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ブレイディ・テネル

グランプリファイナル出場選手スコア比較:女子シングル編

 フィギュアスケートのグランプリファイナル出場選手のスコア比較表の女子シングル編です。昨シーズンから勢力図がガラッと変わりましたが,変わったのは顔ぶれだけではなく,ジャンプ構成も昨季とは全く違っています。

FigureSkateScoreList2019GPFladies

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 SPは,どの選手も当然のように 3Lz と 3F を入れています。紀平 選手が 3Lo を使っているのはケガの影響で回避しているだけです。女子のSPは4回転が禁止されているので,3A を持っている 紀平 選手と コストルナヤ 選手は有利になります。そこで少しでもスコアの差を埋めるために,トゥルソワ 選手や シェルバコワ 選手は連続ジャンプの2本目を +3Lo にする,いわゆるセカンドループを入れています。しかもそれを 3Lz と組み合わせてボーナスタイムに入れることで,ボーナスを最大化しています。セカンドループは彼らの同門(エテリ・トゥトベリーゼ コーチ)の先輩である ザギトワ 選手の得点源ですが,この3人はFSでもセカンドループをボーナスタイムに入れています。セカンドループが使えるとスコア戦略上たいへん有効ですが,失敗や回転不足のリスクが高く,ボーナスタイムに組み込むということは,それだけジャンプに自信を持っていることの表れです。

 FSに目を移すと,まさかの 4Lz が表記されています。男子でも数人しかプログラムに入れられない大技を飛ぶ選手が,女子2人もいるとは驚くばかりです。シェルバコワ 選手はなんと2本入れる構成です。2本入れると言うことは,1本は連続ジャンプにしなければなりませんが,それが 4Lz+3T という超大技です。そして彼女の 4Lz はただ飛んでいるのではなく,とても綺麗です。彼女は Lz が得意なようで,3Lz も2本入れて完全に Lz を武器にしたジャンプ構成になっています。

 そして,驚異の4回転4本,うちボーナスタイム1本という,羽生 選手並みの構成を組む トゥルソワ 選手。この比較表を見ると,166 点というFS歴代最高得点を獲ったのもうなずけるところです。3Lz をボーナスタイムに2本入れ,そのうち1本はセカンドループの連続ジャンプという,4回転以外でもスコアを最大化するものすごいプログラムです。PCS(Program Component Score,演技構成点)がそこまで高くない彼女にとっては,圧倒的な技術点で勝ちをつかむという,若手らしい戦術と言えます。

 その2人と共に今シーズン,シニアデビューを果たした コストルナヤ 選手は,完成度の高い 3AFSでも2本入れ,紀平 選手と同等のジャンプ構成を組んでいます。SP歴代最高得点を記録し,トータルでも歴代最高まであと1点に迫りました。4回転が無くても,GOE(Grade Of Execution,出来栄え評価)や PCS が高く,完成度はロシアのシニアデビュー3人娘の中で頭一つ抜けています。

 この3人,そして実績十分の ザギトワ 選手も含め,4人のロシア勢と戦う 紀平 選手は,このうち2人を上回らなければ表彰台に立つ(=3位以内)ことができません。なんとしてもロシア勢の表彰台独占は阻止したいところです。ただ,紀平 選手の現状のジャンプ構成では,彼らを上回るのはとても難しいでしょう。競い合う可能性が最も高い シェルバコワ 選手との間に,基礎点で 12 点もの差がありますので,GOE と PCS を高めてもその差は埋まらず,相手のミス待ちになってしまいます。

 そこで,リスクを承知の上で,Lz を回避しつつ戦える状況を作るために,紀平 選手はFS4S を入れることになるでしょう(比較表には 4S を入れた構成を記載)。3S を 4S に代えると,余った 3S を3連続ジャンプ(+1Eu+3S)に充てることができるので3連続ジャンプのスコアも上がり,現状より基礎点が7点上がるのです。これで シェルバコワ 選手との基礎点の差が5点以内になり,GOE と PCS の上積みによる逆転の確率が高まります。基礎点で負けていた コストルナヤ 選手にも,4S 投入によって基礎点が上回ることになるので,GOE と PCS が同じならスコアが上になります。トゥルソワ 選手とはまだ開きがありますが,彼女の 4S は今季成功率が低く,さらにもう1つミスがあればスコアが争える状況になります。4S 投入により,個人的な感覚として 紀平 選手が表彰台に立つ確率が,現状の 20% から 50% に上がる感じがします。

