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浅田真央

なぜ女子はダブルアクセルを2本飛ぶのか?:フィギュアスケートのジャンプ戦略

 フィギュアスケートのフリースケーティング(FS: Free Skating)では,男子は8回,女子は7回のジャンプを飛びます。ジャンプはスコアの半分以上に影響しますので,どのジャンプをプログラムに組み込むかが,フィギュアスケートの重要な戦略の1つになるわけです。ところが,よく観ている方の中には「3回転ジャンプがあるのに,女子の FS でダブルアクセルを2回飛んでるのはなぜだろう?」とか,なんでこのジャンプを選んでいるのかな?と思いながら観ている方もいると思います。そこで,ジャンプの種類がどのように決まるのか,そこにどんな戦略があるのかを,ざっくり紹介したいと思います。

 まず,ジャンプの用語や表記を整理します。

  • 【ジャンプの種類】 A =アクセル [8.5],Lz =ルッツ [6.0],F =フリップ [5.3],Lo =ループ [5.1],S =サルコウ [4.4],T =トウループ [4.3] ([  ]:3回転ジャンプの基礎点)
  • コンビネーションジャンプ」…2つ以上の連続ジャンプ,「ファーストジャンプ」「セカンドジャンプ」「サードジャンプ」…コンビネーションジャンプの中の1つ目,2つ目,3つ目のジャンプ
  • 本記事では,単独ジャンプやコンビネーションジャンプといった個々のジャンプ要素を「1」,単独ジャンプや "連続ジャンプの中の個々のジャンプ" を「1」と数えます。例えば,3連続ジャンプは1回で3本のジャンプを飛ぶことを表します。
  • 【表記例】 3A =トリプルアクセル,4F =4回転フリップ,3Lz+3T =トリプルルッツ→トリプルトウループのコンビネーションジャンプ
 FS におけるジャンプのルールは,以下のように規定されています。
  • [A] 男子は8回,女子は7回。
  • [B] アクセルジャンプを1本は必ず入れる。
  • [C] コンビネーションジャンプは3回まで。その中で3連続ジャンプは1回まで。よって,男子:8回・12本,女子:7回・11本までとなる。
  • [D] 3回転以上の同じ種類のジャンプは2本まで。その2本のうち1本は必ずコンビネーションジャンプに含める。(2A も2本までだが,2本とも単独ジャンプでも構わない)
  • [E] 2本飛ぶ3回転以上のジャンプの種類は2種類まで。
 [D] のルールにより,例えば 3Lz が得意な選手でも 3Lz は2本までしか飛べませんし,一方はコンビネーションにしなければならないので,例えば,3Lz+3T と 3Lz というような構成にする必要があります。

 [E] のルールはさらに悩ましい制約です。例えば,3Lz+3T, 3Lz, 3F+3T, 3F というジャンプ構成は不可能です。なぜなら,3Lz, 3F, 3T の3種類が2本ずつ入っているからです。2本飛んでいいのは2種類までなので,この例の場合,どれかを1本に減らす必要があります。

 上記のルールを総合すると,3A を飛べない大多数の女子選手は,FS で7回11本あるジャンプの中に,3回転ジャンプを5種類7本しか入れられません。よって残り4本のうち2本を 2A でカバーするのは必然的な選択になります。だから,女子は FS で 2A を2本飛んでいるのです。

 スコア戦略を紐解くために,具体的なジャンプ構成を例示します。3A を入れないケースでは,点数が高い Lz と F を2本ずつ飛び,コンビネーションジャンプも点数が高いものを組み入れると点数が高くなりそうです。考えられる典型的なジャンプ構成が下記です。

【パターンA】 3Lz★, 3F★, 3Lo, 2A★; +3T, +2T, +1Lo+3S 《基礎点:44.8》

 表記の見方を説明します。

  • 」はそのジャンプを2本飛ぶことを意味します。「」から始まるのはコンビネーションジャンプのセカンド&サードジャンプです。セカンド&サードジャンプはどのジャンプと組み合わせてもスコアは同じなので,これらを分離して書いています。例えば,"3Lz+3T と 3F" でも "3F+3T と 3Lz" でもスコアは同じなので,これらは "3Lz, 3F, +3T" と表しています。
  • 基礎点》は,ジャンプの回転数や種類に応じて与えられる点数です。実際には,演技後半の時間帯に実施した場合のボーナス点(基礎点が1.1倍になる),ジャンプの回転が不完全(回転不足やダウングレード)な場合の減点(回転不足だと基礎点が0.7倍になる),上述のルールに違反した場合の減点によって基礎点が変わりますが,これらを考えない点数を記しています。
 【パターンA】は 3Lz と 3F を2本ずつ入れ,3T と 3S をセカンド(サード)ジャンプで使うので,残る3回転ジャンプである 3Lo を単独ジャンプ(またはファーストジャンプ)に入れると,単独ジャンプとファーストジャンプが計5本となり,残りの2本が 2A になります。

 しかし,実際に【パターンA】を採用する選手はめったにいません。今季のトップ選手では ソツコワ 選手(RUS)だけがこの構成を採用しています。なぜなら,Lz と F の両方をきちんと飛べて(これを「Lz と F の飛び分けができる」なんて言います),かつ Lz と F の両方でコンビネーションジャンプを飛ぶというのは,女子にとってはとても難度が高いのです。ほとんどの女子選手は Lz と F の飛び分けが不得手なので,得意な方だけを2本にします。Lz が得意な選手なら【パターンA】の F を1本 Lo に変えると,

