週末に開催されるグランプリファイナルは,10月から始まったグランプリシリーズ6戦の上位選手が出場するので,今シーズン好調な選手が集いレベルの高い演技が観られるという点で,私が大好きな大会です。今年のシングルは,男女ともベストメンバーが集まり,近年にないハイレベルな戦いになりそうです。シングルの出場選手を紹介します。(写真は,テレビ朝日のバナーから拝借しました/笑)

男子シングル】


GPF_Men
(左から,ジン,フェルナンデス,チャン,村上,宇野,羽生 の各選手)

羽生結弦

 先々週のNHK杯で歴代最高点を叩き出し,フィギュアスケート界を次のステージに引き上げました。史上初の3連覇を狙うプレッシャーや,NHK杯の疲労を心配する声がありますが,全然問題ないでしょう。昨年のファイナルを思い出してください。中国でのケガが癒え切らずNHK杯で表彰台を逃してから,わずか2週間で華麗なる復活を遂げ,そのときの神々しい姿が今でも目に焼き付いています。それを思えば,今年は昨年より状態が良いですし,今回は得点更新を狙わず優勝だけを考えて臨めば,かえって良い演技ができてあっさり得点更新となる可能性はけっこうあると思います。

・・・とここまで木曜日に書いたら,ショートプログラム(SP: Short Program)からやってくれたようですね! こうなると合計 330 点という無茶苦茶な期待をしてしまいますね。記録は二の次で勝ってくれさえすればよいものを…どこまで観る者をワクワクさせてくれるのでしょう,羽生結弦 っていう人は。

宇野昌磨

 とにかく今年は,SP,フリースケーティング(FS: Free Skating),共にプログラムが秀逸! 特に FS は後半のゾクゾク感がたまらないです。本来は,冒頭で4回転からの連続ジャンプを飛んで,後半の4回転は単独らしいのですが,冒頭が連続にならなくても,後半を連続ジャンプにして挽回するのが決まると,そこから最後のちょっとトリッキーな3連続ジャンプまで,鳥肌が立ちまくります。めざせ表彰台!

村上大介

 スケーティングが柔らかくて,観ていて癒されます。特に FS の YOSHIKI (X JAPAN) 作曲の楽曲は,フィギュア用に書き下ろされたのかと思うほど。演技以外では,アメリカに住んでいただけあって英語はネイティブなので,キスアンドクライで キャロル コーチとの会話がテレビの音声に乗るかどうかも楽しみ。同コーチの同門生である ゴールド 選手も出場していますし,リラックスしてミスなく演技すれば,出場選手全員が合計250点以上,という超ハイレベルな記録が観られるかも。

ハビエル・フェルナンデス (ESP)

 グランプリファイナルが2年連続で母国開催なので,今年こそ優勝したい気持ちがあるでしょうけど,オーサー コーチの同門生である 羽生 選手が無敵状態なので,勝負より演技の内容にこだわりたいところでしょう。SP も FS も,ジャンプやスピンなどの技術要素の間の "つなぎ" が満載で,最初から最後まで楽しめるのが見どころ。特に SP の「マラゲーニャ」は,本場スペイン人の フェルナンデス 選手が演じるとこんなに凄いのか,と感動必至です。

パトリック・チャン (CAN)

 SP の結果だけ見ると何が起きたのか心配になってしまいますが…もはや,チャン 選手は点数云々ではないです。羽生 選手と同じような柔らかさや優しさをたたえつつ,強さや緩急も併せ持つ究極のスケーティングの素晴らしさを堪能しましょう。

ボーヤン・ジン (CHN)

 私は2年前のグランプリファイナルを福岡で生観戦したのですが,そのときジュニアファイナルに出場した ジン 選手は,ただ1人 FS で3本の4回転ジャンプを完璧に飛んでいてとても印象に残っていたので,やっと出てきてくれたという感じですが,まさか4回転ルッツジャンプ(4Lz)を完全にものにしているとは驚きでした。SP と FS の冒頭に飛ぶ,高さも幅もすごい完璧な 4Lz を観られるだけでも価値があります。今度こそ,史上初 SP & FS 合計6本の4回転ジャンプを成功させて,歴史に名を刻んでほしいです。