 私は先日まで,紀平 選手は焦って4回転を入れるべきでないと考えていました。しかし,このスコア比較表を見ながら,考えが変わってきました。コストルナヤ 選手は4回転を,トゥルソワ 選手は 3A を,近いうちに実戦投入するのではないかという予想も出てきています。さすがにファイナルでの投入はないと思いますが,ヨーロッパ選手権での投入はあり得る話です。そうなると,4回転と 3A を同時に成功させる最初の女子スケーターは誰か,という記録面の関心が高まってきます。フィギュアスケートの記録は公式の国際試合で成功した場合に成立します。紀平 選手がファイナルで4回転を入れなかった場合,次の機会は来年の四大陸選手権になりますが,これはヨーロッパ選手権より後に開催されるので,コストルナヤ 選手や トゥルソワ 選手がヨーロッパ選手権で4回転と 3A を同時に成功すると,彼らが最初のスケーターとして記録されます。紀平 選手自身はこんなことは意識していないと思いますが,3A の開拓者として4回転との同時成功を達成する最初のスケーターになってほしいのです。その意味でも,ファイナルではぜひ 4S と 3A をFSで成功させてほしいです。

 比較表には,紀平 選手のいくつかのパターンを付記しました。現状は 3Lz を回避していることで昨季よりもスコアが下がっていますが,3Lz が復活してさらに 4S も加わると,基礎点が シェルバコワ 選手に並び,トゥルソワ 選手とも10点差以内に迫ります。今シーズンの世界選手権(3月)までにこの構成を仕上げれば,昨季獲れなかった世界女王が現実的に狙えます。シニアデビュー3人娘を抑えて世界女王に輝けば,これほど価値あるタイトルはありません。先々にはこのような楽しみも広がります。

 ですが,まずはファイナルで風穴を開けてほしいところです。ファイナルのスコアがどのくらいになるかを予測します。

トゥルソワ 選手が全て成功の演技】
 基礎点 123 点+出来栄え点 24 点(GOE 平均 2 を仮定)+ PCS 100 点(満点の83%)= 247 点

紀平 選手が良質な演技】
 基礎点 109 点+出来栄え点 27 点(GOE 平均 2.5 を仮定)+ PCS 108 点(満点の90%)= 244 点

 トゥルソワ 選手が全てのジャンプを揃えるのは至難の業ですし,紀平 選手にとっても上述の GOE や PCS はそう簡単ではありません。優勝争いは歴代最高得点(241点台)超えをめざす,極めてハイレベルな勝負になりそうです。テネル 選手が完璧な演技なら,全員が 220 点を超えることもけして絵空事ではありません。間違いなく,今までで最も難易度と完成度の高いグランプリファイナル女子シングルが観られることでしょう。

ドラマがあった全米選手権

 12月下旬~1月上旬は,各国の国内選手権が開催される時期ですね。日本では年末に全日本選手権が開催されましたが,アメリカでは年始すぐに全米選手権が開催されました。男女シングル共に,有力選手が平昌五輪代表入りを逃すというドラマが生まれました。また,男子のメダル争いの中心にいる ネイサン・チェン 選手の仕上がりにも注目が集まりました。全米選手権の感想と,平昌五輪の展望を書いてみます。

◆男子シングル

 ネイサン・チェン 選手が315点という高得点で優勝しました。このスコアだけを見るとかなり脅威に感じますが,観戦した私は全く脅威を感じず,羽生結弦・宇野昌磨 両選手に届かないまま平昌五輪を迎えるという印象を受けました。FS(Free Skating,フリースケーティング)は,冒頭の 4F+3T(連続ジャンプ:4回転フリップ→トリプルトウループ)は素晴らしい出来でしたが,それ以外のジャンプは詰まり気味の着氷もけっこうありました。にもかかわらず GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)が約20点も加点され,PCS(Program Component Score,演技構成点)も約95点を獲得しましたが,国際大会ではこの出来でこのスコアはまずあり得ません。国内選手権で国際大会より点数を多めに出す,というのはよくある話で,米国のジャッジが露骨にゲタを履かせた(今風に言えば「盛った」)と考えて差し支えない状況です。

 言い方を変えると,これだけゲタを履かせてもらっても315点しか出なかったということなのです。今回と同じ演技構成で平昌五輪に臨んだ場合,演技が完璧ならどうにかこのスコアが出ると思いますが,今回と同程度の出来なら310点前後と予想します。宇野 選手の最高スコアは319点,羽生 選手はさらにその上の330点であり,最高スコアを出した時点より現在の演技構成の方が基礎点が高いので,彼らが完璧に演技すれば チェン 選手が今回と同じ演技構成でベストな演技をしても彼らには及びません。

