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ヴィンセント・ジョウ

ジャンプ戦略考察:男子シングル編

 前回と前々回は,フィギュアスケート女子シングル選手のFS(Free Skating,フリースケーティング)のジャンプ構成をチェックしました。今回は男子シングルの有力選手をチェックしていきます。まずは 羽生結弦 選手から。

figureSkateScoreHanyu

 4回転は 4Lo, 4S, 4T×2本の計4本。今シーズンから「4回転2本飛べるのは1種類」というルールになりましたので,優勝争いに必要な4回転の種類・本数は,3種類3本,3種類4本,4種類4本あたりになるでしょう。4種類5本も可能性としてはありますが,今シーズンは様々なルール改定があったシーズンなので,そこまで無理してくる選手はいないようです。

 4回転の中でも 羽生 選手の目玉は 4T+3Aシークエンスジャンプでしょう。シークエンスジャンプとは,連続ジャンプの第2ジャンプとして A (アクセルジャンプ)を付けるものです。第1ジャンプを右脚(リバースジャンパーは左脚)で着氷した後,後向きから前向きに体の向きを変える際に軸足を左脚(リバースジャンパーは右脚)に変え,すぐに A を飛びます。軸足を変える動作が入るので,連続ジャンプではなくシークエンスジャンプという扱いになり,基礎点が各ジャンプの基礎点合計の 0.8 倍になります。

 +2A のシークエンスジャンプは女子ではたまに見かけますが,+3A のシークエンスジャンプは史上初だと思います。点数が 0.8 倍になるのがもったいないので,プログラムに組み込む選手はほとんどいませんし,普通に飛ぶのさえ難しい 3A を第2ジャンプに持ってくることは,まずあり得ません。これは 3A高い完成度で飛ぶことができ,新しいことに挑戦し続ける 羽生 選手らしい選択だと思います。今シーズンは,勝負よりも自分が演じたいことを優先しているそうで,だからこそ点数面では損なシークエンスジャンプでも入れたかったのでしょう。実は,羽生 選手は今までのエキシビションやアイスショーの中で,4T+3A+3A というものすごいジャンプをたびたび披露しており,2013年のグランプリファイナル(福岡)を現地観戦した際にこのジャンプを観たときは,4回転が3本続いたのかと思うほどの大迫力でした。なので,4T+3A はチャレンジというよりは,プログラムの流れの中にどう入れていくかが 羽生 選手にとっての課題だと思います。

 このシークエンスジャンプも含め,3つの連続ジャンプを全てボーナスタイムに入れているのもすごいです。連続ジャンプを演技の後の方に持ってくると,失敗したときリカバーできないというリスクがあります。羽生 選手はこの構成を成功させる自信があるでしょうし,失敗できないという緊張感が逆に高い完成度につながる,という気持ちもあると思います。演技時間の前半は4回転,後半は連続ジャンプでずっと見どころが続くプログラムになっていると思います。

 ジャンプ構成表をよく見ると,3Lz を入れていないことがわかります。羽生 選手は 4Lz も成功させていますから Lz が苦手ということはありません。昨シーズン,4Lz の練習でケガをしましたので,今シーズンは無理をしなかったと見るべきでしょう。ケガの快復が順調なら,3Lo の代わりに 3Lz を入れてくるかもしれません。

 続いては,宇野昌磨 選手のジャンプ構成です。

figureSkateScoreUno

 4回転は 羽生 選手同様の3種類4本(4F,4S,4T×2本)。今シーズンはケガを抱えていたため,4S を入れない試合も多かったですが,世界選手権では入れてくると思います。公式戦成功世界初の 4F が武器ですが,4T が安定しているので2本入れ,4F は1本を確実に決める,という作戦のようです。個人的には 4F からの連続ジャンプや,ボーナスタイムの 4F も見てみたいところです。

 この表では,F が得意な 宇野 選手が 3F を入れてないように見えますが,3F は連続ジャンプの +1Eu+3F で使っています。これは +1Eu+3S の亜種で,得意だからこそ連続ジャンプの第3ジャンプに持ってきているのです。ここで使わずに済んだ 3S は 3S+3T で使っていますが,これが最後のジャンプなので,この連続ジャンプも鍵を握ります。

 しかしながら,+1Eu+3F を除けば,以下に示すように実はかなり堅実な構成です。

  • 4回転→3回転の連続ジャンプを入れていない (宇野 選手は 4T+2T)
  • ボーナスタイムは全て第1ジャンプが3回転
  • 3Lz や 3Lo を避け 3S を入れている

 ジャンプでは失敗リスクを抑えて GOE (Grade Of Execution,出来ばえ点)を高めて勝負する戦略であることがうかがえます。とはいえ,ジュニア時代 3A に苦労していたことを思うと,3A がこれだけの得点源になっていることは素晴らしいです。3A をボーナスタイムに置けるからこそ,4回転を先にこなすことで失敗のリスクを抑えることができるのです。

