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ラジオノワ

羽生結弦 順調,樋口新葉 詰め甘し 【ロシア大会感想】

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です


 羽生結弦 選手は,またしてもグランプリシリーズ初戦2位という結果でしたが,2位以内に入ればグランプリファイナル出場に支障はないので,全く問題ないでしょうね。4Lz(4回転ルッツジャンプ)の成功で盛り上がっていますが,個人的には 4T+1Lo+3S という4回転からの3連続ジャンプが入らなかったのが残念でした。次の日本大会(NHK杯)は間違いなくもっと良い仕上がりになるでしょう。2年前に歴代最高得点を記録した舞台ですし,日本の観客に良いものを見せたいという気持ちが強いと思いますので。

 ネイサン・チェン 選手(米)は,今回のFS(Free Skating,フリースケーティング)では5種類の4回転を入れてきませんでしたね。次の米国大会でお披露目となるのでしょう。それでも4回転4本をさらっと飛んでいてそれはそれですごいですが,チェン 選手の注目点は技術点ではなく PCS(Program Component Score,演技構成点)の方です。昨季は80~85点あたりでしたが,今大会では88点台を出し,羽生 選手との差を詰めてきています。実はこっちのスコアの差が詰まってくることで,勝負の局面で 羽生 選手がミスできる回数が少なくなり,プレッシャーを強めることができます。チェン 選手は今回の PCS に手ごたえを感じていると思います。

 ミハイル・コリヤダ 選手(ロシア)は,FSで3度の転倒にもかかわらず185点台で,PCS は90点が見えてきました。完璧な演技ができれば,6強に続くFSの200点を達成できそうです。プレスリーという王道のメドレーが上滑りしないのは,コリヤダ 選手の表現力の賜物でしょうね。

 驚きだったのは,モリス・クヴィテラシビリ 選手(ジョージア)。長身なのにジャンプがスマートで,スケーティングも滑らかで醸し出す雰囲気も良い。FSで4回転ジャンプを3本入れて250点に乗せ5位に入りましたが,実は 田中刑事 選手の欠場で代わりに出場した選手だったと聞いてビックリ。ワンチャンスをモノにしましたね。そして,エテリ・トゥトベリーゼ コーチと聞いて納得。ロシアの メドベージェワ,ザギトワ 両選手を指導している名コーチですね。今大会がきっかけになって,一気にブレイクしそうな予感満載です。クヴィテラシビリ…覚えづらいけど覚えておきましょう。

 樋口新葉 選手,3位ですか…。やっぱりミスがあると2位にはなれないですね。SP(Short Program,ショートプログラム)での回転不足と,FSのサルコウジャンプのミス(トリプルがダブルに)がなければ,カロリーナ・コストナー 選手(イタリア)と入れ替わっていたかもしれません。コストナー 選手がFSはそれほど仕上がっていないと予想していたのですが,ここまでの仕上がりとは驚きでした。相手に恵まれなかったという見方もできますが,やはりミスしているようではダメとスケートの神様に諭されている感じがします。

 昨季,樋口 選手は,ジャンプとの両立に苦しみながら PCS の引き上げに取り組んでいましたが,その成果が今大会FSの PCS 68 点(満点の85%)という形で現れました。プログラムも 樋口 選手に合っていて,特にFSの「007 スカイフォール」は 樋口 選手にとてもマッチしていると思いますので,完璧な演技ができればトータル220点に届くと思います。だからこそ,得意なはずのジャンプでミスしている場合ではないのです。ピークは全日本選手権に持っていくとして,グランプリシリーズで8割の力でもジャンプを決める技術とメンタルが求められます。3位に終わりファイナル進出はかなり難しく,しかも次の中国大会はシリーズで最も厳しい対戦カードですが,優勝すれば一転してファイナル進出が確実になるので,強い意気込みで臨んでほしいです。

 それにしても コストナー 選手の仕上がりの早さに驚きました。次の日本大会を見なければ本当の評価はできませんが,今季は4年ぶりのグランプリシリーズ出場ということで,グランプリシリーズも含め出場する大会全てで最高の演技をするつもりで臨んでいるのかもしれません。1年以上の出場停止処分を経験したことから,スケートができる喜びが演技に表れている気がします。FSは,ジャンプの難易度が低く,3回転+3回転の連続ジャンプもなく 3Lz(3回転ルッツジャンプ)も入れていないのに,140点出せるのは驚異的です。スコア度外視で…などと失礼なコメントをプレビューで書きましたが,ファイナルでも コストナー 選手の円熟味が最高潮に達した演技を観ることができそうです。

