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パトリック・チャン

宇野昌磨 余裕,本田真凛 取りこぼし【カナダ大会感想】

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です


 宇野昌磨 選手の余裕がとても印象に残りました。6分間練習でなんでもないところでバタッと転倒したのを笑って受け流し,ジャンプの難度を落としたFS(Free Skating,フリースケーティング)の 3Lo(トリプルループジャンプ)でもたついても笑顔。4回転4本がきっちりとは入りませんでしたが,肝心の 4Lo(4回転ループジャンプ)や 3A+1Lo+3F(トリプルアクセル→シングルループ→トリプルサルコウの3連続ジャンプ)を綺麗に決め,PCS(Program Component Score,演技構成点)も90点超え。終わってみればトータル300点に届き余裕の優勝でした。本大会は,難度を落として全体の完成度を高めることに主眼を置き,確実に優勝するという作戦を無事に遂行しました。これで,次のフランス大会はもう少し,宇野 選手がよく言う「攻める」演技にトライできるでしょう。とにかく五輪シーズンとは思えないほど余裕を感じますし,順調な調整ができていると思います。

 パトリック・チャン 選手(カナダ)は珍しく大崩れしました。いつもカナダ大会はシーズン序盤相応に仕上げてきていたので,少し心配な状況です。FSの曲「ハレルヤ」は,チャン 選手でなくても他の選手でも良い曲という印象。もっと チャン 選手ならでは,というプログラムを観たいと感じましたね。

 代わりに ジェイソン・ブラウン 選手(米)が2位に入りました。6強の一角を崩し,グランプリファイナル出場にグッと近づきました。FS冒頭の 4T(4回転トウループジャンプ)を見る限り,もう4回転は捨てて全体の完成度を徹底的に高める戦略でいくべきなんじゃないかと思います。4回転なしのFSで190点を狙えるのは ブラウン 選手だけですからね。

 本田真凛 選手は,結果から見ればもったいなかったです。SP(Short Program,ショートプログラム)の失敗がなければ2位に入れましたからね。でも,最初から順調で肝心なときに落とし穴に遭うよりは良かったと考えるべきでしょう。SP失敗から切り替えてFSをまとめるという経験はできましたが,なぜSPは失敗してFSは乗り切れたのか,きちんと検証できるのか少し心配です。それはSP直後に発した言葉から感じました。

「今回はすごく練習したつもりだったけど、まだまだ甘かったのかなと思う」

 結果が出てから「甘かった」と言っています。これは,甘さの残る練習をやっていたことの表れですし,もし今回が良い結果だったらその甘い練習のまま今後を過ごすことになったでしょう。結果を練習の質に結びつけてしまう考え方は危険で,練習の臨み方や結果の検証の仕方をきちんと身に付けておかないと,結果オーライの考え方がしみついてしまいます。本田 選手がこの罠にハマらないようにコーチ陣が導かなければなりませんが,注目度の高い選手なのでコーチ陣も大変でしょうね。

 本郷理華 選手は,全盛期には及ばないものの,かなり調子が戻ってきたのが嬉しいですね。プログラムはとても良いものに巡り合えたと思うので,あとは回転不足を解消して,全体の完成度を上げていき,全日本選手権で勝負をかけてほしいです。

 ケイトリン・オズモンド 選手(カナダ)がきっちり自国大会の優勝を果たしました。昨季の世界選手権銀メダルで得た自信は本物ではないかと思います。PCS もほぼ9割(SP 36点,FS 72点)を取り安定しています。FSの曲「ブラックスワン」は,オズモンド 選手ならではとまでは言えずもっと合う曲があるとは思いますが,華やかなブラックスワンというのは独特な感じで,どう仕上がっていくか興味深いです。

 ロシア勢は明暗が分かれました。マリア・ソツコワ 選手は,昨季のジュニア上がりっぽい表現の拙さがなくなり,表現力が格段に上がりましたね。それは PCS がFSで8割(64点)を超えてきたことに現れています。ソツコワ 選手はジャンプ技術も高く,3Lz(3回転ルッツジャンプ)と 3F(3回転フリップジャンプ)をFSで2本ずつ入れているのは彼女くらいだと思います。今大会のFSは回転不足でスコアが伸びませんでしたが,とにかくプログラムが ソツコワ 選手にとてもよくマッチしたものになっていますので,ジャンプがきちんと入れば,トータル210点超えができると思います。