 最後は,羽生,宇野 両選手と優勝争いをする米国の2選手を見てみましょう。

figureSkateScoreChen

figureSkateScoreZhou

 両選手とも 4Lz4F を両方組み込み,羽生,宇野 両選手より高い基礎点を持っています。ネイサン・チェン 選手は,あまり得意ではない 3A を1本にしているものの,連続ジャンプに基礎点が高い +3T 2本と +1Eu+3S を使い,これら3回を全てボーナスタイムに持ってくることでスコアを高めています。一流の男子選手は 4T と 3A を2本ずつ入れるのが定石ですが,チェン 選手は 3A 1本という弱みを +3T を2本入れることでカバーしているわけです。4回転ジャンプの安定感は抜群で,基礎点が高い 4Lz,4F に始まり,4T と +3T が2本ずつという,3A 1本パターンの王道とも言える,見事なジャンプ構成だと思います。

 チェン 選手を上回る基礎点を持ち,4回転を4種類入れているのが ヴィンセント・ジョウ 選手です。チェン 選手を超えている要因は,3A を2本入れていることと,3連続ジャンプに 宇野 選手と同じ +1Eu+3F を使っていることです。点数の面でもったいないのは 3A+2T で,これを 3A+3T にすれば基礎点が80点を超える計算になります。ただ,4回転4本に 3A も2本となると,+3T を2本入れるのは体力的にかなり厳しいので,やむを得ないところでしょう。目玉は 4Lz+3T ですね。実際にプログラムに組み込まれるジャンプの中で最も基礎点が高いので,これが成功するとスコアの面でも気持ちの面でも大きなプラスになる連続ジャンプです。ジョウ 選手は回転不足が多いので,回転不足を出さないことが鍵になりますが,この基礎点の高さが脅威であることは確かです。

 上述した4選手と ボーヤン・ジン 選手(金博洋,中国)が優勝および表彰台争いを繰り広げることになると思います。全てのジャンプが良い出来であれば,皆FSで 200 点を取る力があります。今シーズン初の 200 点を誰が記録するのかも楽しみです。

平昌五輪 男子シングル レポート 【スポーツ雑誌風】

 SP(Short Program,ショートプログラム)を終え,羽生結弦 が1位,宇野昌磨 が3位という好位置につけ,羽生 2連覇,日本勢1&2フィニッシュへの期待が否が応でも高まる中,FS(Free Skating,フリースケーティング)が始まった。

 第1グループから,ヴァシリエフス(ラトビア),ハン・ヤン(閻涵,中国),田中刑事 など,見応えあるメンバーが並ぶ。彼らが第1グループとは信じ難いが,それだけかつてないレベルの試合になった。世界選手権や五輪では,国別の出場枠(1ヶ国あたり最大3名)が設けられ,その分,多くの国の選手が出場する。競技普及の観点では大切なことだが,演技がトップレベルより見劣りする選手の出場が多くなってしまうのは,やむを得ないことだ。しかし,平昌五輪のFSに進出した24名は,誰もが250点以上出す力がある実力者揃いだった。この点は,ソチ五輪から大きく進化した点の1つだ。

 第2グループには,早くも ネイサン・チェン(米)が登場。団体戦で,米国のメダル獲得を確かなものにするべく,男子SPに起用されたが,全てのジャンプを失敗し失意の底に沈んだ。1週間後,勝負の個人戦SP。団体戦では冒頭のジャンプに 4F を選択したが,個人戦ではより難度の高い 4Lz に挑んだ。SP冒頭のジャンプが チェン の命運を左右すると思いながら観ていたが,4Lz を転倒しその選択は凶となった。冒頭のジャンプを失敗したことで,団体戦の悪夢が頭をもたげ,もう失敗が許されない極度の重圧に襲われたことだろう。SPでも全てのジャンプを失敗し,トップの 羽生 に29点もの差が生じてしまった。

 この状況に,多くの日本人の方々が,4年前のソチ五輪の 浅田真央 選手の姿を重ねたに違いない。あの時,浅田 選手のSPとFSは中1日空いていた。だが,チェン はSPから連日のFS。気持ちの切り替えが極めて難しい状況だったはずだ。しかし,人間は追い込まれると恐るべき力を発揮することがある。メダルの重圧から解放され,失うものがなくなった チェン は,8回のジャンプのうち4回転を6本入れ,見事に5本を成功させた。国内では「4回転5本成功」という報道がほとんどだが,失敗した1本も着氷が乱れただけで回転不足にはならなかったので,4回転ジャンプとして認定されており「4回転6本認定」でもあったのだ。6本が「認定」されたのは,公式記録上初めてではないかと思う。

 4回転6本は,金メダルへの秘策の選択肢として用意されていたとは思うが,ハイリスクであり採用は難しいと私は予想していた。メダルが絶望的になったことで爪痕を残すべく挑戦し,結果は 215 点台でFS自己ベストFSだけなら全選手中トップのスコアを記録した。トータルは 297 点となり,上位者が崩れればメダルの可能性が残るスコアだった。正に,ソチ五輪の 浅田真央 選手の復活劇を彷彿とさせる,地獄からの生還だった。ジャンプの成功に意識が強かったためか,出来ばえ点や演技構成点は チェン の好調時には及ばなかったが,SP時点の絶望を思えば,本当に素晴らしいパフォーマンスだった。