【パターンB】 3Lz★, 3F, 3Lo★, 2A★; +3T, +2T, +1Lo+3S 《基礎点:44.6》

になり,これなら点数もほとんど変わりません。これは今季 ポゴリラヤ 選手(RUS)が採用しています。ところが,+1Lo+3S 自体は点数が高いのですが,これを入れるとルールの制約上 +2T を入れざるを得なくなり,合計点が思ったほど高くなりません。実は +1Lo+3S よりも,+3T を2本入れる構成の方が合計点が高くなります。

【パターンC】 3Lz★, 3F, 3Lo, 3S, 2A★; +3T★, +2T+2Lo 《基礎点:45.1》

 これは今季の 宮原知子 選手が採用していて,素晴らしいスコア戦略だなぁと感じます。多くのトップ選手は【パターンB,C】のどちらかの構成をベースに,3Lz の代わりに得意なジャンプを2本飛びます。現世界女王メドベージェワ 選手(RUS)でさえ,

【パターンD】 3Lz, 3F★, 3Lo, 3S, 2A★; +3T★, +2T+2T 《基礎点:43.9》

の構成です。Lz ではなく F を2本飛び,+2T+2Lo より点数の低い +2T+2T を入れているので,けして高いスコアではありません。彼女の強さは,基礎点ではなく出来栄え点(GOE: Grade Of Execution)と演技構成点(PCS: Program Component Score)にあると言えます。

 ところで,ここまで紹介したパターンは,スコアの差が1点程度で,大きな差ではありません。ですから「女子のジャンプ構成はほぼ上限まで来ていて,出来栄えの差が勝敗を分ける」と言われているのです。では,スコアを伸ばすにはさらにどのような策があるでしょうか。代表的な戦略を2つ紹介します。

 1つめは,セカンドジャンプに Lo を入れることです。+3T を +3Lo に変えれば +0.8点,+2T+2Lo を +2Lo+2Lo に変えれば +0.5点 と少なからぬプラスが得られます。しかし,セカンドジャンプの Lo は難度が高く,この戦略が使える選手はほとんどいません。ただ,今のジュニア世代は Lo のセカンドジャンプを習得している選手が多く,平昌五輪後は +3Lo を観る機会が増えそうです。

 もう1つは,言わずもがなの 3A です。これが飛べれば 2A を1本にすることができます。3A を飛ぶ 浅田真央 選手のジャンプ構成は,

【パターンE】 3A, 3Lz, 3F★, 3Lo, 3S, 2A; +3Lo, +3T, +2Lo+2Lo 《基礎点:50.9》

で,メドベージェワ 選手(RUS)の【パターンD】より7点も高いのです。3A に加え,Lo のセカンドジャンプを2本入れていることが効いていて,この構成は今でも世界トップを独走しています。高難度なので失敗のリスクも高いですが,成功すると世界最高得点も狙える構成なので,ぜひ成功させてほしいです。

 このように 3A が入ると,点数面のメリットに加え,3回転ジャンプが6種類8本に増やせるので,ジャンプ構成の自由度が上がります。3A に挑戦する女子選手が増えてきているのは,話題性だけでなく,スコア戦略という側面もあるのです。

 さて,これが男子になると,3A や4回転ジャンプが加わってきますので,スコア戦略はさらに多様になります。男子のスコア戦略については,別の機会に考えてみたいと思います。

 以上,ジャンプに関する戦略の一端をご紹介しました。どんなジャンプ構成なのかを意識しながら観戦すると,また違ったフィギュアスケートの楽しみ方ができると思います。まずは「2本飛ぶのが Lz か F か?」や「3連続ジャンプは +1Lo+3S か +2T+2Lo か?」などに注目しながら観ると面白いと思います。

グランプリファイナル2015:総評その2

総評その1から続く)

メドベージェワ (RUS),シニアデビューシーズンに完全勝利も,本番はこれから

 女子シングルを優勝した メドベージェワ 選手。緊張から若干のミスが出て僅差で表彰台に届かず,という私の予想はあっさり覆され,ファイナルでも堂々とした演技で合計220点超えという驚異的な得点。そういえば,メドベージェワ 選手も 宇野 選手と同じく,昨年のジュニアファイナルで今年の会場を経験済み,という点を忘れていました。ジャンプの確実性が高いだけでなく,手上げジャンプにするなど工夫が見られ,全体の芸術性もシニアデビューとは思えない完成度で,2013-14シーズンの リプニツカヤ 選手(RUS)を彷彿とさせる抒情性も持ち合わせ,優勝は納得。ただ,演技構成点(PCS: Program Component Score)が 宮原 選手よりはるかに高いのはどうなのかな?と思うところもあります。PCS は若い人にはあまり高くしないのがこれまでの通例でしたが,今年のジャッジは,若くても質の高い演技には惜しみなく点数を出そうという雰囲気をなんとなく感じます。メドベージェワ 選手もそうですし,宇野 選手も PCS の評価がグランプリファイナルで高くなりました。