 一方,アンナ・ポゴリラヤ 選手は,年に1~2回あるFSの大崩れがまた出てしまいました。「ブラックスワン」の演目が オズモンド 選手と丸かぶりで,オズモンド 選手よりは合っていると思うものの,ポゴリラヤ 選手にはもっと壮大なスケールの演目が似合うと思います。それにしても,スコアに安定感がないと,大激戦のロシア代表入りはなかなか難しいでしょうね。稀有な雰囲気を持つスケーターなので,今後巻き返してほしいです。

 実力者が力を出し切れない状況の中,ベストとは言えないまでもきっちりまとめてきた アシュリー・ワグナー 選手(米)が3位に入りました。SP,FS共に過去に演じた代表作の再演で,SPはダンサブル,FSはきらびやかで,本当に素晴らしい演目です。ワグナー 選手もスコア度外視でよい選手の一人ですが,他の選手にミスが出ると表彰台にきっちり上がるのはさすがです。

 今大会の女子は,好不調で言えば不調の方にやや倒れた形になり,スコアのレベルは オズモンド 選手以外は平凡でした。ロシア大会で5位だった 坂本花織 選手のスコアはカナダ大会では2位ですからね。グランプリファイナルは各大会の順位によって決定されるので,こういう対戦のアヤに左右されます。五輪シーズンなので,シーズン序盤でももう少しレベルの高い戦いを観たかったところではありますが,五輪シーズンの緊張感や調整の難しさを改めて感じさせてくれたカナダ大会でした。

ソチ五輪フィギュアスケート男子シングル総括(後編)

 金メダル争いは,正に魔物との闘いになりました。

 羽生選手が最終グループ3番手で登場。冒頭の4回転サルコウジャンプは,練習ではほとんど決まっているのに,試合ではずっと決めることができていませんでしたが,五輪でもダメでした。転倒の仕方がほとんど今季グランプリファイナルと同じでした。でもこの転倒はよくあること。問題は3つめのトリプルフリップジャンプで着氷が乱れた(採点では転倒扱い)ところ。見た瞬間「あ,とうとう魔物が来たな」と感じずにはいられませんでした。後で見返すと,6分間練習から顔面蒼白な感じで,メンタルが強い羽生選手といえども重圧を感じていたんだなということがうかがえました。

 ステップも,とにかく動作をしているといった感じで,いつもの手先まで行き届いた表現は影を潜めていました。大崩れしてしまうのか,一瞬そんなことが私の頭をよぎった気がします。しかし,後半最初のトリプルアクセル→トリプルトウループのコンビネーションジャンプが鮮やかに決まったことで,息を吹き返した気がしました。後半の残りのジャンプをミスなくまとめて,ミスは2つにとどめた,そう思いました。

 ところが,フリーの得点は178点台。私が生観戦した今季グランプリファイナルは,ミスが4回転サルコウの転倒だけで192点台。確かにこのときのフリーは良かったですが,それにしても点数が低い。後で採点表を見てわかったのですが,3-1-3回転の3連続ジャンプが3回転-1回転のシークエンスジャンプの判定になっていました。これはテレビ解説者の本田武史氏が指摘したとおりで,3連続ジャンプの3つめに入る前にちょっとした "ため" を作ったことで連続が途切れたと評価されたらしいのです。これはとても厳しい判定だと思いましたが,点数が5点以上減る大きなミスです。つまり,ミスが3つあったことになっていたわけです。

 この時点では,勝負の女神はチャン選手(CAN)に微笑んでいたはずです。私はチャン選手がミス2つまでならチャン選手勝利,3つで微妙,4つでは羽生選手勝利と踏んでいました。続いてチャン選手の演技が始まり,冒頭の完璧な4回転-3回転のコンビネーションジャンプはさすがでした。が,それも束の間,次の単独4回転で手をつき,さらにトリプルアクセルも着氷が乱れました。調子が完全には戻っていない,これは羽生選手にツキがあるかも,と思い始めました。でも,チャン選手のこの4年間を思うと,残りをミスなく決めて金メダルを持っていってほしい,という気持ちも私の中では同居していました。

 ここまでミス2つ。後半,3-1-3回転の3連続ジャンプが3-1-2回転になるミス。ただこのミスは小さいものなので,残りがうまくいけばチャン選手に有利なはず。続く3つの3回転ジャンプを全て決めて,残りがダブルアクセルジャンプだけになった時点で,もうチャン選手の勝利は確実と思いました。ただ,最後はチャン選手が苦手なアクセルジャンプなので一応注目して見ていたら…最後の最後に着氷が乱れる痛恨のミスが出ました。「うあーっ」と私は思わず声を上げました。結果はご存じのとおり,フリーだけでも羽生選手を上回ることができませんでした。チャン選手は自らチャンスを逃し,金メダルが羽生選手のもとに戻っていきました。