 続く第3グループ。私が注目したのは,ヴィンセント・ジョウ(米)と ミハイル・コリヤダ(ロシア)の2人。ヴィンセント・ジョウ はFSの基礎点が全選手中最も高い予定であることを本ブログで紹介したが,予想した構成どおり 4Lz に2回挑戦し,冒頭の 4Lz+3T を綺麗に成功,演技時間後半冒頭の単独 4Lz も良いジャンプだったが回転不足と判定された。結果として,基礎点合計トップは4回転ジャンプを6本入れた ネイサン・チェン に譲ったものの,4回転4種類5本を着氷し技術点だけで 110 点以上を稼いだ。今シーズンがシニアデビューであり,まだジャンプだけという印象の選手ではあるが,この若さで五輪で6位入賞を果たしたことは貴重な経験だ。今後トップレベルに到達するのを楽しみにしたい。

 ミハイル・コリヤダ は,団体戦のSPでまさかの8位に終わり,ロシアの団体戦が目標の金メダルではなく銀メダルに終わる主因となってしまった。さらにFSにも動員されたため,個人戦には強い疲労を抱えて臨まざるを得なかった。団体戦と個人戦の4回の演技全てに組み込んだ 4Lz は結局一度も成功せず,他のジャンプにもミスが出て,ベストな演技はできなかった。団体戦SPのショックから立ち直れないまま個人戦も終わってしまった印象で,8位に入賞したものの本当の実力はこんなものではない。今後,今回の五輪の苦い経験をどう強さに変えていくか,注目していきたい。

 最終グループ。SP上位4選手で最初に登場したのは,SP4位の ボーヤン・ジン(金博洋,中国)。大舞台に強く,直近の2年連続で世界選手権3位,1月の四大陸選手権に優勝して五輪を迎えた。その強さがSPでも発揮され,高さも幅もある 4Lz+3T を完璧に決め,自己ベストの 103 点台を記録した。ノーミスならばメダルが大きく近づくFS。演技時間前半は,3つのジャンプが完璧。後半は安定している 4T,得意な 3A へと続く流れ。これはノーミスの気配濃厚,そう思った後半冒頭の 4T でまさかの転倒。ジン の 4T 転倒は珍しく,五輪の重圧は大舞台に強い ジン にも及んだ。しかし,直後の同じ 4T をきちんと連続ジャンプにし,残りのジャンプも決めた。転倒を1回に留め,FS 194 点台,トータル 297 点台としたが,300 点には及ばず,上位3選手に重圧をかけるには至らなかった。それでも,シーズン途中にはケガで 4Lz が飛べない時期もあったことを思えば,メダルの可能性を残す演技は見事だった。

 そしていよいよ,SP上位3選手の先陣として 羽生結弦 が氷上へ。SPは,7つの要素(ジャンプ,スピン,ステップ)全ての GOE(Grade Of Execution,出来ばえ)評価が審判全員2以上という,非常に高い完成度でスコアが 111 点台に乗った。ネイサン・チェン が脱落し,FSで高いスコアを持つ 宇野昌磨 と7点差がついたことから,4Lo を回避しても大丈夫と判断したのだろう。FSは4回転2種類4本(4S,4T 2本ずつ)で臨んだ。演技前半の3本のジャンプは申し分なく,特に 4T は,全く無理のない回転からの柔らかい着氷で,完璧だった。さらに演技時間後半冒頭の 4S+3T も見事に成功。パーフェクト演技への期待感が一気に膨らんだが,次の 4T で着氷が乱れた。4T は前半が単独ジャンプだったので,ここでは連続ジャンプにする必要があったのだが,それができず減点(同種単独ジャンプ2本目は基礎点3割減)となった。

 しかし,次の 3A が 羽生 を救った。予定では 3A+2T だったが,4T に付ける予定だった連続ジャンプ +1Lo+3S をリカバーして 3A+1Lo+3S としたのだ。3A に絶対の自信を持つ 羽生 だからこそできるリカバープランを遂行し,ミスを最小限に食い止めた。そして,4ヶ月ぶりの実戦で心配された,FSを通し切る力が問われる最後の 3Lz では,かろうじて転倒は免れたものの着氷が大きく乱れた。羽生は 4Lz の練習でケガをしており,ルッツジャンプの不安がここで出てしまった。3A で +1Lo+3S をリカバーしたことで残っていた連続ジャンプ +2T を付けることもできなかった。

 それでも,演技を終えた 羽生 は,満足感に包まれていたようだった。「勝ったー!」(本人談)と叫び,右足や氷に手を当て,感謝の言葉を発した。着氷の乱れが2回あり,単独 4T の重複による減点と,+2T が付けられないミスはあったが,転倒しそうなところをこらえ,氷に手を付くこともなかった。FS 206 点台,トータル 317 点台は 羽生 の自己ベストより10点以上低いが,ソチ五輪よりははるかに良い内容で,しかもケガ明け久々の実戦であることを考えれば,十分に納得できる演技とスコアだった。

