーズンに入ると,樋口 は前哨戦のロンバルディア杯でスコア217点の好スタートを切った。GPシリーズに入っても210点台を連発し,ロシア大会3位,中国大会2位と2戦続けて表彰台に乗った。シリーズ2戦とも表彰台に乗った日本女子選手は 樋口 だけだ。しかし,これだけの好成績にもかかわらず,GPファイナル進出を(中国大会の4週間後の)シリーズ最終戦(アメリカ大会)まで待たされたことが,ファイナルや全日本選手権までの調整を難しくしたのかもしれない。ロシア大会でミスを1つ減らして2位になるか,中国大会で GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)や PCS(Program Component Score,演技構成点)を1点強プラスして優勝するか,どちらかができていれば中国大会の時点でファイナル進出が確定していた。こういう1ミス・1点の重みを,今シーズンの 樋口 は痛感したに違いない。

 また,ファイナル進出が決定したのは,アメリカ大会で 宮原 が優勝,坂本 が2位に入り,他のファイナル進出候補選手の順位を下げてくれたおかげだった。もし彼らが上位に入らなければ,樋口 はファイナルに進出できなかっただろう。日本選手にサポートしてもらう形でファイナルに進出した 樋口 は,ここで表彰台に乗るか,乗れなくても良いスコアが出せれば,代表選考の際の印象はかなり違っていたはずだが,もらったチャンスを生かすことができなかった。昨シーズンの四大陸選手権,世界選手権に続き国際一線級大会3連続不発となり,この時点で,大舞台に弱い 樋口 を五輪代表にするのは酷だと私は感じた。結局,樋口 が平昌五輪代表を逃し,樋口 のファイナル進出をアシストした 宮原 と 坂本 が代表になったところに,勝負のあやを感じずにはいられない。

 樋口 はシニアデビューの昨シーズン,しきりに「大人の演技をしたい」「表現力を強化したい」と言い続け,ジャンプ等の技術向上と表現力強化の両立を図ろうとしていたが,私はシーズン開始時からその戦略に不安を抱いていた。四大陸選手権と世界選手権で崩れたときには,嫌な予感が当たってしまったと思ったのだが,今シーズンの PCS が伸びたのは昨シーズンの表現力の強化が実を結んだとも言えるので,その戦略の善し悪しは安易には評価できない。しかし,五輪代表落選の現実は,戦略を見直す良い機会になる。樋口 はもっと技術点重視で臨むべきであると私は今でも考えており,ぜひ今シーズンには間に合わなかった 3A(トリプルアクセルジャンプ)をすぐにでも習熟させて,プログラムに華やかさを加えてほしいと願っている。3A 導入の効果は,飛べることのすごさだけではなく,他のジャンプが楽に飛べるようになったり,プログラムに組み込むジャンプの選択肢が広がることにある。このことは,浅田真央 や 紀平梨花 が証明している。3A は必ず 樋口 を強くすると私は信じている。

◆三原舞依

 昨シーズンの四大陸選手権は平昌五輪のリンクの予行,世界選手権は平昌五輪の枠取りという点で,例年より重要度が高かった。そんな2大会で好成績を上げ,さらに国別対抗戦で218点という日本史上最高レベルのスコアを出したこともあり,三原 は平昌五輪代表に相応しいと私は強く感じていた。なので,三原 が代表を逃したことは残念でならない。だが,今シーズン当初から嫌な予感はあった。GPシリーズの対戦カードが厳しかったのだ。三原 は中国大会とフランス大会に出場したが,この2大会は出場者のレベルが他の大会より高かった。とはいえ,両大会とも ザギトワ(ロシア)が出場したので優勝は難しいとしても,両大会で2位ならファイナルに進出でき,これは 三原 の実力ならさほど難しくないミッションのように思われた。

 だが現実は,2大会とも200点を超えながら4位に終わった。2大会とも200点以上を記録した選手で表彰台に立てなかったのは 三原 だけであり,対戦カードの不運に見舞われた。安定した成績を残しながら,代表選考の選択肢にも上がらなかったのは意外としか言いようがないが,今シーズンで1戦でも,SPとFSが両方ノーミスで210点を超えるスコアを出していれば,違った展開になったかもしれない。そこまで突き抜けられなかった原因は,SPでずっとミスが出続けたことだった。SPはタンゴという 三原 には不向きなジャンルにチャレンジし,FSと全く違う世界を魅せることで表現の幅をアピールする作戦だったのかもしれないが,結果論で言えば五輪シーズンに採る戦略としてはリスクが大きかった。三原 はプログラムを体にしみこませ,完全に自分のものになると完成度が上がっていく。昨シーズンの後半はそれがハマったが,今シーズンはタンゴがなかなか体に入り込まなかったのではないか。三原 がタンゴを消化しきれていない,という意見は観る側のブロガーなどからも上がっていたし,ひょっとすると全日本選手権でSPを昨シーズンのプログラムに戻すかもしれないと私は思っていたが,そこまでの荒療治は行われなかった。

 練習ではノーミスで通せていたそうだが,それが大会で発揮できない。そのもどかしさが,全日本選手権ではまさかの 2A(ダブルアクセルジャンプ)転倒という形で出てしまった。練習でできることが本番でなぜかできないという状況は,原因がどこにあるのかわからず,昨シーズンの成功体験とのギャップもあり,モヤモヤしたままシーズンが進んでいったと思う。これがシニアデビュー2年目のジンクスだったのだろう。樋口 も 三原 も,直近2シーズン,日本女子をリードしたにもかかわらず,五輪代表落選という形で課題が突き付けられるのは酷だが,若くしてこのような大きな経験ができたことは必ず今後に生きてくるだろう。2シーズンの活躍が評価され,三原 は四大陸選手権,樋口 は世界選手権の代表に選出された。彼らなら気持ちを切り替えて再スタートを切ってくれることだろう。

◆宮原知子

 宮原 が無事に平昌五輪の代表になり,関係者はホッと胸をなでおろしたことだろう。ソチ五輪後の4年間,全日本選手権を勝ち続け,世界ランキング1位に君臨したこともある 宮原 が,五輪に出場できなければあまりに気の毒だからだ。宮原 は,

  • 2015年 世界選手権:2位
  • 2015年 GPファイナル:2位
  • 2016年 世界選手権:5位
  • 2016年 GPファイナル:2位

と,非常に安定した成績を残していたが,2017年1月に股関節骨折が発覚し,昨シーズン後半は休養を余儀なくされた。昨シーズンは五輪プレシーズンというだけで重圧がかかる上に日程も過密で,四大陸選手権が平昌五輪のリンクでの開催なので出場必須な上に,その翌週に札幌でアジア大会に出場するという,厳しすぎる日程だった。これらを乗り切るために練習過多になったとしても不思議ではない。結局 宮原 は「五輪会場の経験」「アジア大会の盛り上げ」「世界選手権の2年ぶりのメダル獲得」「五輪3枠の維持」これらを何一つ果たすことができず,宮原 陣営は責任を感じていたと思う。ただ,もしアジア大会後に骨折していたら,平昌五輪の出場は絶望的だっただろう。今思えばギリギリのタイミングでのケガだったと言える。

 ケガからの復帰が11月のNHK杯までずれこんだとき,不安はかなり大きかったことだろう。宮原 は豊富な練習量で演技の完成度を上げていく選手なので,ケガが長引き追い込んだ練習ができないことを不安視する声はあった。しかし,復帰後の演技は今までの 宮原 選手とは一味違っていた。今までは,求められる振付を100%実施するという感じだったが,復帰後は,身体の使い方に躍動感が増し,表現が力強くなった印象を受けた。スケートができる喜びにあふれ,休養中にスケート以外で吸収したことが表現に生かされているように感じた。復帰2戦目のアメリカ大会は,ノーミスというレベルではなく完璧な出来で,その演技は神々しさに満ちていた。ここで完璧な演技ができたことで,練習量や試合勘の不安は完全に払拭され,自信を得たに違いない。これで五輪代表入りは間違いないと私は確信した。GPファイナルは,メドベージェワ(ロシア)欠場による繰り上げ出場だったため本気を出さず,全日本選手権にきっちりとピークを持っていった。

 怪我の功名という言葉は,正に 宮原 に当てはまる。練習をハードに追い込まなくても良い演技ができるという経験が得られ,休養を経て表現力が上がったこれらの武器を手に入れた 宮原 は今まで以上に強い。ケガの不安がある メドベージェワ,まだ若く経験値が少ない ザギトワ らが脅威を感じる存在になるだろう。

◆坂本花織

 シンデレラガール,ダークホース,ライジングスター,様々な表現で驚きをもって迎えられた 坂本 の五輪代表選出。だが,GPシリーズをじっくり観戦していた方は,坂本 がポッと出ではないことをご存知だろう。GPシリーズのベストスコアランキング7位,今シーズンの世界ランキング7位と,十分に世界で戦える力を身に付けてきた。全日本選手権の4週間前のアメリカ大会で一気に覚醒したのは,それまでの豊富な実戦経験が花開いたものだった。GPシリーズ前の前哨戦に(多くの選手が1戦のところ)2戦出場。全日本選手権のシード権を持っていなかったため,出場権を得るために国内大会にも出場した。ノーシードでの2位とはお見事であり,マラソンの 川内優輝 ばりに大会に出続けて実戦経験を積んだことが奏功した。

 アメリカ大会の前まで 坂本 のスコアは200点未満が続いていたが,アメリカ大会で一気に世界の一線級である210点に到達した。物事の成長は直線的ではなく階段状である,とよく言われるが,坂本 のスコアの成長はその好例である。なかなか200点の壁を越えられずもがいたと思うが,めげずに実戦をこなしたことで,ちょうどアメリカ大会でジャンプアップできたのだろう。この時の演技は完璧で,特にFSの「アメリ」が素晴らしかった。この演技が全日本選手権でもできれば優勝も夢ではない,本当にそう思うほどだった。それにしても,アメリカ大会でのジャンプアップは,絶妙なタイミングだった。もっと早くスコアが出ていれば,慢心や重圧が生じたかもしれないし,アメリカ大会でスコアが伸びなければ,全日本選手権の好成績がまぐれだと受け取られたかもしれない。全日本選手権でスコア213点を出したことで,2大会連続で210点超えとなりアメリカ大会を上回ったことは,安定と成長を印象付け,五輪代表入りの大きな決め手となったに違いない。