 メドベージェワ 選手(ロシア)は,FSでは衣装を黒に変え,ジャパンオープンのときより良い演技だったように思います。五輪の重圧が襲うのかどうか,周囲が固唾を飲んで見守っていますが,おそらくあっさり乗り越えてしまうでしょう。トータル250点にどこまで迫れるかがこれからの注目点になると思います。

 坂本花織 選手は,FS冒頭の得意な 3F(3回転フリップジャンプ)で転倒という珍しい姿に,シニアならではの空気に気圧されているんだと感じました。五輪シーズンというだけでもすごい雰囲気で,さらに日本女子2枠という圧が加わり息苦しいかもしれません。五輪出場をめざす渦に巻き込まれるのではなく,彼女らしい明るさを忘れず,無心でこの2ヶ月を戦い抜いてほしいです。

 私のロシア勢一推しの ラジオノワ 選手は,樋口 選手に押し出され表彰台を逃しました。うーむ,やはりプログラムが本人に合っていないと感じてしまいますね。昨季までなら多彩なジャンルへの挑戦という意味でそういうプログラムでもいいと思うのですが,今季はもっと現代的なポップナンバーで勝負してほしかったなぁと思います。ソチ五輪は年齢制限ギリギリアウトだったので,平昌五輪への想いは強いと思いますが,今のままではロシア代表入りも簡単ではないでしょう。

 大いに期待していた 長洲未来 選手(米)ですが,ベストの仕上がりには至りませんでした。回転不足が多くのジャンプで見られましたが,3A(トリプルアクセル)は着氷できているので,回転不足が解消すればノッてくると思います。両親の母国である日本大会に来てくれるので,そこでの巻き返しに期待したいです。

 シングルの全体的な結果としては,表彰台はほぼ実力どおりで,大きな波乱はなかったと言えるでしょう。ロシア大会をこんなにちゃんと観たのは私は初めてでしたが,羽生 選手の傍らに立つ謎の少年,エキシビションのシンクロスケーティングの見事さ,などスケート大国ならではの光景もあり,五輪シーズンが本当に始まったんだなぁと感じられる大会だったと思います。

ロシア大会(ロステレコム杯,グランプリシリーズ第1戦)プレビュー

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 例年のロシア大会は,シリーズ中盤のややホッとする時期の開催でしたが,今シーズンはシリーズ開幕戦となりました。五輪シーズンの初戦というだけでも注目度が高いですが,いきなり絶対王者&女王をはじめ素晴らしいメンバーが集結しました。

◆男子シングル

 初戦から 羽生結弦 選手と ネイサン・チェン 選手(米)の直接対決が実現するとあって,あおりたく気持ちはよくわかりますが,おそらくハイレベルな点数は出ないでしょう。2人ともシリーズ2戦目が自国の大会なので,そこでは自国の観客に良い演技を魅せようと気合いを入れてくるでしょうから,ロシア大会がそこに向けた調整の場になるのはやむを得ません。私は,羽生 選手に関しては,FS(Free Skating,フリースケーティング)で4回転ジャンプ5本が(転倒しても出来栄えが悪くても)入るかどうか,チェン 選手に関しては,FSで4回転ジャンプの GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)が全てプラス評価にできるかどうかに注目したいと思います。

 チェン 選手は,シニア初年度の昨季,シーズン序盤からスタートダッシュをかけ,世界選手権で息切れしましたが,シーズン当初からアピールしなければならない立場だったので,これはやむを得ないこと。今季はその反省から,ロシア大会で全力を出すことはまずないでしょう。でも逆の見方をすれば,そのような状況で高得点を出せれば,本当に 羽生 選手を脅かす存在になってきます。スコアでの注目点は,チェン 選手の PCS(Program Component Score,演技構成点)。FSで87点以上,あるいは 羽生 選手と5点差以内になれば,いよいよ 羽生 選手の真の対抗馬と考えていいと思います。でも,前哨戦の滑りを見る限り,ここまでは到達しないと私は予想します。

