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町田樹

町田樹 氏のテレビ東京出演が神解説だった件

MachidaTatsuki-Face 2/12(月) 夜8時過ぎ,たまたまテレビ東京を観ていたら,フィギュアスケーター 町田樹 氏が約30分に渡り,羽生結弦 選手の練習風景や団体戦に関して解説を行っていました。この解説が実に見事だったので,何が素晴らしかったのか私の文章力の範囲でお伝えしたいと思います。

 町田樹 氏は,2014年まで競技会現役を続け,ソチ五輪5位2014年世界選手権2位。ソチ五輪シーズンのプログラム「エデンの東」「火の鳥」は名作として多くのファンの心に刻まれており,私も大好きなプログラムです。ソチ五輪直後に日本で開催された2014年世界選手権は,それら2プログラムの集大成となり,羽生 選手との1&2フィニッシュの激闘を生み出しました。町田 氏はプログラムを「作品」と称し,コメントや解説で文学的表現がたびたび用いられることから「町田語録」なる言葉も生まれ,コアなファンが多いことで知られています。

 以下,町田 氏の解説での主なコメントを発言順に記していきます。一言一句同じではありませんが,ニュアンスは合っていると思います。

《凡例》

  • 下線(アンダーライン): 印象的な表現(町田 氏の発言をそのまま引用)
  • ⇒: 何が素晴らしいのか(私なりの分析)
  • ★: コメントを観た(聞いた)私の感想 【斜字体】

【これまでの印象を聞かれて】

早朝からの試合のため,タイムマネジメントが大変という印象

⇒ 「タイムマネジメント」という言葉に,研究者としての見識がにじむ。

★ この後の 町田 節への期待が高まりました。

【ケガ明けの 羽生 選手について】

羽生 選手の課題は,現時点で痛みがなければ技術面はすぐに戻ってくるはずです。問題は,プログラムをまとめ上げるための持久力がどれほど戻ってきているかです

⇒ 課題や観るべきポイントを,専門家ならではの視点で指摘。

★ ケガ明けとはそういうことなのか,と大いに納得

【羽生 選手の,平昌到着直後の練習で確認することを問われて】

氷の感触でしょう。今回の平昌五輪では建物の上層部が本番リンク,地下にこの練習リンクがあります。上下で,つまり本番リンクと練習リンクでは氷の質はあまり変わらないんじゃないかと推測しています。この氷の感触をつかめば上手く本番につなげられると思っていると思います

⇒ 会場の様子を具体的に描写し,練習リンクで練習することの意義を説明。

★ 会場や選手のことが具体的にわかり,競技への興味がアップ。

彼はよくイメージトレーニングをします。足の裏から得た氷の感触と,自分の脳内で想像する自分の動き統合してイメージ練習をするといったところではないでしょうか

⇒ 「足の裏」→「氷の感触」と「脳内」→「自分の動き」という対比する2つの表現が,身体の部位 → イメージの対象 という組み合わせの並列列挙。そして,これらを結び付けることを「統合」と表現。

★ 羽生 選手のイメージトレーニングがどのようなものか,ものすごく伝わってきました。言語化能力の高さに改めて脱帽

(羽生 選手の回復状況について)本人が何も言っていないのでわからないです
(練習の内容に関する踏み込んだ質問に対して)どうでしょうね? そこはわからないですね
(今後3日間の練習をどうするのか見えてくるものはあるかを問われて)今日の練習からだけでは,正直,何も判断できません

安易な断定や期待の助長をせず,ミスリードに加担しない姿勢を堅持

★ 「大丈夫です」「やってくれます」などの安易な言葉を言わないのが,むしろ好感を呼びます。

【アクセルが飛べているということは調子を取り戻しているのか?という質問に対して】

そうですね。ただし,アクセルは左足で踏み切りますので,例えばフリップやルッツは右足で強くトウを突きますから,それらのジャンプで痛みが出るか出ないかはアクセルからだけでは判断できない