 たまたま直近2大会でスコアが出ただけという見方もできるのだが,樋口 とどちらが代表に相応しいか個人的に検討したブログ記事を書いたとき,様々な観点を書けば書くほど 坂本 が相応しいという気持ちに私は傾いていった。重要な大会(昨季の四大陸選手権・世界選手権,今季のGPファイナル・全日本選手権)の成績が(ノーミス演技を勝ちと考えたとき)樋口:0勝4敗,坂本:1勝0敗であり,この観点では比較しづらいのだが,これだけ大舞台に弱く,2枠に落とした主たる要因だった 樋口 を五輪代表には推しづらかった。一方で,坂本 の経験値が 樋口 より少ないのは事実であり,全日本選手権において,SPトップ&FS最終滑走という状況がなければ,あるいは,もう少しジャンプがふらつくなどしてスコアが210点に届かなければ,坂本 の代表入りはなかったかもしれない。さらには,2人の直接対決は今シーズン1勝1敗(ロシア大会,全日本選手権)。正に「総合的な判断」によって 坂本 が選ばれたのだろう。

◆五輪代表選考のドラマ

 2シーズンに渡って活躍していた 樋口 ではなく,シニアデビューの 坂本 が選出されたことで,それなら始めから全日本選手権一発勝負でよかったのでは?という意見も見られる。わかりやすさという点では一理ある意見だとは思うが,優勝者以外は総合的判断という現在の方式を私は基本的に支持する。まぐれで上位に来た選手の代表入りを防げるのが一番大きな理由だが,他に,国際大会と国内大会の違い,好不調の出やすさ,といったことへの考慮が必要という理由もある。これらの詳細な説明はここでは割愛するが,現在の方式だったからこそ 樋口 が最後まで代表選考の選択肢に残ったのであり,これは妥当な選考過程だったと思う。

 ただ,1つ課題に思うことは,全日本選手権の前に全く代表内定が出ない点だ。現行の方式では,たとえGPファイナルで優勝しても代表が確約されないので,全日本選手権に全力を注がざるを得ない。これはピーキングを非常に難しくするし,GPシリーズからずっと頑張ってきた選手が代表入りすると,それまでの疲労により五輪にベストな状態で臨めないリスクがあると思う。私はGPファイナルのメダリスト(1~3位)は五輪代表内定にすべきだと考えている。もしそのような選考基準であれば,樋口 はGPファイナルの集中度がもっと高くなり,違った結果になったかもしれないと思うのだ。全日本選手権の権威を高めたい気持ちはわからなくもないが,国際大会の経験や成績は五輪で上位に入るために不可欠であり,GPファイナルに出場するにはGPシリーズで良い成績を継続する必要があることから,GPファイナルで内定を出すことは理にかなっていると思う。

 樋口 はGPファイナル6位ではあったが「GPファイナル出場者上位2名」という今回の選考基準を満たした。この基準はソチ五輪の時にはなかったもので,ソチ五輪では「GPファイナルメダリストのうち上位1名」という今回より厳しい基準があった。なぜ今回の基準になったのかについては,ソチ五輪の時の反省があると私は推察する。ソチ五輪の代表選考において,男子シングルの 織田信成 は,GPファイナルで3位に入ったにもかかわらず,羽生結弦 が優勝したため「GPファイナルメダリストのうち上位1名」という選考基準を満たさなかった。そして,織田 は全日本選手権で4位となり「全日本選手権2位・3位」という選考基準も満たさず,結局,代表選考の選択肢に残らなかったのだ。このシーズン,織田 は総じて好調だったので,「GPファイナル出場者上位2名」という選考基準があったら,当時ケガを抱えていた 高橋大輔 ではなく 織田 が選ばれた可能性が高く,結果論で言えば 織田 は五輪の銅メダルを獲れた可能性が十分にあった。今回,樋口 がこの選考基準を満たしたことが選考を悩ませる一因だったわけだが,そこにはこのような過去の反省が生かされていたのである。

 今回の五輪代表選考のドラマは,頑張り続けた 樋口 と急浮上した 坂本 という対照的な2人によって生み出された。樋口 は昨シーズンの世界選手権で2枠陥落の主因となったものの,その悔しさをバネに今シーズンはGPファイナルに出場し,終始,五輪代表争いをリードした。坂本 は国内大会などの地道な実戦がラスト2大会で結実し,全日本選手権で初めて大きな注目を浴びながら見事な演技を魅せた。恵まれているとはいい難い体格ながら高い実力を持ち,しかし肝心な大会でそれを出し切れない 樋口 に,私はもどかしく思いつつ自分を見ているような親近感を覚えた。高い素質がありながら今まで本格的な注目を浴びてこなかった 坂本 が平昌五輪の代表争いに急浮上する姿は,陰ながら応援してきた私としても望外の喜びだった。どちらが選出されても五輪代表に相応しい資質を備えている2人だからこそ,今までで最も難航したとされる五輪代表選考のドラマが生まれたのだと思う。

 五輪代表は 坂本 になったが,世界選手権代表は 坂本 ではなく 樋口 に割り当てられた。フィギュアスケートは,五輪のシーズンにも世界選手権を開催する珍しい形態が採られているが,五輪代表と世界選手権代表でメンバーが変わる例が今まであっただろうか。それだけ 樋口 の功績や実力が高く評価されたことの表れである。昨シーズン2枠に落とした借りを今シーズン返してこい,というメッセージにも読み取れ,見方によっては粋な計らいとも残酷とも解釈できるが,今の 樋口 ならやってくれる気がしている。樋口 本人が発した「倍返し」の物語の始まりに注目したい。

 年が明ければすぐに平昌五輪を迎える宮原メダル争いが目標だが,坂本 にそこまで求めることは無理があり,トップ5に入れば大健闘だ。順位よりも,2人にはミスなく GOE で大きな加点がつくような演技を期待したい。実は,過去のデータを調べてみると,新採点方式になった2006年以降,五輪でSPとFSの両方をノーミスで演技したシングルの日本選手は,男女共に1人もいないのだ。2006年トリノ五輪金メダルの 荒川静香 でさえ,FSで1つジャンプの抜けがあった。2010年バンクーバー五輪5位の 安藤美姫 も良い内容だったが,SPでジャンプの回転不足があった。間違いなく史上最高レベルの大会になるであろう平昌五輪で,宮原 と 坂本 には,ぜひ日本シングル史上初のノーミスを達成し,キスアンドクライで最高の笑顔を見せてほしい

涙の全日本選手権

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です。


 五輪シーズンのフィギュアスケート全日本選手権。4年に一度の五輪が絡むので,どうしても張り詰めた空気に覆われてしまいますが,今年は特にいろいろな涙に彩られた大会だった気がします。

◆女子シングル

 FS(Free Skating,フリースケーティング)を終えた後の 宮原知子 選手の涙。この4年間の日本フィギュアスケート界を支え続けたプライド,ケガ明けの不安や恐怖,それに打ち勝った安堵感,それらが凝縮された瞬間でした。無事に平昌五輪代表になった今となっては,正に怪我の功名だったと思います。様々なエピソードが報じられていますが,スケートだけでなく,リハビリでも空いた時間の活動でも,黙々としかし着実に実行していたという話を聞くと,それらの努力が全て今大会のスケートに結実したのだなと思います。

 以前から定評のあった,動作に一切の無駄がなく研ぎ澄まされた表現は,今季のスケートアメリカで神々しさをまとい始め,もう今季はこのまま平昌五輪まで突き進む,そう私は確信しました。その確信どおり,今大会ではスコアを220点に乗せ,高らかに平昌五輪のメダル争いに名乗りを上げました。このスコアでもまだ,SP(Short Program,ショートプログラム)とFSの両方でジャンプの回転不足が1ヶ所ずつあり,他のジャンプでも GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)を伸ばせる余地がありますので,技術点の上乗せだけで225点,演技全体が完璧なら PCS(Program Component Score,演技構成点)もさらに伸びるので,トータル230点も見えてきました。このスコアを出せば確実にメダルに手が届きます。一度は諦めかけた平昌五輪を手繰り寄せた 宮原 選手には,きっと4年間の努力に対するご褒美がある,そう信じたくなる今大会の演技,そして涙でした。

 SPで 宮原 選手をわずかに上回りトップに立った 坂本花織 選手。プログラム「月光」は今までで一番の出来でした。思いのほか高い点数が出て,キスアンドクライで「わ~」と驚きながら存分に喜ぶ姿には,観ているこちらも嬉しくなりました。しかし,急に降って湧いたSPトップで,しかもFSは最終滑走。こうなる可能性を大会前にどれほど想定していたかわかりませんが,五輪シーズンでとてつもないプレッシャーがかかったと思います。

 FSは,冒頭の連続ジャンプで,セカンドジャンプが回転不足になり詰まってしまうあたり緊張が出ていましたが,その次のジャンプが膝を柔らかく使いながらふわっと着氷したのを観て,最後までミスなくできそうな予感がしました。実際にジャンプはミスなく入れることができましたが,「アメリ」というプログラムは最初から最後までパントマイムなどの細かいつなぎが満載で,前の大会に比べつなぎの表現に余裕がないように見えました。それでも 坂本 選手はそれなりに手応えを感じ,宮原 選手に勝てないまでもある程度迫る点数を期待していたようで,キスアンドクライでスコアが出たとき,坂本 選手は「あれっ」という表情を見せていました。スコアが140点にわずかに届かなかったのは,PCS の伸び悩み,冒頭ジャンプの回転不足,3Lz(トリプルルッツジャンプ)のエッジの問題で GOE 加点なし,の3つが原因でした。それでも,伸びしろを残しながらトータル213点を出したということは,GOE で加点された要素も多くあったということであり,ものすごい重圧を思えば見事な演技だったと思います。

 今大会の演技を観た関係者は,坂本 選手の舞台度胸と五輪までの伸びしろを高く評価したのでしょう。坂本 選手に平昌五輪代表の座がめぐってきました。代表争いに関する感想は別途記事を書きたいと思いますが,今大会の演技は 坂本 選手を選びたくなるような内容だったと言えるでしょう。

 年齢制限で平昌五輪の代表争いに巻き込まれなかった 紀平梨花 選手が,3A(トリプルアクセルジャンプ)旋風を巻き起こしなんと表彰台に乗りました。FSだけなら 宮原 選手に次ぐ2位という堂々たる成績で,SPの 3Lz が抜けなければトータルでも2位に入っていた計算です。ジュニアグランプリファイナルに続き 3A は絶好調で,3A+3T(連続ジャンプ:トリプルアクセル→トリプルトウループ)という大技を含め,SPとFS合わせて3本の 3A に成功。しかも単なる成功ではなく3本とも極めて質の高い美しい 3A でした。