 これで,残る2人が金メダルに必要なFSのスコアは,ハビエル・フェルナンデス(スペイン)は 210 点台,宇野昌磨 は 213 点台となった。共に不可能ではないものの,今シーズンの調子を考えるとかなりハードルが高いスコアである。続いて登場した フェルナンデス は,普段より躍動感が抑え気味に見えたが,完璧な 4T から始まり,次の 4S でわずかに着氷が乱れ +3T を予定していた連続ジャンプが +2T になっても,次の 3A に +3T を付けてリカバーに成功し,金メダルが微笑みかけた。だが演技時間後半冒頭,4S の予定が2回転になり,金メダルがすり抜けていった。しかしミスはこれだけで,ジャンプの着氷の乱れもなく,プログラム全体の完成度は素晴らしかった。ジャンプの難度が4回転2種類3本と低めで,しかもそのうち1本が抜けてしまったので,FSのスコアが200点に届かずトータル 305 点台だったが,今シーズンベストスコアを出し フェルナンデス のメダルが確定した。今シーズンはやや低調で,メダル獲得が危うい状況だったことを思えば,ピーキングに長けた フェルナンデス の実力が発揮された結果だった。

 この時点で,日本選手の金メダルは決まった。それが 羽生 なのか 宇野 なのか。最終滑走の 宇野昌磨 は,他の選手の演技を全て観ていて,完璧な演技なら金メダルを獲れると思いながら演技に臨んだそうだ。冒頭の 4Lo は成否相半ばするジャンプ,これを決めて波に乗りたかったが,あえなく転倒。この時点で金メダルはほぼなくなり,宇野 は「笑えてきた」(本人談)。冒頭から転ぶなんてという苦笑いなのか,リラックスするための自己防衛反応なのか,いずれにせよ,この先ミスすればメダルも危なくなる状況で,笑みをたたえられる精神力は尋常ではない。ここから 宇野 の真骨頂である切り替えと粘り強さがいかんなく発揮されていく。

 転倒直後,世界で初めて 宇野 が成功させた,自身の代名詞ジャンプ 4F をきっちり決めて持ち直す。演技時間後半の 3A → 4T 2本 → 連続ジャンプ2回 という流れは,華麗だが難度が極めて高く,しかも最後の2回の連続ジャンプは失敗するとリカバーできない,緊張感の高い構成だ。2本の 4T。1本目は着氷が乱れたものの強引に +2T の連続ジャンプを付けた。これで2本目は単独ジャンプでよくなり,これを綺麗に決めた。続く 3A+1Lo+3F は,ほとんどの選手が3番目を 3S にするところ,フリップジャンプに絶対の自信を持つ 宇野 が 3S に替えて 3F を付ける3連続ジャンプ。そして最後に 3S+3T という +3T の連続ジャンプ。高難度の連続ジャンプを最後に2つ並べ,それらを見事に決めたことで,会場の盛り上がりは最高潮に達する。冒頭の転倒を忘れさせる安定した演技で,最終滑走を締め括った。

 FSの内容では 宇野 が フェルナンデス を上回ったことは確実。あとはSPの点数差 3.41 以上の差を付けられたか? スコア発表。FS 202 点台,トータル 306 点台。宇野 がフェルナンデス を上回った! この瞬間,羽生結弦 の五輪2連覇,羽生結弦 & 宇野昌磨 による日本勢1&2フィニッシュが現実となった

 全てが決まり,羽生結弦 は両手で顔を覆い,万感の涙を流した。同門生の フェルナンデス も銅メダルを獲得し,お互いの健闘を称え合うと,羽生 はまた涙。2人の万感の思いに接しても,実感が湧かずたたずむ 宇野。3選手の姿は,平昌五輪に全てを注ぎ込み,戦い終えた充実感に満ちていた。 (選手敬称略)

ドラマがあった全米選手権

 12月下旬~1月上旬は,各国の国内選手権が開催される時期ですね。日本では年末に全日本選手権が開催されましたが,アメリカでは年始すぐに全米選手権が開催されました。男女シングル共に,有力選手が平昌五輪代表入りを逃すというドラマが生まれました。また,男子のメダル争いの中心にいる ネイサン・チェン 選手の仕上がりにも注目が集まりました。全米選手権の感想と,平昌五輪の展望を書いてみます。

◆男子シングル

 ネイサン・チェン 選手が315点という高得点で優勝しました。このスコアだけを見るとかなり脅威に感じますが,観戦した私は全く脅威を感じず,羽生結弦・宇野昌磨 両選手に届かないまま平昌五輪を迎えるという印象を受けました。FS(Free Skating,フリースケーティング)は,冒頭の 4F+3T(連続ジャンプ:4回転フリップ→トリプルトウループ)は素晴らしい出来でしたが,それ以外のジャンプは詰まり気味の着氷もけっこうありました。にもかかわらず GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)が約20点も加点され,PCS(Program Component Score,演技構成点)も約95点を獲得しましたが,国際大会ではこの出来でこのスコアはまずあり得ません。国内選手権で国際大会より点数を多めに出す,というのはよくある話で,米国のジャッジが露骨にゲタを履かせた(今風に言えば「盛った」)と考えて差し支えない状況です。

 言い方を変えると,これだけゲタを履かせてもらっても315点しか出なかったということなのです。今回と同じ演技構成で平昌五輪に臨んだ場合,演技が完璧ならどうにかこのスコアが出ると思いますが,今回と同程度の出来なら310点前後と予想します。宇野 選手の最高スコアは319点,羽生 選手はさらにその上の330点であり,最高スコアを出した時点より現在の演技構成の方が基礎点が高いので,彼らが完璧に演技すれば チェン 選手が今回と同じ演技構成でベストな演技をしても彼らには及びません。