⇒ ジャンプの種類の違いに触れ,ジャンプ練習が持つ意味に言及。

★ 今度から練習映像を見るときは,そういうところも見てみようと思いますね。ちょっと通になれた気分。

【団体戦男子SP(Short Program,ショートプログラム)の転倒の多さに関して】

ネイサン・チェン 選手は今シーズンSPでは大きなミスが1度もなかっただけに驚きましたよね。

⇒ 最近の演技状況を具体的に紹介しつつ,好調な選手が転倒したことを示し,その意外性を強調

今回はアメリカのテレビ放送のプライムタイムに合わせて競技を早朝から始める設定になったと聞いていますが,元選手の立場から発言させてもらえば,今回の競技スケジュールは到底受け容れられるものではない

⇒ 「到底受け容れられるものではない」という極めて強い表現で問題点を鋭く指摘。「選手は大変だ」といった評論家的な論評で済まさず,選手の立場に立って抗議

町田 氏の面目躍如。言い切る勇気に拍手喝采。アナウンサーに言葉の続きを遮られましたが,おそらく「アスリートファーストであるべき」と続けたかったんだと思います(あくまで私の推測です)。つい,提言・抗議の発言に注目が集まりがちですが,その前の「アメリカのテレビ放送のプライムタイムに合わせて」という言葉も,問題の背景を簡潔かつ正確に表現していて,しびれました。

練習は 6:30 から行われました

⇒ 具体的な時刻に言及。

★ ちょっとしたことですが「早朝から」よりも「6:30 から」と聞くと,選手の苦労が真に迫ってきますよね。

小林 強化部長からもオフィシャルのプレスリリースが出まして,選手全員,団体戦で得られた経験を糧に,個人戦に臨んでほしいという言葉もありました

⇒ フィギュアスケートの解説者が,スケート連盟の公式コメントをしっかりと伝えるシーンを,私は今まで見たことがありません。この手のコメントはアナウンサーに任せてしまいがち。公式コメントを伝えることで,それが自身の想いと合致していることや,自身の考えが偏ったものではないことが伝わります。

★ 公式コメントをきちんと伝えるという,町田 氏の解説者としての姿勢に感銘

【団体戦女子SPの 宮原知子 選手の回転不足に関する件】

物議をかもしていますが…私は昨日の女子SP全ての選手のジャンプのスロー映像を全部,慎重に,比較・検討した上で言うのですけれども,宮原さんのジャンプ,何も遜色はありません。自分の磨いてきた技術に自信をもって個人戦に突入していってほしいです

世間で盛り上がる議論から逃げずに,むしろ踏み込んだ見解を提示。しかも「何も遜色はありません」と,これまた強い表現で見事なジャンプだったことを断言。暗に,宮原 選手だけが回転不足を取られたことへの疑問を呈していますが,審判への批判ではなく,町田 氏個人の見解として述べています。

絶妙な表現で 宮原 選手を後押しし,応援者のもやもや感を晴らし,これまた拍手喝采。宮原 選手にとってとても心強いエールになったことでしょう。

宮原 選手の強さはプログラムを作品としてまとめ上げる力だと思うんですよね。たくましく自信を持って個人戦に臨んでほしい。怪我を乗り越えて,五輪の切符をつかんだ全日本選手権では,本当に,滑る喜びだとか,プログラムを演じる日本人女性としての強さみたいなものが満ち溢れていた。全日本の時の気持ちを思い起こして堂々と個人戦に臨んでいってほしい

作品の総合力を大切にする 町田 氏ならではのエール。

★ 「たくましく」「堂々と」という言葉には,気持ちを強く持つことが大事という 町田 氏の思いを感じました。

【ペアとアイスダンス】

木原選手の献身と,それに応える須崎選手の頑張り

⇒ キャッチフレーズ的にペアを組む2選手の特徴を紹介。簡潔な中に文学的香りが感じられる 町田 氏の言葉。

日本の場合はペアとアイスダンスそれぞれ1組で,団体戦のSPとFS全部を担っているので本当に体力的に厳しいです。団体戦以上に力強くカップル競技の二組を応援してほしい