 ですが,紀平 選手は 3A だけの選手ではありません。以前のブログ記事でも書きましたが,他のジャンプ,スピン,ステップ,PCS 全てがジュニア離れしています。今回のFSでは3回転ジャンプを8本入れる「8トリプル」に挑み,ジャンプの回転は全て認定されました(1つだけ着氷が乱れたジャンプがあり,その GOE が減点評価だったので「8トリプル成功」ではありません)。代表争いをしていた有力7選手が全員FSで1ヶ所以上回転不足があったことを考えると,回転不足がなかったというのは実はすごいことです。紀平 選手の8トリプルは 3A と 3Lz(トリプルルッツジャンプ)が2本ずつ入り,今大会のFSの技術点は 79.53 点。ちなみに技術点2位は 73.90 点(三原舞依 選手,5.63 点差),グランプリファイナルのFSの技術点トップでも 76.61 点(ザギトワ 選手(ロシア),2.92 点差)なので,この技術点がいかにすごいかがわかります。また PCS も,FSではジュニアの他の選手より3点以上高い 61.76 点を獲得し,スケーティング技術や芸術性でも評価が高いです。まだ15歳で既にこの完成度なので,今後の成長で PCS がもっと上がれば,世界チャンピオンを狙える逸材です。平昌五輪後は,紀平 選手の成長を楽しみたいと思います。

 紀平 選手のFS大躍進によって,4年連続の表彰台を逃してしまったのが 樋口新葉 選手でした。昨年まで3年連続で全日本選手権の表彰台に上り,今年もうまく乗り切るかと思ったのですが,五輪代表がかかる今年は,大舞台の弱さが今大会でも出てしまいました。SPとFSでジャンプが抜けるミスが1本ずつありましたが,これら以外のジャンプはきちんと入れましたし,表現などは気持ちが入っていて PCS は割と高い点数が出ていました。ミスを引きずることなく演技全体をまとめたという点では今シーズンの成長が表れていましたし,今までならこのくらいのスコアでも表彰台に上れたと思いますが,現在の日本のレベルでは2つミスをすればこういう結果になるということでしょう。代表発表時,舞台裏では悔し涙にくれたことと思いますが,これをバネにして今後,より強くなっていくことを期待しています。

 坂本 選手の代表入りを,悔しさと喜びと入り交じりながら受け止めているのが 三原舞依 選手でしょう。私は 三原 選手の逆転代表入りを願っていましたが,SPでまさかの 2A(ダブルアクセルジャンプ)転倒があり,SPの段階で同門後輩の 坂本 選手とかなりの差がついたことで代表入りはほぼ絶望的になってしまいました。それでもFSのプログラム「ガブリエルのオーボエ」は,三原 選手の穏やかで柔らかいスケーティングが素晴らしく,140点に乗せて意地を見せてくれました。演技終了直後の涙には,FSがうまくいったからこそのSPの悔しさ,壁を越えられなかったもどかしさも含まれているように感じました。今季は安定して200点台のスコアを出しながら210点を一度も超えられず,FSも10月のジャパンオープンで出した PCS 70 点,計 142 点に届きませんでした。やはりSPの出遅れのせいか,やや慎重な部分があったようにも感じました。

 SPのプログラム「リベルタンゴ」は今大会でもミスが出て,完成に至りませんでした。三原 選手にとってはチャレンジといえるジャンルで,大丈夫か?という声はシーズン当初からありましたが,結果から判断すればこの賭けは裏目に出たと言えるでしょう。SPの演技が体に入り込む前に今大会を迎え,失敗できないという重圧から,最後のジャンプである 2A のところで綻びになってしまったという感じでしょう。三原 選手はプログラムが体に入り込んでからどんどん完成度が上がっていくタイプで,だからこそ昨季はシーズン後半に好成績を残すことができました。タンゴは 三原 選手の体に入り込むのに時間がかかってしまったのではないでしょうか。今大会はトータルスコア210点超えが2人だけと,スコアの点ではけしてハイレベルではありませんでしたから,三原 選手にも十分チャンスがあっただけに,平昌五輪代表入りを逃したのは残念でなりません。

 本郷理華 選手のSP「カルミナ・ブラーナ」は本当に素晴らしかったですね。今季やや上向いてきたとはいえ,グランプリシリーズもパッとせず,今大会に賭けてきた気持ちが伝わってきました。今までの 本郷 選手の演技は,スケールの大きな演技ができる体格や技術を持ち合わせながら,表現面ではやや凡庸な印象が拭えないところがあったのですが,今大会のSPでは表現しようという意志が観ているこちらにも強く伝わってきました。そこには,4年間日本女子を支えてきたプライド,平昌五輪への強い想い,長久保 コーチの退任など周囲の状況の変化に打ち勝つ気持ち,そういった様々なものが体現されていましたし,観ている私たちもそれを共有したからこそ,強い感動があったのだと思います。FSはベストな演技にはなりませんでしたが,転倒しても全く気持ちを切らすことなく最後まで演じ切った姿には,本郷 選手の強さの一端を観た思いがしました。今大会のような表現の強さがあれば,本郷 選手は再び全盛期を迎えることができると思います。

 本田真凛,白岩優奈 両選手は,シニアデビューの洗礼を受けてしまった,いや,自らそこにハマってしまった印象を受けました。同じシニアデビュー組の 坂本 選手が代表にまで上り詰めた姿を見て,彼らが抱える思いを考えると複雑な気分になります。スケートアメリカで花開いた 坂本 選手を観て「よし自分たちも続くぞ」と彼らは思ったはずですが,今大会の2人からはそういう気持ちの強さが感じられず,ただただ緊張感に包まれていたように見えました。結果として,グランプリシリーズを上回る内容を示すことができませんでした。

 特に 本田 選手の心と体のコントロールが大丈夫なのか,ちょっと心配です。本田 選手のFSの演技を観ていて,逆転のためには開き直るしかない状況なのに,表現が前に出てこない感じがして,ちょっとおかしいと私は感じました。スポーツナビのコラムで 安藤美姫 さんは 本田 選手の演技について「心が離れているように感じた」と表現されていて,私の抱いた感覚はそういうことだったのかと腑に落ちました。逆転といってもほぼ不可能な状況でしたから,気持ちは全力を尽くそうと思っていても,身体が悟ってしまっていたのかもしれません。しかも,同じシニアデビュー組の 坂本 選手が代表の座をつかんだことで「自分にもできたはずなのに」という失意が大きくなっているかもしれません。本田 選手がメンタルダメージを負わないように,心のケアと今後に向けた動機付けに周囲が万全を期してほしいです。

◆男子シングル

 宇野昌磨 選手は,羽生結弦 選手不在でなかなかモチベーションを保つのが難しかったかもしれません。今大会でも 2A+4T(連続ジャンプ:ダブルアクセル→4回転トウループ)を試みるなど,自分に刺激を与えようとしていた気がします。ただ,五輪直前なのに,この場に及んでも何かを試している,というのはやや不安を感じます。この時期は,プログラムを固めてそれを成熟される段階だと思うからです。今大会も300点に届かず,平昌五輪が大丈夫なのか不安に感じている方もいると思いますが,ここは 宇野 選手を信じてみましょう。昨季の世界選手権の見事なピーキングを,平昌五輪でも実行してくれるはずです。

 田中刑事 選手は,実力どおりの代表入りとなりました。驚いたのは,PCS が88点も取れたことで,これは大きな自信になるでしょう。そして,田中 選手の代表入りは,羽生 選手の五輪連覇にとってかなりプラス材料になると思います。羽生 選手にとって,同期であり気心が知れた 田中 選手が近くにいてくれることで,ケガ明けの不安や連覇への重圧がかなり緩和されると思います。

 男子で最も涙を誘ったのは,山本草太 選手ですね。大けがからの復帰で,まだ難しいジャンプを入れられない状況の中,今できるベストの構成をほぼきちんとやり切りました。そして,表現面では以前よりもはるかに力強さが増していました。山本 選手は 本郷 選手と同門生ですから,彼も 長久保 コーチの退任に驚いたのではないかと思います。そういった環境変化,そしてケガ,それらを乗り越えて復帰した自分に今できる最高の演技を観ている皆さんに届けたい,そんな気持ちが強く強く表れる演技でした。多くの観客やテレビ観戦された皆さんが感涙されたと思いますが,それは単に復帰を祝しただけではなく,その強い気持ちがスケートの演技に乗って観る者の心に響いたのです。困難を乗り越え,強い気持ちと表現力を手に入れた 山本 選手の今後から目が離せません。


 全日本選手権の激闘が幕を閉じ,平昌五輪代表が決まり,年が明けるといよいよ五輪モードに突入します。選手の皆さんは,いったん緊張を解き,休息を取り,それぞれの次なる目標に備えてほしいです。今シーズンここまで,実に多くの感動がありました。選手の皆さんの素晴らしいパフォーマンスに,心から拍手を送ります。

【FS終えて】どうなる?女子シングル五輪代表2枠

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です。


 まさか,フィギュアスケート全日本選手権・女子シングルのFS(Free Skating,フリースケーティング)が終わってもこのタイトルでブログ記事を書くことになるとは思いませんでした。重要選考対象者は,全日本選手権2位の 坂本花織 選手と同4位の 樋口新葉 選手で間違いないでしょう。前回のブログの予想どおり 坂本 選手が2位に入ったことで,代表選考のドラマが生まれることになります。私の中では,2人とも平昌五輪に出場してほしい気持ちでいっぱいなので,代表選考のポイントが何なのかを,私の心の中の 坂本 支持派と 樋口 支持派があたかも討論しているかのような感じで書いてみようと思います。

坂本 支持派(以下S):全日本2位といってもただの2位じゃない。SP(Short Program,ショートプログラム)1位かつ最終滑走という強烈なプレッシャーの中,ノーミスどころか GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)もかなり高い演技をして,トータルスコア210点を超えた 坂本 選手を代表に選ばなかったら,全日本選手権って何なの?って思われるよ。

樋口 支持派(以下H):坂本 選手の成績は見事だけど,樋口 選手だって極限の緊張の中でほぼ207点って素晴らしいと思う。

S:坂本 選手は,SP,FS両方とも 樋口 選手より上位で,6.55点もの差を付けた。樋口 選手の実力なら表彰台を逃すことがあり得ないし,下位にしてもせめて3点差以内の僅差に迫ってほしかった。

H:ノープレッシャーでジュニアの 紀平梨花 選手が3位に飛び込んじゃっただけで,樋口 選手は実質的には表彰台相当だ。今シーズン,樋口 選手はグランプリシリーズ2戦で表彰台に上り,グランプリファイナルにも出場したんだ。これだけ頑張ってきて,それでも全日本選手権でこれだけの成績だったってことは考慮してほしいな。代表選考基準の指標になっている「世界ランキング(ワールドスタンディング)」「今季のランキング」「今季のベストスコア」は,全て 樋口 選手が 坂本 選手を上回っているんだし。