 今回の演技構成で五輪に臨み,羽生・宇野 両選手のミスを待つ戦略もないわけではありませんが,スコアの差が大きく負け戦も同然なので,チェン 陣営は,平昌五輪では今回より基礎点の高い演技構成で臨まざるを得ないと思います。今回は 4Lz(4回転ルッツジャンプ)を飛ばず,FSでは 4F,4S,4T(フリップ,サルコウ,トウループの各4回転ジャンプ)を計5本飛びましたが,平昌五輪では 4Lz を加えて4回転ジャンプ4種類を5本か6本飛ぶ構成になるでしょう。ジャンプの種類や本数のルールにより,4回転5本なら 3A(トリプルアクセルジャンプ)が2本,4回転6本なら 3A が1本になりますが,チェン 選手は 3A に不安がありますし,スコア戦略の点からも4回転6本構成を選択せざるを得ないと思います。しかし,6本は今まで一度も成功したことがなく,チェン 選手と言えどもギャンブルになります。

 今シーズンの チェン 選手は,試合のたびに4回転ジャンプの種類や本数を変えるという猫の目作戦をとっており,全米選手権でも手の内を見せなかったのならば,アルトゥニアン コーチらしい強かな作戦だとは思いますが,全米選手権で平昌五輪用の演技構成を披露して高得点を出す方が,ライバルへのプレッシャーを高められたはずなので,作戦ではなく単純にジャンプ構成を探っているのかなと私は思っています。とはいえ,基礎点が上積みできる余地を残しながら315点を出したことは,今シーズンの安定感と相まって,平昌五輪への期待を高めることはできたと思います。ぜひ平昌五輪では「これはすごい」と心から言えるような演技を観たいと願っています。

 代表争いでは,アダム・リッポン 選手はFSで精彩を欠いてヒヤッとしましたが,下馬評通りの代表入りとなりました。そして,もう一人の枠に割って入ったのは ヴィンセント・ジョウ 選手でした。4Lz を2本を含む4回転ジャンプ5本の演技構成で突き進んでいたので,シニアデビューとなる今シーズン当初から応援していましたが,全米選手権で表彰台に乗り,平昌五輪代表の座を掴みました。平昌五輪でメダル争いに加わるのは難しいですが,この五輪の経験は ジョウ 選手自身と米国にとって大きな財産になると思います。

 今回 ジョウ 選手は,FSで4回転ジャンプ3本が回転不足,同1本がダウングレードの判定を受けながらも,基礎点は チェン 選手を上回りました。回転不足やダウングレードがなければあと18点程度上乗せされる計算であり,基礎点だけで115点を超える超絶の演技構成です。4回転ジャンプに関しては チェン 選手が目立ちますが,ジョウ 選手にもぜひ注目してほしいと思います。

 代表入り有力と言われながら,目前で逃してしまったのが ジェイソン・ブラウン 選手でした。NHK杯で,羽生 選手の欠場によって優勝の最右翼と言われながら表彰台を逃したのを見て,プレッシャーに弱いのかなと感じていたのですが,肝心の全米選手権でそれが出てしまったようです。芸術性の高さとプログラム全体の高い完成度を,世界中に披露してほしかったのですが,それが叶わず残念でなりません。

◆女子シングル

 宮原知子 選手が優勝し,坂本花織 選手がブレイクした11月のスケートアメリカという大会で,もう一人ブレイクしたのが ブレイディ・テネル 選手でした。彼女の演技を観た私は,全米選手権で優勝するのではないかと予感しましたが,本当に優勝するとは驚きました。FSのプログラムは昨シーズン 三原舞依 選手が起用した「シンデレラ」ですが,テネル 選手はまるで,ディズニーランドのパレードで見るシンデレラがそのまま氷上に舞い降りてきたかのようで,長身の テネル 選手が醸し出す本物感は圧巻でした。正に,ザ・シンデレラ・ストーリーであり,平昌五輪でも入賞には十分手が届くと思いますし,絶好調なら 坂本 選手と共に5位を争う感じになると思います。

 24歳にして 3A にトライする姿に感銘を受け,シーズン当初から応援していた 長洲未来 選手が,会心の演技で8年ぶりに五輪代表になりました。長洲 選手は五輪シーズンの全米選手権にめっぽう強く,ソチ五輪のときは3位に入りながら代表入りを逃していました。その前のバンクーバー五輪では2位に入って五輪代表となり,五輪で4位入賞。今シーズンは4年前の悔しさを晴らすべく,グランプリシリーズからずっと 3A を入れ続け,NHK杯で194点を出したことで,アシュリー・ワグナー 選手の今シーズンのグランプリシリーズ最高点(183点)を上回ったことが功を奏したと思います。3A に目を奪われますが,今シーズンの 長洲 選手は 3A 以外のジャンプがとても安定していたのが好調の要因でしょう。平昌五輪では女子唯一の 3A ジャンパーとして,8年ぶりの五輪を楽しんでほしいと思います。

 カレン・チェン 選手は,今シーズン苦しんでいましたが,昨シーズンのプログラムに戻す決断が効きました。昨シーズンは全米優勝,世界選手権4位ですから,戻す価値があったということでしょう。ただし,全米選手権では昨シーズンのクオリティーには及びませんでした。平昌五輪までに昨シーズンの自信を取り戻す作業をしていくことになります。