団体戦の負担と,日本でのペアやアイスダンスへの注目度の低さを暗に指摘。

★ この2点は 町田 氏としても思うところが多いのではと感じた一幕。「力強く」という言葉にその思いが詰まっているように感じました。

村元(哉中)選手は,(クリス・)リード選手は傍らにいるのイメージです。(演技が進み)ここで 村元 選手の衣装が変形し満開の桜が立ち現れる。ステーショナルリフトは風に花びらが舞っているように見えませんか? このステーショナルリフトは今季世界でいちばん僕は好き(なリフト)です

⇒ 衣装が,桜色と緑色の混在から,桜色一色に変わるのですが,その様子を「桜が立ち現れる」と文学的表現で描写。「舞う様子を表現しています」ではなく「舞っているように見えませんか?」と視聴者に問いかけ

作品の世界観を語る 町田 氏は,本当に素晴らしい語り口でした。問いかけられて「なるほど~」と膝を打った方も多かったのではないでしょうか。この一連の解説にはぞくぞくしました

【村元 & リード 組の四大陸選手権メダル獲得について】

これは本当に凄いことです。アイスダンスとペアは日本に練習環境がほとんどありませんからね。両者ともに米国に渡って競技力を磨いている,ものすごい急成長しているカップルなので,ぜひ注目していただきたいと思います

⇒ 競技が抱える課題,競技者の努力に言及。単なる苦労話というトーンではなく,課題については厳しい口調

★ こういう話を聞くと,視聴者に応援心が芽生えますよね。そして,情に訴えるだけでなく,課題の解決を強く望む気持ちが表出していることも素晴らしい。

団体戦、何度も言いますように、選手たちは本当に身体に負荷がかかっています。出場した選手は、身体に疲労をかかえた状態で個人戦にこの後突入していくんですよね。ですから、ここに団体戦に出る人と出ない人の差が生まれてしまう。私は、団体戦と個人戦(の開催順序)を逆にしたらいいと思います。そうすると個人戦は元気な状態で臨めますし、団体戦に出る人たちも同じ疲労度の状態で臨めるので,イーブンの状態が作れるのかなと思うんです。団体戦に出場した選手は本当に大変な中頑張っているので,団体戦以上に個人戦を応援していただけたらと思います

⇒ 個人戦の出場を「突入」と表現。団体戦を個人戦の後に行うべきという,誰もが思っていることをきちんと提言。

団体戦を総括するコメントがとても素晴らしかったので,ここは全て発言のまま引用しました。町田 氏もソチ五輪の団体戦経験者(FS(Free Skating,フリースケーティング)出場)だからこそ,団体戦の疲労が抜けない大変さを「突入」という言葉に込めているように感じます。開催順序に関しても,これだけはっきり提言した解説者は,日本では 町田 氏が初めてではないかと思います。開催順序入れ替えのメリットを明確に示していることも見事。


 実際の解説時間は約30分,途中にあおりVTRが入っていたので実質は25分くらいだと思いますが,この短い時間の中で「注目選手の見どころ」「プログラムの素晴らしさの紹介」「選手への敬意と応援」「具体的な情報や状況の紹介」「細かすぎる解説」「課題と提言」と,ありとあらゆる角度から幅広く言及していました。かといって,意欲空回りという雰囲気は全くなく,穏やかな声のトーンで,全般的に冷静かつ温かくコメントしていました。それでいてメリハリもあり,課題には厳しい口調で,選手への応援を求める際には温かくも力強くコメントしていました。

 スポーツの解説者というより,ニュースなどに出演する学者の専門家を見ているようでした。事実,推測,見解をきちんと分離して話し,安易な断定を避ける語り口は正に学者のそれであり,専門家としての信頼感と好感度を高めていたと思います。町田 氏は研究活動もしているので,このような雰囲気になることに違和感はないのですが,スポーツ解説者がこのような雰囲気を醸し出すことは,とても新鮮に感じられました。