 そんな2人の間に割って入ろうと狙っているのが コリヤダ 選手(ロシア)。自国の大会で気分が乗っているでしょうし,4Lz(4回転ルッツジャンプ)の出来栄えが素晴らしければ,2人の演技の出来次第では割って入る可能性があります。私は コリヤダ 選手のクールでいてコミカルな雰囲気が大好きなので,初戦で波乱を起こしてくれないかなと密かに期待しています。

 あと,若手では ヴァシリエフス 選手(ラトビア)に期待。コーチがかつての名選手 ランビエール 氏で,その滑りは正に ランビエール 流という雰囲気に満ちています。

 田中刑事 選手,ケガ欠場は残念…。次が2週間後の中国大会というのも運がないですね。焦らずに…と言われても,五輪シーズンのケガで焦らないなんて無理。事実上,全日本選手権一発勝負になりますので,それまでのメンタルコントロールが問われることになりそうです。

◆女子シングル

 自国大会に出場する絶対女王 メドベージェワ 選手(ロシア)。FSのプログラムを変更するというニュースが出ていますが,いったいどうなるでしょうか。おそらく,昨季か一昨季のプログラムを再演するのではないかと私は予想しています。個人的には一昨季のプログラムの方が好きで,それを現在の彼女がどう滑るのかを観てみたいところです。このFSの出来が,一番の注目点になるでしょうね。した影響がどう出るかと思われましたが,ジャパン・オープンを観る限り仕上がりは良さそうです。ただ,新プログラム「アンナ・カレーニナ」は,個人的には過去2シーズンと比べ物足りなさを感じています。グランプリシリーズに入りどこまで完成度を上げられるのかが見どころです。

《注記》 変更後が「アンナ・カレーニナ」だったとは知りませんでした。「アンナ・カレーニナ」から別のプログラムに変更すると勘違いしていました。ご指摘をいただき,修正いたしました。

 メドベージェワ 選手のFSプログラム変更というわずかな綻びを突いて,樋口新葉 選手はどこまで迫れるでしょうか。昨季の 樋口 選手は,四大陸選手権と世界選手権という重要な大会で良い成績を残せず,国別対抗戦でやっと理想的な演技を披露しました。国別対抗戦は日本開催で,全日本選手権でも表彰台に上がり続けていることから,樋口 選手は国内で強く海外で力を発揮できない,いわゆる内弁慶タイプかもしれません。今季,イタリアのロンバルディア杯では210点超えを見せてくれましたが,あくまでも前哨戦であり,グランプリシリーズの海外の大会で同等の点数を出せるかどうかが,今シーズンを占う重要なポイントになると私は見ています。でも,この大会に入れ込み過ぎてしまうと,全日本選手権や平昌五輪まで持ちませんので,8割の力でハイレベルのスコアを出すという難しいミッションになります。

 実は対戦カードが一番不運なのが 樋口 選手です。次に出場する中国大会は大激戦で,ベストな演技でも3位に終わる可能性があるので,グランプリファイナルに進むためには,ロシア大会で2位以内を獲ることが絶対条件と言えます。普通に演技すれば2位になりますが,少し失敗すればたちまち他の選手の割り込みを許してしまうことになるでしょう。2位を獲れば,振れ幅が大きかった昨季から進化し,安定感を得る大きなきっかけになると思います。

 今季からシニア参戦の 坂本花織 選手は,応援したくなる雰囲気をたたえる選手の1人。ジャンプをはじめ演技のトータルバランスが素晴らしいです。同門の 三原舞依 選手の昨季の急成長に大いに刺激を受け,今季は自分がその立場になりたいと思っているでしょうし,本田真凛,白岩優奈 らシニアデビュー組に負けなくない気持ちもあるでしょう。モチベーションがとても高いと思いますので,最高の演技をして表彰台に乗ってほしいですね。坂本 選手が表彰台に乗れば,日本女子シングルはさらにヒートアップしてくると思います。

 個人的にロシア勢の中で一推しの ラジオノワ 選手(ロシア)ですが,昨季は失速し,世界選手権のロシア代表にさえ入れませんでした。昨季のプログラムは,日本でもおなじみの モロゾフ 氏振付の王道路線でしたが,彼女の良さが引き出せていなかったと私は感じました。私は4年前,福岡のグランプリファイナルを生観戦したのですが,そのとき観た ラジオノワ 選手の躍動感が素晴らしくて,必ずこの選手は世界を制すると今でも思っています。五輪シーズンの今季,良きプログラムに巡り合えたのかをチェックしたいと思います。