S:世界ランキングは過去3年分のポイントだから,昨季にシニアデビューした 樋口 選手の方が上位になるのは当然。今季のランキングは 樋口:5位,坂本:7位だけど,ポイントは 1102 対 1091 で11ポイントの僅差。今季のベストスコアは,樋口:217点,坂本:210点 だけど,樋口 選手のスコアはシーズン前哨戦のロンバルディア杯で出したもので,その後今季はこのスコアを超えられていない。

H:でもこの217点は メドベージェワ,ザギトワ の両ロシア選手に次ぐ今シーズンベスト3のスコアだよ。このポテンシャルは評価されていい。

S:樋口 選手の実力は大いに認めるけど,それならグランプリファイナルか全日本選手権でこのレベルのスコアを出してほしかった。全日本選手権で 坂本 選手が213点を出したけど,日本は他の国みたいに自国の選手権でスコアを盛るようなことはしないので,この点数を国際大会で出すことは十分可能。それに,ジャンプの回転不足があったし GOE も伸びる余地があって,あと5点くらい上乗せ可能だから,坂本 選手も 樋口 選手に匹敵するポテンシャルがあると言えるよ。

H:ポテンシャルといっても机上の計算でしょ。樋口 選手は実際にそのスコアを出してるからね。全日本選手権はたまたま下位になってしまったけど,総合的に見れば 樋口 選手の実力の高さは明らかだ。

S:代表選考基準の「総合的に選考」の意味を勘違いしてない? 基準の各指標を比較するだけじゃないよ。デイリースポーツの新聞記事によると,日本スケート連盟の 伊東秀仁 フィギュア委員長が「(選考)基準の多い方が勝ちという問題ではない。五輪に出していい成績が取れるというところをふまえて判断すると思う」 とコメントしている。あらゆる角度から「五輪でより上位が獲れそうなのはどちらか」を検討して決めるんだと思うよ。

H:それなら 樋口 選手の安定感は特筆に値するよ。今季は全5大会で200点を超えてるんだから。

S:坂本 選手は直近の2大会で210点を超えてる。そして上り調子。平昌五輪に向けてさらに伸びていくと思う。

H:勢いで五輪を乗り切れるほど甘くないと思う。樋口 選手は PCS(Program Component Score,演技構成点)も高くなった。PCS が高い方が安定した戦いができる

S:全日本選手権のFSの PCS は 樋口:68.91 対 坂本:67.29 で1.62点の差がついたけど,グランプリシリーズで比較すれば 樋口:68.20(ロシア杯)対 坂本:67.48(スケートアメリカ)で0.72点しか差がない。樋口 選手は確かに昨季より PCS が伸びたけど,それ以上に 坂本 選手が急伸して,今は1点程度の差しかないよ。

H:樋口 選手は今まで平昌五輪の出場を強く意識してきたし,昨季の五輪プレシーズンでのシニア経験もアドバンテージになる。そして今シーズン当初から代表候補で居続けた 樋口 選手なら,代表の自覚ができてると思う。一方,この1ヶ月で急浮上した 坂本 選手が,五輪代表という立場をきちんと受け止めて消化できるのか心配だ。

S:坂本 選手が平昌五輪を 樋口 選手ほど意識していたかはわからないし,シニアデビューでいきなり五輪出場は荷が重いと思われてしまうのも仕方ない。でも,そもそも 坂本 選手と 樋口 選手は同学年だよ。それに,同じく昨季シニアデビューだった同門生の 三原舞依 選手からいろいろ聞いていると思うし,指導する 中野 コーチもその経験を 坂本 選手に還元しているはずだから「シニアデビューシーズンに急浮上したから不安」ってのは当てはまらないんじゃない?

H:「総合的に判断」ってこんなことまで材料にする? それなら,選手本人の想いの強さや経験こそ加味すべき重要な観点だと思う。

S:平昌五輪の本番リンクの予行だった四大陸選手権と,五輪出場枠の枠取りがかかった世界選手権。これら昨季の大舞台2大会で 樋口 選手は振るわず,涙を流して悔しがってたよね。その経験を活かすはずが,今季の大舞台であるグランプリファイナルと全日本選手権でも,昨季ほどではないけど小さなミスが出た。しかも両方とも国内開催で,全日本選手権は地元の東京開催。好条件にもかかわらず今季も大舞台で全敗って,厳しい言い方だけど経験が力になっているとは思えないよ。樋口 選手が五輪代表になったら,平昌五輪への想いが強すぎて「全日本4位なのに選んでもらったんだから結果を出さないと」って 樋口 選手が自身を追い込んでしまい,五輪でもまた実力を発揮できない結果になれば,樋口 選手がつぶれてしまいかねないよ。

H:樋口 選手はそんなメンタル弱者じゃないと思う。昨季の挫折から今季これだけ奮闘しているのは,メンタルが強靭な証。代表になれば,選ばれたことを意気に感じてやってくれるはず。

S:今季のファイナルか全日本選手権のどちらかでも 樋口 選手がノーミスの演技を魅せてくれたら安心できたんだけどね。一方,坂本 選手の大舞台の強さは未知数だけど,全日本選手権を経験したし,怖いもの知らずで乗り切っちゃうのでは,という考え方だってある。さっきも言ったけど,2人は同い年だから,プレッシャーの処理能力は大差ないと思うよ。それに,坂本 選手の明るい性格や振る舞い! プレッシャーと上手に付き合いそうだし,一緒に出場する 宮原 選手もリラックスできるような気がする。樋口 選手も メドベージェワ 選手と親友になるくらい社交性があるんだから,それをリンクに持ち込んだらどうかなと思うことがある。

H:樋口 選手は2シーズンに渡ってこれだけ頑張ってきたのに,落選だと浮かばれないよ。

S:ファイナルや全日本選手権が大事な勝負所だってことは,始めからわかっていたこと。グランプリシリーズ2戦に全力投球したのならピーキングの失敗だし,そうじゃないなら大舞台に弱いということ。坂本 選手は,今シーズンの前哨戦を2戦こなし,その後国内大会にも参加したりして,全日本選手権の前に8試合も消化したらしい。もちろん国内外とかレベルの違いとかあるから安易に比較できないけど,坂本 選手だって頑張っていたことは間違いない。

H:坂本 選手がもう少し早い時期に200点を超えるスコアを出してくれていれば,もっとスムーズな選考になったかもしれない。急浮上感がすごいので,坂本 選手に託してもいいかなという気持ちにはなかなかなりづらい

S:それを言うなら 樋口 選手がもう少し良いスコアや順位ならここまで不安にならない。ファイナル6位,全日本4位のどちらかが表彰台だったら選考を悩まずに済んだはず。さらには,演技のミスの内容も問題ありだと思う。ファイナルでは得意な 3Lz(トリプルルッツジャンプ)でミスがあり,全日本選手権では 2A(ダブルアクセルジャンプ)と 3S(トリプルサルコウジャンプ)という比較的難度の低いジャンプでミスがあった。ジャンプに定評がある 樋口 選手がこういうミスをするのは本当に解せないし,技術ではなくメンタルの問題だとしたら,これからメンタルを鍛えて次の五輪に満を持して挑めばいいと思う。

H:いろいろ言い合ったけど,両選手とも,選出される理由もされない理由もあることは確かだね。でなかったら選考に悩むはずもないし。

S:どちらに決まっても,両陣営や関係者は納得するだろうと思う。むしろ,世間の反応がどう出るかだね。

H:フィギュアウォッチャーでなければ,グランプリファイナルや全日本選手権しか観ていない人たちが多いと思う。そういう人たちにとっては,全日本4位の 樋口 選手が選ばれる方が不思議に思うかも。坂本 選手は「全日本の上位だから」で済むけど,樋口 選手の選出理由は丁寧に説明する必要がありそうだ。ソチ五輪代表の 高橋大輔 vs 小塚崇彦 のケースよりはるかに難しいだろうね。

【SP終えて】どうなる?女子シングル五輪代表2枠

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です。


 フィギュアスケート全日本選手権の女子シングルは,SP(Short Program,ショートプログラム)が終わり,坂本花織,本郷理華 の両選手がベストパフォーマンスを魅せた一方で,他の選手にはミスが出る展開になりました。土曜日に行われるFS(Free Skating,フリースケーティング)で順位の逆転は起きるのか起きるとすればその可能性はどのくらいか,少し詳しく見ていきたいと思います。

 今季の今までの結果を基に,各選手がどのくらいのスコアを獲れそうか予想しました。演技の基礎点は過去の実績からわかります。PCS(Program Component Score,演技構成点)は「良い演技」でのスコアと「完璧な演技」でのスコアを予想しました。完璧な演技なら3~4点上乗せできると想定しました。GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)は,「良い演技」では各演技要素にジャッジ1人あたり平均1点の GOE が付くと仮定,「完璧な演技」ではそれが平均1.5点になると仮定しました(完璧なら平均2点も可能でしょうが,1.5点が現実的と考えました)。スコア上の GOE による加点は,典型的な演技要素の組み合わせにおいて「良い演技」では7.6点,「完璧な演技」では11.4点になる計算です。

 ミスを加味するのは気が引けますが,順位が下位の選手は上位選手のミスがなければ逆転できないという現実がありますのでこれを考えます。ジャンプの抜け(3回転が2回転以下になってしまう)や回転不足による減点は,ジャンプの種類によって若干異なりますが,基礎点の減点と GOE のマイナスで平均約4点下がると仮定します。ジャンプの転倒は,多くの場合回転不足を伴うので基礎点の減点があり,さらに GOE のマイナス,転倒自体の減点,間接的に PCS にも影響するのでその目減り分を加味して,平均約7点下がると仮定します。

 SP上位7選手の最終的なスコアがどのくらいになるかを予想した表が下表です。左からSP順位順に選手を並べました。

《凡例》 スコア:SP+FS合計点,★:完璧な演技,*:可能性のある範囲(★印以下),○:良い演技,▼:ミス(ジャンプ抜け,回転不足),×:ジャンプ転倒

スコア坂本宮原本郷樋口紀平本田三原
220





219





218





217




216




215




214




213



212


211


210

209

208
207
206×
205▼2
204
203×
202▼2×▼
201▼3
200
スコア坂本宮原本郷樋口紀平本田三原

 完璧な演技(上表★印)は良い演技(上表○印)に比べ7~8点プラスされる形になっていますが,これは上述したように GOE が約4点,PCS が3~4点プラスされると仮定したためです。紀平 選手だけ完璧な演技なら PCS が6点プラス(良い:58点⇒完璧:64点)されると予想しました。あくまでも個人的な予想ですので,スコアがこのとおりにならない可能性は大いにあります。参考として見ていただければと思います。