 そして,とりわけ出色だったのは,発せられた言葉の的確さ・美しさ・強さ。町田語録と言われるだけあり語彙は豊富ですが,競技者現役の頃は一歩間違うと,漫才師 サンドイッチマン が言うところの「ちょっと何言ってるかわかんない」になりかねない危うさを私は感じていました。しかし,今回の解説は,羽生 選手のイメージトレーニングの件や,村元 & リード 組のプログラム解説では,言葉の紡ぎ方が素晴らしかったですし,全体的に,言葉の1つ1つが逐一的確で,気持ちよく解説を聞くことができました。スポーツ解説も,言葉によってここまで印象を高めることができるんですね。何といっても,力強く喝破した「到底受け容れられるものではない」「何も遜色はありません」がハイライトでした。

 解説が終わった瞬間,テレビの前で「すごい!すごい!」と私は大絶賛。競技経験者の蓄積と,研究者としての見識が,いかんなく発揮された見事な解説に感動しました。解説に感動ってそんな大げさな…と思うかもしれませんが,Twitter(私はやってませんが…)などでも絶賛の嵐で,放送当日に五輪関連の検索急上昇ワードにもなっていたようです。フィギュアスケートの解説では,織田信成 氏の実況解説がなかなか良いなぁと思いながら観ていますが,ここまですごいと思ったのは 町田 氏が初めてです。他競技を含めると,サッカーの 中村憲剛 選手(川崎フロンターレ)によるイングランド・プレミアリーグの実況解説以来の感動でしたね。

 次の出演は 2/25(日) のテレビ東京系列だそうです。このときにはフィギュアスケートは全ての結果が出ていますので,総括としてどんなコメントを発してくれるのか,今からとても楽しみです。

世界フィギュア選手権2014:男子シングルやりました!

点差わずか0.33。羽生選手と町田選手が生み出した,日本フィギュア史上最高のドラマティックな大激闘!

ショートプログラム(Short Program)。町田選手の「エデンの東」。初めて観た瞬間にここまで心を掴まれたプログラムは今までありませんでした。個々の演技要素の流れと音楽が見事にマッチしているのです。以来,今季ずっと町田選手を応援し続け,観るたびにどんどん完成度が上がっていき,世界フィギュアでついに驚異の自己ベストを記録。羽生選手とチャン選手(CAN)しか到達していない98点台を叩き出しました。最後のスピンのときから観ている私は鳥肌が立ち続け,演技が終わったときテレビの前でまるで観客かのようにしばらくの間拍手を止められませんでした。演技が終わりガッツポーズをせずに余韻を味わう町田選手の姿は美しかった。技術的にも芸術的にも完璧。町田選手が演技のことを「作品」と称する意味を私は初めて心から理解できたような気がしました。

羽生選手は,明らかに普段と違う雰囲気をたたえていました。五輪金メダリストで迎える大会。しかもチャン選手は不在。勝って当たり前という試合ほど難しいことはありません。滑り出してからもふーっと息を吐きリラックスしようとしている姿に嫌な予感を感じた瞬間,4回転トーループジャンプを転倒。まさかの追う展開となりますが,彼の凄さは,失敗を引きずらないこと。その後のジャンプをきっちりまとめて,町田選手と7点差に留めたことが大激闘の伏線になりました。

フリースケーティング(Free Skating)。町田選手の「火の鳥」はこれまた名プログラム。今大会は2年間演じ続けた集大成です。今季は私が福岡で生観戦したグランプリファイナル,さらに続く全日本と,ミスのない演技ができていたのですが,どちらも成功させることに必死という状態でした。ソチ五輪では4回転ジャンプにミスが出てメダルを逃すことになります。何としても最後は完成度の高い演技を…町田選手はそう強く望んでいたはずです。そして実際に,前半の3つのジャンプとステップシークエンスまでは,緊張感と冷静さが高い次元で融合している,そう感じさせてくれる内容でした。後半は着氷がぐらつくなどヒヤッとするところはありましたが,今までのような「こなすだけで精一杯」という雰囲気ではなく,気持ちの余裕そして強さが感じられるような演技でした。世界フィギュアでは演技がミスなくできれば満足と言っていいと思うのですが,今大会の「火の鳥」は表現をも追求した演技になっていたと思います。審判もそれに呼応するかのように高い得点を出し,184点台という自己ベストを達成しました。