 ソチ五輪からの4年間の米国フィギュアスケート界を支えてきた アシュリー・ワグナー 選手の代表不選出は,とても残念でした。ただ,今シーズンは精彩を欠き,ケガもありましたので,バイオリズムが下降線の時に五輪が来てしまったのでしょう。興味深かったのは,カレン・チェン 選手が過去のプログラムに戻す決断をした一方で,ワグナー 選手はFSに新たなプログラムで挑んだことです。新プログラム「ラ・ラ・ランド」は,元々今シーズン用に用意していたものの,しっくりこなくて一旦過去のプログラムに戻していましたが,やっぱり全米選手権には「ラ・ラ・ランド」で勝負したいと考え,そのような決断になったようです。

 「ラ・ラ・ランド」はプログラム自体は素敵なものでしたが,無難な印象で ワグナー 選手らしさがあまり感じられない,というのが観終わった瞬間の私の感想でした。私は「ラ・ラ・ランド」の映画を観ていないので,選曲が良かったのかどうかを判断できませんが,主題歌の有名なフレーズがいつ流れてくるか待っていた私は,それが流れてこなかったので今一つ盛り上がれなかったなぁと感じました。有名なフレーズを使えばいいというものではありませんが,「ラ・ラ・ランド」といえばこの曲…というものをうまく入れれば,観客の盛り上がり方がもっと違ったのではないかとは思いました。

 結果論としては,戻していた過去のプログラムである「ムーラン・ルージュ」の方が ワグナー 選手の良さが存分に引き出された作品だったと言えます。「ラ・ラ・ランド」をここで持ってきたということはかなり良いプログラムなのだろう,と採点するジャッジは期待感を持っていたと思いますが,良い内容だけどそこまでじゃないなと思えば,初見のプログラムに対して高いスコアは出しづらかったのだろうと推察します。PCS が低かったのは,そういったジャッジの心理が働いた面があったでしょう。ただ,そうは言っても PCS 68点(満点の85%)は低すぎるとは思いますけどね…。これが72点なら,ワグナー 選手が3位になり,五輪代表になった可能性が高かったでしょう。

 過去プログラムに戻した選手が代表になり,新プログラムに果敢に挑んだ選手が代表落ちするというのは,やや複雑な気分になってしまうところですが,これも勝負のあや。4年前の全米選手権では,4位だった ワグナー 選手がソチ五輪代表に入りましたが,そのとき3位ながら代表入りを逃した 長洲 選手が今回は代表入りを掴むというところにも,ドラマがありました。長年,米国のフィギュアスケートを引っ張ってきた2人だけに,2人とも平昌に行ってほしかったです。代表の枠が3枠あっても代表をめぐるドラマがある…これぞ五輪シーズンだな,と改めて感じさせてくれた全米選手権でした。

樋口・三原 明暗,フェルナンデス 不調【中国大会感想】

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です


 男子シングルは,6強の2人,ハビエル・フェルナンデス 選手(スペイン)と ボーヤン・ジン 選手(金博洋,中国)を追い越して,ミハイル・コリヤダ 選手(ロシア)が優勝をさらいました。SP(Short Program,ショートプログラム)にも入れた 4Lz(4回転ルッツジャンプ)が完璧に決まったのに加え他の要素も珠玉の出来で,スコアが100点を超えました。この貯金のおかげで,FS(Free Skating,フリースケーティング)でミスがあってもトータルでリードを守りました。

 コリヤダ 選手の 4Lz も,ジン 選手と同じように助走が少ないのに大きなジャンプで,とても見ごたえがあります。また,ジャンプのみならずスピンもステップも綺麗でありながら,振り付けに独特なものがあり,不思議な魅力がある選手です。名古屋のグランプリファイナルで生で観られる皆さんが羨ましいです。

 ジン 選手は,持ち味の4回転ジャンプが安定していませんね。2位だったのはラッキーでしたが,3A(トリプルアクセルジャンプ)が安定していたのが救いでした。男子でも意外と 3A に苦労する選手は多いので,3A が安定しているのは大崩れしにくいという点で大切です。FSで「スターウォーズ」を使うということで楽しみに観たのですが,正直なところやや期待外れという感想を持ちました。スターウォーズだとはっきりわかる音楽が最後のステップのところでやっと流れ,それまではスターウォーズらしさがあまり感じられない音楽でした。また,振り付けも音楽との一体感がさほど感じられず,このプログラムで PCS(Program Component Score,演技構成点)が伸ばせるのか,少し心配な気がします。ですが,ジャンプが全てきっちり入るとまた印象が変わるかもしれませんので,ジャンプの完成度が上がるのを待ちたいと思います。

 フェルナンデス 選手はかなり心配な状況ですね。ここ数年のグランプリシリーズでは,本調子ではなくても大ミスは少なく,表彰台どころか優勝を逃すこともまれだったので,明らかに例年より調整が遅れているようです。五輪本番はまだ先だから心配ない,と楽観することができないような状態であり,平昌五輪のメダル獲得にも黄信号が灯ったと考えざるを得ません。ファイナルで観られなくなりそうなのは残念な限りですが,その間に調子を戻すことを願っています。