 全員がFSで完璧な演技をすれば,1位:宮原知子,2位:坂本花織,3位:樋口新葉 になると思われます。こうなると,五輪代表2人目は 坂本 選手と 樋口 選手のどちらかから選出されることになるでしょう。通常ならトータルの実績で 樋口 選手が選出されるはずですが,坂本 選手の勢いを買う意見が出ても不思議ではありません。FSで,坂本 選手が完璧な演技をするか,あるいは 樋口 選手が1つでもミスをすると,伸び盛りの 坂本 選手が代表の重責を担うというシンデレラストーリーが現実になると思います。

 表を見ていただくと,SP2位の 宮原 選手の方が優位に立っていることが分かります。SPの1位との点数差はわずか0.36点なので実質的にFS勝負になり,FSの基礎点はどの選手もほぼ変わらないので,PCS が他の選手を上回っている分だけ 宮原 選手に分があります。宮原 選手自身は当然優勝しか考えていないと思いますが,代表入りという観点に限ってみれば,宮原 選手の実力・実績を考えると表彰台に上れば代表選出は間違いないでしょうから,そう考えればかなり楽な気持ちでFSに臨めると思います。

 坂本 選手は,まさかの全日本選手権優勝や五輪代表入りのチャンスが巡ってきました。ですが,元々それを狙っていたわけではないと思われるので,その無欲をどれだけ貫けるかが勝負を分けるでしょう。しかもFSは最終滑走。自分の演技で全てが決まるという大舞台をチャンスと捉えるか,緊張感に覆われてしまうか,いずれにせよ 坂本 選手にはとても得難い経験となるでしょう。最終滑走は GOE や PCS が出やすいと言われている(審判も人間なので,後になるほど点数を出しやすいのは,あらゆる採点の常ですね)ので,完璧な演技ならかなり高い点数が出て,宮原 選手を上回ることも十分あり得ます。スケートアメリカ(2位)で得た自信をそのまま全日本選手権に持ってきている感じで,調子もとても良さそうなので,奇跡の優勝となる確率はかなりあると思います。

 逆に,一転して追い込まれているのは 樋口 選手でしょう。完璧な演技をすれば,坂本 選手がほどほどでも逆転の2位はあると思いますが,樋口 選手がほどほどの出来にとどまれば,坂本 選手が1ミスでも逆転できない恐れがあるという,なかなか微妙なSPの点差です。また,代表選考の観点で考えると,宮原 選手が優勝なら,樋口 選手が3位でも今までの実績で代表に選出される可能性がありますが,坂本 選手が優勝すると,樋口 選手が2位でも 宮原 選手が代表選出される可能性が高いです。つまり,2位でも代表確実とは言えないわけで,なかなか計算が立たない状況が生じています。

 坂本 選手が絶好調で無欲なのに対し,代表入りを強く意識しながらミスが出てしまった 樋口 選手は,心理的にかなり追い込まれていると思います。ミスは許されない,という自分への呪縛ではなく,ここまで来たら持っているものを出すだけ,という開き直りができるかどうかにかかっています。完璧な演技ができれば,宮原,坂本 両選手がそこそこ良い演技だったとしても勝てるだけの力はあります。昨季から続く大舞台の弱さを,この大一番でこそ払拭してほしいと願ってやみません。

 本郷 選手のSPは素晴らしかったですね。会心の演技によって,大逆転の代表入りにわずかながら可能性ができました。FSは,そこそこの出来では表彰台は無理なので,完璧な演技をした上で上位選手の出来如何ということになるでしょう。

 本田真凛,三原舞依 の両選手は,上表の私の試算では完璧な演技をしてもトータル210点に届くことはほぼ不可能であり,完璧を超える超絶演技で GOE や PCS が高騰しない限り,代表入りも表彰台もほぼ絶望的な状況です。逆に言えば,もう順位やスコアのことは考えずに無心で演じ切るのみでしょう。

 ところで,五輪の年齢制限と,既に世界ジュニア出場が内定していることから,代表争いと無縁の 紀平梨花 選手が,3A(トリプルアクセルジャンプ)を成功させSP5位に飛び込んできました。演技順の最終グループに入ったのは,自分は無関係ながら代表争いの緊張感を肌で感じられるという点で,とても貴重な経験になります。その緊迫感の中で 3A 2本を含む全ての要素を成功させ,高い完成度の演技ができ PCS が64点(満点の80%)に乗れば,ジュニアでありながらトータル210点に届き表彰台に上る可能性もあります。スコアを調べていて驚きましたが,PCS は 宮原 選手より10点程度低いのですが,技術点は 3A 2本の威力で他の選手より約6点も高いので,PCS がもう少し伸ばせれば他の選手と互角に戦える力があるのです。3A 2本も楽しみですが,いわゆる8トリプル(3回転ジャンプを8本成功させること)が達成できるかどうかにも注目したいと思います。

 代表選考に話を戻しましょう。宮原,樋口 両選手をすんなり選出できるような流れになれば問題ないでしょうが,このようにスコア分析をしたり,各選手の置かれている状況を考えていくと,坂本 選手が2位に入り,2枠をめぐるドラマが生まれる可能性はかなり高いと思えてきます。樋口 選手には本当に頑張ってほしいのですが,坂本 選手の勢いは本物だとSPを観てひしひしと感じました。もし 宮原 選手のジャンプに回転不足が生じれば,坂本 選手の優勝,代表2人目が 宮原 選手という決着も十分に可能性があるシナリオだと思います。

 近年の全日本選手権の女子シングルは,全日本でありながらミスがほとんどない印象でしたが,今年は五輪代表枠が2枠という狭き門のせいか,SPではミスが出る展開になりました。特に,樋口,三原 両選手は 2A(ダブルアクセルジャンプ)でミスが出ているところに,尋常でない緊張感があることがうかがえます。FSは,SP上位選手と言えどもミスすれば表彰台や代表から脱落という厳しい大会になりそうです。ミスではなく演技の完成度で勝負が決まるような,素晴らしいFSになるよう,そして各選手がケガなく清々しく大会を終えられるよう,強く強く祈っています

どうなる?女子シングル五輪代表2枠

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です。


 もうすぐ開催される全日本選手権の結果によって,平昌五輪の代表が決まります。注目はなんといっても,2枠しかない女子シングルがどうなるかでしょう。ありとあらゆるメディアで報じられていることではありますが,改めて選考基準を確認しましょう。

女子シングル選考基準
 下記①の1名。②~⑥から1名。計2名。
  ① 全日本選手権の優勝者
  ② 全日本選手権2位・3位
  ③ グランプリファイナル出場者上位2名
  ④ ワールドスタンディング上位3名
  ⑤ シーズンワールドランキング上位3名
  ⑥ シーズンベストスコア上位3名

 現時点で選考基準を満たす選手は③~⑥の該当者であり,坂本花織,樋口新葉,本郷理華,宮原知子 の各選手(五十音順)です。ここに,全日本選手権の2位と3位の選手を加えて2人目を選考することになります。

 2人目がどう選考されるかを考えてみますと,実際には,全日本選手権の2位か3位のどちらかが代表入りすることになると思います。4位以下が代表に入る可能性を考えると,以下のいずれかしかないと私は考えます。

  • [A] 上述の4選手に,白岩優奈,本田真凛,三原舞依 の各選手を加えた計7名の有力選手が誰も2位・3位に入らなかった場合
  • [B] 宮原 選手が2位と僅差で4位に入った場合
 宮原 選手は,全日本選手権を3連覇するなど過去3シーズン安定した成績を残し,今シーズンもケガ明けながら完全復調したので,2位に見劣りしない内容であれば代表入りすると思います。宮原 選手は実力も経験も,他の選手より明らかに上ですので,そのような選考をされても他の選手もみな納得するでしょう。逆に言えば,宮原 以外の選手(坂本,樋口,本郷)が4位以下になった場合,2位か3位ではなくその選手を代表入りさせるのは,選考理由が示せないと思います。樋口 選手は4位なら可能性がないとは言えませんが,大舞台に弱い上に全日本選手権でも表彰台を逃すとなれば,代表入りの理由が示しづらいでしょう。ゆえに,宮原 選手以外は,全日本選手権の表彰台が最低限の条件になると思います。

 上記[A]が現実に起こるとは思えません。そこで,全日本選手権の2位と3位から代表が決まると考えた場合に,有力7選手の組み合わせによってどのような選考が行われるかを予想してみます。2位が下表の縦軸の選手,3位が下表の横軸の選手になった場合,どちらが代表に選出されるかを私が予想した表を示します。

2位 \3位宮原樋口三原坂本本郷白岩本田
宮原知子--宮原宮原宮原宮原宮原宮原
樋口新葉宮原--樋口樋口樋口樋口樋口
三原舞依宮原??--三原三原三原三原
坂本花織宮原????--坂本坂本坂本
本郷理華宮原樋口三原??--本郷本郷
白岩優奈宮原樋口三原坂本??--白岩
本田真凛宮原樋口三原坂本??本田--

 表内の??は,どちらが選ばれるか予想がつかないことを意味します。一番悩ましいことになりそうなのは,下記の2ケースだと思います。

【2位:三原,3位:樋口

 2人ともシニアに上がって2年目。昨季の成績は 三原 が上,今季の成績は 樋口 が上ですが,以下の理由により,全日本選手権で上位になれば 三原 選手を推す意見が出そうです。

  • グランプリファイナルで 樋口 選手が(昨季の四大陸選手権と世界選手権に続き,三たび)大舞台の弱さを見せてしまった
  • 平昌五輪のリンクで開催された昨季の四大陸選手権で優勝した 三原 選手は,五輪のリンクと相性が良いと考えられる
  • 代表枠が2枠になってしまった昨季の世界選手権の成績は 三原 選手の方が上位である
  • 三原 選手の昨シーズン後半の安定感(シーズン前半よりスコアを伸ばした)

 世界選手権の成績に関しては多分に心情的な問題ですが,五輪の枠を減らす原因になった選手が五輪代表になり,3枠の可能性を残す好成績を上げた選手が代表になれないのは,なんだか腑に落ちないという声が出ても不思議ではありません。2人目は選考基準を満たした選手の中から「総合的に」判断することになっているので,上述の理由も加味されてよいことになります。一方で,樋口 選手の側に立つと,今季のハイレベルな成績は見事で,これを評価する声も当然あるでしょう。この状況では,選考する側はとても難しい判断を迫られます。

【2位:坂本,3位:三原

 同じコーチに指導を受ける同門生である2人が1つの椅子を争う状況は,胸が締め付けられる思いがいたします。しかしこれは,坂本 選手の成長によるものなので,喜ばしいことでもあります。今季の成績だけ見れば,グランプリシリーズ2戦平均スコア以外,全ての面で 坂本 選手が上回っていますので,坂本 選手が選ばれても全く異論はないところです。