その町田選手を競馬で喩えると「ハナ差で差し切った」のが,2001-02年シーズンのヤグディン選手以来2人目となる同一シーズン3冠を達成した羽生選手でした。けして楽にとれた3冠めではありませんでしたが,それでもきちんと結果を手にするのが,彼の強さであり凄みでもあります。しかし,この僅差は少し予想外でした。羽生選手が4回転サルコウジャンプを含む全ての技術要素を成功させたのを見て,私は195点を予想しましたが,実際には191点台に留まり,4回転サルコウを失敗したグランプリファイナルでの自己ベスト193点台を超えられませんでした。今大会では個々の演技要素の出来ばえがさほど良くなく,出来ばえを評価するGOE(Grade Of Execution)の点数を積めなかったようです。追う立場で勝ちにこだわったことで,演技の細かい部分の完成度を上げられなかったということでしょう。とはいえ,この状況で自己ベストに近い点数を出せるのですから,やはり羽生選手は強靭なメンタルの持ち主であると改めて思います。

五輪直後の世界フィギュアは,例年どうしてもレベルが低くなりがちです。しかし今回は,五輪での演技ミスや日本開催といった状況があり,羽生選手にも町田選手にも高いモチベーションが維持されました。その結果は,両選手ともソチ五輪の優勝得点を上回る合計282点台を出しました。しかも,2004年以降現行の採点制度になってから,1位と2位の点差0.33は史上最小,6.97点差からの逆転は最大点差だそうです。ホームアドバンテージをしっかり生かして,日本男子史上初の1-2フィニッシュを達成し,このドラマティックな激闘を生み出した2人のスキルとモチベーションは,本当に素晴らしいと思います。2人揃ってのインタビューで見せてくれた言葉のかけ合いは,ライバル同士が持つ刺激と尊敬に満ちあふれ,爽やかで清々しく,じんわり心が温かくなる光景でした。羽生一強時代到来かと思われましたが,あと1年は町田選手が共に戦ってくれる存在になりそうで,羽生選手にとっても大いにプラスに働きそうです。

その意味でも,町田選手の今年の成長と世界フィギュアの結果は,特筆すべきものと思います。初出場,しかも五輪直後の世界フィギュアで,SPとFSが共に自己ベスト,しかも今までを合計17点上回る…本当にとてつもなく凄いことを町田選手はやってのけました。どうしても羽生選手に注目が集まってしまいますが,今年の町田選手の軌跡と2つの名プログラムを,私は強く心に刻みたいと思います。

町田選手,髙橋選手,五輪お疲れ様

 町田選手,5位入賞おめでとうございます。今年の好調ぶりや,プログラムの素晴らしさを思えば,銅メダルを取ってほしかったです。しかし,世界フィギュア未経験でメダルが取れるほど,五輪は甘い場所ではなかったということなのでしょう。ただ,フリーでは冒頭4回転の転倒を引きずらない粘り強い演技により,ショート11位からの追い上げは見事でした。この悔しさはぜひ世界フィギュアで晴らしてほしいと思います。

 それでも,2年前は世界と戦えるレベルになかったところから,お世辞抜きでメダルが狙えると評されるところまで成長した姿には,とても感動しました。町田語録で存在感を発揮し,団体戦のフリー出場者では最高の成績を残し,前回五輪に続く日本男子全員入賞に貢献しました。町田って誰?って思ってた皆さんも,やっぱり日本男子陣はすごいんだなって思ってくれたことでしょう。

 髙橋選手,申し訳ないのですが私はおめでとうという言葉をかける気持ちが起こりません。今回の成績や今季の戦いについて猛省してほしいと思っています。私が生観戦した今季グランプリファイナルの出場を楽しみにしていたのですが,欠場してしまったことで髙橋選手への応援熱が弱くなってしまいました。日本開催の大会や全日本を控えた肝心な時期に怪我をすることがそもそも問題です。ただ,怪我はやむを得ないこと,その後の立ち居振る舞いに髙橋選手らしさが感じられなかったことの方が私には残念でした。怪我が治りきらない状況での全日本で,不安オーラ全開,演技後の憔悴,代表決定時の申し訳なさそうな笑顔,それらは日本を引っ張ってきた第一人者として振る舞ってきた今までの彼の姿ではありませんでした。私はこの姿を見て髙橋選手が代表に選出されるべきではないと感じていました。そして,ソチでは精神的支柱でもなく,怪我も完治せず,結果も6位。この結果はある程度予感されたものだったと言えるでしょう。