 メドベージェワ 選手はシニアデビューシーズンなので,シーズン前半のグランプリシリーズからアピールしたいという思いがあったでしょうし,それが良い成績にもつながりました。ただ,シーズンの本当の勝負はこれからです。ロシア勢は今後,ロシア選手権 → ヨーロッパ選手権 → 世界選手権 とビッグマッチが続いていきます。選手は皆ここに照準を合わせてきますし,グランプリシリーズの疲れも出てくる可能性がありますので,このまま好成績が続くかどうかは予断を許しません。シニア1年目に簡単に勝たせるわけにはいかないと,先輩スケーターが手ぐすねを引いて待っていると思います。それでも,昨シーズンは,トゥクタミシェワ 選手や ラジオノワ 選手(共にRUS)がグランプリファイナルから世界選手権までずっと表彰台に乗り続けたという事実がありますし,逆にシニアデビューなので怖いもの知らずの勢いでずっと勝ち続ける可能性も大いにあります。いずれにせよ,今シーズンは メドベージェワ 選手が話題の中心になることは間違いないでしょう。

ラジオノワ (RUS),ロシア選手権から逆襲だ

 今シーズンは様々な不安要因があったようなので,それを考えれば合計200点超えで表彰台(それも2年連続)という結果は,勝負強さの表れといえると思います。SP,FS 共に,髙橋大輔 選手や 安藤美姫 選手のコーチだったことで知られるモロゾフ氏(RUS)の振り付けによって,全体を通して表現しようという意欲が伝わってくる演技でした。たた,思いのほか PCS が上がってこないのが(個人的には不当に低い評価だと感じますが)気になります。ラジオノワ 選手はエネルギッシュさが他の選手と段違いなので,今回のオーソドックスなプログラムだと,表現しようと気負いすぎているというか,動きが全体になじんでこない,という印象を持たれているのかもしれません。ただ,ラジオノワ 選手はとても器用な面もあるので,滑りこんでいくと全体として調和がとれた表現になってくるという期待も持てます。

 今シーズンは ラジオノワ 選手のシーズンになると私は思っているのですが,シーズン前半は後輩の メドベージェワ 選手に主役を奪われました。ただ,ラジオノワ 選手は昨シーズン,シニアでの1年間を経験しており,今後来る勝負どころを心得ていると思います。ロシア選手権の女子シングルは,ラジオノワメドベージェワ の他に,トリプルアクセルジャンプを飛び貫録オーラが凄い トゥクタミシェワ,2年前の生観戦の印象が強く個人的に復活を切望する リプニツカヤ,グランプリシリーズ不調も潜在能力は高い ポゴリラヤ,五輪女王で今シーズン復帰した ソトニコワ,と思いつくだけでも6選手いるというとんでもない大激戦。それでも,初のロシア選手権とヨーロッパ選手権の優勝に向けて,ラジオノワ 選手が輝きを放つときが来ると思います。

浅田真央,復帰シーズンで194点は見事,自分を追い込みすぎるな

 グランプリファイナルで最下位(6位)に沈んだことで,今までの復帰歓迎ムードから一転「やはり復帰は厳しかったか」「引退への序章か」という論調が出てきていますが,こういうマスコミには閉口してしまいますね。1年間の休養からの復帰シーズンに,ファイナルに出るだけでも十分凄いことで,合計194点というのは2年前なら優勝している点数(下記注)なのです。浅田 選手が休養している間に,女子のレベルが急速に上がったわけで,浅田 選手を悪く言うのは全く的外れです。

(注) 2年前=2013年のグランプリファイナルは福岡で開催(私は生観戦しました)。このとき 浅田 選手が204点で優勝。2位は リプニツカヤ 選手(RUS) で192点。

 今シーズン,SP は最高難度の構成,FS はソチ五輪と同じ8トリプル(3回転ジャンプを8回入れること)に挑んでいますが,復帰のシーズンでいきなり挑戦すること自体,無理があるという声は当初からありました。しかし,最初からこのプログラムを据えた上で,平昌五輪まで3年をかけて仕上げていくという計画で臨むべきでしょうし,そうであるならば今シーズンは焦る必要はありません。世界選手権に出場するために,全日本選手権では FS で技の難度を落とすのではないかという推測も出始めています。落とすとなると,冒頭のトリプルアクセルジャンプ(3A)をダブルアクセルにするか,その次のフリップ→ループの3回転連続ジャンプ(3F+3Lo)のセカンドジャンプをダブルにする(3F+2Lo)かだと思いますが,私はこの選択はすべきでないと考えます。こうするならシーズン最初からこの構成で臨むべきですし,浅田 選手本人が難度を落としたプログラム構成で心から納得するとは思えないからです。

 浅田 選手の SP は,3A → 3F+3Lo → 3Lz(トリプルルッツジャンプ)と高難度ジャンプが続く構成で,FS の前半も同じ流れです。今シーズン,この3つが揃って成功したことはまだありませんが,個々のジャンプについては今シーズンのどこかでは成功しています。3F+3Lo はセカンドジャンプが回転不足になりがちなのですが,回転不足なしで成功したこともあります。3Lz は 浅田 選手が今まで苦手にしていたジャンプで,エッジエラー(Lz は軸足に関して体の外側に体重をかけるのが正しいが,体の内側や中心に体重をかけてしまうこと)をとられがちなのですが,グランプリファイナルの FS ではエッジエラーなしで成功させています。滑り慣れてきて,大会でのコンディションが整えば,これらのジャンプが揃って成功する可能性はそれほど低いものではないと思います。逆に言うと,技の難度を落としてしまうと,これらのジャンプが揃って成功する機会を自ら失うことになるのです。