 田中刑事 選手は,ケガ明けの影響はなさそうでした。SPのブルースナンバーはとてもいいですね。憂いを帯びた曲の方が,田中 選手の雰囲気に合っていると思います。FSもけっこうジャンプの抜けや転倒があった割には160点近い点数が出ているので,ベストな演技なら180点も狙えますね。代表3枠目の一番近い位置にいると言っていいと思います。

 シニアデビューで注目した ヴィンセント・ジョウ 選手(米)は,表彰台には乗れませんでしたが,攻めたジャンプ構成で魅せてくれました。FSでは 4Lz 2本(そのうち1本は後半)を含む3種類5本の4回転ジャンプを組み込み,さらに3連続ジャンプでは 宇野昌磨 選手と同じ,第3ジャンプに 3F(トリプルフリップジャンプ)を使うという,非常に意欲的なジャンプ構成です。4Lz は ジン 選手や コリヤダ 選手に負けない美しいジャンプで,特に着氷が綺麗ですね。ジャンプが全部揃うとかなり良いスコアが出るので,今後急成長する可能性が大いにあると思います。

 シリーズ最高の激戦となった女子シングルを制したのは アリーナ・ザギトワ 選手(ロシア)でした。SPで転倒しても優勝できるのですから,実力は本物でしょう。ジャンプを全て演技後半に入れ,3Lz+3Lo(3回転ルッツ→3回転ループの連続ジャンプ)といった超高難度ジャンプも組み込んでおり,基礎点は現役最強と思われます。私は技術力のあるスケーターが好きなんですが,ザギトワ 選手にはなぜかさほど魅かれません。FSで後半にジャンプが立て込んでいる感じに違和感を感じてしまいますね。とはいえ,シニアデビュー戦で優勝したのは見事ですし,今後の強敵になっていきそうです。

 ザギトワ 選手が転倒したことを思えば,樋口新葉 選手は今大会で彼女を破っておくべきでした。そうすればファイナル進出が確定しましたからね。でも,ほぼ完璧な演技での2位,しかもロシア大会から中1週しかなかったことを思えば,ミッションはクリアできたのではないでしょうか。今大会の演技は,すごく気持ちが乗っていたように見えました。シリーズ2試合目でプログラムが体になじんできたのでしょうね。とにかくプログラムはSP・FS共に 樋口 選手にとてもマッチしていますので,ファイナル(おそらく出場できるでしょう)や全日本選手権がすごく楽しみです。

 三原舞依 選手は不運でした。3位の ラジオノワ 選手とは1点未満の点差でしたからね。初戦の固さ(緊張よりも慎重さですね)があって,それがSPの連続ジャンプでの回転不足に出てしまった気がします。回転不足がなければ3位だったので,そこが悔やまれます。しかし,SP7位,総合4位という順位だけで 三原 選手を過小評価するようなことがあってはいけません。トータル200点超えて表彰台に乗れなかったのは 三原 選手が初めてですからね。本当なら 三原 選手が激戦を生み出すはずが,逆に激戦の犠牲者になってしまいました。SPのタンゴはまだまだ伸びしろがありますし,FSは本当に 三原 選手に合ったプログラムだということが今大会でもわかったので,次戦はかなりハイレベルなスコアになると思います。

 本田真凛 選手は,実力から考えれば2大会5位というのは上々の成績だと思います。今大会も,ファイナル進出はほぼ不可能という現実を見据えて,無理をせず演技全体を体に染み込ませていくことを意識していたように見えました。ピークを全日本選手権に持ってくればいいわけですからね。グランプリシリーズで爪痕を残したかったと思いますが,そんなに甘い世界ではないことを痛感したでしょう。こういう成績だとメディアがどう自分を扱うのかも見えてきます。チャレンジと継続性のバランス,周囲と自分のバランス,そういったものをこれからたくさん学んでいくと,本当の意味で強い選手になっていくと思います。

 中国大会は,戦前の予想どおり大激戦となりましたが,男子までこのような激戦・波乱になるとは思いませんでした。例年,ちょっとホッと一息つく大会だったのが一変,今季はグランプリシリーズの中でも大きな意味を持つ大会になるような気がします。

中国大会(中国杯,グランプリシリーズ第3戦)プレビュー

spnvLogo 本記事は,私がスポナビブログ(2018年1月末閉鎖)に出稿した記事と同じ内容です


◆男子シングル

 男子6強でシリーズに登場していない残り2人,ハビエル・フェルナンデス 選手(スペイン)と ボーヤン・ジン 選手(金博洋,中国)が出場します。悔いの残る4位に終わったソチ五輪から4年間,フェルナンデス 選手は同門生の 羽生結弦 選手と共に男子シングルのトップスケーターに君臨し続けました。ミュージシャン・映画・演劇といったエンターテインメント系のプログラムを演じれば,圧倒的な表現力でその世界観を存分に魅せてくれます。フェルナンデス 選手は国内無敵なので国内選考に神経を使う必要がなく,例年徐々にスコアを上げていきますので,今季もグランプリシリーズは調整試合でしょう。とはいえ五輪シーズンなので,今大会の仕上がり具合で五輪への本気度がわかると思います。