 しかし,それで髙橋選手の功績が色褪せるものではありません。世界ジュニア優勝,五輪メダル,世界フィギュア優勝,グランプリファイナル優勝,これらの日本男子初はすべて髙橋選手によるものです。日本男子を世界レベルに引き上げたのは紛れもなく彼の開拓の賜物であり,羽生選手の金メダルも当然その歴史に導かれたものです。髙橋選手が強くなるにつれ,いつしかスケーティングの芸術性を高め,日本の第一人者としてメディアに発信していく姿には,たびたび感動させてもらいました。髙橋選手はまだ進退迷っているようですが,今年の世界フィギュアは日本開催。大勢のファンに見守られ,花道に相応しいのではないかと私は思います。

ソチ五輪フィギュアスケート男子シングル総括(前編)

 フリープログラムは,ほぼ全員に魔物が襲った,そんな大会になりました。

 銅メダルに輝いたテン選手(KAZ)だけが魔物を退けました。大きなミスがなく,技術点(技の難易度と出来栄え)だけ見れば羽生選手と僅差の2位で,チャン選手より良かったのです。五輪の舞台では,とにかく技をミスなく入れることが大切だ,ということを改めて示してくれたと思います。私の予想で名前を挙げるのがためらわれるほど今季は絶不調でしたが,昨季世界選手権2位の自信と,第3グループ1番滑走がこの結果を引き寄せたのかもしれません。しかし,合計255点での銅メダルは幸運というほかありません。それだけ他のスケーターが総崩れだったということがわかります。

 第3グループ最終滑走の町田選手は,172点を取ればテン選手を超える状況でした。今季グランプリファイナルでは170点を出しており,全ての技ができれば到達可能な点数でした。ですから,最初の4回転ジャンプの失敗さえなければ銅メダルを手にしていたことになります。ただ,4回転に失敗はつきものなので,むしろショートプログラムで3回転ジャンプが2回転になったことの方が残念でした。それでも,フリーで大きなミスは1つだけで,技術点だけならテン選手と僅差の3位という,素晴らしい内容でした。私が生観戦した今季グランプリファイナルでも,ショートプログラム6位からフリーで4位まで挽回し,そのときのフリーは,何が何でも成功させるという気迫がみなぎり,とても感動しました。五輪でもそれに近い気迫と確かな技術を見せてもらえたと思います。

 最終グループ第1滑走のフェルナンデス選手(ESP)は,ショートプログラム3位だったので,普通の出来なら問題なく銅メダルを手に入れられるはずでした。冒頭,4回転を2つ飛んだところまでは完全に銅メダルが見えていました。しかし,その後大きなミスが2つ出てしまいました。後半最初の4回転サルコウジャンプが3回転になったのが1つめ,そしてこのミスが2つめを誘発します。最後のジャンプで3回転サルコウを飛んだのですが,これが同じ単独ジャンプを2回飛んではいけないというルールに抵触し,最後のジャンプが0点になってしまいました。これで,テン選手の点数をわずかに下回ってしまいました。これまで,4回転サルコウが3回転になることはほとんどなかったので,3回転になったときの対応策を取り損ねてしまったのでしょう。最後のジャンプを3回転トウループにでもしておけばよかったわけですが,それよりも4回転サルコウを転倒してもいいから飛んでおくべきでした。このような無効ジャンプは,演技の本質とは違うので本当にもったいないことです。手にしかけていた銅メダルがこぼれていってしまいました。

