マイクを持てば酔っぱらい

~カラオケをこよなく愛するITシステムエンジニアのブログ~

2014/15シーズン

羽生結弦、凄みを増す今後

 どうしてこうも強いのか。恐ろしく強く,しなやかで,尊い。

Hanyu_with_Fernandez グランプリファイナル2014に出場した 羽生結弦 選手は,Short Program,Free Skating 共にシーズン最高得点を記録し,圧巻の優勝を飾った。このこと自体は,羽生選手の実力からすれば,驚くことではない。しかし,五輪の翌シーズンであること,そして皆さんご存知の「中国激突事故」の影響を考えれば,今回のファイナルは優勝さえすれば十分,というところだったはず。シーズン最高得点とは,私たちの期待をはるかに上回る結果だった。

 Free Skating の演技が終了した瞬間,派手にガッツポーズをし,指を突き上げて No.1 であることを喜ぶ。キスアンドクライでは,喜びを爆発させ,両手を広げて観客全体に向かって「皆さんのおかげです」と発しながら礼をする。素に戻ったような表情。心から感謝を表す態度。こんな羽生選手を見たのは久しぶりだ。勝ったからではなく,良いスケートができたことへの喜びと感謝にあふれていた。

 羽生選手にとってさらに嬉しかったことは,フェルナンデス選手の母国であるスペインで最高の演技を披露し,スペインのスケート界を盛り上げ,銀メダルのフェルナンデス選手と喜びを分かち合えたことだ。過去のブログで指摘したように,羽生選手が無理をした理由の1つがスペイン開催にあったと私は推測しているが,この喜びは何事にも代えがたいことだろう。将来,あのときの羽生選手を見てスケートを始めた,というスペインのスケーターが出てきたとき,あのとき無理して頑張って良かった,と羽生選手は心から思えるのではないだろうか。

 Free Skating の194点というスコアを見た瞬間に立った鳥肌は,歓喜というより恐ろしいものへの反応なのかもしれない。今回の圧倒的な優勝劇は「復活」という表現では到底表しきれない,「不死鳥」とでも言うべき神々しさに満ちている。大ケガから元に戻すだけでも大変なことなのに,わずか2週間で戻るどころかいきなりシーズン最高の出来にまで到達させる,その高い技術力と不屈の精神力。五輪金メダルのときとは違った感動と驚きが,今回の優勝劇にはある。

 東日本大震災を経て,羽生選手は周囲への感謝を表に出すようになった。ただ,これは天災であり,自分ではどうにもならないことがいろいろあったはずだ。中国激突事故もまた,周囲への感謝を改めて感じる機会になったと思うが,これは羽生選手としては自分が引き起こした問題であり,自分で乗り越えなければならないという意識が強かったと思う。だからこそ,シーズン最高の演技ができたとき,乗り越えた達成感と周囲への感謝があふれ出たのだろう。

 スケーター生命の危機に2度も襲われ,1度目は少しずつ山を登り,五輪を含む三大大会制覇の頂点に到達。2度目は落ちた穴がバネだったかのごとく一気に山を駆け登った。1度でも経験すれば精神的にたくましくなる危機を2度も克服すれば,あらゆる状況に対応する精神修養の術を会得し,周囲への感謝と気配りが肉体と精神に刻み込まれていく。演技後に発せられた羽生選手の言葉は,これまで以上に輝きを放ち,聞いている私は頷くことを忘れ,微動だにせずただただ受け止めてしまう。羽生選手の経験値は20歳にしてすでにベテランの域に達したかのようだ。それでいて,若者としてのチャレンジ精神は全く失われていない。今回の演技でもまだ伸びしろが残されており,勝ってなお課題がある。精神の充実と挑戦への意欲。これが非常に高い次元で融合していく。羽生選手のこれからは,楽しみという気楽なものではなく,険しい高みに耐える力を応援する私たちにさえも求められるもの…なのかもしれない。

本郷理華 選手に注目!グランプリファイナル2014

HongoRika2 12/12(金)からシングル女子がスタートするグランプリファイナル。今最も強い6人が集まる大会で、私は世界選手権よりこっちの方が好きなくらい、見ごたえのある世界大会です。五輪明けの年だと、有力選手が参戦しないなど少しゆったり感が漂うのですが、今年はそんなことはなく、羽生選手の激突事故というドラマ、優勝を狙う町田選手の気合、フェルナンデス選手の母国開催、などの要素からかなり盛り上がっていると感じます。

 その中でも、私の注目は女子の 本郷理華 選手です。ゴールド選手(USA)の負傷により、補欠からの繰り上がり出場となりました。本郷って誰?繰り上がりでしょ?と思っている皆さん! そういう先入観を捨てて 本郷 選手の演技にぜひ注目してほしいです。

 2012年の全日本選手権で初めて観たとき、本郷選手の魅力に私はハマりました。女子といえば今は 村上 選手や 宮原 選手が有名かもしれませんが、この2人よりも恵まれた体格があり、舞台度胸があり、ロシア杯優勝やグランプリファイナル繰り上がり出場といった強運を持ち、そして正に名前が示すように華があるのです。

 まだシニアに上がって最初のシーズンなので、洗練された演技とまではいきませんが、若さ・勢いと、スケール・情感の両面を持ち合わせたところが他の日本女子選手にない魅力です。フリースケーティングでは有名な「カルメン」を演じますので、音楽も耳なじみがあって観やすいと思います。ロシア勢にひけをとらない、本郷選手ならではの演技を堪能しましょう。