 今シーズンの世界選手権に出場したい思いは強いでしょうし,周囲の期待も感じていると思います。しかし,そのために技の難度を落とすことを,周囲が望んでいるとは思えませんし,もとより本人が一番それを嫌悪するはずです。浅田 選手がこの構成で演じたいと心から思っているのなら,周囲の期待や結果は気にせず,自分自身のスケートのためにこの構成を貫いてほしいと思います。周囲の期待に応えようとする思いは,浅田 選手にとってスケートの原動力になっていると思いますが,それが強すぎると過剰なプレッシャーとなってしまうようです。今週末の全日本選手権では,復帰のシーズンと日本のファンの歓声をかみしめながら,自分のために演技してほしいと思います。そのような無欲無心で演じれば,きっと演技が安定して,得点も付いてくるのではないかと思います。

グランプリファイナル2015は超ハイレベル

 週末に開催されるグランプリファイナルは,10月から始まったグランプリシリーズ6戦の上位選手が出場するので,今シーズン好調な選手が集いレベルの高い演技が観られるという点で,私が大好きな大会です。今年のシングルは,男女ともベストメンバーが集まり,近年にないハイレベルな戦いになりそうです。シングルの出場選手を紹介します。(写真は,テレビ朝日のバナーから拝借しました/笑)

男子シングル】


GPF_Men
(左から,ジン,フェルナンデス,チャン,村上,宇野,羽生 の各選手)

羽生結弦

 先々週のNHK杯で歴代最高点を叩き出し,フィギュアスケート界を次のステージに引き上げました。史上初の3連覇を狙うプレッシャーや,NHK杯の疲労を心配する声がありますが,全然問題ないでしょう。昨年のファイナルを思い出してください。中国でのケガが癒え切らずNHK杯で表彰台を逃してから,わずか2週間で華麗なる復活を遂げ,そのときの神々しい姿が今でも目に焼き付いています。それを思えば,今年は昨年より状態が良いですし,今回は得点更新を狙わず優勝だけを考えて臨めば,かえって良い演技ができてあっさり得点更新となる可能性はけっこうあると思います。

・・・とここまで木曜日に書いたら,ショートプログラム(SP: Short Program)からやってくれたようですね! こうなると合計 330 点という無茶苦茶な期待をしてしまいますね。記録は二の次で勝ってくれさえすればよいものを…どこまで観る者をワクワクさせてくれるのでしょう,羽生結弦 っていう人は。

宇野昌磨

 とにかく今年は,SP,フリースケーティング(FS: Free Skating),共にプログラムが秀逸! 特に FS は後半のゾクゾク感がたまらないです。本来は,冒頭で4回転からの連続ジャンプを飛んで,後半の4回転は単独らしいのですが,冒頭が連続にならなくても,後半を連続ジャンプにして挽回するのが決まると,そこから最後のちょっとトリッキーな3連続ジャンプまで,鳥肌が立ちまくります。めざせ表彰台!

村上大介

 スケーティングが柔らかくて,観ていて癒されます。特に FS の YOSHIKI (X JAPAN) 作曲の楽曲は,フィギュア用に書き下ろされたのかと思うほど。演技以外では,アメリカに住んでいただけあって英語はネイティブなので,キスアンドクライで キャロル コーチとの会話がテレビの音声に乗るかどうかも楽しみ。同コーチの同門生である ゴールド 選手も出場していますし,リラックスしてミスなく演技すれば,出場選手全員が合計250点以上,という超ハイレベルな記録が観られるかも。

ハビエル・フェルナンデス (ESP)

 グランプリファイナルが2年連続で母国開催なので,今年こそ優勝したい気持ちがあるでしょうけど,オーサー コーチの同門生である 羽生 選手が無敵状態なので,勝負より演技の内容にこだわりたいところでしょう。SP も FS も,ジャンプやスピンなどの技術要素の間の "つなぎ" が満載で,最初から最後まで楽しめるのが見どころ。特に SP の「マラゲーニャ」は,本場スペイン人の フェルナンデス 選手が演じるとこんなに凄いのか,と感動必至です。

パトリック・チャン (CAN)

 SP の結果だけ見ると何が起きたのか心配になってしまいますが…もはや,チャン 選手は点数云々ではないです。羽生 選手と同じような柔らかさや優しさをたたえつつ,強さや緩急も併せ持つ究極のスケーティングの素晴らしさを堪能しましょう。

ボーヤン・ジン (CHN)

 私は2年前のグランプリファイナルを福岡で生観戦したのですが,そのときジュニアファイナルに出場した ジン 選手は,ただ1人 FS で3本の4回転ジャンプを完璧に飛んでいてとても印象に残っていたので,やっと出てきてくれたという感じですが,まさか4回転ルッツジャンプ(4Lz)を完全にものにしているとは驚きでした。SP と FS の冒頭に飛ぶ,高さも幅もすごい完璧な 4Lz を観られるだけでも価値があります。今度こそ,史上初 SP & FS 合計6本の4回転ジャンプを成功させて,歴史に名を刻んでほしいです。