 今季のダークホースになりそうなのが,長洲未来 選手(米)。今になって 3A(トリプルアクセルジャンプ)を組み込む挑戦も素晴らしいですが,今季の彼女は上半身の筋肉が素人目にもとても美しく感じられ,またスケーティングも今までより格段に良くなっているように見えます。なので,近年になく好調なのではないかと私は予想しています。3A が綺麗に決まれば,坂本 選手や ラジオノワ 選手を抑えて表彰台に乗る可能性がかなりあると思います。

 コストナー 選手(イタリア)は,もう出場してくれるだけで眼福。スコアは二の次で,とにかくスケーティングを堪能しましょう。あと,個人的に応援しているのが トゥルシンバエワ 選手(カザフスタン)。羽生 選手や フェルナンデス 選手(スペイン)と同じ オーサー コーチの門下生で,小さい身体ながら強い意志を感じる演技は,宮原知子 選手とはまた違うタイプの修道女系のスケーターなので,いつも姿勢を正して観ています。キス&クライでめったに笑顔を見せないので,良い演技をして笑顔を見せてほしいです。

グランプリファイナル2015:総評その2

総評その1から続く)

メドベージェワ (RUS),シニアデビューシーズンに完全勝利も,本番はこれから

 女子シングルを優勝した メドベージェワ 選手。緊張から若干のミスが出て僅差で表彰台に届かず,という私の予想はあっさり覆され,ファイナルでも堂々とした演技で合計220点超えという驚異的な得点。そういえば,メドベージェワ 選手も 宇野 選手と同じく,昨年のジュニアファイナルで今年の会場を経験済み,という点を忘れていました。ジャンプの確実性が高いだけでなく,手上げジャンプにするなど工夫が見られ,全体の芸術性もシニアデビューとは思えない完成度で,2013-14シーズンの リプニツカヤ 選手(RUS)を彷彿とさせる抒情性も持ち合わせ,優勝は納得。ただ,演技構成点(PCS: Program Component Score)が 宮原 選手よりはるかに高いのはどうなのかな?と思うところもあります。PCS は若い人にはあまり高くしないのがこれまでの通例でしたが,今年のジャッジは,若くても質の高い演技には惜しみなく点数を出そうという雰囲気をなんとなく感じます。メドベージェワ 選手もそうですし,宇野 選手も PCS の評価がグランプリファイナルで高くなりました。

 メドベージェワ 選手はシニアデビューシーズンなので,シーズン前半のグランプリシリーズからアピールしたいという思いがあったでしょうし,それが良い成績にもつながりました。ただ,シーズンの本当の勝負はこれからです。ロシア勢は今後,ロシア選手権 → ヨーロッパ選手権 → 世界選手権 とビッグマッチが続いていきます。選手は皆ここに照準を合わせてきますし,グランプリシリーズの疲れも出てくる可能性がありますので,このまま好成績が続くかどうかは予断を許しません。シニア1年目に簡単に勝たせるわけにはいかないと,先輩スケーターが手ぐすねを引いて待っていると思います。それでも,昨シーズンは,トゥクタミシェワ 選手や ラジオノワ 選手(共にRUS)がグランプリファイナルから世界選手権までずっと表彰台に乗り続けたという事実がありますし,逆にシニアデビューなので怖いもの知らずの勢いでずっと勝ち続ける可能性も大いにあります。いずれにせよ,今シーズンは メドベージェワ 選手が話題の中心になることは間違いないでしょう。

ラジオノワ (RUS),ロシア選手権から逆襲だ

 今シーズンは様々な不安要因があったようなので,それを考えれば合計200点超えで表彰台(それも2年連続)という結果は,勝負強さの表れといえると思います。SP,FS 共に,髙橋大輔 選手や 安藤美姫 選手のコーチだったことで知られるモロゾフ氏(RUS)の振り付けによって,全体を通して表現しようという意欲が伝わってくる演技でした。たた,思いのほか PCS が上がってこないのが(個人的には不当に低い評価だと感じますが)気になります。ラジオノワ 選手はエネルギッシュさが他の選手と段違いなので,今回のオーソドックスなプログラムだと,表現しようと気負いすぎているというか,動きが全体になじんでこない,という印象を持たれているのかもしれません。ただ,ラジオノワ 選手はとても器用な面もあるので,滑りこんでいくと全体として調和がとれた表現になってくるという期待も持てます。