 今回の演技構成で五輪に臨み,羽生・宇野 両選手のミスを待つ戦略もないわけではありませんが,スコアの差が大きく負け戦も同然なので,チェン 陣営は,平昌五輪では今回より基礎点の高い演技構成で臨まざるを得ないと思います。今回は 4Lz(4回転ルッツジャンプ)を飛ばず,FSでは 4F,4S,4T(フリップ,サルコウ,トウループの各4回転ジャンプ)を計5本飛びましたが,平昌五輪では 4Lz を加えて4回転ジャンプ4種類を5本か6本飛ぶ構成になるでしょう。ジャンプの種類や本数のルールにより,4回転5本なら 3A(トリプルアクセルジャンプ)が2本,4回転6本なら 3A が1本になりますが,チェン 選手は 3A に不安がありますし,スコア戦略の点からも4回転6本構成を選択せざるを得ないと思います。しかし,6本は今まで一度も成功したことがなく,チェン 選手と言えどもギャンブルになります。

 今シーズンの チェン 選手は,試合のたびに4回転ジャンプの種類や本数を変えるという猫の目作戦をとっており,全米選手権でも手の内を見せなかったのならば,アルトゥニアン コーチらしい強かな作戦だとは思いますが,全米選手権で平昌五輪用の演技構成を披露して高得点を出す方が,ライバルへのプレッシャーを高められたはずなので,作戦ではなく単純にジャンプ構成を探っているのかなと私は思っています。とはいえ,基礎点が上積みできる余地を残しながら315点を出したことは,今シーズンの安定感と相まって,平昌五輪への期待を高めることはできたと思います。ぜひ平昌五輪では「これはすごい」と心から言えるような演技を観たいと願っています。

 代表争いでは,アダム・リッポン 選手はFSで精彩を欠いてヒヤッとしましたが,下馬評通りの代表入りとなりました。そして,もう一人の枠に割って入ったのは ヴィンセント・ジョウ 選手でした。4Lz を2本を含む4回転ジャンプ5本の演技構成で突き進んでいたので,シニアデビューとなる今シーズン当初から応援していましたが,全米選手権で表彰台に乗り,平昌五輪代表の座を掴みました。平昌五輪でメダル争いに加わるのは難しいですが,この五輪の経験は ジョウ 選手自身と米国にとって大きな財産になると思います。

 今回 ジョウ 選手は,FSで4回転ジャンプ3本が回転不足,同1本がダウングレードの判定を受けながらも,基礎点は チェン 選手を上回りました。回転不足やダウングレードがなければあと18点程度上乗せされる計算であり,基礎点だけで115点を超える超絶の演技構成です。4回転ジャンプに関しては チェン 選手が目立ちますが,ジョウ 選手にもぜひ注目してほしいと思います。

 代表入り有力と言われながら,目前で逃してしまったのが ジェイソン・ブラウン 選手でした。NHK杯で,羽生 選手の欠場によって優勝の最右翼と言われながら表彰台を逃したのを見て,プレッシャーに弱いのかなと感じていたのですが,肝心の全米選手権でそれが出てしまったようです。芸術性の高さとプログラム全体の高い完成度を,世界中に披露してほしかったのですが,それが叶わず残念でなりません。

◆女子シングル

 宮原知子 選手が優勝し,坂本花織 選手がブレイクした11月のスケートアメリカという大会で,もう一人ブレイクしたのが ブレイディ・テネル 選手でした。彼女の演技を観た私は,全米選手権で優勝するのではないかと予感しましたが,本当に優勝するとは驚きました。FSのプログラムは昨シーズン 三原舞依 選手が起用した「シンデレラ」ですが,テネル 選手はまるで,ディズニーランドのパレードで見るシンデレラがそのまま氷上に舞い降りてきたかのようで,長身の テネル 選手が醸し出す本物感は圧巻でした。正に,ザ・シンデレラ・ストーリーであり,平昌五輪でも入賞には十分手が届くと思いますし,絶好調なら 坂本 選手と共に5位を争う感じになると思います。

 24歳にして 3A にトライする姿に感銘を受け,シーズン当初から応援していた 長洲未来 選手が,会心の演技で8年ぶりに五輪代表になりました。長洲 選手は五輪シーズンの全米選手権にめっぽう強く,ソチ五輪のときは3位に入りながら代表入りを逃していました。その前のバンクーバー五輪では2位に入って五輪代表となり,五輪で4位入賞。今シーズンは4年前の悔しさを晴らすべく,グランプリシリーズからずっと 3A を入れ続け,NHK杯で194点を出したことで,アシュリー・ワグナー 選手の今シーズンのグランプリシリーズ最高点(183点)を上回ったことが功を奏したと思います。3A に目を奪われますが,今シーズンの 長洲 選手は 3A 以外のジャンプがとても安定していたのが好調の要因でしょう。平昌五輪では女子唯一の 3A ジャンパーとして,8年ぶりの五輪を楽しんでほしいと思います。