女子シングル】


GPF_Women
(左から,浅田,宮原,ゴールド,ラジオノワ,メドベージェワ,ワグナー の各選手)

宮原知子

 私の中でも株急上昇中! 良い演技をしたい!というオーラが全身から発せられ,それでも気合先行にならず緻密な演技が紡げるところが素晴らしいです。NHK杯で 浅田 選手を破って優勝したことがとてつもない自信になって,さらに一皮むけそうな予感。ファイナル表彰台の確率はかなり高いです。演技全体が見どころですが,中でも 宮原 選手しかやらない逆回転スピンは,観ていてなんだか不思議な気分になれます。

浅田真央

 ファイナル独特の高揚感が 浅田 選手に力をくれることを祈りたいです。ミスなく演技すれば間違いなく優勝という高難度プログラムですが,復帰シーズンの疲労感はかなりのものだと思うので,あまり結果にこだわらず,ファイナルという場を楽しんで滑ってほしいですね。見どころは,トリプルアクセルジャンプよりもむしろ,その後に飛ぶフリップ→ループの3回転連続ジャンプ(3F+3Lo)。SP,FS 共に冒頭からこの2つのジャンプが続くので,これらのジャンプが完璧に成功すると後のジャンプにも連鎖して超高得点が出る可能性も。

エレーナ・ラジオノワ (RUS)

 今シーズンは ラジオノワ 選手の年になるのでは?と私は予測しています。ケガ明けの中国大会は今一つでしたが,母国ロシア大会で合計 210 点超えの完全復調。ロシア大会で FS を終えたときの涙に,追い込まれていた彼女の心情(ロシア女子フィギュア界のサバイバル)が垣間見えてとても印象的でした。今シーズンは比較的メロディアスな曲でオーソドックスな表現力をアピールする戦略っぽいですが,ヒップホップから王道バラードまでこなすジャンルの多彩さ,強さと柔らかさ,迫力と繊細さ,あらゆる表現力を発揮できる究極のオールラウンダー。2年前の福岡で生観戦したとき,エキシビションでその多彩さに圧倒されました。17歳にして3度目のファイナル出場で,貫録さえ感じられるスケートは,演技全体が必見です。

エフゲーニャ・メドベージェワ (RUS)

 2年前の福岡で,ジュニアファイナルに出場していたときは,綺麗なスケートはするもののそれほど印象には残りませんでした。ところが,今シーズンのシニア参戦初戦のアメリカ大会は衝撃的なデビューでした。SP の3本のジャンプを全て後半に持ってくるのは,まぁわかる作戦なのですが,その全てが手上げジャンプでしかも着氷が完璧,ジャンプ以外のスピンやつなぎもとても綺麗。迫力 vs 綺麗さ という軸で見ると,ロシア勢どころか世界的に見ても「綺麗さ」の最右翼にいると思います。細身で長身なので,とにかく綺麗なスケートを堪能できます。FS のミスがなければ優勝争いに加わってきます。

グレイシー・ゴールド (USA)

 ジャンプ,スピン,スケーティング,ルックス,どれをとっても華やかさが際立っています。FS はソチ五輪の 町田 選手でおなじみの「火の鳥」と,楽曲も華やか。正に華を添える存在ですが,今シーズン絶好調で点数も出ますので,彼女も優勝争いに加わってくるでしょう。

アシュリー・ワグナー (USA)

 SP はダンサブル,FS は鉄板の「ムーラン・ルージュ」と,アシュリー色全開のプログラム。点数度外視でただただ観ていたい存在ですが,今シーズンついに200点超えを果たすなど,休養シーズンを取らずに成長し続ける姿には感服。エキシビションでも通用するような SP のダンス満載の演技は観ていて本当に楽しいです。

【順位予想】

  • 男子: 1. 羽生 2. フェルナンデス 3. 宇野
  • 女子: 1. ラジオノワ 2. 宮原 3. ゴールド

 女子は予想が難しすぎます(笑)。おそらく上位4選手は合計点が 200~210 点の中にひしめく大混戦になると予想します。浅田 選手と ワグナー 選手が好調なら全員200点超えというすごいことが起きるかも。

NHK杯の楽しみ方:主な出場選手

 フィギュアスケートのNHK杯の主な出場選手や,順位争いの見どころをご紹介いたします。(写真はすべてNHK公式サイトの写真そのままです)

HanyuYuzuru_NHK2015羽生結弦

 言わずと知れた日本の,そして世界を代表する大エース。ショートプログラム(SP: Short Program),フリースケーティング(FS: Free Skating)の各々後半に4回転ジャンプを入れた構成に挑戦中。普通にやれば優勝できますが,SP,FS 共にすべての技術要素を転倒・手つき・抜けなく入れて内容も伴っていきたいところ。

MuraTakahito_NHK2015無良崇人

 力強い音楽のプログラムがハマるのですが,今シーズンは柔らかい世界観。力強いジャンプが決まると素晴らしい出来栄えなのですが,今シーズンは成功確率が低い。演技の幅を広げるとか緊張するとかはもう卒業して,円熟味を出していってほしい。日本の良い雰囲気が後押ししてくれることを祈ります。