 今シーズンは ラジオノワ 選手のシーズンになると私は思っているのですが,シーズン前半は後輩の メドベージェワ 選手に主役を奪われました。ただ,ラジオノワ 選手は昨シーズン,シニアでの1年間を経験しており,今後来る勝負どころを心得ていると思います。ロシア選手権の女子シングルは,ラジオノワメドベージェワ の他に,トリプルアクセルジャンプを飛び貫録オーラが凄い トゥクタミシェワ,2年前の生観戦の印象が強く個人的に復活を切望する リプニツカヤ,グランプリシリーズ不調も潜在能力は高い ポゴリラヤ,五輪女王で今シーズン復帰した ソトニコワ,と思いつくだけでも6選手いるというとんでもない大激戦。それでも,初のロシア選手権とヨーロッパ選手権の優勝に向けて,ラジオノワ 選手が輝きを放つときが来ると思います。

浅田真央,復帰シーズンで194点は見事,自分を追い込みすぎるな

 グランプリファイナルで最下位(6位)に沈んだことで,今までの復帰歓迎ムードから一転「やはり復帰は厳しかったか」「引退への序章か」という論調が出てきていますが,こういうマスコミには閉口してしまいますね。1年間の休養からの復帰シーズンに,ファイナルに出るだけでも十分凄いことで,合計194点というのは2年前なら優勝している点数(下記注)なのです。浅田 選手が休養している間に,女子のレベルが急速に上がったわけで,浅田 選手を悪く言うのは全く的外れです。

(注) 2年前=2013年のグランプリファイナルは福岡で開催(私は生観戦しました)。このとき 浅田 選手が204点で優勝。2位は リプニツカヤ 選手(RUS) で192点。

 今シーズン,SP は最高難度の構成,FS はソチ五輪と同じ8トリプル(3回転ジャンプを8回入れること)に挑んでいますが,復帰のシーズンでいきなり挑戦すること自体,無理があるという声は当初からありました。しかし,最初からこのプログラムを据えた上で,平昌五輪まで3年をかけて仕上げていくという計画で臨むべきでしょうし,そうであるならば今シーズンは焦る必要はありません。世界選手権に出場するために,全日本選手権では FS で技の難度を落とすのではないかという推測も出始めています。落とすとなると,冒頭のトリプルアクセルジャンプ(3A)をダブルアクセルにするか,その次のフリップ→ループの3回転連続ジャンプ(3F+3Lo)のセカンドジャンプをダブルにする(3F+2Lo)かだと思いますが,私はこの選択はすべきでないと考えます。こうするならシーズン最初からこの構成で臨むべきですし,浅田 選手本人が難度を落としたプログラム構成で心から納得するとは思えないからです。

 浅田 選手の SP は,3A → 3F+3Lo → 3Lz(トリプルルッツジャンプ)と高難度ジャンプが続く構成で,FS の前半も同じ流れです。今シーズン,この3つが揃って成功したことはまだありませんが,個々のジャンプについては今シーズンのどこかでは成功しています。3F+3Lo はセカンドジャンプが回転不足になりがちなのですが,回転不足なしで成功したこともあります。3Lz は 浅田 選手が今まで苦手にしていたジャンプで,エッジエラー(Lz は軸足に関して体の外側に体重をかけるのが正しいが,体の内側や中心に体重をかけてしまうこと)をとられがちなのですが,グランプリファイナルの FS ではエッジエラーなしで成功させています。滑り慣れてきて,大会でのコンディションが整えば,これらのジャンプが揃って成功する可能性はそれほど低いものではないと思います。逆に言うと,技の難度を落としてしまうと,これらのジャンプが揃って成功する機会を自ら失うことになるのです。

 今シーズンの世界選手権に出場したい思いは強いでしょうし,周囲の期待も感じていると思います。しかし,そのために技の難度を落とすことを,周囲が望んでいるとは思えませんし,もとより本人が一番それを嫌悪するはずです。浅田 選手がこの構成で演じたいと心から思っているのなら,周囲の期待や結果は気にせず,自分自身のスケートのためにこの構成を貫いてほしいと思います。周囲の期待に応えようとする思いは,浅田 選手にとってスケートの原動力になっていると思いますが,それが強すぎると過剰なプレッシャーとなってしまうようです。今週末の全日本選手権では,復帰のシーズンと日本のファンの歓声をかみしめながら,自分のために演技してほしいと思います。そのような無欲無心で演じれば,きっと演技が安定して,得点も付いてくるのではないかと思います。