 カレン・チェン 選手は,今シーズン苦しんでいましたが,昨シーズンのプログラムに戻す決断が効きました。昨シーズンは全米優勝,世界選手権4位ですから,戻す価値があったということでしょう。ただし,全米選手権では昨シーズンのクオリティーには及びませんでした。平昌五輪までに昨シーズンの自信を取り戻す作業をしていくことになります。

 ソチ五輪からの4年間の米国フィギュアスケート界を支えてきた アシュリー・ワグナー 選手の代表不選出は,とても残念でした。ただ,今シーズンは精彩を欠き,ケガもありましたので,バイオリズムが下降線の時に五輪が来てしまったのでしょう。興味深かったのは,カレン・チェン 選手が過去のプログラムに戻す決断をした一方で,ワグナー 選手はFSに新たなプログラムで挑んだことです。新プログラム「ラ・ラ・ランド」は,元々今シーズン用に用意していたものの,しっくりこなくて一旦過去のプログラムに戻していましたが,やっぱり全米選手権には「ラ・ラ・ランド」で勝負したいと考え,そのような決断になったようです。

 「ラ・ラ・ランド」はプログラム自体は素敵なものでしたが,無難な印象で ワグナー 選手らしさがあまり感じられない,というのが観終わった瞬間の私の感想でした。私は「ラ・ラ・ランド」の映画を観ていないので,選曲が良かったのかどうかを判断できませんが,主題歌の有名なフレーズがいつ流れてくるか待っていた私は,それが流れてこなかったので今一つ盛り上がれなかったなぁと感じました。有名なフレーズを使えばいいというものではありませんが,「ラ・ラ・ランド」といえばこの曲…というものをうまく入れれば,観客の盛り上がり方がもっと違ったのではないかとは思いました。

 結果論としては,戻していた過去のプログラムである「ムーラン・ルージュ」の方が ワグナー 選手の良さが存分に引き出された作品だったと言えます。「ラ・ラ・ランド」をここで持ってきたということはかなり良いプログラムなのだろう,と採点するジャッジは期待感を持っていたと思いますが,良い内容だけどそこまでじゃないなと思えば,初見のプログラムに対して高いスコアは出しづらかったのだろうと推察します。PCS が低かったのは,そういったジャッジの心理が働いた面があったでしょう。ただ,そうは言っても PCS 68点(満点の85%)は低すぎるとは思いますけどね…。これが72点なら,ワグナー 選手が3位になり,五輪代表になった可能性が高かったでしょう。

 過去プログラムに戻した選手が代表になり,新プログラムに果敢に挑んだ選手が代表落ちするというのは,やや複雑な気分になってしまうところですが,これも勝負のあや。4年前の全米選手権では,4位だった ワグナー 選手がソチ五輪代表に入りましたが,そのとき3位ながら代表入りを逃した 長洲 選手が今回は代表入りを掴むというところにも,ドラマがありました。長年,米国のフィギュアスケートを引っ張ってきた2人だけに,2人とも平昌に行ってほしかったです。代表の枠が3枠あっても代表をめぐるドラマがある…これぞ五輪シーズンだな,と改めて感じさせてくれた全米選手権でした。

宮原 完全復活,坂本 覚醒【アメリカ大会感想】

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です


 日本女子シングルにとっては,最高の大会になりました。まずは,なんといっても 宮原知子 選手の復活優勝。ミス・パーフェクトがこんなにも早く帰ってくるとは…と涙した方も多かったのではないでしょうか。コンディションが戻ってきて,スケートができることの喜びにあふれている気がしました。また,昨季より情感が強く表現されていて,休養している間に吸収したものの大きさを感じました。それを審判も感じ取ったのか,FS(Free Skating,フリースケーティング)の PCS(Program Component Score,演技構成点)が71点台に上がりました。しなやかで凛とした人物を描き出す「SAYURI」「蝶々夫人」の2つのプログラムは,ムダな動きが削ぎ落とされ洗練された表現力を持つ 宮原 選手だからこそのプログラムであり,今年初頭のケガからこれまでの彼女の努力に思いをはせると,さらに心に響いてきますね。