女子シングル】


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(左から,浅田,宮原,ゴールド,ラジオノワ,メドベージェワ,ワグナー の各選手)

宮原知子

 私の中でも株急上昇中! 良い演技をしたい!というオーラが全身から発せられ,それでも気合先行にならず緻密な演技が紡げるところが素晴らしいです。NHK杯で 浅田 選手を破って優勝したことがとてつもない自信になって,さらに一皮むけそうな予感。ファイナル表彰台の確率はかなり高いです。演技全体が見どころですが,中でも 宮原 選手しかやらない逆回転スピンは,観ていてなんだか不思議な気分になれます。

浅田真央

 ファイナル独特の高揚感が 浅田 選手に力をくれることを祈りたいです。ミスなく演技すれば間違いなく優勝という高難度プログラムですが,復帰シーズンの疲労感はかなりのものだと思うので,あまり結果にこだわらず,ファイナルという場を楽しんで滑ってほしいですね。見どころは,トリプルアクセルジャンプよりもむしろ,その後に飛ぶフリップ→ループの3回転連続ジャンプ(3F+3Lo)。SP,FS 共に冒頭からこの2つのジャンプが続くので,これらのジャンプが完璧に成功すると後のジャンプにも連鎖して超高得点が出る可能性も。

エレーナ・ラジオノワ (RUS)

 今シーズンは ラジオノワ 選手の年になるのでは?と私は予測しています。ケガ明けの中国大会は今一つでしたが,母国ロシア大会で合計 210 点超えの完全復調。ロシア大会で FS を終えたときの涙に,追い込まれていた彼女の心情(ロシア女子フィギュア界のサバイバル)が垣間見えてとても印象的でした。今シーズンは比較的メロディアスな曲でオーソドックスな表現力をアピールする戦略っぽいですが,ヒップホップから王道バラードまでこなすジャンルの多彩さ,強さと柔らかさ,迫力と繊細さ,あらゆる表現力を発揮できる究極のオールラウンダー。2年前の福岡で生観戦したとき,エキシビションでその多彩さに圧倒されました。17歳にして3度目のファイナル出場で,貫録さえ感じられるスケートは,演技全体が必見です。

エフゲーニャ・メドベージェワ (RUS)

 2年前の福岡で,ジュニアファイナルに出場していたときは,綺麗なスケートはするもののそれほど印象には残りませんでした。ところが,今シーズンのシニア参戦初戦のアメリカ大会は衝撃的なデビューでした。SP の3本のジャンプを全て後半に持ってくるのは,まぁわかる作戦なのですが,その全てが手上げジャンプでしかも着氷が完璧,ジャンプ以外のスピンやつなぎもとても綺麗。迫力 vs 綺麗さ という軸で見ると,ロシア勢どころか世界的に見ても「綺麗さ」の最右翼にいると思います。細身で長身なので,とにかく綺麗なスケートを堪能できます。FS のミスがなければ優勝争いに加わってきます。

グレイシー・ゴールド (USA)

 ジャンプ,スピン,スケーティング,ルックス,どれをとっても華やかさが際立っています。FS はソチ五輪の 町田 選手でおなじみの「火の鳥」と,楽曲も華やか。正に華を添える存在ですが,今シーズン絶好調で点数も出ますので,彼女も優勝争いに加わってくるでしょう。

アシュリー・ワグナー (USA)

 SP はダンサブル,FS は鉄板の「ムーラン・ルージュ」と,アシュリー色全開のプログラム。点数度外視でただただ観ていたい存在ですが,今シーズンついに200点超えを果たすなど,休養シーズンを取らずに成長し続ける姿には感服。エキシビションでも通用するような SP のダンス満載の演技は観ていて本当に楽しいです。

【順位予想】

  • 男子: 1. 羽生 2. フェルナンデス 3. 宇野
  • 女子: 1. ラジオノワ 2. 宮原 3. ゴールド

 女子は予想が難しすぎます(笑)。おそらく上位4選手は合計点が 200~210 点の中にひしめく大混戦になると予想します。浅田 選手と ワグナー 選手が好調なら全員200点超えというすごいことが起きるかも。