本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です
◆男子シングル
グランプリファイナル進出の観点では,シリーズ1戦目で順位1位・2位を獲得した,ネイサン・チェン(米),ボーヤン・ジン(金博洋,中国),セルゲイ・ボロノフ(ロシア),アダム・リッポン(米)の4選手が順当にファイナルに進出できるかどうかが注目点です。このうち1人が脱落すると ジェイソン・ブラウン 選手(米)が,2人脱落するとさらに ハビエル・フェルナンデス 選手(スペイン)が,各々ファイナル出場権を得ます。
チェン 選手がロシア大会で優勝した後,様々な "まさか" が起こり,この状況が チェン 選手にどのような影響を及ぼすのか興味深いです。ファイナル優勝や平昌五輪金メダルの可能性が高まってきたことを,チャンスと捉えるか,プレッシャーに感じるか,今大会の一挙手一投足に注目が集まります。昨シーズンの,世界選手権で失速した同じ轍を踏まないように,今大会はマイペース調整になると思いますが,それでもトータル300点を超えて,安定感をアピールしたいところでしょう。
ジン 選手もマイペース調整だと思いますが,中国大会はギリギリの2位という感じでちょっと危なかったですね。今大会は,もう少しミスを減らして,トータル280点くらいを狙ってくるのだと思いますが,FSの完成度が気になるところです。中国大会を観た印象では,FS(Free Skating,フリースケーティング)が「スター・ウォーズ」のサントラを使っている割にはややもったいない音楽の使い方になっていたので,プログラムとしてしっくりくるのかどうかが気になっています。元祖 4Lz(4回転ルッツジャンプ)ジャンパーとして,今大会をうまく乗り切って,ファイナルに出場してほしいと願っています。
カナダ大会で最下位の屈辱を味わった 無良崇人 選手は,振付の指導をしてくれた,アイスダンスのソチ五輪金メダリスト チャーリー・ホワイト 選手の地元であるアメリカで,本来の力強いスケートを取り戻したいと燃えているでしょう。日本代表3枠目の可能性を示すためにも,完璧な演技を魅せてほしいです。
◆女子シングル
樋口新葉 選手がファイナルに進出するには,ポリーナ・ツルスカヤ(ロシア),アシュリー・ワグナー(米)両選手以外の選手に今大会で優勝してもらわなければいけません。優勝争いの力を持つ ポゴリラヤ 選手(ロシア)がケガのため欠場となってしまいましたので,樋口 選手のファイナル進出をアシストできるのは,宮原知子,坂本花織 の両日本選手となります。ケガ明けの 宮原 選手,シニアデビューの 坂本 選手共に,優勝はなかなかハードルが高いですが,自分が頑張るとライバルを利することになるとしても,名古屋開催のファイナルに日本女子選手不在では淋しいので,ぜひアシストしてほしいです。
宮原 選手は,ファイナル進出がなくなり,全日本選手権前の貴重な試合の場として本大会の位置付けが大きくなりました。ここで完全復活をアピールしておきたいでしょうから,完成度はともかくミスのない演技をしたいと考えていると思います。逆にここでミスが出ると,全日本選手権で優勝が必要になりプレッシャーが強まってしまいます。本大会でどのような演技ができるかは,宮原 選手の代表入りを占う意味で大きな注目点です。
今大会の 坂本 選手は優勝争いに加わるのではないかと私は予想しています。ロシア大会の後,国内の試合で試合勘を磨きコンスタントにスコアを出していますが,まだ200点に届いていません。日本女子のシニアデビュー組(本田真凛,白岩優奈)がグランプリシリーズで誰も200点を出していないこともあり,200点超えを目標に挑んでくると思います。ジャンプの質が高く,成功すれば GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)も取れるので,演技全体がうまくハマれば210点近いスコアも可能であり,そうなれば,宮原,ツルスカヤ,ワグナー の各選手と十分渡り合えると思います。
優勝候補一番手は,こちらもシニアデビュー組の ツルスカヤ 選手でしょう。満を持してのデビュー戦となったNHK杯で表彰台に乗りましたが,今大会は優勝も狙える状況ですし,ファイナル進出もかかっていますので,NHK杯以上の演技をめざしてくるでしょう。優勝を狙って獲れるかどうか,メンタルも試される大会になりますが,崩れるとしても小ミスが1つあるかどうかでしょう。個人的には,彼女の高さも幅もあるジャンプやスケールの大きな演技は,メドベージェワ,ザギトワ 両選手より技術面では優れていると感じます。今大会で優勝すればその自信をもってファイナルに出場するので,さらに伸びてくる可能性が高いです。だからこそ,宮原 選手や 坂本 選手が完璧な演技をすることで彼女にプレッシャーをかけてほしいと思います。ツルスカヤ 選手が,自身と 樋口 選手のファイナル進出の命運を握ることになると思います。
自国大会となる ワグナー 選手も,優勝すればファイナル進出となります。今季のプログラムは,2シーズン前の米国開催の世界選手権で銀メダルを獲ったときのSP(Short Program,ショートプログラム)とFSです。ワグナー 選手にピッタリのダンサブルで情熱的なプログラムなので,ベストな演技ができれば優勝できる可能性はあります。ただ,ワグナー 選手の今季の状況は恵まれており,今大会で強いアピールは必要なく,ファイナル出場もさほどこだわってはいないと思うので,平凡なスコアになっても不思議ではありません。いずれにせよ,ワグナー 選手最強のプログラムであることは間違いありませんので,スコアは気にせずとにかく楽しみながら観たいと思います。