BoyangJin_NHK2015ボーヤン・ジン (金博洋,CHN)

 テレビ朝日は中国選手を漢字読みするので キン・ハクヨウ って言われても誰!?って感じです(笑)。それはそうと ジン 選手は今年の目玉。4回転ルッツ(4Lz)という現在最高難度のジャンプを,いとも容易く飛び,しかも3回転トウループ(3T)ジャンプを付けたコンビネーションジャンプ(4Lz+3T)を中国大会の SP,FS の両方で成功させました。そして SP では4回転ジャンプを2本,FS では4本入れるというとんでもない構成で,成功すれば FS の技術点が100点を超えます。4回転連発は迫力があって,フィギュアスケートが新たな次元に入る予感がする演技なので,じっくり観た方がいいですよ!

AsadaMao_NHK2015浅田真央

 昨年1年間の休養から復帰したシーズンなのに,プログラム構成を過去最高難度にして挑むというファイターぶりに,アンチぎみだった私も感嘆。ついついトリプルアクセル(3A)ジャンプに注目してしまいますが,真の注目ポイントはその後に飛ぶ3回転フリップと3回転ループのコンビネーションジャンプ(3F+3Lo)。これが回転不足なく決まるかどうかで点数がかなり変わってきます。SP,FS 共にこのコンビネーションジャンプを3Aの直後に飛ぶので,このジャンプに注目しましょう。

MiyaharaSatoko_NHK2015宮原知子

 昨シーズンの全日本選手権優勝や世界選手権銀メダルをいい意味で忘れてしまう,求道者然とした姿が印象的で,内に秘めた負けず嫌いの精神は 浅田 選手に劣らないものを感じます。若者のひたむきさの中に,第一人者としての風格がにじみ出る綺麗なスケートなので,プログラム全体をくまなく観てほしいです。

ZijunLi_NHK2015ジジュン・リー (李子君,CHN)

 トップアイドルばりのルックスで,日本にもファンが多いですね。実はかなり負けず嫌いなようで,失敗した演技の後のニコリともせずじっと悔しさをかみしめた表情も,応援したくなる魅力を持っています。リー 選手の清楚なスケーティングは,点数度外視で,ただただ滑りを観てほしいです。

 ほかにも,男子では コフトゥン 選手(RUS),女子では ワグナー 選手(USA),長洲未来 選手(USA),ポゴリラヤ 選手(RUS)あたりが注目ですね。本来なら音楽感覚に優れたスケーティングをする ブラウン 選手(USA)も出場予定だったのですが,ケガで欠場となってしまったのは残念です。

 最後に,NHK杯の順位予想を書き添えておきたいと思います。

  • 男子: 1. 羽生 2. ジン(CHN) 3. コフトゥン(RUS)
  • 女子: 1. ワグナー(USA) 2. 浅田 3. 宮原  (敬称略)

 上記の紹介でも書いたように ジン 選手の4回転連発は,目の肥えた日本の観客にも好感を持って迎えられると思います。浅田 選手はノーミスならば優勝ですが,おそらく少しミスが出ると思います。注目だと上記で紹介した 3F+3Lo のコンビネーションジャンプが中国大会では回転不足と判定され減点されていますので,きっちり飛ぶための調整をしているところだと思います。NHK杯はその調整の場になる(=ミス覚悟で理想のジャンプを飛ぶ)と私は見ています。完成形はグランプリファイナルと年末の全日本選手権で披露されるのではないかと期待しています。ワグナー 選手は今シーズンとても調子がいいので,NHK杯は ワグナー 選手が優勝する可能性が高いと思います。

浅田真央 は本物の競技者だ

AsadaMao_JapanOpen2015

 ただの復帰ではない,とんでもない野望を秘めているのかも!?

 私は正直なところ,今までの 浅田真央 選手はそれほど好きではありませんでした。尋常ならざるスケートの名手でありながら,2度の五輪の戦略に失敗する詰めの甘さや,どこか操り人形のように思える演技が,心に響いてこなかったのです。しかし,今年の 浅田 選手は,こうやってブログで紹介記事を書きたくなるほど,素晴らしいスピリッツにあふれた演技が見られる予感がしているのです。

 復帰初戦となるグランプリシリーズ中国大会で,ショートプログラム(SP: Short Program)のジャンプの構成を次の3つにするそうです。

  • トリプルアクセル (通常はダブル)
  • 3回転フリップ+3回転ループ (通常セカンドジャンプはトウループ)
  • 3回転ルッツ
 これは技術点(TES: Technical Element Score)がこれ以上取れない最強の組み合わせなのです。(通常~)と書きましたが,これはトップスケーターの通常という意味です。アクセルジャンプは必ず含めなければならないのですが,トリプルアクセルが飛べるのは,現時点では 浅田 選手と トゥクタミシェワ 選手(RUS)だけなので,ほとんどの選手はダブルアクセルにせざるを得ないのです。また,コンビネーションジャンプの2つめのループジャンプは,男子でもほとんど見かけないほど失敗のリスクが高いジャンプです。4回転ジャンプは女子のSPでは点数が認定されませんので,浅田 選手のこのジャンプ構成は,現在可能な最高の基礎点を持つ組み合わせなのです。