 続いて登場した髙橋選手は,4回転を1度だけに変更したので,銅メダルを視野に入れているなと感じたのですが,4回転だけでなくトリプルアクセルのコンビネーションジャンプでも大きな失敗があったので,メダルには届きませんでした。おそらく,昨年のヒザの怪我からの回復が十分ではなく,とても勝負できる状態ではなかったと思いますが,それでもミスした2つ以外のジャンプはきちんと入れることができて,ステップや曲との親和性などは多くの皆さんの心に響くものになりました。「今やれるものとしてはかなり良い出来だった」これが髙橋選手の偽らざる気持ちだったのではないか,とどこかホッとした笑顔を見て私は感じました。

後編に続く)

ソチ五輪フィギュアスケート男子シングル順位予想

 スポーツ観戦ネタも時々このブログに登場します。

 まずは,ソチ五輪のフィギュアスケート・男子シングルの順位予想をしてみたいと思います。予想というより願望ですね。
  1. 羽生結弦
  2. パトリック・チャン (CAN)
  3. 町田樹
 羽生選手は,全日本2連覇,今季グランプリファイナル優勝,そして先日の五輪団体戦でも見事なショートプログラム(SP)を演じてくれました。全日本や五輪団体戦を観る限り,彼には五輪初出場の重圧をはねのけるメンタリティーがあると確信できます。五輪団体戦では,ステップの動きなど細かいところを "流して" 演じている感じでしたから,きっちり演じればSP100点は確実です。フリー200点,合計300点というものすごいことが起こるかもしれません。ブライアン・オーサーが選手としては金メダルを取れませんでしたが,コーチとして五輪2連覇を果たす気配が濃厚です。

 チャン選手は,世界フィギュア3連覇中ですが,絶好調時と比べると少し調子が上がりきっていないかなと感じます。五輪団体戦もあまり良くなかったですが,どの選手もそこにピークを持ってきていないのでアテにはなりません。それより,今季グランプリファイナルで羽生選手に負けたことが,彼の自信をほんの少し揺らがせているような気がします。グランプリファイナルを私は現地福岡で生観戦しましたが,チャン選手のフリーは全ての要素を成功させてはいましたが,どこか窮屈そうな演技だと感じられました。一方,羽生選手は転倒した4回転サルコウ以外はどの要素も良い出来栄えで,結局,全ての要素を成功させたチャン選手が,4回転サルコウを転倒した羽生選手に負けてしまったのです。このことから,チャン選手は全ての要素を成功させるだけでなく,出来栄えもかなり良いものにしないと勝つことが難しいと感じているはずです。このことが,チャン選手の危機感を呼び起こして良い方向に向かうと私は思っていたのですが,カナダ選手権や五輪団体戦を観る限りでは,重圧をぬぐい切れていない印象を持ちました。でも,この4年間牽引してきたのはチャン選手ですから,ベストな演技をしてほしいと願っています

 町田選手は,SP「エデンの東」,フリー「火の鳥」両方ともプログラムが本当に素晴らしいです。彼は深い深い愛情を持ってプログラムを表現しようとしており,表現に没入することによって重圧をはねのけているとも言われています。現実的に考えても,羽生・チャンの2強を除くと,銅メダルには270点(SP:90点,フリー:180点)が目安と私は考えていて,町田選手なら十分に達成可能な点数です。五輪団体戦のフリーでは3位でしたが,2度目の4回転が成功していれば逆転していました。つまり完璧な演技をすれば十分メダルに手が届きます。「火の鳥」が開会式で使用されたことも,町田選手の快演を後押ししてくれそうな気がします。

 その他,上位争いをしそうな選手は,髙橋大輔,フェルナンデス(ESP),レイノルズ(CAN),プルシェンコ(RUS)あたりでしょう。レイノルズは,五輪団体戦でフリーを演じ,4回転を3度成功させました。一度成功体験ができたのは大きいと思いますので,台風の目になると思います。髙橋選手にはもちろん頑張ってほしいんですよ。ですが,SPは佐村河内問題に巻き込まれ,フリーはビートルズの曲のアレンジが私の感性と全く合わず,応援ムードになりきれない自分がいます。この状況で髙橋選手がメダルを取ったら,引退までフィギュア界が熱狂に包まれることは間違いありません。

(おまけ:冷静な予想。1.羽生,2.C,3.F)
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