 しかし 三原 選手は,昨季の五輪プレシーズンという非常に濃密な経験をしながら好成績を修めました。五輪という大きな重圧がかかる大会は,今季シニアデビューの 坂本 選手では心許なく,昨季の経験と実績がある 三原 選手の方が代表に相応しいという声が上がることと思います。先輩である 三原 選手が出場するのなら,坂本 選手としては譲りがいがあるというものでしょう。このケースも,選考する側にとってはなかなか悩ましいのではないかと思います。


 以下,代表選考に関する個人的な考えですが,シニアデビューの選手に五輪を託すのは,2枠という状況においてはあまりにも荷が重いと考えます。全日本選手権の優勝もしくは圧倒的な成績がない限り,代表に選ぶべきではないでしょう。この考えだと,樋口,本郷,三原,宮原 の各選手(五十音順)が代表候補になります。

 そして例年,代表選考においてはっきりしていないと感じるのは,代表は「好成績の選手」を選ぶのか「メダルを狙える選手」を選ぶのかという問題です。前者であれば,上述の4選手は誰でも相応しいと思いますが,後者であれば,宮原 選手以外はやや心許ない部分があると思います。その中でも,樋口 選手と 三原 選手のどちらを選ぶかとなれば,上述の理由により,個人的には 三原 選手を選ぶべきだと考えます。さて,はたして実際の選考はどうなるのでしょうか。私たちは見守るしかありません。

 ここからは,女子シングル有力選手の見どころをご紹介いたします。上表に記載した7名の有力選手を,表の記載順に紹介していきます。

宮原知子 選手】

 ケガ明けの心配はもうないと考えていいと思います。休養期間中にいろいろなものを吸収したことが奏功して,表現力に磨きがかかってきました。以前は振付の型どおりといった印象もありましたが,今季は表現したくて表現しているという雰囲気に満ち溢れています。グランプリファイナルでは,ジャンプの回転不足でスコアが伸びず5位に終わりましたが,メドベージェワ 選手(ロシア)欠場による繰り上げ出場でしたし,全日本選手権も控えていたことから,全力で臨まなかったと思われます。それでもスコアが213点でしたから,全てが完璧なら220~223点くらいは期待できると思います。

 SP(Short Program,ショートプログラム)の「SAYURI」,FS(Free Skating,フリースケーティング)の「蝶々夫人」,共に日本の凛とした女性を演じるという 宮原 選手にしか出せない世界観が素晴らしいプログラムです。ケガという辛い時期を乗り越えた 宮原 選手自身の道のりがプログラムの物語に重なって見えるのもグッとくるポイントです。初めから終わりまで,指先,目線,足先に至る全ての動きを堪能してほしいです。

 今季は,ケガ明け初戦から,NHK杯(日本大会)→アメリカ大会→ファイナル→全日本選手権 の4大会が全て中1週(2週間おき)のスケジュールなので,疲労の蓄積が全日本選手権の大事なときに出ないことを祈るばかりです。今まで3連覇していますので,五輪シーズンにこそ優勝して4連覇しなければ…という自身の内なる重圧とも戦うことになるでしょう。

 現実問題として,平昌五輪でメダル争いに自力で加われる日本選手は 宮原 選手だけです。その意味でも,全日本選手権をとにかく乗り切ってほしい,そう願う関係者は多いのではないでしょうか。

樋口新葉 選手】

 昨季の悔しさをバネにして,今季は目標だったファイナル出場を果たし,成長を見せてくれています。スケーティングに一段と力強さが増し,芸術性も増してきたことで,PCS(Program Component Score,演技構成点)の点数も上がってきました。プログラムのSP「ジプシーダンス」,FS「007・スカイフォール」共に,樋口 選手のスピード感や力強さが存分に生かされたプログラムで,十分に世界で勝負できるものになっていると思います。

 ただ,大舞台での弱さがまだ克服できていません。今季の調子ならファイナルでも表彰台が射程圏内でしたが,ミスが出てしまいました。今まで全日本選手権にはめっぽう強く,3年連続で表彰台に乗っていますが,五輪代表がかかる今年,今までと同じように良い演技ができるかどうかが問われます。

 現在の日本のフィギュアスケート界は,関西や名古屋のチームが強いですが,樋口 選手には東京代表として風穴を開けてほしい気持ちが個人的にあります。小さい身体で頑張る姿に,私はブログで時折厳しい言葉をかけてきましたが,それも心底応援していることの表れなのです。代表に選ばれた暁には,平昌五輪でこそ大舞台での弱さを克服して輝く姿を観たいと願っています。

三原舞依 選手】

 今季はグランプリシリーズ2戦とも200点を超え,シリーズ平均スコアのランキングは全選手中6位。常に完成度が高く安定感があるのが 三原 選手の最大の特徴です。特にFSのプログラム「ガブリエルのオーボエ」は,三原 選手の柔らかいスケーティングを生かした見事なプログラムで,三原 選手に本当によくフィットしていますので,完璧に演技できればトップスコアも期待できます。

 これだけ安定したスコアを出しながら,シリーズでは対戦カードに恵まれず2大会とも4位に終わり,ファイナルにも進出できず,世界ランキング等のポイントも伸びませんでした。そのため,冒頭の選考基準の③~⑥を満たすことができず,全日本選手権の表彰台が代表入りの絶対条件となります。本人は優勝しないと五輪に出場できない,くらいの気持ちで挑んでくると思いますが,その重圧に打ち勝つには,シリーズで完璧な演技ができなかったSP「リベルタンゴ」を完璧にできるかどうかが鍵になります。タンゴは 三原 選手の持ち味に合うとは言えないジャンルですが,最後に出場した大会から1ヶ月以上空きましたので,どこまで完成度を上げられたかに注目したいです。

 上述した 三原 選手の昨季の実績から考えると,三原 選手が平昌五輪の代表になるべきだと私は思っています。特に,昨季の四大陸選手権を優勝したことは,平昌五輪本番の会場と相性が良いという点で大きな意味があると思います。そのためにも,全日本選手権で優勝して,五輪代表の座をつかみとってほしいと切望しています。

坂本花織 選手】

 シニアデビュー組の中ではいち早くスコアを210点に乗せました。特にFS「アメリ」が秀逸なプログラムで,(アメリカ大会の感想を書いた自分のブログから引用しますが)ジャンプの質,ステップの最中にまで表現される細かいパントマイム,音楽とスケーティングの融合,全てがうまくハマったこの「アメリ」が持つ雰囲気は最高です。ジャンプの高さと幅が圧巻で,それでいて細かい表現力も持ち合わせる総合力の高さが持ち味です。また,リンク内外で明るく振る舞えることも魅力です。坂本 選手ならシニア1年目でも五輪の重圧に耐えられるかも…と思わせる雰囲気を持っている選手です。

 ただ,アメリカ大会は,前の大会から中4週空いていましたので,十分な調整ができる良いタイミングだったと言えます。他のシニアデビュー組の 本田真凛,白岩優奈 はどちらもグランプリシリーズが連闘(2週連続出場)という不利なスケジュールだったので,2戦目もスコアが伸びませんでしたが,坂本 選手と同様のスケジュールなら,彼らももっとスコアが伸びていた可能性はあります。アメリカ大会の好成績により,全日本選手権でこれを超えなければと自分自身で重圧をかけてしまう恐れもあります。

 頑張れば頑張るほど,同門生である 三原 選手と争うことになる難しさはありますが,切磋琢磨して素晴らしい演技ができれば,2人で平昌五輪出場という可能性もゼロではありません。シニア1年目での五輪出場が難しいことは選手本人が一番よくわかっていると思いますので,五輪を意識せずに無欲で臨めれば,サプライズが起きるかもしれません。

本郷理華 選手】

 初めて全日本選手権で観たとき,それまでの日本選手にはあまりいなかった,スケールの大きな演技に私は魅了され,それからずっと応援してきました。五輪プレシーズンの昨季に調子を崩し,今季少し持ち直してはいますが,調子の波が五輪にうまく合わないのは不運ですね。それでも,一昨季の活躍もあり,世界ランキング(ワールドスタンディング)は現在も9位に位置しています。特にSP「カルミナ・ブラーナ」は,日本選手では 本郷 選手にしかできないスケールの大きなプログラムで,とても見応えがあります。

 昨季,同門の先輩である 鈴木明子 さん振付のプログラムに挑戦しましたが,消化不良に陥ってしまいました。表現力やスケーティングの面でもう一段高いレベルに上る過程で壁に当たっている印象があります。また,長年指導を受けていた 長久保 コーチが突如退任する事態となり,周囲が落ち着かない状態になっているかと思います。そういった困難を乗り越え,開き直った演技ができるかが注目点です。

 本郷 選手はソチ五輪後の4年間を支えた選手の1人ですので,平昌五輪に出るべき存在だと思います。自身の成長より周囲のレベルアップが激しく,簡単な状況ではありませんが,4年間の集大成を魅せてほしいと願っています。

白岩優奈 選手】

 シニアデビュー組の中で個人的には一推しの選手です。演技全体に安定感があり,ふんわりした雰囲気が癒しを与えてくれるような存在で,これぞ女子スケーターという感じがします。レベル面では,他のシニアデビュー組とも対等に戦えるだけの実力を備えていますので,完璧な演技ができれば,他の選手次第で全日本選手権の表彰台も十分に可能性があります。

 ただ,坂本 選手はスケール感と明るい性格,本田 選手は芸術性とスター性という個性がはっきりしているのに対し,白岩 選手の個性はまだ前面に出てきていないかなと感じます。技術がしっかりしているので,経験を重ねれば自ずと個性がにじみ出てくるのではないかと思いますし,ちょうど北京五輪の頃に全盛期を迎えるような気がしています。

本田真凛 選手】

 グランプリシリーズは序盤の第2・3戦に割り当てられたこともあり,スコアがさほど伸びませんでしたが,ポテンシャルの高さは誰もが知るところです。また,ジュニア時代には大舞台の強さもありましたので,全日本選手権にきっちり照準を合わせてくるのではないかと思います。前の大会から1ヶ月半も空きますので,調整も十分できるでしょう。優勝だけを狙って,抜群の集中力と大舞台の強さを発揮できれば,手ごわい存在であることは確かです。

 逆に言えば,優勝以外はどの順位でも同じという考えで臨むと,1つミスが出た段階で集中力が切れ,ミスの連鎖になる可能性もあります。五輪代表争いを意識し過ぎず,とにかく最善を尽くすという無心で臨めるかどうかが鍵になるでしょう。