 あと、これは演技とは関係ないのですが、本郷選手のインタビューが妙に歯切れがいいと感じると思います。なぜかというと、答えるときに多くの人が使ってしまう「そうですねぇ」をめったに言わないのです。インタビュアが「どうでしたか?」と問いかけると、すぐに「今日は・・・」というふうに答えてくれます。これ、なんだかとても心地いいのです。ぜひインタビューにも注目してください。

羽生結弦選手が強行出場した動機

 フィギュアスケートのグランプリシリーズ中国大会。羽生選手はフリースケーティング直前の6分間練習のとき,閻涵(エン・カン)選手(CHN)と激突し頭部を負傷しながらも,フリースケーティングに出場し,5度も転倒しながら滑り切りました。この件では,主に出場の賛否が議論になっていますが,私は「なぜ羽生選手がこれほどまでに出場にこだわったのか」に思いをはせてみたいと思います。

 このような賛否が議論になることは,羽生選手自身もよくわかっていたはずです。だからこそ,なぜ彼が強行出場したのかという背景をよく考えることが重要だと思うのですが,主だった記事やコラムを読んでも,この点に関しては深掘りが不十分であると私は感じました。この点に関して,羽生選手は何も語っていませんので,我々は彼の胸中を推察するしかありません。推察することにどれほどの意味があるかわかりませんが,私が推察することを書き記しておきたいと思います。

 中国大会のフリースケーティングに強行出場した理由として,

  • シーズン初戦だったので,競技会で新プログラムを実践しておきたかった。
  • 中国にも羽生選手ファンは多く,会場にたくさんの観客が来ていたので,五輪金メダリストとしてその応援に応えたかった。
  • 激突は自分の不注意であり,そのことで大会に迷惑をかけることはできないという強い正義感があった。

などが報じられています。いずれも一理ある理由ではありますが,危険を冒してまで強行出場するべき理由なのかといえば,やや弱いと言わざるを得ません。3週間後には日本大会(NHK杯)が控えており,中国大会は無理をせず,日本の観客にベストのスケーティングを観てもらおう,という考え方だってあったはずです。

 おそらく,最も強い理由と思われるのは「グランプリファイナルに出場したい」ということだと思います。グランプリファイナルは,グランプリシリーズの上位成績者6名のみが出場できる大会で,世界フィギュアと並ぶ最高格の競技会です。中国大会のフリースケーティングを棄権すれば今年のグランプリファイナルの出場が断たれてしまいますので,強行出場した理由がここにあることは間違いありません。ただ,今年は五輪直後のシーズンですし,ケガを抱えているならグランプリファイナルを回避して、その2週間後に行われる全日本フィギュアを優先しても,非難されるような選択ではないでしょう。羽生選手はなぜ今年のグランプリファイナル出場にも強い意欲を持っているのでしょうか?

 今年のグランプリファイナルは,スペインのバルセロナで開催されます。スペインで国際大会最高峰の競技会が開催されるのは初めてだと思います。ヨーロッパのスケートは,ロシア,フランス,イタリアが中心で,スペインでは今まであまり盛んではありませんでした。今年スペインで開催するに至ったのには,ソチ五輪4位世界フィギュア2014で3位だったハビエル・フェルナンデス選手の活躍によるところが大きいと思います。

 フェルナンデス選手といえば,羽生選手と同じブライアン・オーサーコーチの指導を受けている同門生です。ですから,羽生選手が「スペインのグランプリファイナルにフェルナンデス選手と一緒に出場して,スペインのスケート界を盛り上げたい」と考えていることは想像に難くありません。尊敬し合う仲間の出身国であるスペインでの初開催に一緒に出場できることは,様々な条件がそろわなければならず,今年のグランプリファイナルは羽生選手にとって五輪と同じくらい出場を熱望する大会なのではないかと思うのです。羽生選手は,五輪の金メダリストとして,またフェルナンデス選手の同門生として,スペインでも知名度が高いと思われますので,自分が出場することで,事実上ホストとしての立ち位置になるフェルナンデス選手をサポートすることになる,と考えていると思います。

 フェルナンデス選手とて,グランプリファイナルへの出場が約束されているわけではありません。グランプリファイナルには自国枠等の優遇措置はありませんので,フェルナンデス選手もグランプリシリーズで上位6名に入る成績をとる必要があります。ただ,フェルナンデス選手は既にシリーズ初戦を2位で終えており,もう1戦を普通に戦えば出場は確実です。その意味では,羽生選手も普通に戦えば確実にグランプリファイナルに出場できる実力があるのですが,中国大会では普通ではないことが起きてしまったわけで,私の推察が正しいとすれば,羽生選手はまさかの事態にとても焦ったと思います。スケート界のため,観客のため,そして何よりフェルナンデス選手のために中国大会のフリースケーティングに強行出場したのではないか,というのが私の見立てです。点数発表後の号泣は「グランプリファイナル出場の可能性が維持された」ことにホッとしたからではないかと思います。

 五輪金メダリストとしての矜持フェルナンデス選手との友情スケート新興国の発展への貢献,これらがとても高いモチベーションとなって今シーズンの羽生選手を支えていると思いますし,中国大会での鬼気迫る集中力もそこから来ていると考えると合点がいきます。おそらく今,羽生選手は,何が何でもNHK杯に出場し,グランプリファイナルの出場権を獲ることだけを考えていると思います。ぜひ羽生選手のケガが回復し,NHK杯に出場できることを願ってやみません

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