グランプリファイナル2015は超ハイレベル

 週末に開催されるグランプリファイナルは,10月から始まったグランプリシリーズ6戦の上位選手が出場するので,今シーズン好調な選手が集いレベルの高い演技が観られるという点で,私が大好きな大会です。今年のシングルは,男女ともベストメンバーが集まり,近年にないハイレベルな戦いになりそうです。シングルの出場選手を紹介します。(写真は,テレビ朝日のバナーから拝借しました/笑)

男子シングル】


GPF_Men
(左から,ジン,フェルナンデス,チャン,村上,宇野,羽生 の各選手)

羽生結弦

 先々週のNHK杯で歴代最高点を叩き出し,フィギュアスケート界を次のステージに引き上げました。史上初の3連覇を狙うプレッシャーや,NHK杯の疲労を心配する声がありますが,全然問題ないでしょう。昨年のファイナルを思い出してください。中国でのケガが癒え切らずNHK杯で表彰台を逃してから,わずか2週間で華麗なる復活を遂げ,そのときの神々しい姿が今でも目に焼き付いています。それを思えば,今年は昨年より状態が良いですし,今回は得点更新を狙わず優勝だけを考えて臨めば,かえって良い演技ができてあっさり得点更新となる可能性はけっこうあると思います。

・・・とここまで木曜日に書いたら,ショートプログラム(SP: Short Program)からやってくれたようですね! こうなると合計 330 点という無茶苦茶な期待をしてしまいますね。記録は二の次で勝ってくれさえすればよいものを…どこまで観る者をワクワクさせてくれるのでしょう,羽生結弦 っていう人は。

宇野昌磨

 とにかく今年は,SP,フリースケーティング(FS: Free Skating),共にプログラムが秀逸! 特に FS は後半のゾクゾク感がたまらないです。本来は,冒頭で4回転からの連続ジャンプを飛んで,後半の4回転は単独らしいのですが,冒頭が連続にならなくても,後半を連続ジャンプにして挽回するのが決まると,そこから最後のちょっとトリッキーな3連続ジャンプまで,鳥肌が立ちまくります。めざせ表彰台!

村上大介

 スケーティングが柔らかくて,観ていて癒されます。特に FS の YOSHIKI (X JAPAN) 作曲の楽曲は,フィギュア用に書き下ろされたのかと思うほど。演技以外では,アメリカに住んでいただけあって英語はネイティブなので,キスアンドクライで キャロル コーチとの会話がテレビの音声に乗るかどうかも楽しみ。同コーチの同門生である ゴールド 選手も出場していますし,リラックスしてミスなく演技すれば,出場選手全員が合計250点以上,という超ハイレベルな記録が観られるかも。

ハビエル・フェルナンデス (ESP)

 グランプリファイナルが2年連続で母国開催なので,今年こそ優勝したい気持ちがあるでしょうけど,オーサー コーチの同門生である 羽生 選手が無敵状態なので,勝負より演技の内容にこだわりたいところでしょう。SP も FS も,ジャンプやスピンなどの技術要素の間の "つなぎ" が満載で,最初から最後まで楽しめるのが見どころ。特に SP の「マラゲーニャ」は,本場スペイン人の フェルナンデス 選手が演じるとこんなに凄いのか,と感動必至です。

パトリック・チャン (CAN)

 SP の結果だけ見ると何が起きたのか心配になってしまいますが…もはや,チャン 選手は点数云々ではないです。羽生 選手と同じような柔らかさや優しさをたたえつつ,強さや緩急も併せ持つ究極のスケーティングの素晴らしさを堪能しましょう。

ボーヤン・ジン (CHN)

 私は2年前のグランプリファイナルを福岡で生観戦したのですが,そのときジュニアファイナルに出場した ジン 選手は,ただ1人 FS で3本の4回転ジャンプを完璧に飛んでいてとても印象に残っていたので,やっと出てきてくれたという感じですが,まさか4回転ルッツジャンプ(4Lz)を完全にものにしているとは驚きでした。SP と FS の冒頭に飛ぶ,高さも幅もすごい完璧な 4Lz を観られるだけでも価値があります。今度こそ,史上初 SP & FS 合計6本の4回転ジャンプを成功させて,歴史に名を刻んでほしいです。