 ソチ五輪後を支えた 宮原,本郷。昨季シニアデビューの 樋口,三原。今季シニアデビューの 坂本,白岩,本田。これだけの逸材の中から2名しか平昌五輪に出場できないのは本当にもったいないですが,とにかく全日本選手権でベストな演技が披露され,その中から代表が選ばれてほしいと願っています。どんなドラマが生まれるか,しっかり見届けたいと思います。

女子シングル:グランプリシリーズ主要選手出場大会&順位一覧

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です。


 グランプリシリーズ6戦にグランプリファイナルを加えた順位の一覧です。

《凡例》 ロカ中日フ米: シリーズ開催順(シア,ナダ,国,本,ランス,国),F: グランプリファイナル

選手
アリーナ・ザギトワ (ロシア)


マリア・ソツコワ (ロシア)



ケイトリン・オズモンド (カナダ)



カロリーナ・コストナー (イタリア)



宮原知子



樋口新葉



エフゲーニャ・メドベージェワ (ロシア)



坂本花織




ポリーナ・ツルスカヤ (ロシア)




エレーナ・ラジオノワ (ロシア)




三原舞依




本田真凛




ブラディ・テネル (米)





アシュリー・ワグナー (米)




ガブリエル・デールマン (カナダ)




長洲未来 (米)




本郷理華




白岩優奈




カレン・チェン (米)




アンナ・ポゴリラヤ (ロシア)




 メドベージェワ 選手不在でも,ザギトワ 選手の安定感,ソツコワ 選手の勝負強さが光り,IOC の不参加決議という非常事態においてもロシア勢の揺るぎない強さを見せつけられました。このロシア3選手が代表になる可能性が高いですが,他の選手もハイレベルなだけにまだ何が起こるかわかりません。ロシア勢に,オズモンド,コストナー の両選手,そして日本選手2名が平昌五輪メダル争いに加わるでしょう。

男子シングル:グランプリシリーズ主要選手出場大会&順位一覧

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です。


 グランプリシリーズ6戦にグランプリファイナルを加えた順位の一覧です。

《凡例》 ロカ中日フ米: シリーズ開催順(シア,ナダ,国,本,ランス,国),F: グランプリファイナル

選手
ネイサン・チェン (米)


宇野昌磨



ミハイル・コリヤダ (ロシア)



セルゲイ・ボロノフ (ロシア)



アダム・リッポン (米)



ジェイソン・ブラウン (米)



ボーヤン・ジン (金博洋,中国)



ハビエル・フェルナンデス (スペイン)




ミーシャ・ジー (ウズベキスタン)




アレクサンドル・サマリン (ロシア) 




オレクセイ・ビチェンコ (イスラエル)




マックス・アーロン (米)




羽生結弦




ヴィンセント・ジョウ (米)




パトリック・チャン (カナダ)




無良崇人
12



田中刑事




 グランプリシリーズのポイントの順位と,グランプリファイナルの順位が全く同じという珍しいことが起こりました。ということは,ファイナルは実力が順当に反映された結果だったと言えることになります。平昌五輪のメダル争いは,ファイナル上位3選手に,羽生,ジン,フェルナンデス が加わる構図になりそうです。

女子シングルと,アイスダンスと,ジュニアファイナル女子と【グランプリファイナル感想(2),スポーツ雑誌風】

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です


◆女子シングル:樋口新葉 に平昌五輪を期待するのは酷

 女子シングルは予想どおりの大混戦となったが,アリーナ・ザギトワ(ロシア)の優勝は本命がきっちり獲ったという印象だ。グランプリシリーズ2戦とは緊張度が段違いの大舞台でも,ノーミスはもちろんのこと,かなりの完成度を披露したことで,平昌五輪の銀メダル候補の筆頭に立ったと考えてよいだろう(金メダル候補が メドベージェワ(ロシア)であることは言うまでもない)。15歳のファイナル制覇は 浅田真央 以来だが,浅田 が若さ溢れる演技だったのに対し,ザギトワ は若さを生かしてジャンプを演技時間後半に集めてはいるが,表現面では若さを武器にしていない。滑りがこなれてきて,シニア1年目とは思えない成熟した表現が随所に見られるようになり,ややエキゾチックな顔立ちが落ち着いた雰囲気をたたえる。技術面と芸術面が両立した,末恐ろしい15歳の出現である。

 シリーズのベストスコアが210点を下回っていた マリア・ソツコワ(ロシア)が,216点を出して2位に入ったことは,これぞロシア女子の勝負強さであり恐れ入った。私は,以前のブログ「グランプリシリーズ スコアランキング 女子シングル編」の中で ソツコワ について「レベルの高い試合になればそのレベルに追随するポテンシャルはある」と記したが,正にそのとおりの結果となった。もちろん,宮原知子 や オズモンド(カナダ)の演技が完璧なら結果は変わっていたと思うが,実際の結果がこうなった以上,これを勝負強いと評価すべきだろう。そして,ファイナルで216点という高いレベルのスコアを出したことで,メドベージェワ,ザギトワ に次ぐ3番手の地位を固め,ロシア代表入りにかなり近づいたと見てよいだろう。

 5位と6位に終わった日本選手だが,その評価は全く異なるものだ。宮原知子 は,FS(Free Skating,フリースケーティング)のジャンプの回転不足によりスコアが伸びなかったが,それでも213点を出しており,回転不足がなければ220点を超えていただろう。回転不足は,ケガ明け,繰り上げ出場,前の試合から中1週という状況を考えればやむを得ない面もあり,今回の演技は平昌五輪のメダル争いに加われるだけの力を示したと言える。NHK杯,スケートアメリカ,そして今大会の3試合で,試合勘を完全に取り戻し,芸術面では昨季と見違えるほどの豊かな表現力を魅せてくれた。個人的には,宮原 は代表当確としたい。

 一方の 樋口新葉 は,大舞台での弱さを三たび露呈してしまった。昨季の四大陸選手権,世界選手権,そして今回のファイナル。この3つの大会は,単に大きな国際大会というだけではない,大きな重圧のかかる大会だった。四大陸選手権は平昌五輪の本番リンクの予行,世界選手権は五輪出場枠の枠取り,ファイナルは自国開催でかつ五輪シーズンの代表選考へのアピール。今大会は昨季の反省を生かして同じ轍は踏まないものと期待したが,そうはならなかった。強い重圧に耐え高得点が求められる場面での失敗が3度目となると,平昌五輪では克服してくれるはずと期待したくても,その期待が単なる根性論になりかねないのである。

 失敗の内容もいただけない。私が一番問題だと感じるのは,得意な連続ジャンプである 3Lz+3T(トリプルルッツ→トリプルトウループ)でミスが出たことである。樋口 はこの連続ジャンプを得意にしており,演技時間の前半と後半の両方に計2回組み込んでいる。それほど自信を持っているジャンプなら,転倒,抜けはあってはならない。しかし,今大会の 樋口 は,後半のジャンプで回転が抜けて 2Lz(ダブルルッツ)になってしまい,連続ジャンプにすることもできなかった。しかもこのミスは,昨季の世界選手権でも起こしているのだ。得意なジャンプで同じミスを繰り返しているということは,「強い緊張を強いられる状況で起こしてしまうミス」の原因を取り除くことができていないことの表れである。

 仮に全日本選手権を乗り切って代表に選ばれたとしても,人生最大級の緊張と重圧が襲う平昌五輪で今の 樋口 が好成績を残せるとは考えにくい。それどころか,五輪でも期待を下回る成績だった場合,厳しい批判にさらされ,つぶれてしまいかねない。2016年,自国開催の世界選手権でSP(Short Program,ショートプログラム)トップからFSのミス多発で表彰台を逃し,おそらくはそのショックからうつ病を患い,平昌五輪を断念せざるを得なくなった ゴールド(米)は,この年の世界選手権では,豊富な経験,順調なコンディション調整,自国開催と好条件が揃っていながら,天国(SPトップ)から地獄(表彰台落ち)に突き落とされたことでメンタルを蝕まれてしまった。気持ちの強さには定評のある 樋口 でも,五輪の重圧で4度目の失敗をすれば ゴールド のような道をたどりかねない。2枠という日本女子代表の重圧を背負わせるには 樋口 はまだまだ若い。4年間かけて,強い重圧に対処できる技術とメンタルを身に付けてから,五輪の舞台で躍動する 樋口 を観たいと願っている。

◆アイスダンス2強対決

 アイスダンスは,今季初めて,テッサ・ヴァーチュー & スコット・モイヤー 組(カナダ)と ガブリエラ・パパダキス & ギヨーム・シゼロン 組(フランス)の2強対決となったが,SPとFS共に パパダキス & シゼロン 組の勝利だった。ヴァーチュー & モイヤー 組のFS「ムーラン・ルージュ」は,今までで最も情熱的な演技で,確かな技術にその情熱が彩りを添える素晴らしい内容だったが,モイヤー の黒子に徹する姿が好きな私としては,モイヤー が情熱的に表現する姿に新たな発見がありつつも,彼ららしさが若干薄れてしまっているような気がした。

 今までの高い技術に情熱がプラスされた ヴァーチュー & モイヤー 組に対し,パパダキス & シゼロン 組は,今までの高い芸術性に技術がプラスされたものとなった。SPは現代的なダンス,FSはクラシックの王道だが,どちらも パパダキス & シゼロン 組にしか出せない,優美で妖艶な雰囲気が会場を支配する,見事な演技だった。若くして既に完成されている高い芸術性に,技術が伴ってくればこれほど強いことはない。特に今季のFSのプログラムは,ピアノの旋律に乗せて音楽との調和が素晴らしく,さらに硬軟・緩急を自在に表現することで技術面もアピールできるものになっている,実に計算されたプログラムだ。昨季は,2シーズンの休養から復帰した ヴァーチュー & モイヤー 組の後塵を拝したが,このプログラムを五輪シーズンに手に入れた パパダキス & シゼロン 組は,ファイナル制覇で大いなる自信を得ただろう。逆に,ヴァーチュー & モイヤー 組が豊富な経験を元に,五輪までの間にどんな巻き返しを図るのか楽しみだ。平昌五輪のアイスダンスは,この2組の究極の戦いが観られるだろう。

◆ジュニア女子シングル:紀平梨花 は 3A だけでなく総合力がすごい

 年齢により平昌五輪の出場権がなく,代表入りの戦いに巻き込まれることなく力を蓄えている 紀平梨花 は,3A+3T(トリプルアクセル→トリプルトウループ)の連続ジャンプを国際大会で初めて成功させた女子選手として名を残すことになった。3A を飛べるだけでも素晴らしいのだが,3A の名手だった 浅田真央 でも 3A+2T までだったことを考えれば,このジャンプのすごさがわかる。しかも,ふらつきやよどみが全くない,素晴らしい完成度だったことも特筆に値する。単に飛べたというレベルではなく,見事な完成度を披露したことで,3A+3T と言えば 紀平 という印象を与えることができたと思われる。今後は,国内の試合では成功した3連続ジャンプ,3A の連続ジャンプ2回,3A+3Lo(トリプルループ)など様々な 3A の記録にトライしてほしい。

