北海道の大地震の取材映像を見ていて,携帯電話(スマートフォン)を充電するための「モバイルバッテリー」の所有者が案外少ないのかな,という印象を持ちました。携帯電話なくして生活が成り立たない現代なのに,その電源を持たないことに今まで不安を感じなかったのだろうか?と思いました。

 モバイルバッテリーを持つ目的は,当然,携帯電話の電池がなくなった場合に充電を行うためです。モバイルバッテリーを持たない人の思いとしては,自分は1日の途中でバッテリーが切れるようなヘビーな使い方はしないし,毎日家で充電しているから,モバイルバッテリーがなくても大丈夫と考えていると思います。確かにそのとおりですが,そういう人でも,モバイルバッテリーは絶対に持つべき,そして携帯電話と同じく常に持ち歩くべきと私は思います。

 そう考える最大の理由は,言うまでもなく緊急時の対応です。大地震や大災害で,停電もしくは電気が自由に使えない,というレアな状況より,もっと頻繁に起こり得る緊急事態がありますよね。電車や飛行機が止まり数時間足止めを食う,突然の豪雨でしばらく移動を控えて様子を見る,このようなことは年に何度かあると言ってよいでしょう。これが帰宅時に起きると,携帯電話の電池残量が少なくて焦ります。そして,こういう緊急事態のときこそ,関係者に連絡したり情報を見たりするので,普段より電池を消耗するものです。モバイルバッテリーがあれば,電池切れに対応できるのはもちろんのこと,数時間の足止めがあっても時間を持て余すことなく携帯電話で過ごすことができます。

 もちろん,停電やエレベーターでの閉じ込めといった極めて稀な事象に遭遇してしまった場合も,モバイルバッテリーがあれば携帯電話を機能させることができます。このような極端な状況下では,不安が増大するので携帯電話への心理的依存度が高まります。携帯電話が使えることで,自分が置かれている状況に対する総合的な不安をも軽減させることができると思います。

 2つめの理由は,この心理的な面です。緊急時に限らず,日常でも「うっかり充電を忘れた」とか「まだ充電しなくても大丈夫と思っていたらなぜか今日は電池を消耗」といった事態に対して,モバイルバッテリーがあれば携帯電話の電池切れを心配しなくていいので,余分な心配事がなくなり,ストレスが軽減されます。日々様々なストレスにさらされている皆さんが,携帯電話の電池がなくなりそうというストレスを一時的にでも抱えることは,精神衛生上良いことではありません。わずかな手間で防げるストレスは防いだ方がいいに決まっています。

 さて,ここまでの2つの理由は多くの人が納得するところだと思いますが,3つめの理由は巷であまり言われていないことです。それは,(毎日家で充電するよりも)電池残量が少なくなってから充電した方が電池の寿命が持つので,電池残量が少なくなったとき外にいたら充電できるようにするためです。このように書くと「電池残量が少なくなってから充電っていうのは昔の話で,今の携帯電話には当てはまらないよ」と思う方がいることでしょう。それはそのとおりでして,昔の充電池(ニッカド電池やニッケル水素電池)は,電池を使い切らずに充電すると電池の性能が劣化する(メモリー効果)ことが知られていましたが,現在の充電池(リチウム水素電池)ではそのようなことは起こりません。まだ十分な電池残量がある状態で充電しても,携帯電話の電池の性能が劣化することはありません。

 それでも,使用開始からだいたい2年くらい経つと,以前と比べて電池の減りが早くなったり,30%残から突然10%残に減ってしまったりする現象が起こります。このような電池の性能劣化が(使用期間ではなく)充電の回数に関係しているという話を聞いたことがあります。例えば,充電回数500回で劣化するとすれば,毎日充電していたら1年半で劣化しますが,3日に1回の充電なら劣化を4年後まで遅らせることができます。上述の「電池残量が少なくなってから充電した方が電池の寿命が持つ」は正確に書くと「電池残量が少なくなってから充電することで,充電の間隔が長くなり電池の寿命が持つ」と言えます。

 どうせ2年くらいしたら機種を変更するので,電池寿命はさほど気にしない,という方はいいと思いますが,より長く使う場合,電池の減りが早くなるとこれまた精神衛生上よろしくなく,電池を交換すれば何千円も取られるというのも癪に障ります(笑)。そこで私は,できるだけ充電の間隔を空けるため,家で電池残量30%程度なら充電せず,翌日昼間に10%を切ったらモバイルバッテリーを使って充電しています。3年前に買ったタブレットでこの運用を徹底していますが,まだ電池が劣化しているようには見えないので,わりと効果があるのではないかと思います。

 3つめの理由はややこだわりが強いかもしれませんが,モバイルバッテリーを持つメリットは伝わったかなと思います。さらにもう一点,私がお伝えしたいのは,モバイルバッテリーは薄い物ではなく,ある程度厚手でも充電容量が 10000mA 以上ある物を選んだ方がいいということです。薄いモバイルバッテリーは充電容量が少なく,携帯電話を充電した直後は,モバイルバッテリー自身の電池残量が少なくなります。もしモバイルバッテリーの充電を忘れると,出先で携帯電話を充電しようとしてもモバイルバッテリーの電池残量がなくて充電できない,という事態に陥ります。せっかくモバイルバッテリーを持っているのに充電できない場合の,なんとも言えないストレスは,これまたできれば避けたいところです。

 10000mA という充電容量はスマートフォンを4~5回充電できる容量なので,1回充電した後でも十分な電池残量が残っています。これが重量 250g 程度,価格2千円台ですから,持ち運びの負担とコストパフォーマンスのバランスを考えると,この容量のクラスが最適な選択だと思います。わりと最近まで,大容量で安価なモバイルバッテリーは Amazon 等のネットショップでしか入手できませんでしたが,今は量販店でも取り扱っているようですので,購入もしやすいと思います。非常時用,精神衛生,携帯電話の電池寿命の観点から,モバイルバッテリーを必ず持ち歩くことを強く推奨したいと思います。