女子シングル】


GPF_Women
(左から,浅田,宮原,ゴールド,ラジオノワ,メドベージェワ,ワグナー の各選手)

宮原知子

 私の中でも株急上昇中! 良い演技をしたい!というオーラが全身から発せられ,それでも気合先行にならず緻密な演技が紡げるところが素晴らしいです。NHK杯で 浅田 選手を破って優勝したことがとてつもない自信になって,さらに一皮むけそうな予感。ファイナル表彰台の確率はかなり高いです。演技全体が見どころですが,中でも 宮原 選手しかやらない逆回転スピンは,観ていてなんだか不思議な気分になれます。

浅田真央

 ファイナル独特の高揚感が 浅田 選手に力をくれることを祈りたいです。ミスなく演技すれば間違いなく優勝という高難度プログラムですが,復帰シーズンの疲労感はかなりのものだと思うので,あまり結果にこだわらず,ファイナルという場を楽しんで滑ってほしいですね。見どころは,トリプルアクセルジャンプよりもむしろ,その後に飛ぶフリップ→ループの3回転連続ジャンプ(3F+3Lo)。SP,FS 共に冒頭からこの2つのジャンプが続くので,これらのジャンプが完璧に成功すると後のジャンプにも連鎖して超高得点が出る可能性も。

エレーナ・ラジオノワ (RUS)

 今シーズンは ラジオノワ 選手の年になるのでは?と私は予測しています。ケガ明けの中国大会は今一つでしたが,母国ロシア大会で合計 210 点超えの完全復調。ロシア大会で FS を終えたときの涙に,追い込まれていた彼女の心情(ロシア女子フィギュア界のサバイバル)が垣間見えてとても印象的でした。今シーズンは比較的メロディアスな曲でオーソドックスな表現力をアピールする戦略っぽいですが,ヒップホップから王道バラードまでこなすジャンルの多彩さ,強さと柔らかさ,迫力と繊細さ,あらゆる表現力を発揮できる究極のオールラウンダー。2年前の福岡で生観戦したとき,エキシビションでその多彩さに圧倒されました。17歳にして3度目のファイナル出場で,貫録さえ感じられるスケートは,演技全体が必見です。

エフゲーニャ・メドベージェワ (RUS)

 2年前の福岡で,ジュニアファイナルに出場していたときは,綺麗なスケートはするもののそれほど印象には残りませんでした。ところが,今シーズンのシニア参戦初戦のアメリカ大会は衝撃的なデビューでした。SP の3本のジャンプを全て後半に持ってくるのは,まぁわかる作戦なのですが,その全てが手上げジャンプでしかも着氷が完璧,ジャンプ以外のスピンやつなぎもとても綺麗。迫力 vs 綺麗さ という軸で見ると,ロシア勢どころか世界的に見ても「綺麗さ」の最右翼にいると思います。細身で長身なので,とにかく綺麗なスケートを堪能できます。FS のミスがなければ優勝争いに加わってきます。

グレイシー・ゴールド (USA)

 ジャンプ,スピン,スケーティング,ルックス,どれをとっても華やかさが際立っています。FS はソチ五輪の 町田 選手でおなじみの「火の鳥」と,楽曲も華やか。正に華を添える存在ですが,今シーズン絶好調で点数も出ますので,彼女も優勝争いに加わってくるでしょう。

アシュリー・ワグナー (USA)

 SP はダンサブル,FS は鉄板の「ムーラン・ルージュ」と,アシュリー色全開のプログラム。点数度外視でただただ観ていたい存在ですが,今シーズンついに200点超えを果たすなど,休養シーズンを取らずに成長し続ける姿には感服。エキシビションでも通用するような SP のダンス満載の演技は観ていて本当に楽しいです。

【順位予想】

  • 男子: 1. 羽生 2. フェルナンデス 3. 宇野
  • 女子: 1. ラジオノワ 2. 宮原 3. ゴールド

 女子は予想が難しすぎます(笑)。おそらく上位4選手は合計点が 200~210 点の中にひしめく大混戦になると予想します。浅田 選手と ワグナー 選手が好調なら全員200点超えというすごいことが起きるかも。

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