 この2人の闘いは,たしかにミスの闘いでした。しかし,合計280点は五輪史上最高であり,4回転ジャンパー初の金メダリストが誕生したことは,たいへん素晴らしいことです。羽生選手とチャン選手は,1週間前に団体戦のショートプログラムにも出場しており,疲労があるのはやむを得ないことです。ミスの多さを批判するのは,今回の五輪においては不適当と思いますし,批判するなら,その矛先は団体戦を個人種目の前に実施した運営側に向けられるべきです。このような厳しい状況の中で,2人ともショートとフリー合わせて4回転ジャンプを3つ飛び,全て回転不足なく認定されています(羽生選手の4回転サルコウは回転成立で転倒という扱い)。団体戦も含めれば4つ飛んでいるのです。4回転だけが全てではありませんが,とても体力的な負担が大きい4回転を何度も入れたプログラム構成で勝負した彼らに対し,過去の五輪に劣らない名勝負であったと賛辞を贈りたいと思います。

ソチ五輪フィギュアスケート男子シングル順位予想

 スポーツ観戦ネタも時々このブログに登場します。

 まずは,ソチ五輪のフィギュアスケート・男子シングルの順位予想をしてみたいと思います。予想というより願望ですね。
  1. 羽生結弦
  2. パトリック・チャン (CAN)
  3. 町田樹
 羽生選手は,全日本2連覇,今季グランプリファイナル優勝,そして先日の五輪団体戦でも見事なショートプログラム(SP)を演じてくれました。全日本や五輪団体戦を観る限り,彼には五輪初出場の重圧をはねのけるメンタリティーがあると確信できます。五輪団体戦では,ステップの動きなど細かいところを "流して" 演じている感じでしたから,きっちり演じればSP100点は確実です。フリー200点,合計300点というものすごいことが起こるかもしれません。ブライアン・オーサーが選手としては金メダルを取れませんでしたが,コーチとして五輪2連覇を果たす気配が濃厚です。

 チャン選手は,世界フィギュア3連覇中ですが,絶好調時と比べると少し調子が上がりきっていないかなと感じます。五輪団体戦もあまり良くなかったですが,どの選手もそこにピークを持ってきていないのでアテにはなりません。それより,今季グランプリファイナルで羽生選手に負けたことが,彼の自信をほんの少し揺らがせているような気がします。グランプリファイナルを私は現地福岡で生観戦しましたが,チャン選手のフリーは全ての要素を成功させてはいましたが,どこか窮屈そうな演技だと感じられました。一方,羽生選手は転倒した4回転サルコウ以外はどの要素も良い出来栄えで,結局,全ての要素を成功させたチャン選手が,4回転サルコウを転倒した羽生選手に負けてしまったのです。このことから,チャン選手は全ての要素を成功させるだけでなく,出来栄えもかなり良いものにしないと勝つことが難しいと感じているはずです。このことが,チャン選手の危機感を呼び起こして良い方向に向かうと私は思っていたのですが,カナダ選手権や五輪団体戦を観る限りでは,重圧をぬぐい切れていない印象を持ちました。でも,この4年間牽引してきたのはチャン選手ですから,ベストな演技をしてほしいと願っています

 町田選手は,SP「エデンの東」,フリー「火の鳥」両方ともプログラムが本当に素晴らしいです。彼は深い深い愛情を持ってプログラムを表現しようとしており,表現に没入することによって重圧をはねのけているとも言われています。現実的に考えても,羽生・チャンの2強を除くと,銅メダルには270点(SP:90点,フリー:180点)が目安と私は考えていて,町田選手なら十分に達成可能な点数です。五輪団体戦のフリーでは3位でしたが,2度目の4回転が成功していれば逆転していました。つまり完璧な演技をすれば十分メダルに手が届きます。「火の鳥」が開会式で使用されたことも,町田選手の快演を後押ししてくれそうな気がします。

 その他,上位争いをしそうな選手は,髙橋大輔,フェルナンデス(ESP),レイノルズ(CAN),プルシェンコ(RUS)あたりでしょう。レイノルズは,五輪団体戦でフリーを演じ,4回転を3度成功させました。一度成功体験ができたのは大きいと思いますので,台風の目になると思います。髙橋選手にはもちろん頑張ってほしいんですよ。ですが,SPは佐村河内問題に巻き込まれ,フリーはビートルズの曲のアレンジが私の感性と全く合わず,応援ムードになりきれない自分がいます。この状況で髙橋選手がメダルを取ったら,引退までフィギュア界が熱狂に包まれることは間違いありません。

(おまけ:冷静な予想。1.羽生,2.C,3.F)
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