 このようなとんでもない構成にチャレンジする 浅田 選手の気概が素晴らしいと思います。今年は休養明けのシーズンですから,無難な構成で復帰しても何ら問題ありません。ところが,休養明けを言い訳にしてはいけない,休養明けだからこそ最高難度で挑む,そんな 浅田 選手のとてつもない闘争心を,このジャンプ構成から感じ取ることができます。

 トリプルアクセルを実際に成功させた トゥクタミシェワ 選手は,2015年の世界選手権でSPの点数が77点台でした。バンクーバー五輪の キム 選手(KOR)が78点台だったことを思えば,この点数も十分驚きに値する点数ですが,トゥクタミシェワ 選手よりジャンプの基礎点が高く,スピン,ステップも最高レベルを誇る 浅田 選手であれば,最高の出来ならば前人未到の80点台を達成する可能性が出てきました。

 また,フリースケーティング(FS: Free Skating)では,ソチ五輪シーズン以来の「8トリプル」に挑戦してくれそうです。3回転ジャンプを8回入れるというものですが,ソチ五輪や同年の世界選手権では,着氷はしたものの回転不足で点数がかなり引かれていました。全てのジャンプを回転不足なく着氷し出来栄え点(GOE: Grade Of Execution)がある程度取れれば,FSの150点も現実のものとなります。

 SP 80 点+FS 150 点= 230 点。この点数が意味するものは,キム 選手がバンクーバー五輪で出した 228 点を超える史上最高得点なのです。点数のルールは年々改定されますので比較することは意味がないのですが,とはいえ,浅田 選手が屈してしまったあの得点を超えるというのは,多くの人々にとって悲願と言えることではないでしょうか。フィギュアスケートは点数が全てではありません。しかし,採点競技である以上,点数から逃げるべきではありません。おそらく,過去2度の五輪で 浅田 選手はそのことを誰よりも痛感していると思います。そして,競技者として復帰した以上,最高の点数を念頭に置いて演技を行おうと考えているのではないでしょうか。本人が点数を意識しているかどうかわかりませんが,過去最高得点の可能性を復帰直後から見せてくれるというのは,競技者の鏡であり尊敬に値することだと思います。

 今シーズンの 浅田 選手は,休養を経て心からスケートを楽しみ,スケートを極めようとしているように感じられます。今まで私が感じていた操り人形っぽい雰囲気が全くなくなり,心から表現しようとしている雰囲気が出ていて,それを観た私は「浅田 選手は点数など気にせず,楽しんで滑ってほしい」という気持ちで応援するつもりでした。しかし,浅田 選手のSPのジャンプ構成を知った私は,心が震えました。彼女はただ人気に安住して楽しむだけではなく,休養明けのシーズンでありながら,競技者として果敢にトップを取りに行く姿勢を鮮明に示したからです。浅田 選手がここまで本気になるのなら,応援する側も「楽しんで滑って」などとのんきに構えることは許されない気がしています。しっかり応援しなければ 浅田 選手に失礼,そんな緊張感を勝手に感じています。

 明日からの中国大会ですぐに結果が出るかはわかりませんが,3週間後のNHK杯,さらにその後のグランプリファイナルや全日本選手権のいずれかでは,浅田 選手の技術と芸術性が共に最高レベルに達する,感動的な演技が目の当たりにできるのではないか。そのことを願いつつ,今シーズンの 浅田真央 選手の演技に大注目です!

3月には完璧に…浅田真央

 このスケーターはどこまでドラマを作るのか。

 浅田選手は,フリーでどん底から起死回生の演技を見せました。ショートが最悪の出来となり,フリーでも精彩を欠くだろうと正直私は思っていましたが,浅田選手を信じられなかった自分がとても恥ずかしいです。あのどん底の状況を乗り越え,全てのジャンプを綺麗に着氷して自己ベストを更新し,合計200点近くまで伸ばしたことは本当に素晴らしかったですし,浅田選手の本当の芯の強さを見たような気がしました。フリーが終わった瞬間,彼女が感極まる姿には,浅田真央ファンではない私もグッとくるものがありました。彼女が抱えていたあまりにも大きな重圧,そしてそれを良い形で下ろすことができた安堵感。良い演技の後に涙を見せる浅田選手を私は初めて見ました。

 しかし,これほどのフリーができたからこそ,感動だけで終わらせてはいけないと思います。6位は浅田選手の実力からすれば惨敗です。もし,同じ点数でもショートが良くてフリーが悪かったら,今回のような賞賛はされなかったのではないでしょうか。そう思うと,どん底のショートから復活して感動,で終わらせるわけにはいきません。フリーであれだけの演技ができたということは,ショートが悪かった原因はメンタルだったということになるでしょう。第一線で8年間もやってきたのに「直前の大歓声にのまれて緊張した」という理由は,同様の状況だった団体戦の経験が活かせなかったということであり,納得できません。何か経験値では補えない問題が起きていたわけですから,それをきちんと検証して,他の選手や指導者の皆さんに還元してもらいたいと思います。