 3A+3T ばかりがどうしても注目される 紀平 だが,他のジャンプ,スピン,表現面等,演技全体の質の高さには目を見張るものがあった。3A 以外のジャンプも綺麗で,3Lz(トリプルルッツ)の連続ジャンプを2回入れるなど,3Lz も苦にしない。スピンは軸がしっかりしており,レベルの取りこぼしがなく GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)も取れている。そして,各演技要素が調っているだけでなく,全体の表現がジュニアの割にかなり洗練されていることにたいへん驚いた。手先や腕の使い方やステップの踏み方に,いい意味でジュニアっぽさがなく,プログラム全体が実によくまとまっているのだ。昨季,3A で注目を集め始めた頃は,いかにもジュニアというスケーティングだったが,1年で劇的に進化を遂げていると感じた。これは,今後の成長が非常に楽しみになってきた。シニアになってから 3A に取り組むと他のジャンプが崩れる選手もいるが,紀平 は早くから 3A に取り組んでいるため,そういう心配がない。また,芸術面の基礎もできあがっているので,シニアに上がっても見劣りすることがない。今持っているものを突き詰めていけば,技術と表現が両立した高い総合力を持つ,国内トップクラスの選手になる。そんなことを予感させる,素晴らしいファイナルでの演技だった。

 ただ,そんな 紀平 も表彰台は逃した。他の5選手は全員ロシア勢であり,当然のように表彰台を独占した。ロシアのジュニア女子を観ていると「シニアになったら成熟したスケーティングが必要」といった考えはピントがずれていると感じてしまう。ロシア選手はジュニアであっても表現力が高く,ジュニアであることに甘えていない。13歳くらいだと一生懸命感がやや感じられる選手もいるが,14歳以上はもうシニアのスケーターと何ら遜色がないのだ。ロシア選手を観ていると,ジュニアだからこのレベルでよし,といった妥協がなく,その年代から理想のスケーティングに邁進しているように見える。日本選手だと,本田真凛 は表現力が高いという評価だが,ロシアのジュニア選手のほとんどが同等かそれ以上のレベルの表現力を持っているのを観ると,本田 をそのように評価することにやや違和感を感じてしまう。早熟であれという意味ではなく,若い時から完成度や表現を高めていくことで,全盛期に早く到達しそれを長く維持することができるのではないかと思うのだ。実際に メドベージェワ や ラジオノワ といったロシア選手は,まだ10代だがもう全盛期を迎えている。日本のシニアデビュー組やジュニア選手を観ていると,この点でもどかしさを感じることがある。若さを武器にするのはよいが,言い訳にすることなく完成度や表現力の向上を当然のこととして取り組んでいってほしいと,ジュニアファイナルの演技を観ながら改めて感じた。

宇野昌磨 は大物か能天気か!?【グランプリファイナル感想(1),スポーツ雑誌風】

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です


 SP(Short Program,ショートプログラム)の 宇野昌磨 は,出だしからスケーティングの滑らかさと,音楽との調和が素晴らしく,3A(トリプルアクセルジャンプ)の直前までは「これは神演技になる!」というゾクゾク感に満ち満ちた演技だった。得意の 3A。着氷して成功を確信した瞬間,イーグルから股割きの形で転倒。観ているこちらが「えっ!?」と驚き,宇野 本人も苦笑いどころか照れ笑いするしかないような転倒だった。この転倒がなければSP史上最高スコアも可能だった名演技が,一転して微笑ましくなってしまうのは 宇野 の人柄のなせる業だが,勝負師という観点ではどうなのかとやや不安になる。本当の勝負どころは平昌五輪なんてことは重々承知なのだが,ファイナルという大きな大会で完璧な演技のチャンスが来たのだから,それをきっちり仕留めてほしかったとも思う。結果論だが,ここで仕留めておかなかったことが,優勝を逃す一因になったのだから。

 その点,ネイサン・チェン(米)のSPは,完璧とまでは言えないながらもノーミスできちんとまとめたのが,優勝への布石となった。シリーズ2戦に続く100点超えで安定感が出てきたSPは,チェン が音楽を見事に捉えていて,特にステップの端麗さと力強さは,これぞアメリカ選手という雰囲気にあふれていた。チェン にとっては,SPの安定感が優勝を呼び込んだということになるだろう。

 ただ,チェン はFS(Free Skating,フリースケーティング)が今季なかなか軌道に乗らず,ファイナルでもまだ軌道に乗せることができなかった。注目のジャンプ構成は,4Lo(4回転ループジャンプ)を入れた4回転5種類フルコースではなく,4Lz(4回転ルッツジャンプ)を2本入れるスコア重視の構成にトライした。4S(4回転サルコウジャンプ)が抜けて2回転になったことで,リカバーのために 3A を1本削って 4T(4回転トウループジャンプ)を飛んだ(結果はダウングレード判定)。そこまで4回転を詰めなくても…と思うが,おそらくこれは,4回転ジャンプが抜けた場合の代替策を忠実に実行した結果であろう。3A がそれほど得意ではない チェン にとっては,3A よりも 4T の方が成功確率が高く,スコアも高くなる。また,ジャンプの種類と本数の制約の問題も,2本飛ぶジャンプの種類が 3A から 4T に変わるだけなので,あれこれ考える必要がないという点でも優れた代替策だ。

 チェン の3連続ジャンプも変更された。今までは 4T+2T+2Lo(4回転トウループ→ダブルトウループ→ダブルループ)だったが,ファイナルでは 4T+1Lo+3S(4回転トウループ→シングルループ→トリプルサルコウ)を組み込んだ(結果はサードジャンプが2回転)。後者の方がスコアが高いので,これもスコア戦略の一環だろう。4Lz を2本入れることも含め,ジャンプの精度を考えながら効果的なスコア戦略を練ってきていることが分かる内容であり,単に4回転を多く入れているだけではないところがなかなか強かだ。

 チェン のスコアが伸び悩み,優勝の可能性が高かった 宇野 だったが,まさかの2位だった。わずか0.5点差であり,ミスのどれか1つでも防げていれば良かったわけで,いろいろもったいない点があったが,大きくは2点。1点目は,精度が高く安定していたはずの 4T が2本とも成功しなかったこと。他の4回転ジャンプは失敗してもやむを得ないが,4T は成功する前提でプログラムを構成しているはずなので,それが2本とも崩れてしまえば勝ち目はない。同じジャンプは少なくとも一方を連続ジャンプにしないと減点されてしまうので,4T を2本失敗したことでこの減点が適用され,さらに2本目の 4T は回転が全く足りずにダウングレード(3回転扱い)になってしまったので,それによる点数のロスも大きかった。

 2点目は,最後のジャンプを予定どおりの連続ジャンプにせず単独ジャンプにしてしまったことだ。宇野 は「キックアウトされると勘違いした」とコメントしていたが,キックアウトとは,同じ種類のジャンプを3本飛ぶと3本目の点数が加算されないルールのことである。だが,セカンドジャンプとして付ける予定だった 3T(トリプルトウループ)は1本も飛んでいなかったので,連続ジャンプにしても問題はなかった。この勘違いは 宇野 本人もわかっていて,ニュース記事などで言及されているが,実はもう1つ別の勘違いがあったのだ。それは,キックアウトで点数が入らないのは連続ジャンプの中の該当種類のジャンプだけ,というルールの誤認である。仮に 3T が3本目で0点になったとしても,ファーストジャンプの点数は残るので,キックアウトの判断に迷ったら,とりあえず連続ジャンプにしておけばよかったのだ。以前のルールでは,キックアウトは連続ジャンプ全体が0点になってしまっていたが,その後改定され,3本目になった種類のジャンプは0点だが,それ以外のジャンプの点数は残るようになった。そのことを 宇野 は忘れていて,連続ジャンプにすると丸ごと0点になる恐れがあると考えてしまい,単独ジャンプにしたのだと思う。これら2つの勘違いのうちどちらか一方でも気づいていれば連続ジャンプにできたはずで,これはとてももったいないミスであった。

 宇野 は,せっかくの地元・名古屋での開催でファイナル優勝を逃した。しかも,SPのタイムオーバーやFSの連続ジャンプ取りこぼしなど,凡ミスが勝敗を分けた結果なだけに,関係者は地団駄を踏む思いだと推察するのだが,当の 宇野 本人がなぜか悔しそうにしていない。本当は悔しくて仕方ないのにそれを見せたくなくてそう振る舞っているならよいのだが,あくまで全日本や五輪の前哨戦だから結果は気にしない,と本気で思っているとしたら少々心配になってくる。羽生結弦 不在のファイナルで優勝しても意味がない,と思っているなら結果を気にしない気持ちもわからないではないが,このファイナルは五輪直前の大会で,ましてや地元の街の開催となれば,優勝を狙わないにしても,転がってきたチャンスをモノにすれば,関係者や観客を喜ばせることができたのだから,ファイナルはもっと結果にこだわってもよかったのではないかと思う。

 しかし,宇野 がそこまで能天気とも思えないし,五輪シーズンの各大会の重要性は,五輪経験がなくてもよくわかっていると思う。考えてみれば,宇野 はシニアに上がってからの過去2シーズンでは,シーズン途中の試合の結果にはほとんど執着せず,むしろ「攻める気持ち」という言葉が頻繁に出ていたように,メンタルやプロセスにこだわっていたように思う。そんな 宇野 が,唯一結果にこだわった大会がある。世界選手権だ。一昨季は満足な演技ができず人目をはばからず涙を流し,昨季は自己ベストを30点更新して銀メダルを獲得した。これを思えば,今季も平昌五輪に照準を合わせ,ここまではどんな結果になろうと感情的にならずに冷静に受け止めようとしているのかもしれない。そうだとするなら,宇野 という選手は能天気を装ったとんでもない大物だ。昨季は,ファイナルも四大陸選手権も3位に甘んじながら,世界選手権でほぼ完璧な演技を魅せたではないか。今大会でも周囲をやや拍子抜けさせ,敵を油断させながら,平昌五輪に最高のピークで最高の成績をさらっていく … そんなシナリオが2ヶ月後に観られることを信じて,今大会の 宇野 の結果や振る舞いを受け止めたい。

タグ絞り込み検索
記事検索
プロフィール

まっく・けぃ(Mak....

  • ライブドアブログ