 ジン 選手は,宇野昌磨 選手や ネイサン・チェン 選手(米),さらには 羽生結弦 選手をも4回転戦争に引きずり込んだ,4回転ジャンプの開拓者です。私が福岡で生観戦した4年前のグランプリファイナルのとき,ジュニアで出場した チェン 選手が4回転ジャンプに苦戦したのに対し,FS(Free Skating,フリースケーティング)で4回転ジャンプを3本成功させたのが ジン 選手でした。彼の 4Lz(4回転ルッツジャンプ)は少ない助走で高さも幅もある,とても美しいジャンプで,これだけで ジン 選手を観る価値があります。しかし実際には表現力も豊かで,優しく時にコミカルな演技は,観る者に癒しを与えてくれるような気がします。どうも評価が不当に低いような気がしますが,世界選手権2年連続銅メダルが示すように大舞台に強く,ほぼ隣国で開催される五輪にうまくピーキングしてくると思います。ジン 選手も国内選考はさほど苦労しないので,今大会は調整試合ですが,自国なので気合いは入っていることでしょう。どんなプログラムでどんなジャンプ構成なのか,特にFSの「スターウォーズ」がとても楽しみです。

 田中刑事 選手ですが,ケガは問題ないと本人がコメントしていました。本当のところはともかく,どんな状況でもベストな演技を観たいですね。無良崇人 選手がもたついていますので,そういう敵の隙をきっちり突いていく図太さも求められます。

 他の選手で楽しみなのは,4Lz を習得し今季シニアデビューする ヴィンセント・ジョウ 選手(米)。今季は 羽生 選手をはじめ,4Lz を導入する選手が続出していますが,ジョウ 選手はとても質の高い 4Lz を飛ぶそうで,私はまだ観たことがないので早く観てみたいです。シニアデビューでハネる選手が出るとすれば,ジョウ 選手が筆頭候補と言えるでしょう。デビューですからエンジン全開で挑んでくると思いますので,フェルナンデス 選手と ジン 選手にどこまで迫れるか要注目です。

◆女子シングル

 シリーズ最強の対戦カードになりました。三原舞依ザギトワ(ロシア),トゥクタミシェワ(ロシア),デールマン(カナダ)の4選手が初戦を迎え,ここに早くもシリーズ2戦目となる 樋口新葉本田真凛ラジオノワ(ロシア)の3選手も登場。この7選手全員,トータル200点超え経験者(本田 選手はジュニアでの記録)というとんでもなく豪華な大会です。中国大会にこれだけ有力選手が集結したことが今までにあったでしょうか。こんなに見ごたえのある大会を,しかも時差がないのにテレビ朝日はなぜ生放送しないんだ!と思いますけどね。

 おそらく,この中から 三原,樋口,ザギトワ の3選手が表彰台に上がるでしょうが,順位がどうなるかはとても重要です。最も順位に敏感になるべきなのは 樋口 選手で,優勝ならグランプリファイナル出場がほぼ叶うと思いますが,2位だと微妙,3位だとほぼ絶望になります。ロシア大会から中1週というハードスケジュールですが,ファイナルまで中4週空きますし,移動時差も小さいので,優勝を狙って全力で臨むべきです。1度演じて注意すべきポイントもわかっているはずなので,全要素 GOE(Grade Of Execution,出来栄え点)プラスの演技ができれば優勝も十分狙えます。

 三原 選手は,メドベージェワ 選手追撃の一番手になるのではないかと感じています。ジャパンオープンで観たFS(Free Skating,フリースケーティング)のプログラムは,伸びやかで清らかで,三原 選手の良い所を存分に引き出しています。プログラムが本人にとてもマッチしていて,表現力も完全にシニアレベルになっていますので,PCS(Program Component Score,演技構成点)が一気に上がっていきそうな予感がしています。今大会では着実な演技をしてトータル215点に到達できれば好スタートと言えると思いますが,シーズン序盤なので回転不足が出ないかが少し気がかりです。

 シニアデビューにして大きな注目を集めるのが,昨季ジュニアチャンピオンの ザギトワ 選手。同門生の メドベージェワ 選手と同様にジャンプの精度が高いので,安定して高得点を出せると思います。ただ,現時点では PCS がさほど高くないので,ミスが出ると意外にスコアが伸びないでしょう。ですから,三原・樋口 両選手が質の良い演技をすれば ザギトワ 選手の上に来る可能性は十分にあります。

 仲の良い トゥクタミシェワラジオノワ の2人のロシア勢がどこまで取り戻してくるのかも興味深いところですが,世界最高峰のレベルは2人の手の届かないところに行きつつある気がします。ただ,完璧な演技ができればスコアは付いてくると思いますので,2人の本気の演技を観られることを願っています。

 本田 選手はカナダ大会でシニアの厳しさを味わいました。連闘だからこそ,その悔しさを力に変えて,開き直って今までの自分を超えていくような演技ができれば,すごいことが起きるかもしれません。順位はともかく(私が勝手に設定した)超一流ラインであるトータル210点を出しておきたいところです。

 トータルスコア200点超えが,ロシア大会では3人,カナダ大会では1人でしたが,この中国大会では5~6人出る可能性があります。グランプリシリーズ序盤の緊張感も徐々に解けてくる頃なので,ハイレベルな争いを期待してよいと思います。

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