 もちろん,ショートが良かったらメダルが取れたのでは,という単純な話ではありません。実際,ショートが78点だったとしても,金メダルはとれない点数でした。しかし,メダル争いの中であの演技をしてほしかった。そうすれば,感動もより大きかったし,演技構成点ももっと取れたし,ライバルたちにプレッシャーをかけられたはずで,結果として金メダルをとれた可能性はかなりあったのです。五輪はあくまでお祭りですから,メダルが取れなくてもかまわないと思うのですが,浅田選手はこの4年間ずっと第一線で活躍しており,そういう選手が五輪のメダルを手にすべきだと思うのです。きっと,彼女は内心ではものすごく悔いていると思います。取材では「恩返しができた」と前向きなコメントを発していますが,負けず嫌いな彼女が今回の成績や演技に心底満足しているはずがありません。

 ぜひ,今季の完成形を来月の世界フィギュアで見せてほしいと思います。五輪では全てのジャンプを綺麗に着氷できたものの,回転不足が2つ出てしまいました。回転不足を出さずに全てのジャンプがクリアにできれば,日本の会場という地の利も手伝って,フリー148点も夢ではないでしょう。完璧なショートで77点,合計225点。これで今季最高スコアになります。浅田選手の演技にはこのくらいの価値があると信じています。今度こそ,完璧に。その先に,日本人最多3度目の優勝が待っています

ソチ五輪フィギュアスケート女子シングル順位予想

 いよいよ女子が始まりました。願望的順位予想と見どころを記してみます。
  1. 浅田真央
  2. リプニツカヤ (RUS)
  3. 鈴木明子
 浅田選手は,ノーミスなら間違いなく金メダルです。しかし,転倒しなかったとしても,抜け(パンク),回転不足,両足着氷など、減点になるミスのリスクはいくらでもありますので,どれだけミスなく演技できるか,そしてミスを恐れないメンタルを持っているか,が勝敗を左右します。また,ミスしてもすぐ気持ちを切り替えてミスを連鎖させないことも重要です。全日本や五輪団体戦では精彩を欠いていましたが,どちらもピークを持ってくる必要がない試合であり,この2試合は参考になりませんが,他の選手はメンタルが強いだけに,金メダルを意識し過ぎないことを祈るばかりです。

 トリプルアクセルをフリーで1回にしたのは大正解だと思います。ミスのリスク低減はもとより,後続の演技への余力ができるので,個々の技の出来映えや全体の印象が良くなると思います。浅田選手はとかくトリプルアクセルが取り上げられがちですが,本来は総合力のスケーター。全てのジャンプ,スピン,ステップ,そして全体の流れの素晴らしさを堪能したいと思います。この4年間,女子シングルで最も活躍したのは浅田選手ですから,そのご褒美がもたらされるでしょう。

 リプニツカヤ選手(RUS)は,ここへ来て急に金メダル候補かのような扱われ方をしていますが,私は昨年末から金・銀は浅田選手とリプニツカヤ選手だと見ていました。今季グランプリファイナルで生観戦したとき,その演技の素晴らしさに一気に引き込まれました。グランプリファイナルの演技構成点が,浅田選手とリプニツカヤ選手で8点も差があったのですが,その場で観た限りそんなに差があるとは思えませんでした。ですから,五輪団体戦で出た得点は,やっと私の実感どおりになった感じがしています。ジュニア上がりだから,15歳だから,などと過小評価しても,実際に演技が良いですし,団体戦で現実に点数が出ているのですから,有力な金メダル候補なのは間違いありません。グランプリファイナルでは,他の選手がミス続出の中,1人ノーミスで収めており,メンタルも強靭ではないかと予想します。ショートプログラムでは滑走順にも恵まれました。個人種目まで金メダルを持っていかれてはたまりませんが,手ごわい相手となりそうです。金・銀は合計220点に迫る争いとなるでしょう。

 鈴木選手は,全日本を再現できれば,銅メダルが十分に狙えます。例年,鈴木選手はプログラムが素晴らしいのですが,プログラムに恵まれているというよりも,曲を解釈して自分の世界を構成することがとても上手だと思います。全日本では神が下りてきましたが,五輪でも再び神が下りてくることを祈りましょう。

 キム選手(KOR)は,ショートプログラムは首位争いをすると思いますが,フリーは後半でミスが出る可能性が高く,銅メダルさえも厳しいと思います。メディアは対決の構図を煽っていますが,浅田選手やリプニツカヤ選手の敵にはならないと見ています。浅田選手だけをマークしていればよかったところに,リプニツカヤ選手が浮上してきたことが,キム選手のメンタルに微妙な影響を及ぼすと思います。1人ではなく2人が相手になる分,ミスが許されない気持ちが強くなり,それがミスを誘発する可能性が高いでしょう。

 その他,村上選手,コストナー選手(ITA),ゴールド選手(USA),ソトニコワ選手(RUS)が合計200点を超える力を持っています。村上選手やゴールド選手は,ショートプログラムが良ければ一気に気持ちが乗ってくると思います。コストナー選手は団体戦の印象から演技構成点がとても高くなると思います。ソトニコワ選手の情報が飛び交っていないのも不気味です。リプニツカヤ選手に気を取られていると,ソトニコワ選手が不意打ちで抜け出す可能性もあります。男子同様,銅メダル争いがとても面白くなりそうです。

 個人的にはワグナー選手(USA)にも頑張ってほしい。あと,李(リー)選手(CHN)の可憐さにも注目です。
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