 このままのコンディションで全日本選手権を迎えてほしい,そう願うばかりですが,今大会の優勝でグランプリファイナルの補欠1番手になりましたので,ケガが報じられている メドベージェワ 選手が欠場すればファイナル出場が転がり込んできます。大会前からファイナル進出の可能性が消えていたことで,アメリカ大会でかなりギアを上げたと思うので,もしファイナルに出場できた場合,全日本選手権までのペース配分をどうするか,難しい判断を迫られそうです。しかし,今大会で自信を取り戻した 宮原 選手は,もうペース配分など関係ない高みに上ったかもしれず,補欠出場でファイナル制覇→全日本選手権優勝という完全復活シナリオも大いに期待してしまうほど,今大会の 宮原 選手の演技は神々しさに満ちたものでした。

 ブログのプレビュー記事で「優勝争いをするのでは」と予想した 坂本花織 選手が,期待以上の内容で本当に優勝争いに加わりました。特にFSの「アメリ」は,最後のジャンプのあたりで私は言葉を発することなくただただ画面の中の 坂本 選手を追い,最後のポーズのときには言いようのない感動に包まれました。ジャンプの質,ステップの最中にまで表現される細かいパントマイム,音楽とスケーティングの融合,全てがうまくハマったこのプログラムが持つ雰囲気は最高です。友人がジュニア時代から 坂本 選手を推していて,それで私も注目するようになったのですが,ロシア大会のときは今一つ「アメリ」の良さが実感できませんでした。でも今大会で完全にブレイクしましたね。スケール感と細かい表現の両立が 坂本 選手の個性になりそうです。

 200点超えどころか一気に210点に到達し,プログラムの秀逸さも考えれば全日本選手権で大金星の可能性さえ感じさせてくれる 坂本 選手の活躍は,同門生の 三原舞依 選手や,同じシニアデビュー組の 本田真凛,白岩優奈 といった選手たちを大いに刺激するはずです。宮原,坂本 両選手のアシストによってファイナル進出を果たした 樋口新葉 選手も,ファイナルにトップギアで挑むことでしょう。坂本 選手の今大会の大躍進により,女子シングルの代表争いはさらに高い次元に引き上がっていきそうです。

 坂本 選手と並ぶサプライズとなったのは,予定外出場でワンチャンスを生かした ブレイディ・テネル 選手(米)。テネル 選手が好調という話は耳にしていたのですが,観戦の機会がなく,グランプリシリーズ初出場となる今大会でようやく観ることができました。手足の長さは ポリーナ・エドモンズ 選手(米)を彷彿とさせ,華やかさは五輪出場断念となった グレイシー・ゴールド 選手(米)に比肩する,素晴らしい選手ですね。アメリカの女子シングル選手は誰も本調子に至っておらず,テネル 選手は代表争いに名乗りを上げたどころか,このままなら全米選手権を勝ってしまうような勢いと自信を得たと思います。

 男子について少しだけ。上位4位までの選手がグランプリファイナル進出を果たしましたが,ボーヤン・ジン 選手(金博洋,中国)は,順位合計が ジェイソン・ブラウン 選手(米)と同じで,スコア合計がわずかに上回ったという薄氷の進出でした。4Lz(4回転ルッツジャンプ)を飛ばなかったところを見ると,コンディションが万全ではなかった可能性があります。FS(Free Skating,フリースケーティング)のプログラムが,少し見慣れてきたものの,良い音楽を生かし切れていない印象は拭えず,今後どこまで完成度を高められるのか,やや不安を感じます。

 ジン 選手が回避した 4Lz をFSで2本入れることを試したのが ネイサン・チェン 選手(米)でした。冒頭で 4Lz+3T(連続ジャンプ:4回転ルッツ→トリプルトウループ)を決め,演技時間後半の冒頭で単独の 4Lz を決めました。他のジャンプが乱れたために急遽試したものと思われますが,この選択肢もあるということを確認できたのは チェン 選手にとっては収穫だったと思います。4回転を5種類入れるのか,4種類で5~6本にするのかを模索していると思いますが,スコアだけを考えれば 4Lz 2本は強力な戦略になります。

 チェン 選手に関しては,ついジャンプの話題が中心になりますが,着々と PCS(Program Component Score,演技構成点)が上がってきているのは,ライバルたちには脅威でしょう。今大会では,つなぎの演技をとても丁寧に行っている印象がありましたし,スケーティングにも昨季のようなジュニア上がり感はなくなり,洗練されたものになってきている気がします。グランプリファイナルは,宇野昌磨 選手と チェン 選手の優勝争いという形になりそうですね。

 男子の有力選手がピリッとしなかったのに対し,女子は 宮原,坂本 両選手が珠玉の出来で,グランプリシリーズを見事に締めくくりました。これで6週連続のシリーズが終了し,来週はいよいよ名古屋で開催されるグランプリファイナルを迎えます。

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